ナショナル・ストーリー・プロジェクト Ⅰ (新潮文庫)

著者 :
制作 : ポールオースター 
  • 新潮社
3.56
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本棚登録 : 899
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451113

感想・レビュー・書評

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  • 「私は完璧であったことはありませんが、私は現実なのです」という言葉に導かれるように。KKKの先頭に立つ人物が誰か暴いてしまった犬。屋根裏で見つかったO・ヘンリーの未発見の草稿。高級車に乗って送り迎えされていたのをいつも見るだけで手出ししてこなかった悪ガキ、家業が傾き徒歩通学になり彼らの仲間になれると思った途端に、ボコボコにされた男の子。沖縄人に盗まれたと思って万年筆を差し出させたが、のちに自分の部屋から見つかったと回顧する米軍人。賢者の贈り物を地でいくような、結婚指輪を売って娘にねだられた服を買った母。母が亡くなって一家で避難してきた海辺。理屈もなにもない母の強烈なひとこと、「お金のために食べられたんだから、ただでも食べられるでしょ」。裁判で親権を取り戻そうとあらんかぎりの誹謗をつくす弁護士の夫に打ち勝った、幸せそのものの写真。祖母の葬儀のために、特別に外出を許可され、おじに、「お前はばあちゃんのすべてだった、お前を誰よりも愛していた」と告げられた男。マンハッタンに引っ越してきて三日目のうだるような夏の日の夕方に、祝祭のように近所の人が集まったひとこま。グレイハウンドバスでとなりあって意気投合して、60年間、手紙のやりとりがたえず、60年ぶりに再会し、まる二日間それまでの人生や昔話をかたりあった二人。といったあたりが印象に残った。これがアメリカの語りなのか!と。今、それに引っ張られてか、これが東京の語りなのか!と思いながら「東京の生活史」を読んでます。

  • 嘘みたいなホントのはなし

  • 些細で読み終わるまでに忘れてしまうような話もあれば、ショックで一旦本を閉じてしまう話もある、人生のペーソスが積み上がったバウムクーヘンのような本。どちらかというとつらい。

  • 事実は小説よりも奇なりを往くアメリカの実話。

    ひとつひとつがとても短い。ブログだったりtwitterだったり、そういうSNSでバズる話を読んでいるような感覚かもしれないし、それほど瞬間的な掴みではないとも思う。けれど、これがすべて実話、しかもラジオで話してほしい、電波に乗せて伝えたい、と誰かが書き送った話だと考えると、途方もない気持ちになる。That's Life, これが人生。いつもハッピーエンドとは限らないけれど、捨てたものではない。なんだかザクザクしたダイジェスティブビスケットを食べているような作品だ。

  • 図書館で借りて、少ししか読めないままに返してしまった。また読んでみよう。

  • わたしにはまだ面白さがわからなかった…
    一般人が書いたノンフィクションものをまとめているのだけど、個性がバラバラすぎて振り回されて集中できず

  • 39813

  • 文学

  • (01)
    物語たちの半分ほどを読み進めた頃,ふと柳田國男の遠野物語のことを思い出した.本書は,読み方によっては現代アメリカの遠野物語になるのかもしれない.
    泣ける話,笑える話にも事欠かないが,それ以上に奇妙な話(*02),奇跡的な話に驚かされ,それらの物語は,人物や物事の先や上にある何物か,それはおそらく原題には残る神を示唆するものなのだろう.その意味では,神の跡を示す物語たち,つまり現代の神話篇と呼びたくなるような仕上がりにもなっている.
    なぜラジオなのか,不特定の人々に,不特定の物語を募るプロセスが,神の降誕には必要な手順であり,儀式であったのかもしれない.瞑想の最終話にはラジオならでは啓示性が現れている.

    (02)
    オカルトめいた信仰告白集でもある.リアルなストーリーという点では,2010年前後の日本のテレビに現われた「松本人志のすべらない話」に似通った魔圏が形成されている.
    本当か本当でないか,それは他人によってはもちろん,語る本人や語られる当人にとっても証明することはできない.作り話ではない,が前後関係,因果関係はそれが過去の語りである以上,あとから付け加わる箇所もあり,話として整えられ美化される箇所もあり,信じていたいたいという吐露が言葉に現われる箇所もある.こうして語り手によって時間をかけて織られた文章は,どこに作用するのだろうか.
    本書は,ストーリーやヒストリーという問題系に意欲的に,そして実践的に取り組んだ作品でもある.

  • 購入。単行本を二分割して文庫化。

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著者プロフィール

1954年生まれ。東京大学名誉教授、翻訳家。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、レベッカ・ブラウン、スチュアート・ダイベックなどアメリカ現代作家を中心に翻訳多数。著書に『アメリカン・ナルシス』、訳書にジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』、マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒けん』、エリック・マコーマック『雲』など。講談社エッセイ賞、サントリー学芸賞、日本翻訳文化賞、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。文芸誌『MONKEY』日本語版責任編集、英語版編集。

「2023年 『ブルーノの問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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