切ってはいけません! 日本人が知らない包茎の真実

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103001317

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  • 正しい知識は身につけよう★

  •  小学校5年生の頃だっただろうか。
     保健の先生による性教育の授業後、女子だけがその場に残され、男子は教室に帰るなり運動場で遊ぶなり好きにして良いと言われた。
     が、このときに男子も別の場所に集められて本書の内容を教えられるべきだろう。

     本書では、世の男子たちが、エロ雑誌の徳利セーターでお馴染みの広告や、親兄弟・先輩から薄ぼんやりとしか教えられない「包茎」について、医学的見地からの正確な情報と、様々な文化的・社会的背景を教えてくれる。

     冒頭からビックリするのが、欧米の包茎にまつわる事情で、アメリカでは一時期乳幼児期の割礼が横行したため、大人になってから「包皮再生手術」を受ける人が一定数いるというのである。かつて愛染恭子が処女膜再生手術を受けた…という話は聞いたことがあるが、その逆は想像だにしなかっただけに衝撃的な話である。

     従来は、ガンの原因になるだとか早漏になるだとか、とかく悪者のように言われてきた包茎。しかし最近では、動物全般が亀頭を包皮により保護されているように、保護の役割があると言われている。また、性交時には余った包皮の中でシャフトが自由に動ける(グライド機構)ことで女性側への負担軽減効果もあると言われているそうだ。
     そして、包皮の特に先端部には亀頭部とは異なる感覚神経が集まっており、これを切除してしまうことで性交時に得られる快感が少なくなるようなのだ。だから、乳幼児期に割礼がなされた人たちは、まるで喪失された自らのアイデンティティを取り戻すかのごとく包皮再生手術を受けるそうである(もちろん、喪われた感覚神経そのものは回復できないが…)。

     日本では、成人の男性器は亀頭が露出しているのが普通であり、勃起時に露出した場合も「仮性包茎」という風に呼ばれている。
     が、欧米では、勃起時に亀頭が露出しない、いわゆる「真性包茎(と嵌頓包茎)」のみが包茎であり、日本で仮性包茎と呼ばれているものはそもそも包茎の範疇でカウントしていないというのである。確かに、日本の包茎手術についても仮性包茎は保険適用外ではある。が、仮性包茎などと概念そのものが存在せず、これが日本独自の観念(しかもそれが美醜意識などの医学的知見に立脚しない観念)だとすると、今までの常識や観念そのものを見直す必要が出てくるだろう。(ちなみにヨーロッパの絵画や彫刻を見てもらえばわかるが、向こうでは包茎を否定的に捉える美意識はほとんどない)

     包茎手術を受けた場合にありがちなこととして、包皮を切り取りすぎたために勃起時につっぱったり痛みを伴うことがある。それもそのはず、そもそも近代西洋で包茎手術が導入された狙いの一つに、キリスト教の価値観のもと、自慰行為の禁止・抑制、要するに余分な包皮を切除することでオナニーをしづらくする、ということがあったそうである。(どこかでみうらじゅんが「ムケてる方が良いっていうけど、絶対皮オナニーの方が気持ちいいよね」と言っていたが、まさに自慰行為と包皮の関係性の本質を突いた発言だったわけである(笑))。
     最近では包皮を残す方向で手術をするそうであるが、下手な医者に切り取られすぎるリスクを考えると、やっぱ受けない方が良いよなぁ…と読んでいて思わされた。

     本書の内容は中学生の段階で教えておくべきである。
     たかがチ○コの皮、されどチ○コの皮、である。ただでさえ思春期の多感な時期なのに、その多感の大きな一因である性衝動の"最前線"について正しい医学的知識がろくに提供されないというのは、やはり問題である。内容が内容だけに人に相談できず、独り悩みに悩んだ末、なけなしのバイト代を握りしめてエロ雑誌の後ろに載っている広告のクリニックに行き、そのカウンセリングで(酷いときには手術台の上で!)「このままでは、手術をしてもあなたは正常な性行為ができない。亀頭にコラーゲンを注射しなければならない」と、言われるままに追加オーダーを了承し、何十万から何百万という費用を負担する被害が…これは別に勝手な妄想をふくらましているのではなく、昔からずっと発生している消費者被害の実例である(「包茎手術 消費者」でググっていただければいくらでもこの手の事例がヒットします)。

     とにかく、本書の知識は広く一般に知られて欲しい。私のような「悲劇」をこれ以上味わって欲しくないからである。
     十八歳になったある日、両親に呼び出された私は、二人の前に正座させられた。真剣な両親の表情に「何事か?」と思う私。そんな私に対し、神妙な顔つきをした親父はこう言った。
    「お前は…その、ちゃんとムケとんのか? もしあかんのなら、手術代は出すから…」
     非常に答えにくいことを直球で尋問され、人生で後にも先にもこれ以上無い、というくらい絶句した。そんな私を更に追い詰めるかのように、父の隣にいた母親は(お母さんは女やからその辺のことようわからんけど、大丈夫なの?)という心配を絵に描いたような表情を浮かべてくる。
     今思いだしても全身に冷や汗をかきそうな、それこそトラウマになるれべるのばつの悪さだった。
     「STOP!切なさの連鎖!!」という観点からも、本書の内容が人口に膾炙することを願ってやまない。

     今現在包茎で悩んでいる男性はもちろん、息子さんをもつ全母親、そして父親にも読んで欲しい一冊です。本書の主張するとおり、「自然が一番」だと私も思います。

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