サーカスの息子〈下〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (669ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102273142

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物の一人一人が大切な役割を担っている。固有の生まれと死をもっている。

    最後に明かされる題名の意味には、心を揺さぶられた。

    それにしても、なんと巧みな語り手だろう。インドを舞台に時間軸を縦横無尽に往復しつつ、物語は開いたまま終わった。

    性の問題(セックス、ジェンダー、性的指向、セックスワーカー)が率直に語られている。

  • 人生はノーサーカスでゴーホームなんていわれてもどこにホームがあるかなんてそんな簡単にはわからない。
    それは信仰の話であり、アイデンティティーの話であり、血のつながりの話でもある。

  • 一応ミステリーの要素もあるんですが、メインはそっちではなく、なかなか壮大な個人史だったなあという印象。

  • J.アービングの世界に引き込まれていく。
    メインストーリーの間にサブストーリーがいくつも絡んでいき、さらに色んな人物が絡み合う。
    なのに、カオス化することなく、頭にしみこんで行くような感覚。
    恐るべしジョン・アービング。
    舞台はインド。
    読み進めていけば、インド自体がとんでもなく個性の強い国なのだと感じる。
    (一度インドへ行けば、ハマるか大嫌いになるかどちらかって言うし、この作品を読んで、かなり気になり始めた。)
    かなり異国情緒を味わえる作品なのです。
    そんなカオスの国で繰り広げられるストーリーのテーマは、“自分の居場所”。
    孤独を感じる人、というか、現代人なら誰でも分かる感覚があるんじゃないだろうか。
    うだつの上がらない主人公のファルーク医師、ゲイの双子、アメリカ人のヒッピーetc...個性的な登場人物が多く(誰もがちょっとした孤独を抱えている)、国籍も性別も越えた多様性が私的にツボでした。

  • 59歳のファルーク・ダルワラはボンベイで生まれ、ヨーロッパで教育を受けてオーストラリア人の妻を持ち、現在はトロントで整形外科医をしている。また、ヒンディー語映画の覆面脚本家でもある。彼の作品に娼婦を殺して死体の腹に象の絵を描く殺人犯が出てくる。それをそっくり真似た殺人事件が起こる。

    長い長い物語だったけど、面白かった。生き別れになっていた双子が最後の最後に出会えた時、感動した。小人、ヒッピー娘、同性愛者、孤児、少女売春婦…帰属する場所がない人々がたくさん出てくる。こういった中で人の繋がりがあってなんだか心がほんわかする。

  • 数年前にインドに行った時、ムンバイをもっと見ておけばよかったな、というのが第一の感想。
    大きな街はムンバイしか寄らなかったんだし。
    しかし、言うまでもなく、なにしろこの街はすさまじかった。
    最初の日にインド門の前でタクシーを降りた瞬間、目の前にはにこにこ笑いながら手を差し出すヒジュラ(あるいはゼナナ)がいた。

    わたしは、この作品において多くの事件が起こる場所であるスラム街にもレッドライトディストリクトにも、近寄ってさえいない。
    それでも、インドのインド的部分は、わたしを十分おびえさせたり神経をすり減らしたりした。

    主人公のファルークは、確かにこの国で生まれはしたものの、青春時代をヨーロッパで、現在は生活拠点をカナダのトロントに置いている。
    どこにいても移民、どこにいてもストレンジャー。
    寂しさ、不安、拠りどころのなさ。
    執拗なくらい丹念に描かれるファルークのこういった心境には、どうしようもなく惹かれてしまう。これは昔からだなあ。
    異国でたったひとり、とはどういう感じなのか?
    また、このような強烈な国を自分のルーツとして持つことを、自分に当てはめて想像してみる。

    アーヴィングの作品にはしばしば孤児が登場するけれど、本物の孤児(ガネーシャやマドゥ)もいれば、ファルークやマーティンのように孤児的状況もある者もいる。
    訳者解説にもあったけれど、インドはアーヴィングの小説世界を現実に映し出すためにぴったりなかたちをしているのだと思う。

  • 読み応えあった~。
    混沌としてるのに脈絡はあって、誰の人生も
    こんな感じに小説になりうる(そんな小説を書ける人は希少)
    ってことをふと考えて。。
    大昔何かを読んだときにも同じことを思ったなぁ
    と記憶を掘り起こしたら「ガープの世界」だった。
    そして、この人ガープの世界の人だった。。
    ストーリーは読んだそばから忘れるのに、
    こういう印象は記憶に留まるのよね。

  • 推理小説でも幻想小説でもない。独特の濃い茹だるような空間。滑稽な展開も残酷な日常もすべて、あの混沌の国に混在しているのです。想像の中のインドという国に。

  • インドのミステリアス感がますます募ってしまった。出て来る人はみんな魅力的だし、かなりアクは強いんだけど憎めないな〜上下巻の長さは読みごたえかなりありました。この人の本はいろいろ読みましたが、本当だったら相当暗い感じの事もサラッと書いてしまう所がすごいと思う。

  • 面白かったです!一応物語の縦糸としては殺人事件なんだけど、登場人物たちの過去と現在とそれぞれの葛藤や人間関係などが絡まり、なんとも密度の濃い物語でした。下巻のほうが夢中になって読めたかな。

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