ノエル―a story of stories

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著者 : 道尾秀介
  • 新潮社 (2012年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003359

ノエル―a story of storiesの感想・レビュー・書評

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  • 美しい表紙の其処此処にふわふわと漂っているタンポポの綿毛のように
    誰かの心からこぼれた励ましや善意や思いやりが
    知らないうちに遠くまで運ばれ、誰かの心に着地し、しっかりと根付いて
    いくつもの幸せな奇跡を呼ぶ。。。

    クリスマスに読み終えようと思っていたのが、ちょっぴりずれ込んでしまったけれど
    もしもクリスマスに、キラキラと輝くツリーの前で
    「大好きな本なんだ。君にも読んでほしくて」 なんて手渡されたら
    それまで意識していなかった相手でも、魔法のように恋に落ちてしまいそうな本です。

    貧しさを理由に執拗ないじめを受ける生徒に、
    強くなるために、何でもいいから物語をつくってごらん、と呼びかける先生。
    その言葉を信じて彼が書き始めた物語は、
    かけがえのない存在となる女性との出会いのきっかけとなり、
    童話作家という、彼の一生を費やすに足る職業へと彼を導き、
    生まれてくるはずの妹を祝福できない少女の心の扉を開く。
    物語に救われた少女の妹は、やっぱりおはなしが大好きなまっすぐな少女になって
    最愛の妻を亡くし、後を追おうとする老人を、この世に繋ぎとめる。

    幸せな奇跡の連鎖は、もっともっと詳しく書きたいくらいあるのだけれど
    それは、これからこの本を手に取るひとのために置いておくとして

    「物語の中で、いろんなものを見て、優しさとか強さとか、いろんなものを知って
    それからまた帰ってくるんだよ」という先生の言葉は
    物語に救われ、心を育まれ、物語の力を信じるひとの心に
    どれだけあたたかく、なつかしく響き渡ることでしょう。

    読み終えたあと、表紙に散らばる色鉛筆も、インコも、カブトムシも、ルーペも
    天使も、トナカイも、月桂樹の葉っぱも、みんな奇跡をつなぐ
    大切なエッセンスだったのだと知って、抱きしめたくなります。

    ノエル。。。ラテン語で、「誕生」。
    クリスマスの朝も、そうじゃない364日の朝も、
    ささやかな奇跡が生まれるかもしれない、手つかずのまっさらな一日の始まり。
    そう素直に信じさせてくれる、素敵な物語です。

  • 「物語」のステキがまたひとつ増える物語でした。

    物語は...
    ・いじめから逃げるように絵本作りを始めた中学生の2人の物語「光の箱」
    ・お母さんのお腹に宿った新しい命「この子」。でも「あの子」と呼ばれる私はどうなるの...不安から逃げるように絵本の世界に入る姉の物語「暗がりの子供」
    ・最愛の妻と始めた物語語り。その妻を失い終わりを見据えていく老人の物語「物語の夕暮れ」
    3つの物語の先にあった「四つのエピローグ」...

    1話目の「光の箱」が良かった。
    クリスマスソング「赤鼻のトナカイ」をベースとした絵本を挟みながら、紡がれていく不幸な2人の中学生がステキに歩んでいく、素敵な話だなぁ...と思ったら暗雲が...もしやこの物語はステキな物語ではなくミステリーホラーだったのか!という伏線が貼られれる。
    そして、ステキに結ばれるはずだと思っていた2人。
    時間が過ぎ去り、女の子の夫の名前には...あ〜...。...。

    読後感がとても良い1つ目の物語。


    2話目、3話目は、物語に挿入される物語が良い。

    2話目「空飛ぶ宝物」に出てくる空飛ぶ宝物ってなんだろうと謎解きを考えながら読み進める。物語の中の物語が何かの暗示を示しているのではないかと思いながら2話目本編も読み進める。
    1話目に続き、またもやミステリーで黒い気配が漂ってくる...道尾さんのダークモードが出てくるのか!?とドキドキしてしまった。
    「空飛ぶ宝物」が最後にうつす空が希望を与えた。

    3話目「かぶと虫」のお話。大好きな ときちゃん に話した物語。
    哀しさたっぷりなんだけど、生きていく強さが最後に残った、私には。

    道尾秀介さんのミステリーものを読んだあとに、本書を読むと、物語をより楽しめますよ、きっと!

  • ああ、またこの手の話か・・・、序盤はそんな思いで読み進めることになった。
    道尾秀介の作品はまだほんのわずかしか読んでいないけれども、どの作品も過去のトラウマにとらわれていたり、心に鉛を抱えている登場人物が多い。それがちょっと読むのにはしんどいなと思っていた。
    今回もその手の話だったら、もう道尾秀介はやめておこうかという気分にさえなった。

    ところが終わってみれば、なんとも心温まる物語だった。
    これこそがまさにタイトル通りのノエルなんだろう。
    物語の世界に逃げるのではなく、物語の世界を通じて優しく強くなる。
    道尾秀介の書く原点がここにあるのかもしれない。

    それにしてもこの作者は30代とは思えない。
    与沢先生が思い返す夜祭の描写なんて昭和初期?
    このあふれだすリアリティはなんだろう。すごい。

  • 肩にまつわる 夏の終わりの風の中 まつりばやしが 今年もまた近づいてくる
    丁度去年のいま頃 二人で 二階の窓にもたれて まつりばやしを見ていたね
    (中島みゆき「まつりばやし」より)

    素敵な物語だった。
    そう、たしかにこれは“小説”というより“ストーリー”、“一つの物語”だ。
    心が洗われるような短編連作集──。
    蓋を開けたとたん、ぎっしり詰まった原石が四方八方に瑞々しい光を放ちだす宝箱だ、この物語は。

    いくつかの話が少しずつ絡まりあうことで、太陽の光に反射して輝きながら流れ落ちる滝のような美しい物語を紡ぎだす。
    紡ぎだされたその場所は、数多くの優しさという言葉で包まれている。
    世の中の人々誰もが、これほど優しい人たちだったなら、どれだけ幸せな世界になるだろうか。
    自分のことはもちろん懸命に取り組むが、それ以上に誰かの役に立ちたいと願う。
    そして、決して感謝の気持ちを忘れない。
    「おはよう!」と挨拶されれば、笑顔で「おはよう!」と答える。
    「ありがとう」と言われれば、「どういたしまして」とにこやかに返す。
    当たり前のことに素直な気持ちで応える。
    誰をも恨まない。誰をも憎まない。
    そんな住人だけの世界だったら、生きることがどれほど楽しいだろうか。

    最も心に響いたのは最後の「物語の夕暮れ」。
    ”昭ちゃん”の切ない郷愁、胸がしめつけられるような”ときちゃん”との想い出。
    その想い出を、大切なものとして自分の胸のうちに封印したいがために、昭ちゃんは敢えて悲しい決断をする。
    けれど、それは周りの人々の温かい心によって救い出される。
    まるで、自分が子どもの頃から描き続けてきた「お話」のように。
    自分のやってきた行いは間違いではなかった。子どもの頃に誓った思いがようやく神様に届いた証だったとでもいうように。
    それは、昭ちゃんの優しい心と他人への思いが生み出した奇跡だったのだろう。

    美しい装丁と相まって、クリスマスの夜に、雪のしんしんと降る音に耳を澄ましながら、暖炉の火に当たり、サンタクロースが訪れる深夜まで静かに読んでいたい。
    そんな思いを抱く美しい物語です。

  • 3つの中篇とさしはさまれる童話で構成された連作集。
    いじめられていた子供が話作りをすることに希望を見出し、作品の一つを読んだ人が‥
    世代の異なる人の思わぬつながりに、心温まる展開に。

    「光の箱」
    同窓会に出るため故郷に戻った童話作家の圭介。
    小学4年のときに初めて童話らしきものを書いたことを思い出す。
    いじめられていた圭介を気にかけてくれた弥生と友達になったこと。
    思わぬ出来事で、弥生とは別れたが‥?
    途中に何度も危機があり、その迫力でうわ、これは怖いミステリなのか?!と冷や汗。
    暗い事件も入るけど、何とハッピーストーリーでした。

    「暗がりの子供」
    雛人形の壇の下に隠れていて、大人の会話を聞いてしまった莉子。
    下に赤ちゃんが生まれることに動揺し、祖母が病気で入院していることでも悩む。
    架空の友達にそそのかされて、大変なことをしでかしそうになるが。
    図書館で借りた『空とぶ宝物』の結末まで読んだとき‥
    知恵がつき始める年齢の危うさが一気に逆転。
    後日談にはほっとします。

    「物語の夕暮れ」
    児童館の「おはなし会」も最後になる。
    与沢は妻の時子を失い、妻と始めた「おはなし会」を続けることも辛くなっていたのだ。
    かって住んでいた家の写真を雑誌で見つけ、そこに住む人に電話をしてみる。その住人とは?
    妻が飼っていた「ときちゃん」というインコを空に放し、自分は‥
    ここにいたる与沢の絶望と、とぎれとぎれにはさまれる与沢が作った童話の重い部分がリンクして、ずしっと印象に残ります。
    結末は~エピローグで、光溢れるお話になるんですけどね!

    3編の後に「四つのエピローグ」があり、その後の話とそれぞれの関連がわかります。
    ほっとさせてくれる結末。
    こんな話を書いてくれる作家さんになったんですねえ。
    ノエルはクリスマスのことですが、もとはラテン語で「誕生」という意味だそう。この指摘にも作者の思いが表れているようです。

  • ストーリーセラーで読んだ「光の箱」の世界を受け継いだ連作短編集。
    圭介の童話がそれぞれの話のモチーフになっていて、重くてダークな展開を見せますが、最終的には明るい光の中へ戻ってきます。

    入院中の祖母がないがしろにされているようで、おなかの赤ちゃんばかり大切にされているようで、童話の世界に逃避してしまう莉子。
    妻に先立たれ、彼女を幸せにした自身もなく生きる力をなくしてしまった与沢。
    物語を語ることは、逃避じゃなくて自分を知り世界を変える手段
    というのが素敵だなと思う。

    エピローグがとてもしみじみといい余韻になって、もう一度プロローグを読むと幸せな気持ちになります。

  • 「光の箱」「暗がりの子供」「物語の夕暮れ」の3編のチェーン・ストーリー。温かい気持ちになれました。
    改めて表紙を覗いてフフフと微笑んじゃいました。
    最後のお話は感動しました。そして、元教師の与沢さんのカブト虫とやもりとホタルのお話にほっこりさせられました。
    素敵な1冊でした♪

  • すこしずつ世界が絡み合っていく、チェーン・ストーリー。
    作中作も、物語も、どこかせつない響き。
    だけど、ただつらい思いだけじゃなく、前向きになれる何かが秘められている。
    読了後、冒頭の物語の意味が、はっきりと分かる。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/a-story-of-stor.html

  •  登場した童話もとてもよかった。絵本として読んでみたい。

     「え?そんな……」と思ったら悲観したのとは逆だった、というのはラストだけではないのに、
    ラストも「え?そんな……」と思わされてしまった。
     さすがです。

     先生が昔住んでいた家を買ったのが教え子で、
    その教え子は先生がきっかけで作家になっていて
    だから先生の突然の奇妙なお願いもきいた、というつながりがいい。
    四つのエピローグ。なんという美しいまとまり。

     どうしたって最後まで読んでしまう一冊。

  • 3つの短編がそれぞれ絡み合っている連作短編集となっている。
    一番始めの『光の箱』がとても良かった。
    長編で感じたような“騙された感”を体感できます。
    友だちのマサキがなぜ片仮名表記だったのか・・・とか
    車にぶつかった場面とか読み進めてみれば なーるほどなんだけど
    そこにいたるまでがドキドキハラハラで。しっかりと道尾さんの思うツボでした^^;
    二番目の『暗がりの子供』では道尾さんの言葉のトリックに今度はひっかからなかったけど
    大人の会話を子どもが盗み聞きして 親を冷ややかにとらえ始める莉子ちゃん。ミステリ部分よりも彼女の心の成長が感慨深い。
    三番目の『物語の夕暮れ』は愛妻を亡くして悲しみに暮れる老人・与沢の人生の選択の話。
    私は本編よりも中に織り込まれた与沢の作ったカブト虫の話にじーんときてしまった。
    3つの話、それぞれの人たちの人生が混じり合って優しく溶け合って互いを労わっているような気がして 温かい気持ちになるラストだったと思う。

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ノエル―a story of storiesの作品紹介

物語をつくってごらん。きっと、自分の望む世界が開けるから――理不尽な暴力を躱(かわ)すために、絵本作りを始めた中学生の男女。妹の誕生と祖母の病で不安に陥り、絵本に救いをもとめる少女。最愛の妻を亡くし、生き甲斐を見失った老境の元教師。それぞれの切ない人生を「物語」が変えていく……どうしようもない現実に舞い降りた、奇跡のようなチェーン・ストーリー。最も美しく劇的な道尾マジック!

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