- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102451137
感想・レビュー・書評
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ペットと主人の絆を“人語を理解する老犬”の一人称視点で描く著者随一の異色作。延々続くMr.ボーンズの思索と全十五頁にも亘るウィリーの語りが炸裂する前半戦は(私的に)オースター作品屈指の難関で、読み進めるのに苦戦したが、後半戦は一気に拓けた展開へ突入していく。従来の様なストーリーテリングの技巧は形を潜めている印象だが、犬視点で紡がれる現世の苦難は読者を作品世界へ誘う牽引力を持っている。悲愴的…否、悲壮的なラストシーンは正に氏の真骨頂と言えるのでは。約束の地<ティンブクトゥ>で二人が再び出逢えるのを祈って―。
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視点が斬新で面白い。終始犬の目線で語られている。犬が主人公と言っても可愛らしく癒されるような話ではなく、人生ならぬ犬生についてかなり考えさせられるものだった。また、著者の想像力には驚かされた。エンディングは少し寂しい。代表作とも言われる「ムーン・パレス」 も読んでみよう。訳者柴田さんのあとがきも良い。
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淡々と書いてあるけど、感傷的にならずに読めるわけもなく、この終わり方もまた、私にはきつい。
犬といつも一緒に行動出来ない人間としては、安閑とは読めないラストシーンだった。
小説は仕方が無いとは思うけど、当たり前の変哲のない犬の生活語ったものって、無いのかしらん -
暖かい,平穏な生活を求める,ミスター・ボーンの様子が,とても痛ましく,哀しい
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かわいらしいわんちゃん写真の表紙と、興味のあったポール・オースターということで購入。
猫ブームに押され気味の犬諸君、わたしはわんちゃんも応援しています。
詩人ウイリーの相棒はミスター・ボーンズ。犬だ。
ウイリーの死後のミスター・ボーンズを犬目線で描く。
まとめるとこれだけ。
とても単純。
この本は、犬目線の物語で想像されがちな、犬らしい仕草に溢れた犬好き大喜びなかわいらしい物語、ではない。
ミスター・ボーンズは人間と同じように考え行動している。でも犬だから言葉は話せない。犬としての行動を読ませるのではなく、あくまでミスター・ボーンズは犬の姿をした人間なのだ。そこが犬目線の物語ではあっても、この作品が他と違う点。
飼い主と犬というより男と男。
相棒を亡くしたひとりの男の物語という感じがする。
こう書くと男と犬の友情物語という感じがするがそれだけではない。
ウイリーが行き倒れになり恩師ミセス・スワンソンと再会するところをミスター・ボーンズはハエとなって見ていたりする。
こういう不思議なところがポール・オースターらしいのかもしれない。オースター初読みなのでよくわからないけれど。
ところで、タイトルの意味だが、これは作中できちんと書かれている。
わたしは最初、犬の名前だと思っていた。
ミスター・ボーンズが新しいやさしい飼い主の元で幸せに平穏に暮らすというありふれた結末を期待しつつ、そういう終わり方はしないのだろうとわかって読む。
単純な物語だけに何回か読み重ねると思いも深まってくるように感じた。 -
使われている言葉や表現が私には汚くて受け入れがたく、なかなか物語に入り込めなかった。。
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放浪癖のある主人とその飼い犬の話
読む前には、主人と犬がどう生きていくのか、或いは主人が死んでしまった後、犬がどう生きていくのか、といったことを描いた犬好きに感動を呼び起こさせるような内容の本なのかと思ったが、実際は違った。
読み手が予想するような出来事は上手く避けるように書かれていて、したがって読み手の予想はことごとくシカトされ、新たな展開を上書きすることで読ませているように感じた。
犬に対しての心理描写は上手く書かれていて、多分作者の人は犬が好きなんじゃないだろうかと思った。
こう書くとそこまで面白そうに見えないかもしれないが、おそらくこれは小説に求めるものの違いからくるものだろうと思う。この小説は、技巧的な、つまり読ませる小説であり、私の求めている読み込む小説ではなかったように感じた。