コンタクト 上巻 (新潮文庫 セ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102294017

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  • 地球外知的生命体探査プロジェクトSETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence)が、
    もし本当に宇宙人が発している電波を受信したら世の中はどうなるか?
    を描いたカール・セーガン博士の最初で最後の小説。

    この小説は10年ほど前に一度読んだことがある。
    映画もビデオで見たことがある。
    カール・セーガン博士の『惑星へ』、『宇宙との連帯 -異星人的文明論』、『人はなぜエセ科学に騙されるのか』などの著作を読んでいくうちに、
    もう一度『コンタクト』を改めて読みたくなってきた。
    宇宙探査や地球外知的生命体探査(SETI)に対する情熱、懐疑主義、宗教と科学の関係、
    われわれが住んでいる地球の宇宙における位置づけなど、
    彼の考え方をある程度予め知っておいたほうが、
    よりこの小説を楽しめるし理解を深められると思ったので。
    この考えは正しかった。
    やはり、彼の宇宙関連の本を読んで科学の知識を蓄えておいたほうが『コンタクト』を何倍も楽しめる。
    アーサー・C・クラークの『2001年宇宙の旅』も読んでおくとなおよい。

    以前読んだときと同じ場面で今回も泣かされた。
    帰りの電車の中でその場面がやってきたので、困った、コマッタ(汗)。
    しかも、たまたまそのとき聴いていたポータブルCDからは、
    タイミングよくDream Theaterの美しいバラード曲"Anna Lee"が流れてきた。
    ジョン・ペトルーシの感動的なギターソロと小説の情景がシンクロしてまるで映画を見ているかのような錯覚。
    話は逸れるけど、
    この曲のギターソロを聴くとジョージ・ハリソンのスライドギターをいつも思い出す。
    地味だけど隠れた名曲。
    周りの人はさぞビックリしたでしょうね。
    本を読んでいる怪しいオッサンがいきなり涙を流し始めたのを目撃したのだから(冷汗)。
    その場面がなぜそれほど感動的をもたらすのか?
    2度目だけにそのシカケがよーくわかった。
    序盤に出てくる対称的な伏線が、ここで威力を発揮していたのだ(ネタバレのためぼかしまくり)。

    映画版で主人公のエリーを演じたジョディー・フォスターはハマリ役だと思う。
    彼女以外のエリーは考えられない。
    ドラムリン役のトム・スケリット(『トップ・ガン』でトム・クルーズの教官役を演じたのが印象的)や、
    パーマー・ジョス役のマシュー・マコノヒー(『評決のとき』のジェイク・ブリガンス役がよかった)もいい感じ。

    エリー対パーマー&ランキンの宗教討論の場面が非常に興味深かった(映画版ではどのように取り上げられていたか?記憶にない)。
    自分はかつてミッション系の大学に通っていた。
    キリスト教に関する授業が必修(強制)で、ミサに参加してのレポート提出も義務付けられていた。
    自分はキリスト教徒ではないので、正直なところこっち関係の授業やレポートは苦痛だった。
    しかし、これらをやらないと卒業できないので否応なしだった。
    せっかくのいい機会だったので、
    キリスト教を信じるところまで行かなくても、
    少しでも理解しようとオープンな心で授業やミサを聞いていたつもり。
    しかし、話をきいているうちに、
    なにかモヤモヤとした割り切れないものを感じて徐々に拒絶反応が大きくなっていった。
    聖書読破を何度かトライしてみたけど興味が続かず毎回挫折。
    エリーがパーマーやランキンを相手に、
    あの当時自分が感じていたモヤモヤを明快・辛らつな言葉スパッと一刀両断してくれたような気がして
    なんだかとてもスッキリした気分になった。
    わしが不可知論者になったのは大学のせいでもあるよ(自分は決して無神論者ではない)。

    ちなみにSETIは実在する世界的なプロジェクト。
    残念ながら地球外知的生命から発せられた電波を未だに発見できていない。
    われわれの銀河系だけでも数え切れないほど恒星があり(2000億個?)、
    その周りにいくつかの惑星が回っているとすれば、
    そろそろ何かしらそれらしきものを受信できてもよさそうなのに……。
    自分が生きているうちに、
    ぜひ地球以外の天体にも生命が存在することを見つけて欲しい。

    もし、今この瞬間に地球から100万光年離れたどこかの天体から
    知的生物が宇宙に向けて何か電波を発射したとしても、
    地球に届くのは100万年後なのであった。
    よその天体の生命の進化、
    地球からの距離、
    現在のわれわれの状況、
    光速による伝達速度が有限、
    これらの条件を鑑みると、
    たとえ本当によその天体に知的生命が存在し何かメッセージを発したとしても、
    タイミングの問題が非常に難しいのであった。
    さらにどの周波数をスキャンすればいいのか?
    どの方角を狙えばいいのか?
    を考えていくと恐ろしく気の遠くなる探し物なのであった。
    あ、ちなみにこれは上下とも読んだ感想です。

  • 上p250-251「そして、さまざまな話題に関して、互いの意見を活発にぶつけ合う。こんなに会話が楽しいと思うことも珍しかった。ときどき、どちらか一方の見解に未熟な点があると、他方が完全な知識で補うこともあった。ベッドの中でも彼は思いやりがあり、工夫にも富んでいた。彼と一緒にいると、自分があまりにも自由にふるまえることに、エリーは驚いてしまう。それも、二人の愛のなせる業なのだ。この人に愛されているのだという思いが、そのまま自尊心を高めるまでに、彼に対する敬意は深まっていった。彼を慕う気持ちが高まれば高まるほど、エリーは自分が好きになった。彼の方でも、それは同じのようだったから、二人の関係の底には、愛と敬意の永劫回帰とでも呼ぶべきものが存在していたと言っててもいいだろう」
    「彼が相手だと、エリーは安心して過去の体験や記憶の断片、子供の頃の悲しい出来事などを話すことができた。そして彼は、単に面白がるだけでなく、心から興味を持ってくれるのだ。」

  • 天文学者カール・セーガンによって執筆され、監督ロバート・ゼメキス、主演ジョディ・フォスターで映画化もされた名作SF。映画『コンタクト』に原作があることを知らない人も多いのではないだろうか。かくいう私も、数年前に映画を再鑑賞した際に初めて知った身。原作小説である本書を購入したもののなかなか読むことが出来ずに積まれていたのだが、ここでようやく手に取ることに。

    ニューメキシコ砂漠の天文台を拠点に活動する"SETI(=地球外知的生命体探査)"機関<アーガス計画>の所長エリナ・アロウェイは、天文台に配列された電波望遠鏡が「地球外知的生命体」からの信号を受信することを長い間待ち望んでいた。ある日のこと、電波望遠鏡は二十六光年彼方のヴェガから発せられる素数信号をキャッチする―――。

    「天文学者によって描かれる"SETI"」―――さすがは専門家といったところか、信号を解析するシーンや各国の天文台と連携するシーン等の描写が秀逸。や、正直なところ解析の説明を読んでも半分も理解出来ていないのだが・・・臨場感が伝わってくる!(ハードSFの楽しみ方なんてそんなもんだ!)

    また、「地球外知的生命体」からの"メッセージ"を受信したことを発表した後の人々の反応も非常にリアル。国内外の政治的駆け引き、声高に主張する宗教家の登場(...etc)、これらリアリティが高く違和感のない展開や描写は読んでいてイメージがしやすく、非常に読み進めやすい。著者の想像力の高さが窺えるものとなっている。

    果たしてヴェガから発信される"メッセージ"の内容とは―――。

  • もし高度な文明を持つ宇宙人が地球にコンタクトしてきたら、という話を詳細にシミュレーションしてみたような小説。
    神の存在と科学的な証明等の議論がとても興味深く映画で印象的だったオッカムの剃刀も小説じゃそこまでだったのは意外だった。

  • このSF小説の始まりは、主人公の女性天文学者の所に「ヴェガ系惑星」から信号が送られてきた所から始まり、その信号が不可解なもので、四苦八苦になる。

  • 個人的には映画の方が好きかな。割と考え方とか影響受けてると思う。

  • 人類、地球、太陽系の範囲でしか物事を捉えることができない
    世界に対して優しく投げかけて、大きな波紋を期待する物語。
    「○○であれば、□□になるはず」というベースはあっても
    ソレを超えられなかったり、阻害する
    人間のココロの部分を解きほぐす知的好奇心や
    常識を疑うココロを挟んでいて、
    やっぱり断言して押し付けたり世界に当てはめるのでではなく、
    語りかけて考えさせて世界・視野を広げるのが
    科学者やら(自称でも)リーダーとして必要なことと思う。

  • 主人公が女技術者で感情移入しやすい。
    サクサク読める。

    フィクションだけど、興味深いことがちらほら。
    本当に起こらないかな。
    続きが気になる

  • 宇宙アナリストが描いているので、現実に地球外知的生物が発見されるとしたらこんな感じになるだろうな、と思えました。
    映画もよかったですが、ストーリーが違っているし本の方が数倍好きです。

  • 藤井多希子先生推薦

    ジョディ・フォスター主演で映画化された小説。映画では特に後半が原作とは大きく異なっており、この本の一番いいところが全くといっていいほど残されていない。確かに、暗号解読(宇宙からの信号)といった謎解きの面白さ、そしてアドベンチャー的面白さもあるのだが、それよりも何よりも、科学信奉者の主人公エリーが全く異なる価値基準を持つ人々との議論を通して自分を見つめなおしていくところに、小説の醍醐味がある。また、原作のラストは神秘的で美しい。この美しさを是非感じて欲しい。

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