マイクロチップの魔術師 (新潮文庫 ウ 9-1)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102279014

作品紹介・あらすじ

データ空間に広がる-魔法使いが呪文で戦い、怪物が跳梁跋扈する世界を、その住人であるスリッパリー氏こと、名うてのハッカー、ポラックは、政府福祉省の脅迫に負け、必ならずもと名乗る謎の人物を探ることになる。やがて彼が遭遇した恐るべき敵の正体とは?コンピュータ・ネットワーク内のファンタジー世界を舞台に展開する、ゲーム感覚のSFサスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • ニューロマンサーからダークさを抜いた感じ。結構面白い。これの発展版がスノウ・クラッシュかも。
    真の名前とか魔法使いとかがSFらしくないSF。技術用語を使わないことで、進化の早いコンピューターの世界でもいまだに色褪せずに済んでいるのではないか。
    欲を言えばもう1戦すごい戦闘をやってほしかった。ちょっと短すぎた。

  • マイクロチップの魔術師 (新潮文庫)

  • これが1982年に書かれたことが信じられない。

  • サイバーパンクの先駆けとして読んでみたが、結構面白かった。本編だけだと★4と言う印象だったけど、解説のマーヴィン・ミンスキーがかなり面白かったから★5にした。やはり彼は面白い。

    物語の語り口は非常に明瞭で分かりやすく、それだけニューロマンサーみたいな作品よりもさっくりと入り込める感じがした。ストーリーも明瞭で面白かった。全体として非常に良作で、気持ちの良い物語だったと思う。
    世界観としてはサイバーパンクと言うほどパンクではないんだろうなと思った。サイバースペースの概念はファンタジーを下敷きにしているし、現実世界の描写もあまり近未来を感じさせる物ではない。技術的に発展してはいるが、あくまで質的にも現代の延長にあるような世界観を感じた。
    どちらかと言うと『郵便屋』と戦う冒険譚のように感じていたのだが、最後の会話でバートランド・ラッセルを引用し、自意識の電脳化における自己の統一性についての哲学的な思索を差し挟んだというのは、結構好きな感じだった。

  • うわぁ、これは「攻殻機動隊」ですね……たまげたなぁ……。電子戦の描写や郵便屋の正体といい。攻殻の元ネタとして連想し易いのはニューロマンサーだけど、直接的なオマージュ元はむしろこっちだよね。ニューロマンサー読んだことないけど。原著出版は1982年。なんにしろ面白い代物ではある。読みやすいので、ニューロマンサーの悪文に挫折した人にも薦められる。

  • 地球上のあらゆるコンピュータネットワークを掌中に収め、脳と一体化させた時、その人物は全知の神となるのか。そんな壮大なテーマを扱ったSF。ネットワーク上で<魔術師>と呼ばれる凄腕ハッカー達による、世界の支配を巡る攻防を描く。160頁程度と薄いこともあり、あっという間に読み終わった。

    ネット世界<別平面>へ脳神経をつないで没入しハッカー活動をするところ等、ニューロマンサーや攻殻機動隊に時代や設定、ストーリーが非常に近い。(攻殻にも「超ウィザード級」ハッカーが出てくるしね。)2012年現在でも幾多の作品で扱われているテーマではあるが、何せ書かれたのが1982年である。1984年のニューロマンサーより前だ。インターネットという仕組みがやっと大学やら軍やらに出てきた頃。その時点でここまでネットワークと人の関係の行く末を見抜いていたのかと、その先見性に驚愕。この設定だけでも十分先見性に溢れているのだが、物語の終局では人が到達する更にその先の未来図が描かれており、またも驚かされた。ネタバレが酷くなるので詳しくは書かないものの、また攻殻を思い出してみたり。

    原題は『TRUE NAMES』。現実世界での名前を<真の名前>と呼び、これがバレると何せ犯罪者たるハッカーは現実世界で死んだも同然、そしてネットでも活躍できなくなるところも、現在の「ハンドル・匿名論争」を彷彿とさせて面白い。

    そして面白かったのは先見性だけではない。ネット世界<別平面>の描き方が面白いのだ。「魔術師」の用語が特徴をよく表しているが、そこはまるでファンタジーの魔法世界。主人公の根城<魔窟>に入るためにトカゲのアラン君(アラン・チューリングのアラン!)と魔法で攻防するなど、高度に進んだ科学は魔法と見分けがつかない、っていうか魔法そのもの!

    これ、1982年に今の年齢で読んだとしても、全然意味が分からなかったかもしれないなぁ。あー私も早く電脳化してネットの海に漕ぎ出したい。

    (中身の濃い解説が30頁もあり、若島正さんのおちゃらけ後書きがあるのもご愛敬。)
    (「エリは、やはりぼくのエリなのだ」182頁。このほか、ヒロインのエリを見ながらSWEの映画『ぼくのエリ』を思い出していた。)

  • SF。びっくりしたのが、MIS工科大学所長の解説が26ページもあること。
    物語の学術的考察が延々と語られます。
    その後の翻訳者の解説がまたおもしろい。

  • The first postmodern computer language vs the first babel-17 computer language: Ruby
    高橋征義氏の発表資料(YAPC::Asia 2006 TOKYO)から

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著者プロフィール

1952年京都生まれ。京都大学名誉教授。英米文学研究者、詰将棋・チェスプロブレム作家。著書に『盤上のフロンティア』、訳書にナボコフ『ロリータ』『ディフェンス』、パワーズ『黄金虫変奏曲』(共訳)など。

「2023年 『盤上のパラダイス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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