ナショナル・ストーリー・プロジェクト Ⅰ (新潮文庫)

著者 :
制作 : ポールオースター 
  • 新潮社
3.56
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本棚登録 : 899
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451113

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  • オースターがアメリカのラジオで一般市民から募集した「あなたに起こった現実の話」を集めたもの。

    4千もの応募作から選んだ170作だけあって、どれも面白い。

    ちょっとしたウィットのような笑える小話。絶望的な悲しい思い出。嘘のようなホントの偶然の話 などなど
    かなりバラエティに富んでいる。

    一つづつの話は、1ページから数ページ。
    作者により語り方も、事実の切り取り方も違う。

    読んでいる時の感覚としては以下のような感じ。

    自分の目の前の椅子に、次々に色々な人が座って自分に話しかける、話は5分程度で終わり、次の人がまたやってくる。
    最初は語り手が男なのか女なのか若いのか年取っているのかも分からない場合もおおい、だから目の前に座った黒い影が語り出し、語っている間に徐々に輪郭が明るくなりその人自身がうっすらと見える。

    小説家が書いた短編集であれば、その小説家のトーンだとか、プロとしての分かりやすい話の運び方によって、ある程度のテイスト、トーンの統一感があるから一つ一つの短編毎を読むのに頭を切り替える必要がない。

    だが、この本は、それぞれの語り手が違うので一つ一つの話を読むのに導入部分にいちいち時間がかかる。
    だから、さっさと読めるない。

    でも、だからこそそ、数ページの中にその人らしさが出ている。そこに惹かれる。

    最初の方の話は、自分がなくしたもの、別れた人と巡り巡って再会する、また出会うというような話も多く、ある意味、人に話したくなるオチのある話が多い。

    一方、小説や「お話し」だったら必要とされるようなドラマだとか、オチがない話も多い。

    それはこの話達が事実からされているから。
    常に現実は地続きで終わりはない(あるとしたら死かな?)、そういうなんだか続いていく人生、現実というものをただ単に切り取ったという話に、その切り取り方に「その人そのもの」「その人とその世界」が表れているように思う作品が多いのだと思う。

    全体的に淡々とあったことを誠実に、そしてセンシティブに注意深く観察された内容が魅力的に語られているような作品が多いと思う。

    そして、教訓めいたメッセージを発するとか、自己主張、自己顕示欲など、話を必要以上に作りこんだような物語がないところが素晴らしい。

    ●私自身が特に惹かれたのは以下。

    なんとも奇妙な、不安感と愛情
    情愛を求めるが、むくわれず、また報われたとしても短く、儚く消えてしまう。喪失感。
    ・別れを告げる
     刑務所に入っている男が親類の葬式参加するために一時的に牢屋を出て、家族に会い、そしてまた別れる、それだけの話。喪失感、家族への思い、家族、人間関係の儚さ。
    ・ハンドバック
     なじみの人が、1か月後なぜかいなくなっている。いままで信じていた世界が一部知らないうちにかわっているような足元がぐらっとしたように感じるような話。

    ・一千ドル
    親子のすれ違い。若いもがきの痛々しさ。

    強権的でいて、滑稽な、絶対権力者の父親
    ・学ばなかった教訓
     しつけの厳しい父親。だけど娘である語り手は
     「あの日パパに教わったのは、責任というものをめぐる教訓ではない」
    ・雛鳥狂騒曲
     小鳥がかわいそうと言いながら周辺の皆を虐げていることは平気。
    ・ヴァーティゴ
     いう事を聞かない馬(ヴァーティゴ)になんとか力ずくで立ち向かう、マッチョ志向の父だが、上手くいかない無力さ。ただし、チャレンジをし続ける。


    不良との小競り合いを淡々と。だけれども何とも言えない空気感と余韻のある話
    ・アンディと蛇

  • 購入。単行本を二分割して文庫化。

  • これ最近、新潮文庫にも入ったんだけど、ポール・オースターがラジオで呼びかけて視聴者が自分の記憶に残る大切な話を書いて送ってくれた4,00以上の中から170くらいの話を選んでラジオで放送したものを活字に起こしたもの。9.11のテロの2日後に出版された、テロと戦う国家アメリカとは全く別のアメリカに触れられる、ちょっといい話・アメリカ版。

    戦争の話、恋愛、喜劇、不思議な縁、死別、いろいろ。心温まる一冊。

  • vol.1とvol.2があります。表紙はvol.1の方。
    ちょっとええはなしやちょっとおもろしろいはなしやちょっとほろっとくるはなしをしたがる人々について考える。だれだってひとつやふたつそういうはなしを持っているものだろう、とわたしは考えるほう。

  • 世界には、物語があふれている。これも卒論で使った。

  • かなーりー長い間読んでました。春ゴロに読み始めた気がするもの。ちょっとしたちょっと不思議だったり、こころがぽっとしたり、きゅっとなったりする実話が納められている。旅行中なんかに読むとぴったりな気がする。なんとなく。見えない力がはたらいていることを信じたくなる本。

  • 元はラジオのために集められた全米の実話たち。最初はオースターが編集しているとはいえ彼の書いたものじゃないしなー、とか思って買ってからずいぶん長い間読まずに放っておいたんですが、ばかでした。人生ってすばらしい!と叫びたくなる最高のお話がつまってました。読んで良かった!!

  • 日々は当たり前じゃない。

  • めちゃくちゃ面白かった。

    すべて実話であるということが、こんなにパワーをもつとは。

    いろんな人に薦めている。

  • 濃い。事実は小説よりも奇なり、というけれどこんなこともあるんだなぁとか、いろいろな感情を味わえた。よかった。

著者プロフィール

1954年生まれ。東京大学名誉教授、翻訳家。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、レベッカ・ブラウン、スチュアート・ダイベックなどアメリカ現代作家を中心に翻訳多数。著書に『アメリカン・ナルシス』、訳書にジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』、マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒けん』、エリック・マコーマック『雲』など。講談社エッセイ賞、サントリー学芸賞、日本翻訳文化賞、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。文芸誌『MONKEY』日本語版責任編集、英語版編集。

「2023年 『ブルーノの問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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