ムーン・パレス (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (532ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451045

感想・レビュー・書評

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  • 君が手にするはずだった黄金について(小川哲)に、出ていた本で、かなり興味をそそられたので読んでみた。

    結果、かなり時間をかけてやっとこさ読了(笑)
    退屈になりそうになると、少し興味がわくシーンへと続く展開が数回ある。
    のんびり旅の電車が好きな方は、車中で読むのにお勧めする。そして、時代背景を楽しみに、古典を紐解くのも悪くない。

    更に「ミスター・ヴァーティゴ」も面白いと彼女(君が手に・・・に出てくる)が言っていたので、これもブックマークしてある。

  • 特別な一冊になればと思って購入したが、今の自分にとってはあまり響かなかった。

    時折見せるユーモラスな表現や、物語の山場には何かを期待せずにはいられなかったが、内容の割に文字が多めで話のテンポが遅く感じ、途中読み疲れてしまった。

    初めは、両親がいない主人公マーコ・スタンリー・フォッグが、育ての親であるビクター伯父さんを亡くしたことで人生に絶望し生活が悪化、敢えて何もせずに貧しい生活を送り命の危機にさらされる。

    そこでルームメイトのデイビット・ジンマーと、以前1度だけ面識がある中国人女性キティ・ウーに救われ、その後ジンマーの部屋に居候し、衰弱した肉体を回復、そしてキティと関係を持つ。

    ここまでは、不器用な若者が己の過ちに気付き再生するまでの物語、そして青春の幕開けという感じだったが、マーコが人生をやり直すためトマス・エフィングという老人の介護のアルバイトを始めたことで次のフェーズに突入する。

    その老人は掴み所が無く、ある日は呪詛と罵倒が飛び、またある日には深い共感のこもった温かい言葉が出てくる。本心なのか全てが演技なのか…エフィングの屋敷に住み込み、看護師兼家政婦のリタ・ヒュームと生活を共にしていく中で、マーコはこの精神的鍛錬の日々に適応していく。そんな中、エフィングは自分の先が短いことを悟り、今まで秘密にしてきた過去をマーコに打ち明ける。

    この老人が語った壮絶な過去によって、トマス・エフィングの存在感はより大きなものとなり、まるで別の物語を読んでいる様な印象を受けた。
    死が迫っている老人の行動は無意味に感じるが、もし自分が年老いてその時期が来た時に、エフィングの様に選択する気力を保てるのか、意味が無くても行動を起こす原動力は何なのか考えさせられた。

    彼の死後、マーコはエフィングの息子だと明らかになったソロモン・バーバーという男へ手紙を送るが返事は無く、キティと共に新しい生活を始める。エフィングが亡くなってから4ヶ月ほど経ってから、バーバーから返事が届き、ようやく会うことに。

    バーバーは相当な巨漢でハゲているが、ウィットにあふれる魅力的な人物だった。お互いの情報を交換し、意外な真実が明らかになる。エフィングの息子であるバーバーは、当時教え子だったマーコの母エミリー・フォッグと関係を持ち、2人は別れる。その後、マーコが産まれる。つまりバーバーは実の父親であり、介護していたエフィングは祖父だった。

    意図せず父親との再会。だが、キティが妊娠したことで、出産に対する意見の違いからマーコとキティは別れることになる。落ち込むマーコを元気付けようと旅に誘ったバーバーだったが、旅の途中、2人でエミリーの墓参りに寄った際に墓穴に落ちてしまい、しばらくして亡くなる。

    孤独の身となったマーコは、1人エフィングが語っていた洞穴を探し続けたが見つからず、ついには陸の果ての浜辺までたどり着き、夜空の闇に浮かぶ月を見つめる。悲しみの果てに彼は何を思うのか…

    全て読み終えて、この作品は何が伝えたいのか自分には分からなかった。また不幸な登場人物が多いが、なんとなく強引にバッドエンドにしているように感じた。主人公の孤独を演出にするために、最愛の恋人とは別れ、父親が穴から落ちたことが原因で亡くなるという間抜けな最後。感情移入もあまり出来なかったし、心も動かされなかった。

    もしかしたら、この感想は読み手の自分に原因があって、条件さえ整えば今回理解できなかったこの作品の魅力に気付けるかもしれないため、またいつか読み直したいと思う。

  • 悪くない…悪くはない。むしろ良いと思う。
    けど好みじゃない。
    数冊読んで好みが出てきたからなんですが…

    たくさんの大事な人を得てそして失ってきたこの主人公の心はとても繊細で破滅的。
    主人公なのに彼のエピソードの部分だけが好きになれない。
    そして希望を見出したように見える最後のあのシーン…
    あのあと彼は色々な事とちゃんと向き合えたのか、これからの人生でおこるであろう様々なことに立ち向かえたのか。
    1冊分の彼の人生をみてきた後では不安が残る…

    キャラが好きじゃないなと思いつつこんなことを思ってしまうのは共感してしまったのか作者の描写がとても上手なのか。
    ああいう感じに終わるのはいいんですが、彼のキャラクターを考えるともう少し違うエンドが欲しかったかな。

    この作者は4作目ですが自然に読める翻訳には毎回感心してしまいます。素晴らしい。

  • なんともジャンル分けしにくい本を読んでしまった。
    中身じゃなくて、心がからっぽな人間の数奇な人生という感じ。
    私は読書に繊細さ、あるいは強固なものを汲み取るのだが
    この本は私とは性別が違うとはっきり言うことができる。

    おもしろいがあんまり共感できなかったので★3つ

    • 円軌道の外さん

      讃歌さん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがフォロー...

      讃歌さん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがフォローありがとうございました(^o^)

      奇遇でビックリしたんですが、
      今ちょうどこの本23年ぶりくらいに再読中で、
      あれ?こんな話だっけ?って
      延々と続く荒唐無稽なエピソードの数々と格闘しております(笑)

      それにしても、素敵な本棚のラインナップですね。
      感覚的で独創的なレビューにも
      かなり惹かれました。
      またオススメありましたら
      教えていただけると嬉しいです。

      ではでは、これからも末永くよろしくお願いします!

      あっ、コメントや花丸ポチいただければ
      必ずお返しに伺いますので
      こちらにもまた気軽に遊びに来てくださいね。
      (お返事は仕事の都合によってかなり遅くなったりもしますが、そこは御了承願います…汗)

      ではでは~(^^)




      2015/05/31
  • ポールオースター

  • 作者曰くコメディ、らしいけどめちゃくちゃバッドエンドで切ない

  • 人生を放棄しかけたところで奇妙なアルバイトを始めたマーコ。雇い主の老人の依頼を遂行するうちに彼は生きる実感を取り戻し、更に自分の出生の秘密にたどり着く。喪失から始まりへ。そこに愛のようなもので一気通貫させてるような気にもさせるが、そこはどうでもいい部分だ。人生には色々な側面があって、そこには色々な自分がいる。人生はそういうものであり、それをそのまま受け入れるしかないのだ。

  • すごい好きな内容なはずなのにすぐ内容をわすれてしまう作品

  • 著者の作品は三冊目。毎作品根幹にある【喪失と再生】は著者の普遍的テーマなのだろうか。今作はロードムービーテイストの親子三代に渡る大河的なストーリー。彼らの悲劇的かつ喜劇的な人生を『著者唯一のコメディ』と評されると確かに合点がいく。興奮と退屈が交互に訪れる起伏の激しい展開だが、この掴み所のない冗長さが終盤戦への前フリとは思わなんだ。しかし、今作の作中掌編のディテールには流石に閉口する。私は作中の『人は絶望によって解放される』という台詞がとても印象的。余談だが、チャンドラーの影響を既読作品中最も色濃く感じた。

  • サバイバルな展開って王道におもしろい。お金がないときの生活の苦しさはちょっとお金に困ったことのある人なら共感できると思う。ポールオースターの小説は変な人ばっかり出てくる。普通にいたら距離を取られちゃうようなアウトサイダーな人たち。車椅子の気性の激しいおじいさんとか、めちゃくちゃ太ったおじさんとか。キャラが濃すぎて、大袈裟で嘘っぽい。死に方も浮世離れしてて、ザ・現代アメリカ文学っぽい。たくさんの別離が描かれてて、なかなか切ない。チキンホットパイが品切れで気持ちが切れちゃうとこがよかった。あと前半の、最後の卵が割れちゃって絶望するところ。ギリギリで生きてる場合、そういう小さいことでプツンと切れちゃうんだろうなと。でも後から振り返った形式で、今の主人公は再出発した位置から書いてるから、爽やか。けど当時はすごくヒリヒリした感情的な気持ちだったこともわかって、まさに青春小説って感じ。人生のある嵐のような時期を思い出して書いている。内省的。年代とか実在の野球選手とか地名とかはっきり出てくるのに物語は浮世離れしてる浮遊感が魅力。

    以下引用

    訳者の柴田元幸氏は"偶然による愉快な展開のすぐ横に混沌の暗い深淵がぽっかりと口を開けてる古典的なイギリス小説を思わせる"と、この作品の立ち位置を捉えてる。

     また、"コメディーは、いつ陰惨な悲劇に転じても、不思議ではない事が見える時、正当な切実さを獲得する"と見事に解説し、オースター自身唯一のコメディー作品となるこの一冊を"物語の欲望を目一杯満たしてくれる"と、手放しで評価する。

ポール・オースターの作品

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