貘の檻

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著者 : 道尾秀介
  • 新潮社 (2014年4月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003366

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貘の檻の感想・レビュー・書評

  • なんていえばいいのだろう、このやるせなさを。
    誰かを強く思う、ということは、ほかの誰かを切り捨てるということなのか。
    誰かを大切に守り抜くためには、ほかの誰かを傷つけることも厭わない、それが人間というものの性なのか。

    読んでいるあいだ、ずっと土のにおいがしていた、それも湿った土のにおいが。
    都会の乾いた世界にはない、重くて湿度の高い「ヒトの思い」が土のにおいを運んでくるのだろうか。

    初期のころの道尾さんの作品を思い出させる物語で、好き嫌いが分かれるかもしれないけれど、私はこの重苦しくて不思議でじわじわと心にのしかかってくる世界にたっぷりと浸らせていただきました。

    愛は善悪という基準でははかることができないものなのだ、とつくづく思った。

  • 先日NHK BSで八つ墓村を紹介していた番組で、コメンテーターとして出演していた道尾さんが、全く意識せずにこの作品を書いたのに影響を受けていたのでしょうかと言われていたので読んでみた。実際そう思って読むと八つ墓村を彷彿とさせるところが随所にあった。なかなか面白かった。

  • 道尾作品を全部読んでる訳じゃないけど、これは現時点でベストの出来では。
    父の事件で母と村を追われ、長じてからは悪夢に振り回され、離婚に自殺衝動にと散々な主人公には気の毒なだけど、過去の事件と現在の事件に絡め取られ、でも何気に父子の交流もあり、いい味出してる三ツ森が実は大黒幕だったり、地味にお母さんがスゴイ行動派だったり。
    まあ、三ツ森の描写や言動がどうも若過ぎて、半世代年上と感じにくいとか(こういうのは、君づけと敬語じゃ、片付かん〜)、そもそも美禰子の復讐する気が本気であるなら、絶対に父と兄に振り回される地元より、都会でやろ、という気はするが。

  • 『薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具仕立てを駆使したトリックで驚愕の世界に誘う』という帯の謳い文句に偽りなし。ホラーっぽいが王道ミステリで読み応えは抜群。というか、もはや純文学の領域。
    方言がとても良い具合。傑作。

  • 暗めのミステリーです。
    ちょっと重かったけど続きが気になり一気読みでした。
    重いなと思いながら最後まで読んで、ほんと最後の最後に子供の温もりにやられました~。最後いいね!

  • 元妻に引き取られた息子との「最後の」日々を、主人公は生まれ故郷で過ごすことにした。そのひとつの端緒には、彼に縁の深い女性が目の前で死んだことがあった。悪夢に悩まされつつ故郷へ訪れた彼が遭遇する新たな事件と、過去の真実、そして夢の意味するものとは…。
    という物語、幻想味を大目に含みつつ、閉鎖性のある田舎の風情を丁寧に描きながら、幾重にも絡まった糸の隙間を慎重にあけていくように、徐々に真実を明らかにしていきます。
    夢の部分には抽象的な描写が多く、それをちゃんと理解できたかとはいえないのですが(なさけない)それでもそこにある異常、畏れ、不可解を感じ取れるので、読み進むうちに、じわじわと主人公の感じている怖れを理解できてきます。閉鎖的状況が呼び起こす孤立感、というんでしょうか、「逃げ場のない」恐ろしさがだんだんと引き立ってきました。
    そしてひとつの軸でもある息子と父の絆の描き方がほろ苦く、いとしくもなりました。終盤ではどうにか希望ある未来が待っていてほしいと願うばかりでした。
    事件はかなり大がかりともいえるもので、ただそれは何人もの人の思い違いが含まれていたので、かなり虚しく切なく感じさせられました。悪人がそこにいたわけではない事件は、どうしてもそういう複雑な感覚をあとに残します。
    幻想に踊らされつつ、ロジックに驚く、そんな読みがいのあるミステリでした。

  • 好きだわ。
    この作品に終始漂う、ほのかだけど決して無視できない、
    くら~い、じと~っとした空気とか。

    道尾さんの文章が好きだな。
    読み進めるのに易しく、だけど味わえばすごく練ってあるのがわかるし、絶妙。

    時々、本を読んでいて内容じゃなくて文章に恋をすることがある。
    このセンテンスの絶妙さ!とか、
    言葉づかい語彙選びゴロの良さがもうどんぴしゃで好みとか。

    一読するとするる~っと流れちゃうんだけど(質の良い文章なので)
    何か引っかかり1行戻ってその魅力に気づく、というような。

    この本にもそんな、私が恋した一文があった。
    それは物語に強く影響を及ぼすとか、衝撃的な内容とか、
    そういうこととは全く関係がないもの。

    もったいないから胸にしまっとこー。


    あ、あとタイトルと装丁のセンスも好みでした!

  • じつに居心地の悪い話であった。(褒め言葉)

  • 過去に見た忌まわしい現実が精神のバランスを崩壊させる。時を経ても消えない現実逃避の悪夢。ひたひたと心を蝕み翻弄する。個人の力ではどうすることもできない理不尽と圧倒的な絶望感。押しつぶされそうになりながらも自らに決着をつけるべく懸命に道を模索する。人は弱いが強くもなれる。すべてを成し遂げ静かに安らかに目を閉じる主人公が印象的であった。

  • (No.14-13) ミステリです。

    『大槇辰男は一年前に離婚。小学生の息子・俊也とは月に一度会っている。その面会日の帰りの駅のホームで女性が辰男を見ていた。彼女の身体が傾き入ってくる電車の前に転落。その時も彼女は辰男を見ていた。あの人だ・・・。

    辰男は子供の頃、ある事件で父を亡くしている。その後母と辰男は母の実家に戻り、姓も母の姓に変えた。記憶に蓋をして成長した辰男は、あの時何があったのか分からなくなっていた。息子の俊也があの頃の辰男の年齢に近づいたためか、辰男は悪夢を見たり何か聞いたりするようになり心を病み、それが離婚につながった。

    元妻から勤務の関係で、学校が休みの間俊也を預かって欲しいと頼まれた辰男は、俊也を連れて故郷を訪問することにした。
    あの人は何故あの時駅のホームにいたのか、かつて何が起こったのか、聞こえてくる音は・・・。
    過去と向き会うつもりだ。その時を俊也とともに過ごしたい。』

    ストーリーの合間合間に出てくる悪夢。目が覚めると辰男は忘れているらしいのですが、いったいその夢にどういう意味があるのか、何故そういう夢を見るのか気になって仕方ありませんでした。
    辰男は、思い出したくないけれど、思い出したい。思い出したいけれど、思い出すのは怖い。矛盾しているようですが、きっとそういう気持ちなのでしょう。

    皆が少しずつ、誤解したり勘違いしたり軽い気持ちで何かやってしまったりして、過去に悲劇の連鎖が起こりました。
    落ち着かない気持ちで、のめりこむように読みました。

    父に保護される立場の俊也が、ある時から父を守ろうと変わっていきます。大丈夫かな?無理やり成長してしまって。でも、そうだね、子供でも大事なことにちゃんと向き合う方が、真実を隠されて不安なまま大人になるよりきっと良いのだと信じたい。
    そうでないと辰男の苦しみを俊也が再現しかねないから。

    途中かなり暗かったし読後感は爽やかとまではいきませんが、何か救いを感じて最後にはちょっと気持ちが軽くなりました。

    一気読みして満足しました。

  •  近年、自らの作品をミステリーではないと殊更に強調していた道尾秀介さんだが、久々に正真正銘の本格ミステリーが届けられた。

     「悪夢」にうなされ、妻と離婚し、職も失った男。月に一度の息子との面会の帰り、女が電車に轢かれるのを目撃してしまう。男は、その女に見覚えがあった。32年前、生まれ故郷の信州の寒村で発生した、忌まわしい事件の記憶が呼び起される…。

     狭い村である。32年前に父が関わった事件により、男はいじめられ、やがて母と共に転居を余儀なくされた。今では薬を手放せない男が、あの女の死を目の当たりにしなければ、32年ぶりに故郷に足を踏み入れることはなかっただろう。

     まず、村の舞台設定が大変よい。かつて村の偉人によって築かれた地下水路が残る。ダムが完成し、地下水路は使われなくなったが、現在でも偉人を偲び、その命日には放水が行われる。32年前の事件は、この地下水路を抜きには語れない。

     このおどろおどろしい雰囲気は、道尾作品では『骸の爪』以来か。地元在住の友人が何かと世話を焼いてくれるが、男が32年前の関係者と知られると、滞在が難しくなる。迷惑はかけられない。一旦村を出ようとしたとき、男に降りかかった事件とは…。

     そんな本作が極端に暗くなっていないのは、写真家を名乗るある人物の存在が大きい。彼のひらめきがなければ、最悪の事態になっていただろう。立役者と言える、訛り混じりに話す名人。田舎に閉鎖的な面はあるが、本質的に温かい。

     全体の構図は緻密にして明快。それぞれがちょっとずつボタンを掛け違えた結果、とだけ書いておきたい。それぞれ、根底にあるのは愛。しかし、愛の形を曲解してしまった。それだけに、こうなるしかなかったのか、悲しみが募る。

     ところどころ挿入される悪夢の描写は、すべて解明されてみれば、なるほど意味がわかる。男は悪夢を振り払うことができたのか。そしてこれからどうするのだろう。新たに負った傷はあまりに深い。それでも、男には前を向かなければならない理由がある。

  • 自分ではどうしようもないことで不遇な状況に置かれる人、というのが、この著者の作品にはよく出てくる気がする。
    特に子どもは、圧倒的にそういう境遇が多い。そこに著者の価値観を感じることもある。
    本作も、どうしようもない環境が生み出した悲劇の物語。
    何かことが起きた時に、隠したり、なかったことにしたり、ウヤムヤにしてしまう。そうやって、目を背けたこと、隠したことは必ず後になって問題を起こす。
    逃げないで、すべてを明白にすることが結局は幸福につながると理屈ではわかっていても、どうしても人は姑息な手段に走ってしまう。だから悲劇が絶えない。
    この作品の主人公も、「逃げる男」である。いろんなことを隠し、ごまかし、目を背けて生きてきた。
    最後の最後で、わずかな救いが訪れるけれども、読んでいる間じゅうずっと、重苦しい気持ちになった。
    「言わないこと」「隠していること」が生み出すすれ違いは、大きな不幸の元になる。
    まあ、それが人間の本質なのかもしれないが。

    読み終わってから「あ、これ、ミステリーだったんだ」と初めて気づいた。
    人の心の謎、という意味では確かにミステリーだったが、トリックの存在はよくわからなかった。

  • 3.0 好きな作家の一人なのですが今回は期待外れ。て言うか最近は外れてばかり。直木賞取ってからつまんなくなったかも。真備シリーズを待つ。

  • あらすじ
    主人公は離婚し、子供には定期的にしか会えない男性。かつては寒村に住んでいたが、父が起こした事件によって引っ越した。今は過去にとらわれ、それを忘れるために薬を不正に飲み続けている。32年前に殺されたと思われた女性が線路に落ちるところを目撃し、過去をたどるため村に戻る…。

    設定は少し前かな。現代だけど、携帯もネットも使われてなかったし。2大名家や祭りとか、村ミステリーで楽しめた。

  • 入り込むのに時間がかかりました。
    情景描写がさすが。
    長野県の寒村や、山にある穴堰が目に浮かびました。

    ちょっとした思い込みや誤解、
    言葉の足りなさが悲劇を生むという
    今までの道尾作品にもあるテーマでした。
    新しさはなかったかなぁ。

    あやねさん、いいキャラなのでまた出てきてほしい。

  • 2月-6。3.5点。
    父親が起こした殺人事件の関係者、女性が主人公の
    目の前で電車に轢かれ死亡する。
    離婚し元妻と暮らす息子と、故郷へ戻るが、過去の事件の
    しがらみが。
    息子の誘拐事件、母親の死と、立て続けに事件が。
    面白かったが、暗い。

    途中まで進みが遅く、終盤で一気に謎解きが。
    もうちょっとバランスが良ければ。

  • ど田舎の設定の為、方言だらけで読みづらく読み終わるまで時間がかかった。

  • ずっと読みたかった本で、やっと読めました‼

    三十二年前、父親が起こした事件で殺されたはずの女が目の前で死んだ。
    悪夢に喰われそうな辰男は、真相を知るため、自分に区切りをつけるため、息子の俊也を連れて以前住んでいたO村を訪れるが、そこで。。。

    事件の真相はとても哀しい。すべてが少しずれてたから。勘違い、言葉が足りなかった。ほんの少しのずれが人生を狂わせることを思い知らされた。
    そしてそこに巻き込まれた人々は大きな闇や秘密を抱え、日々を過ごすことになるのだと感じた。

    辰男の夢の描写はとても不気味で、頭にこびりついて落ちないような怖さがあった。自分はこれまで夢や音、声に苦しめられたことがない。どれほどなのか。

    道尾さんの作品を読むと、その人間描写に心をえぐられることが多い。時には共感し、時には疑問を感じ、時には傷み。
    本作品もその雰囲気というか、色にどんどん引き込まれた。最近読んだ道尾作品とは、色が異なり重さと圧力がある。

    もう少し歳を重ねてからもう一度読みたい。

  • 長野県O村で起こった32年前の出来事は,農業組合長の檜場宗悟の死体が発見され,大槇辰男の父石塚充蔵,曾木美禰子が失踪し,程なく充蔵の死体が見つかったものだった.村には三ツ森六郎実允が水を確保するために掘削した穴堰があったが今は使われていない.離婚した辰男は母と住んでいるが,持病がありその薬で変な夢を見ることが多い.ある日たまたま駅で美禰子が列車に飛び込むのを目撃する.昔の事件の真相を知りたいとの思いもあり,元妻から息子の俊也をしばらく預かって欲しいとの依頼があったので,O村に出掛けることにし,三ツ森塔士の好意で三ツ森家に逗留した.途中でカメラマンの彩音に会うが村のことをよく知っていた.村の見物などで時間を潰していたが,俊也が行方不明になり話が展開する.俊也は穴堰の息抜き穴に放り込まれていたが無事保護され,クロスズメバチを使った穴の捜索で,目隠しに使われた信州紬が出てくる.最後に塔士が全体像を告白するが,急転直下で謎解きがなされるのはやや興醒めだった.

  • 読み終わって、タイトルは上手いなぁと思った。
    主人公が観る悪夢、その一つ一つが、時にはすぐに現実に反映され、時には最後まで夢の解釈は引きのばされ。
    クライマックスで悪夢の全てに意味づけがなされた時、物語の謎が解明される。
    まさに悪夢を食う話、「獏の檻」なのである。

    ただ、構成とタイトルの技は冴えているものの、肝心の物語にあまり引きこまれない。読み手の俺が悪いのか、道尾ワールドには引きこまれてしまう時と、妙に冷めてしまう時とがあって今回は後者。普通の社会派ミステリーなのに、世界観で過分にドロドロさせた結果、読後に胃がもたれた…みたいな違和感。しばらく道尾はエエかな。

  • なんて壮大なボタンの掛け違え…
    "祟りじゃあ〜"の声がどこからか聞こえて来そうな懐古的ミステリーは主人公の一人語りはもとより脳を患った父の殺人や訳ありのヒロイン、そして謎を暴く青年の存在などまるで八つ墓村のオマージュじゃないかと思うのは私だけではないだろう。
    でもそれはそれとしてちょっと難しすぎたんじゃないかな、あちらこちらに張り巡らせた伏線はキチッと回収されているしテクニック的には流石と唸るしかないのだがそこに至るまでにはチャート図を必要とするくらいの複雑さ。
    やはり大衆娯楽はシンプルじゃないとダメだと思うのだがいかがかな道尾クン、アンタならそれが出来る筈だぜ

  • 最後がわからなかった。三森は誰やってん

  • 最近エッセイを読んでいたころもありますが、
    久しぶりに骨太の小説を読みました。
    途中で推理しますが、思ったより、思った以上に入り組んでいて驚愕。
    さすがの道尾さんのお話です。

  • #読了。
    大槇は離婚後別々に暮らす息子に久しぶりに会った帰り、女性が駅のホームから転落する事故を目撃する。彼女は32年前、父親が殺したとされ行方不明になっていた女性だった。元妻から子供を預かって欲しいとの連絡を受けた大槇は、かつて住んでいたO村へと向かい真相を知ろうとするが・・・
    ちょっとした勘違いや思い込みから、負の連鎖が始まる様子は見事に描かれている。作品自体の文章量が多いのに加え全体的なトーンが暗いこともあり、残念ながらこのパターンはまだ続くのか?と思ってしまうことも。トリックも同様に、色々な仕掛けが出てくるのだが・・・少年の心情描写はさすが。

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貘の檻の作品紹介

真実は「悪夢」の中に隠されている――。幻惑の極致が待ち受ける道尾ミステリーの頂点! あの女が、私の眼前で死んだ。かつて父親が犯した殺人に関わり、行方不明だった女が、今になってなぜ……真相を求めて信州の寒村を訪ねた私を次々に襲う異様な出来事。はたして、誰が誰を殺したのか? 薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具立てを駆使したトリックで驚愕の世界に誘う、待望の書下ろし超本格ミステリー!

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