ぬるい毒

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著者 : 本谷有希子
  • 新潮社 (2011年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (133ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103017745

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ぬるい毒の感想・レビュー・書評

  • なんだろう、この誰でも持っているけど、心の奥深く見せたくない
    部分にある影みたいなダークな感じは。。。
    何かに似ている…と思い、自分の記憶を探ると…

    女主人公・熊田と同じ19歳の時に、職場の尊敬していた
    先輩や、その先輩の彼氏から(高額の)『布団を買おうよ~』と
    ねずみ講にあった、その時のやりとりを思い出しました(-_-;)

    人を持ち上げてから、貶めてさげすむ世界を身近に知った。
    その時の感覚を思い出してしまいました。

    (私の場合、親の方が強烈だったから、先輩の彼氏の嘘や暴言に
    屈せずに布団購入は断りました)


    胡散臭い向伊に魅力を感じなかったし、自意識過剰の熊田にも
    誰にも感情移入は難しかった。
    (一番まともは別れさせられた恋人の原くんかも?)
    (最初はゲ…と思った原君がまともに見えるから不思議)


    でも確かに私たちの暮らす身近に、こういう毒は
    日常に潜んでいると思いました。

    読了後も遅延性の神経毒が残っているみたいに
    じわじわと効いてきます(-_-;)モヤモヤするっ!


    爽やかでスッキリとした作品を読んで、気分転換しないと
    きつい。
    あまりに見事に人間の深部を描きすぎて記憶に残る作品です。

  • 久々本谷さん。

    そう!これ!
    この痛さが限りなく本谷イズム。
    まじで人間って痛い生き物なんだなーっていう。

    本谷さんのいいとこは、それもこれもぜーんぶわかってての、あえての痛さってとこで。
    客観視した痛さをいかに生々しく表現するか。

    恐ろしい恐ろしいってレビューが多いけど、
    恐ろしいか?
    これに似たようなこと、数限りなく日常で起きてる。
    みんな無意識に他人を見下して生きてんだよ。
    てかどっかで自分以外を見下さないと生きてけない、
    くだらない生き物なんだよ人間てやつは。

    向伊は狂気的にその魅力に、気持ちよさにとらわれてしまっただけで、
    みーんな持ってます。
    人を下げることで自分が上がった気になるんだよ。
    少なくともこいつよりは価値があると。
    そうしないと自分という存在が不安で不安でやってられないんだよ。

    簡単な話だ。
    人を蔑むだけで、みるみるうちに自分に価値が生まれる。

    某掲示板なんてそれのオンパレードなんじゃないの?
    だから怖がることはない。
    それは私たちの世界を取り巻いてる。

    まーでもここまでになるともうちょっと病の域ですね。
    逆に生きづらくなるね。

    でも面白い。
    こうゆうとこに、人間の面白みが凝縮されてると思う。

  • 著者は、ずいぶんこの世の中を生き辛いと
    感じてきたんじゃないかな、というのが読み終わって、
    読み進めていくなかでいちばんに思ったことだ。

    人の悪意を人一倍感じ取ってしまう、
    そしてそれ以上に自分自身のもつ悪意に気付いて、
    もがいたりもして、その一方で、
    どれだけ物事を曲がった見方ができるかで、
    より斜めにみられる方が人として上であるような
    錯覚を覚えてしまう自分もいたりする。

    と、ここまで書いて、著者のことを想像しているのか、
    それとも自分自身のことを書いているのか分からなくなった。

    ただ、本谷さんは、かつては生き辛く思っていたとしても、
    そういう人びとの有り様、自分を含めての、
    気持ち悪いとさえ思える人間の世界を、
    すべて受け入れて、むしろ血や肉に変えて生きているのかな、と思う。

    好き嫌いは分かれる話だし、元気が出るといった類でもない。

    ただ、同じようにもがいている人がいるように思えて、
    混沌とした人間というものを、もっと広く受け止めたい、という気持ちになった。

  • 確信犯っていうのかな。期待した状況に持っていくためには自分を苦しめることさえ構わない。大きな大きな蟻地獄の穴をこしらえているようでうすら寒い思いをしました。

  • 嘘を楽しむ詐欺師的な男性(向伊)の魅力や無気味さがもうひとつ伝わってこなかった。あるいは、ダマされていると思っている事柄すべてが、実は女性主人公(熊田)の勘違いなんじゃないだろうか?と思わせる視点にも比重をおいて向伊の「悪」を曖昧なものにしても良かったとも思ったりした。
    しかし、あくまで熊田の一人称的で葛藤に満ち満ちた内界ストーリーで筋を通すならば、事実や意図についての自分の解釈そのものが疑われてしまうような「妄想的世界」にハマり込んでしまうことを著者は避けたかったのかもしれない。それでは精神のバランスが保つことができないのだろう。それならば、熊田自身の知覚に関しては緻密に描かれているのに反して、向伊の魅力や無気味さが伝わってこないかんじも「自閉的な世界」として納得できる。「男性を本気で好きになったことがない」という熊田の社会的認知的限界が、本谷の表現の枠組だとするならば。

    本書でも本谷独特の人間の匂い(ex.二人の頭皮)や肌触りの表現が際立って印象的だ。女性である主人公の感覚が際立っているように。感覚と思考が洪水していき、そしてそれがある閾値を超えて制御不能となると、意識が変容することによってしかリセットできないというシーンも生々しい。みな病んでいる。その病みを、誰かに救われる類いのものではなく、克己されるべきものとして肯定してしまうエネルギーに感嘆させられる。

  • こういう作品を読むと、
    映像にはできない活字だけの魅力があることを知る。
    本谷女史の作中に頻繁に登場する
    「被害を受けている私に気づいて!」と叫び狂う女性。
    その進化形が”熊田”だ。
    そう言い切っていい。
    彼女の目線で見た世界の美しさ、鮮やかさ、
    そして、その歪みっぷり。(!)
    世界の輪郭のクッキリさと生臭さたるや、、、

    これは日々の人間観察の賜物なのか。
    否、持って生まれたとしか思えない
    本谷さんの表現力と洞察力を感じてしまう。

    ストーリーは、片田舎の厳格(とも言い切れない)な
    家庭に育った熊田と、
    東京文化(をも超越した)の塵界にまみれた
    美男子・向伊の愛(嘘)の物語。

    向伊は本当にそんなやつなの?
    熊田の被害妄想なのでは?
    と考えている間に、次々と勃発するジケン。
    熊田と向伊のかけ引き、恋人・原との別れ話、両親との家族会議。
    それは第1ラウンド、第2ラウンド、第3ラウンド…と魅せられて、
    ラストラウンド:グラドルとの飲み会で完全にノックアウトする。

    私は普通じゃない。いつか、鬼になる。
    向伊と同じレベルで“感じて”いるんだ。

    異常なまでの「嘘への執着」を見せながら、
    最後の一節で淡々と年を取っていく熊田。

    ぬ・る・い!

    そこに答えがある。

    もはや、
    自己嫌悪型深読み陶酔ポイズン・ラブストーリー。

    ひとそれぞれ解釈はあるでしょうが。
    おもしろい。
    嘘は、いかに騙すかよりも、いかにばらすか。
    同感、ほしよっつ。

  • 傑作!!これこそ本谷さんって感じ。
    なんか読み終わった後に「うわぁー」って言いたくなる感じ。
    やられてしまった、ぬるい毒

  • 第33回(2011年) 野間文芸新人賞受賞
    内容(「BOOK」データベースより)
    ある夜とつぜん電話をかけてきた、同級生と称する男。嘘つきで誠意のかけらもない男だと知りながら、私はその嘘に魅了され、彼に認められることだけを夢見る―。私のすべては、23歳で決まる。そう信じる主人公が、やがて24歳を迎えるまでの、5年間の物語。

  • 向伊を好きになってしまって、でも向伊は自分を好きになってはくれなくて。ずるい。考えて考えて、いろいろやってみても、根本的に感じ方がちがうから効かないっていう。

  • 後味が悪い話。その一言に尽きる。
    自意識過剰なのも、自分が優位に立ちたいのも、自分を優れているように見せたいのも、若さ故なのかそれともその人の持って生まれたものなのか、と考えさせられた。
    話に出てくる人たちのすべてがそういった性質だったため、どこに感情を置いたらいいのかわからず、気持ちを落ち着けるための内容ではないということを実感させられた。
    そう思っていたにも関わらず、続きが気になって仕方がなかった。一気に読み終えた。

  • 最後の方で、主人公の口から「ぬるい」という言葉がでました。

    ああ、なるほど、そういうことか、と感じたときに、

    読んでいた自分は、すさまじいショックを受けました。

    タイトルが、作品世界そのものということです。

    「ぬるい」が故の本当の恐ろしさは、すごいとしか

    言いようがありませんよね。

    芥川賞3度目のノミネート作です。

    本谷さんの描く世界観が審査員にどこまで理解

    されるかと思いますが、素晴らしい出来です。

    受賞の有無とは関係なく多くの人に、

    読んでほしい作品です。

  • いままでの本谷有希子さんの小説のなかでも、小説らしいはなしだった。
    一気に読んでしまった。
    人間の憎悪と狂気に満ちた物語。
    とにかく向伊がいやなやつ。
    だけどそれも主人公の被害妄想なのかもしれないってところが狂気。
    あと味悪いよ、なかなか
    芥川賞受賞するかなぁ、どうかな。前作に比べると可能性高そうだけど。

  • 男に騙されたふりを続ける主人公。自分を保つためでしょうか。強烈な自意識と歪んだ自己愛はまさに「毒」。読者の体内にまで浸潤してきます。本谷さんの作品は、小説のようで小説でない何か、と言う感じ。小説という型を必要としていないところに底知れなさがあります。(twitter)

  • 主人公を翻弄する男達のやり方は、反吐が出るという汚い表現を使うほかないようなものなんだろうけれど、それにしても、なぜそこまで彼らにこだわるのか、なぜそんなに馬鹿にされなければいけないのかが、よくわからない。これが舞台作品になって、俳優が演じれば、スパーンと伝わるのかな、と思った。ただし、わからないなりに最後まで惹き込まれ続ける。作品を読むたび、才能をビシビシ感じさせ
    る作家だ。

  • 主人公の気持ち、分からなくもないけど、自暴自棄になったり、嘘だとわかっていながらそこまで言いなりになるかなと不思議に思った。
    そんなに魅力的な人いるのかな。

  • 人間の自意識が存分にえぐられていて、読んでいて居心地が悪い。でもそれがヒトの本当の姿なのだと思う。

    主人公の女の完全に独りよがりな目線で語られるがゆえ、多くの解釈の仕方がある。それを読み手に委ねる余裕を持たせた作品。

    真実は分からないし気分が悪くなる作品なので好き嫌いが大きくわかれそうだけれど、わたしは好き。ページ数は薄いけど、その分量とは思えない読後感。

    「悪いひと」として描かれた男が語り手だったら、と違うストーリーを妄想するのも一興かと。

  • 残念ながら、今回の世界観にはしっくりこなかった。。。
    主人公が23歳という年齢になぜそこまで固執するのか分からなかった。
    誰かが23歳で死んだから、とかの理由があればわかるけれど。いや、こういうことに理由なんていらないんだろうけど納得いかなかった。
    そして向伊がまったくいい男に思えず出て来るたびに「このクソ野郎が!」と罵倒してしまってました。こんな男に付き合うだけ時間の無駄としか思えないですし!
    この作品に出てくる男はそろいもそろってクソ野郎ばかりだった。。
    ラストも結局どうなったのかよく分からない落ちで、非常にもやっとします。
    どんでん返しを期待していたのでちょっと拍子抜けしてしまいました。

  •  魅力の塊のような嘘つき男。その嘘に敢えて騙され、寝首を取ろうと企む女。恋の駆け引き?騙し合い?正直ぜんっぜん理解できない攻防戦を繰り広げている。熊田が心霊スポットでパンツをおもむろに下ろす(やばすぎるわ)シーンも、父親の前で狂った演技をしてまで東京に行くことも、向伊の嘘への渇望も、やっぱり理解できない。何が彼女をそこまで駆り立てるのか。無視されたくないから?必死で生きてるところを笑われたくないから?自尊心がそうさせるから?わーかーらーん。
     これまた本谷さんらしい頭のおかしい(褒めてるよ)1冊であった。もっと理解力がほしい。

  • 私の人生は、24歳までに決まる。
    そう決めているちょっぴり自意識過剰な女の子・熊田と、サイコパス予備軍と言えなくもないような嘘つき男・向井との、恋の駆け引き。というかバトル?
    熊田の向井に対する執着とあざとさが痛々しくてかわいかった。
    足をむやみに露出したり、声のトーンをあげたり、ホテルにしつこく誘ったり。
    嘘ばっかりで他人を平気で嘲り見下す最低向井の本性を分かっているのに、彼にどれだけ侮辱されても媚びてしまうのは、そうしたくなくてもそうしてしまうんだろう。
    熊田は向井から離れられても、また別の男と同じようなことをくりかえしそうな女だな。
    私も人のこと言えないのですが。

    本谷有希子、やっぱり好きだなぁと確信。
    この文体と世界観がたまらない。

  • 自尊心のために、パンツを脱いだことはありますか?

    嘘をついて人を騙し、操ることを楽しむ男。その嘘に気づいていながら、寝首を掻こうと、騙された演技をする女。そんな生産性のない男女の騙し合いバトルスタート!
    と言いたいところですが、バトルとは言い難い、もっと冷徹な観察日記と言ったほうがいいのかもしれない。
    愛も恋もありません。

    嘘をつく男と騙されたふりをする自分を観察する主人公の執拗さがやばい。
    本谷有希子は我慢と恥辱の作家だと思う。

    男の嘘に呑まれるのか、殺戮兵器と化したトラックの運転手たちが世界が滅ぼすのか、続きは本作で。
    乞うご期待!

  • 止まらず読んじゃう。

  • 申し訳ないけれど、何がどうなってるのか全然わかりませんでした。
    部分的にちょっと共感できるとこもあったかな。

  • 人にとって毒というのは不要な様で実は求めているもの。エロスに対してタナトスも本能であり、快感である。女性というのはイケメンにボロボロにされるのも本望なのでしょうか。

  • 思春期の自意識過剰なところとか自信がないとそろとかを思い出すような。でもだからなに?というかまた読みたいとは思わない。

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ぬるい毒の作品紹介

ある夜とつぜん電話をかけてきた、同級生と称する男。嘘つきで誠意のかけらもない男だと知りながら、私はその嘘に魅了され、彼に認められることだけを夢見る-。私のすべては、23歳で決まる。そう信じる主人公が、やがて24歳を迎えるまでの、5年間の物語。

ぬるい毒のKindle版

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