リカーシブル

著者 :
  • 新潮社
3.32
  • (55)
  • (207)
  • (295)
  • (80)
  • (13)
本棚登録 : 1595
感想 : 266
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103014737

作品紹介・あらすじ

青春の痛ましさを描いた名作『ボトルネック』の感動ふたたび! この町はどこかおかしい。父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る――。血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて田舎町のミステリーに迫る。著者2年ぶりとなる待望の長編登場。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2023/11/07読了
    #このミス作品87作目

    父親の背任により住む場所を失い
    田舎に越した母親、兄弟が巻き込まれる事件。
    急に未来予知ができるようになった弟。
    高速道路誘致に異常なまでに固執する住民。
    排他的な町の空気。
    過去より引き継がれるタマナヒメ伝説と儀式、
    そしてそれにまつわる不審死。
    登場人物に生気がなくすごく薄気味悪い。
    王道ホラーでもないが寒気のする作品。
    でもめちゃくちゃ面白い。好き。

  • 子供の頃住んでいた家の近所には小高い丘のようなものがあった。
    てっぺんには簡単な遊具がある程度のせまい公園があり、そこにいたるまでの道はランニングコースとして整地されていた。
    だが、そこを走る人はほとんどおらず、公園で憩う人もほとんどみたことがない。
    僕ら子供たちでさえ、遊ぶのはその先にある新興住宅地内の広場か校庭だった。

    新興住宅地と古くからある地元の農家が集まる地区の狭間にある、だだっ広い田んぼ。
    その真ん中にある「丘のようなもの」としか呼びようのない、自然の摂理から外れた奇妙な隆起。
    遊ぶには中途半端に寂しい場所にある公園。
    変な傾斜と短い距離のランニングには不向きな小ぎれいな道。

    その「丘」が大昔の何者かの墓、つまり古墳であると知ったのはずいぶん後になってからだ。
    地元の名のある神社を宣伝し、歴史資料館を建て、所々に観光案内のプレートを立てている町役場が、何故その「丘」の来歴をそこに記していないのかはいまだにわからない。

    リカーシブ【recursive】
    (形容詞)再帰的な。自分自身に戻ってくるような。
    プログラミング言語においては、処理中に自らを呼び出すような処理をいう。

    リカーシブ・ルとは米澤さんの造語だろうか。

    ママと弟のサトルと三人で新しい町に引っ越してきた越野ハルカ。
    中学の新入学と同時に編入ということで、これを好機にうまくクラスに馴染もうと必死だ。
    しかし自分の周りに感じる不穏な空気。
    環境の変化というだけでは説明できない何か。

    自分の周りで何が起こっているかわからないが、確実に何かが起こっているという不気味さ。
    それを読者も一緒になって体験するという面白さ。
    断片的に散りばめられた情報が最後になって像を結び、目の前に現れる。
    田舎の風景や日常の細かい描写はさすがだな米澤穂信、なんて油断していたら、まさかそんなところにまで。
    どこにヒントが転がっているかわからない。

    この作品が書き下ろしではなく『小説新潮』で連載していたというのだから凄い。

    • kwosaさん
      jyunko6822さん!

      コメントありがとうございます。

      「ブクログで花丸が欲しいんです」って『何者』のレビューの冒頭で書いていました...
      jyunko6822さん!

      コメントありがとうございます。

      「ブクログで花丸が欲しいんです」って『何者』のレビューの冒頭で書いていましたね、僕。
      物語の主題に絡めて、半ば冗談まじりに書いたのですが、そういう気持ちが多少あることは否めないですね。
      でも、狙って書いている訳ではないので、僕にもコツを教えてください(笑)。

      しかし、みなさんのレビューを参考にして本を選んでいるところはあるので、自分も「こんな面白い本あったよ」って気持ちでは書いていますね。
      あと、特にミステリに関してはネタバレせずに面白さを伝えるにはどうしたら良いか、いつも悩みます。

      『リカーシブル』は米澤さんのビターテイストが滲み出ていました。
      これは再読がまた楽しそうです。
      2013/04/30
    • jyunko6822さん
      いろいろお勧めありがとうございます。
      周りからの刺激で、読みたい本がお陰さまで山積み。
      そういえば、kwasaさん、プロフィールのBEST3...
      いろいろお勧めありがとうございます。
      周りからの刺激で、読みたい本がお陰さまで山積み。
      そういえば、kwasaさん、プロフィールのBEST3が代わっていましたね。日々成長されてるってことで、眩しいです。(上から目線?ごめんなさい)
      2013/04/30
    • kwosaさん
      jyunko6822さん!

      山積みになりますよねぇ、読みたい本。

      そう! BEST3変更しました。
      でも、ベストを決めるって難しいです...
      jyunko6822さん!

      山積みになりますよねぇ、読みたい本。

      そう! BEST3変更しました。
      でも、ベストを決めるって難しいですよね。
      日によって気分で変わったりもしますし。うーん。
      2013/05/03
  • 予言と伝説
    弟の予言、街に伝わる伝説が妙に不可思議で、それを今でも伝承する同級生が妙な動きをする。そこで姉は謎を解くために観察し始める。中でも幼い弟の予言が意外な展開を見せる結末は予想外で、ミステリーとしてはもう一捻り欲しいところだ。 

  • 父が事件を起こし、義母と義弟と共に義母の故郷にやってきた主人公。閉鎖的な町と、その町に伝わる伝説、最後の展開はとても怖かった。少し最後駆け足感はしたし、解決されたか分からない感じもしたので☆3つ。閉鎖的な空間というのは、時に思ってもみないような常識外れを生み出す。何事にも盲目的になってはいけないね。

  • 主人公の中1の女の子ハルカが、学校と家庭で自分の一挙一動が相手にどう受け取られるかばかりをあまりにも気にし過ぎている。
    学校では余所者であり、家庭では連れ子であるという特別な立場だからなんだけど。でもその描写がずっと続くので、なんだか読んでいるこちらが気疲れしてしまった。

    学校帰りに事故のその後の様子を見に例の橋へ行った描写がおかしい。毎朝登校時にサトルと通っているはずなのに?

    ちょっと回りくど過ぎるけれど、そうは言っても引き込まれ一気読みしてしまった。
    三浦先生は良い人だなあ。

  • サスペンスホラーのような形式で、途中から続きが気になって気になって、気づいたら読み終わっていた。
    最後の伏線回収は大方納得いくが、完全に腑に落ちるという感覚ではなかった。弟の超能力の部分とか。
    一連の事件が終わった後の主人公とその周りの人間関係がどうなるのか、とても気になる。後日譚読みたい。
    主人公両親は共にゴミすぎる。

  • 独特の世界観が好きです。一応現代ものの話ではあるのですが、ちょっと恐い童話を読んでいるような気分になりました。昔話、それに囚われる街の風景が印象に残ってそういう感想になったのかもしれません。米澤さんの本はいくつか読みましたが、ちょっと世界がいつもとは違う気がする。

    なんだかんだいいながらも、自分の身を挺してでも「弟」を守ろうとする主人公の女の子がなんともけなげで可愛いです。

    ただ個人的にちょっと表紙のデザインはミスチョイスな気がします。ぱっと見SFかと思いましたし。

  • 雰囲気は「ボトルネック」に似てるけど、
    まだこちらの方が救いがあるお話、、、なのかな。

    優しい母親と、勝気な姉ハルカと、泣き虫の弟サトル。
    最初は一見普通の家族に見えるのだけれど、
    お話が進むにつれて、徐々に歪な関係が明らかになってくる。

    寂れた閉塞的な町。常に誰かから見張られているような視線。
    町の人間達は一体何を隠しているのか?「タマナヒメ」の伝承とは?

    ミステリと伝奇を絡めたような展開は面白いが、なかなか気が滅入る。
    登場人物に感情移入できなかったのが残念です。

  • 久々にミステリーっぽいミステリーを読んだ気がする
    少し収まりが悪かったかな

  • 『ボトルネック』を読み終えたとき、『氷菓』シリーズ以外の米澤穂信は2度と読まない、と思ったものですが(笑)。
    どうも彼には中毒性があるようで、数年ぶりに1冊手に取ったら、次から次に読みたくなって…。
    本作で目が覚めた。そうだこのひと、こういう陰湿全開なところがあったんだった。
    子どもが、本人に全く落ち度がないのに、周りの大人の無責任や身勝手な所為で辛い目に遭う話は苦手だ。ラストも救いがあるようでない。
    ちょっと引っ掛かったのだが、子連れで結婚したとき、実子でない子ども=継子に対する養育義務はないのだと主人公が考えてる部分。主人公と継母の場合、養子縁組が為されていなければ確かにそうなのだけれど、繰り返し記述されているように“お父さん”はルールをきちんと遂行する人間のようで、子どもが未成年なら結婚した時点で養子縁組もしておくのが一般的らしいから、恐らく主人公は、継母の法的な扶養家族になっているハズ。離婚が成立しても、養子縁組解消の手続きを取らなければ。
    法律に詳しい訳じゃないけどね。日本はそこまで子どもに厳しくない、少なくとも法整備上は。だから大丈夫だよ、ってハルカに言ってあげたかった。
    もし主人公と同じ境遇のひとが、本作を読んで不安な気持ちになったら可哀想だなぁと思いました。(2020-06-07L)

全266件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

米澤穂信の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
米澤 穂信
米澤 穂信
有川 浩
伊坂 幸太郎
有川 浩
米澤 穂信
米澤 穂信
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×