偶然の音楽 (新潮文庫)

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制作 : Paul Auster  柴田 元幸 
  • 新潮社 (2001年11月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451069

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偶然の音楽 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 女房に逃げられたジム・ナッシュであったが、行方知れずだった亡き父より突然20万ドルの遺産を受け取ることになった。
    消防士を辞め、娘を姉に預けて、家や家財道具一式を売り払いナッシュがしたことは・・・。赤いサーブを買ってアメリカ全土を疾走することであった。
    来る日も来る日も理由もなく当てもなく車を走らせるナッシュ。
    一年経ち、遺産の残りも少なくなってきた頃、ある道端で拾ったのは若い相棒ジャック・ポッツィであった。ポーカーが大得意だと言うポッツィの話に乗せられる形でナッシュはポーカーの大勝負にのぞむ・・・。

    ここまでだけならアメリカン・ニューシネマのノリだなとか、ポーカーの大勝負のくだりになるとハリウッドスター向けのストーリーだなとか、そういう映画的な雰囲気が満載の出だしで、ポール・オースターにしてはエンターエインメント系の映像主体の物語かなと思っていたら、ポーカーの大勝負前後にかけてだんだんとポール・オースターらしいシュールな世界観が満たされてきて、これだよこれ!という感じで期待通りのアンビリーバボーの世界に浸ることができた。(笑)

    次第にあり得るべかざる状況と結果に追い込まれていくナッシュとポッツィ。
    彼らそれぞれの生い立ちの背景に加えて、掴みどころのない大富豪のストーンとフラワーの生い立ちまで掘り下げて印象づけることで、登場人物それぞれの性格描写にメリハリがあり、物語の展開も丁寧に丁寧に進めていくので、冷静に考えれば突拍子もない展開であるにもかかわらず、物語の進行のままに割と素直にその世界に入っていくことができたと思う。
    さらに壁を作る場面では、ナッシュとポッツィ自身の葛藤や彼らの関係や距離感などの心理描写が一層細やかになり、また、2人の大富豪は目に見えない存在となるとともに監督官のマークスの登場、そして次第に明らかになっていくナッシュとポッツィの状況いう心憎いばかりの設定がこれまた面白く、シュールな状況であるにもかかわらず割と現実味のある感覚として自然に受け入れられた。
    シュールな世界の中の主人公たちの細やかな心理描写はオースターの真骨頂というべき得意パターンであり、シュールな中にこそ真実を露呈させ炙り出すことができるというオースター文学の魅力が詰め込まれた作品だったともいえる。
    最後にはミステリアスな状況も生まれ、これもオースターの得意パターンといえるが、今作品では投げっ放し感も半端なく、それゆえ、どう解釈すべきだったのかの人それぞれの余韻も大きい。
    本作品は映画的センスが強く感じられ映画化しても良いのではと思っていたら、解説によるとすでに映画化済みだったのね。

  • いやあ面白かった。主人公の心象風景がさくさくと変わるのに違和感なく読める。それがこの著者の神髄なのではないかとさえ思う。暫くオースターにはまりそう。

  • 石を積み上げて壁を作る行為が何のメタファーなのかと、
    ずっと考えながら読んだ。
    読後は虚脱、脱力した。
    安部公房の「砂の女」に相通ずるものが少しある気がした。

  • 妻に去られた後、三十年以上会っていなかった父の遺産を得たナッシュは、赤いサーブを購入し、すべてを捨てて目的の無い旅に出た。
    そして十三ヶ月目に入って三日目、夏の終わりの朝、田園風景の中で痩せっぽちでひどい怪我をした青年・ジャックを拾う。
    それは車を走らせ続ける日々の終わりの必然、別の何かがはじまろうとしている予感だった。

    しかし、救済を求めながらも墜落へと突き進むナッシュと博打の天才ジャックの偶然の出会いは、彼らを容赦なく理不尽で閉塞的な空間へと追い遣ってゆく──。


    動くことをやめ、他人と関わり始めた時、人はどのような選択をし、自分と他人の運命を決めるのか。
    『ルル・オン・ザ・ブリッジ』などで著名な八十年代のアメリカ文学の旗手が贈る、明日を望みながら絶望へとひた走る衝動と虚脱感に満ちた男たちの物語。

  • 人生に行き詰まるとアメリカ人はとりあえず車を走らせるものらしい。
    主人公が目的もなく車を走らせ続ける所がいかにもアメリカ的だと思った。
    日本人は部屋に引きこもるか、車を駆っても島国だからすぐ崖にぶちあたって昼ドラ展開もしくは演歌になる。
    車というのは要するに動くひきこもり空間なんだなと。アメリカ人は引きこもるにしてもエネルギッシュで大仰だなぁと。
    相方のポーカー師ポッツィがとても魅力的。
    ジャック・ポットという名前と小柄な体躯、跳ねるように生き生きとした肉体のリズム、それらからトランプに描かれた道化師のような印象の男だと思った。
    主人公ナッシュを人生の賭けに誘う為に現れた道化師、それがポッツィのこの物語において与えられた役割だと思う。
    感想を一言で言うなら男性版「テルマ&ルイーズ」という感じ。
    最後にはポッツィと主人公ナッシュ二人ともにとても憐憫の情を覚える。
    この小説のラストはぼかされていて、ナッシュとポッツィともに結局の所どうなったのかの判断は読者にゆだねられている。
    私はなんとなくポッツィは生きていると思う。

  • 偶然というのは止めることはできない。
    なりはじめた音楽のように。

  • 途中までは、ドラマ性にワクワクしていたのだ。
    終わりの三分の一ほど、空間の開放感とは対照的に、閉鎖的な精神状態からくる停滞感や、そんな状況に置かれた主人公の、他者への疑心暗鬼からくる不安定な情緒に振り回されまくり、ヘトヘトになった。
    かといって十分にその疲労感を楽しめたというか、言葉では説明し難いが、とても珍しい読書体験だった。

  • 最初から,予定されていたように破滅に向かっていく様が哀しく,感じる

  • 読み終わって、どう思えばいいのかがわからなかった。
    ナッシュは死んでしまったの?それとも事故に遭ったけど生きてるの?
    ポッツィはどうなったのか?本当にナッシュが想像している通りの出来事があったのか?
    わからん!
    個人的には、二人が壁を建設していって、達成感を味わっているところを意外と楽しんで読んだ。
    ポーカーのルールは全く知らないけれど大丈夫だった。

  • なんと読み始めてから読了まで5ヶ月.間に体調が悪かった時期があるにせよ、なんとも進まない本だった。
    もうこういう話はいいかな。他に読むものもあるしね。

  •  “運命は斯く扉を叩く―”

     突如として巨額の遺産を手にした主人公はアメリカ中を周る自由奔放な旅に出る。13ヶ月と3日経った夏の終わりの朝、瀕死の重傷を負った博打の天才を救ったことをきっかけに彼らの音楽は鳴り始める。

     「望みのないものにしか興味が持てなくてね」ナッシュ

     残り物には福がある?己とは正反対のものや誰もが見向きもしなくなったものにこそ、時には風向きを変える端緒があるかもしれません。

     「あんただよ。あんたがリズムを壊したんだ」ポッツィ

     全てが上手くいっていたのに些細な不和で流れが崩れ去るような感覚は誰しもあると思います。悪戯に調和を乱すのは宇宙にちょっかいを出すようなもの。

     「自分の中に抱えておる過去を弔う歌を歌うのです」フラワー

     今自分の周りに流れる調べは、これまで生きてきた中で徐々に創り上げられてきた音楽。たとえどんな雑音が混じっていたとしても、他人と触れ合えばそれは隠すことのできない響動めきになります。

     各々の旋律が絡み合うことで響き渡る悲喜劇。エンターテインメントという言葉だけでは語り尽くせない不合理さと奇想天外な脈絡、そして衝撃的な終止符まで。悲喜交交いくつもの人生が込められた美しい物語。日本でもミュージカル化されてます。

     そんなお話。

  • ポール・オースター作品の初読書。聞いていたほどの衝撃とか読後感があったわけではなかったが、面白く一気に読み終えてしまった。
    あとがきに原作後の解釈を読者に委ねている云々とあるが、そういう部分が多すぎるような気もする。
    それが小説としていいのかはわからないけど、個人的にはわだかまりというか、奥歯に何か残ったような感覚で終わってしまった感がある。
    柴田元幸さんの訳も大層評価がいいみたいだが、読んでいて違和感というか、これをこう訳すのかという部分が多々あってなんともはっきりしなかった。

    自分が他人におすすめはしないだろうなと思わされた一冊。

  • 様々な偶然が物質的にも時間的にも重なりあって物語が進んでいき、ナッシュはある意味自らを襲う偶然や衝動というもののなすがまま、身をまかせて受け入れる人間である。一方でポッツィはそういうものに対抗し「そうでなければならない」ということを重んじる。どちらのたどる運命も救いがないように思われるけれど、そこに至る道は違っている。一方で、ポッツィに出会ってからのナッシュが解き放たれたように2人の時間を過ごしていたように、2人が2人いてはじめて安定した状態になるともいえる。最近ナッシュに寄っている自分なりに共感できた。

  • 莫大な遺産を手に入れ、仕事を辞めあてもない旅に出る主人公。しかし遺産がつきかけたころ賭けによって財産を全て失い借金を背負う。借金返済のために来る日も来る日も石を積み上げる。積んでも積んでも先の見えない作業は不条理感と閉塞感が漂う。ラストシーンの衝撃は凄い。ひと山あてて大儲けして、悪い奴らぶったおす結末になると思ってただけに。2013/226

  • 映画にするなら、ポッツィは若いときのルパートフレンドに演じてほしい。

  • ポール・オースターの作品は本国アメリカではLiterary fictionと呼ばれているらしい。柴田元幸氏(本書の翻訳者でもある)によれば、アメリカの純文学作家で10万部単位で本を売ることができるのはジョン・アーヴィングとこのオースターくらいのものだとのこと。

    ところで、純文学とエンターテイメントの区別など日本にしか存在しないなんて言説をたまに耳にするけれど、そんなことはなく、海外でもその二つはきっちりと区分けされている。それならば、エンタメ作品並みの売り上げを誇るオースターの小説は純文学なのか? そもそも純文学とは何なのか? と問われると答えに困るのだが……いや、実は困らない。
    たとえば本書の後半ではひたすら石を積み上げるだけの場面が展開される。ただそれだけのことなのに、とても面白い。
    それではそんなことの何が面白いのか。どう面白いのか。
    それを他人にどう説明すればいい?

    要するに、そういうことだ。

  • 不思議な読後感の小説だった。
    妻や友人を失った心の空洞を埋めるために移動することだけを繰り返しているかのような主人公。
    その人の心中を克明に追体験するようだった。
    決して主人公に感情移入できないのだけれど、中盤以降ぐいぐい惹きつけられた。
    その力って何なのだろう。読み終わってからもずっとそれが気になっている。

  •  良い具合に気の滅入る物語だった。
     ナッシュもジャックも愛したくなる部分があって、可愛らしくて、読んでてとても好きになっていくのに、どうしてその好きになった人らの破滅を見なければならんのか。
     判断は悪い結果に繋がって、偶然は期待を打ち砕く、なんともしんどいお話だった。

     ラストの、ナッシュの憎しみとマークス一家の鈍さにぞっとした。
     たぶん、無意識のうちにマークスになっている人は案外多いんじゃないかと思う。相手の憎しみに気付かないで、親身になって接する。そこに確かに優しさはあって、だけどあったところで何の意味もなさないのだ。
     ポッツィをやったのはだれなのか、フラワーとストーンはどうしたのか、ラストは投げっぱなしでなにもわからなくて、だけど私は、最後にアクセルを踏んだナッシュをとても愛しく思った。

  • ポール・オースターにしては、分かりやすく、意味が取りやすい。

  • 乾いた砂の匂いのする、ざらざらとした感触の、投げやりな主人公の皮肉なジョークの飛び交う、どこか地に足がつかないような不安定な、アメリカの小説、しかも訳が良いやつ、ないかな〜と思っていたまさにその時に、そう心から求めてやまなかった小説と出会えて、幸せでした……。まさに小石が坂道を転がり落ちてゆくようだった。どうしようもないやつらを見ているのに、ずっとどうしようもなく切なかった。読み終わった後は呆然としてしまった。

  • 『ムーン・パレス』の後に書かれた作品。前半はボストンをスタート地点に中西部からカリフォルニア、また南部へとひたすらに車で駆け抜ける物語。一転して後半は、ペンシルヴァニアの田舎に定点を据え、そこで物語が展開する。前半もバークレイで昔馴染みの女性との数日間の接触はあるものの、それにしても人間関係は希薄だ。それ以外は一人で車を駆るのだから。後半にしても、基本的には主人公のナッシュの孤立と孤独は深い。現在のアメリカ人が抱える孤独を彼が体現しているのだろうか。小説のエンディングには呆然とするばかりだ。

  • 読書会の課題図書。

    とても面白かった。
    文体やトーンも心地いい。

    壁を作っていく場面が特に好きだ。
    体験してみてもいいとすら思った。

    ラストはとても自然に思えた。
    ナッシュはもっと早く死んでもおかしくない生き方をしていたし、
    ここまで死ななかったのが逆に不思議なぐらいだった。
    ナッシュは深層的な破滅型であって、逆にポッツィのほうが慎重派だろう。

    ポッツィには好感を持つ。

    「今でもそのときのアイスキャンディーをずっと持っているような気がする」
    というセリフがとても印象に残っている。
    うまく説明はできないが、そう言われれば僕も何かを持っているような気がする。

    「ささいな偶然の連続によって人生は成り立っている」ということは周知の事実であろうが、
    それを改めて認識させられる。

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妻に去られたナッシュに、突然20万ドルの遺産が転がり込んだ。すべてを捨てて目的のない旅に出た彼は、まる一年赤いサーブを駆ってアメリカ全土を回り、"十三ヵ月目に入って三日目"に謎の若者ポッツィと出会った。"望みのないものにしか興味の持てない"ナッシュと、博打の天才の若者が辿る数奇な運命。現代アメリカ文学の旗手が送る、理不尽な衝撃と虚脱感に満ちた物語。

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