レインツリーの国

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103018711

感想・レビュー・書評

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  • 2021/03/11読了
    #有川浩作品

    1冊の本で繋がった聴覚障害者と
    健聴者の恋愛小説。
    かなり激しい言葉でぶつかりながらも
    一つ一つの言葉・文章が丁寧で重く
    愛に溢れている。
    すごく感動できた。

  • 面白かった。いろいろ打ちのめされた。

     昔に大好きだった小説のレビューをネットで見つけた伸。
     「レインツリーの国」の管理人ひとみ。
     伸がひとみに送ったメールがキッカケで惹かれあう2人。
     でも、会うと何かが噛み合わない...

    「普通」ってその人にとっての基準の普通。
    それを持っていない人にとってはそれが普通じゃなくて、持っていないことが普通になる。だから言い争い、感情のズレが起きてしまう。

    2人が言い争う言葉に端々に(あ〜俺もそんなこと言ったり、そんな表情きっとしてた...)(そっか〜、相手にとってはそう聞こえるし、そう思ってたんだろうな)とズキズキきた。

    経験した辛いことを相手にぶつける必要もないし、話す機会があった時に同情されなくてもいいと思う。
    深く大変な経験をした人は自分だけが・・・と思いがちだけど、人それぞれ生きてきた環境や時間の中で辛い経験をしてきていると思うから。

    時がそれを癒し、時がそれを生きる糧とし、いつかお互いを大切に理解しあうために、その経験を重ね合わせることができたら幸せだろうな、きっと。

  • 203ページ
    1200円
    8月25日〜8月25日

    伸行は忘れられない本があり、その
    ラストを他の人はどう受け止めたの
    かが気になり検索する。そこで見つけたのが、ひとみが管理する『レインツリーの国』というサイト。好きな本の感想を通して意気投合した二人は、やがて会うことに。伸行は、ひとみのちぐはぐな行動に疑問をもち、それが聴覚障がいからくるものだとわかる。二人はぶつかり合いながらも親密になっていく。

    メールのやり取りで進められる物語に自然に引き込まれる。聴覚障がいについての理解も多少深まり、それでも障がい云々でなく、その人の性格が大きいと感じさせてくれる物語。おもしろかった。

  • 数年前に読んで「これはいい小説だな」と印象に残っていた。
    その記憶を確認するために再読。
    最初からひとみの秘密はわかっている訳だが、その視点で読むとひとつひとつの表現の意味がわかる。
    読みやすいし、いろいろと考えさせられるし、やはりこれは名作。

    ・でも、同情で優しくされるのがイヤなんです。私にだってプライドがあるんです。ずっと楽しくメールをしてきて、お互いの現実を知る前にすごく仲良くなった伸さんだから、伸さんの前では、私は普通の女の子でいたかったんです。
     耳のことで同情されて優しくしてもらうんじゃなくて、同情で楽しい一日をもらうんじゃなくて、メールで楽しかったみたいに、普通に会いたかったんです。

  • 「図書館戦争」シリーズからの流れで再読。

    恋の障害として、女性側の聴覚障害が使われているが、基本的には「人は何で恋に落ちるか」という話だと思う。
    伸行は、「ひとみ」の物事の捉え方、感性、表現の仕方に惹かれたのだ。それはつまり、その人の根本をなす部分に惹かれたということなのだ。
    あんなめんどくさい(笑)感想のやりとりを好むという事自体が、伸行の精神性を如実に表現している。
    だから、伸行と「ひとみ」の相性は悪くないはずなのだ。
    しかし、実際に生身で付き合うとなると、トラブルが生じる。
    そのトラブルは、「ひとみ」の身体的障害がきっかけになるのだが、誤解を恐れずにいえば、程度の差はあれ、どんなカップルにも起こりうるトラブルである。ただ、聴覚障害はコミュニケーション障害でもあるために、トラブルの度合いが深刻になりやすい。
    さらに、「ひとみ」が中途難聴者であるがゆえのコンプレックスもあり、そんなことを想像したこともない「健常者」である伸行との行き違いは、起きて当然のトラブルでもある。

    何度読んでも衝撃をうけるのは、伸行が送ったメールのひとつ。
    P95の「もしかして」というタイトルのメール。
    「ケンカしようや。ガッチリやろうや。(中略)仲直りするためにきちんとケンカしようや」
    受け取った「ひとみ」も戸惑うが、私もそうとう面食らった。
    「仲直りするためのケンカ」という発想が私の中にもないからだ。
    でも、ほんとうはそうやって自分の思っていることをぶつけあい、その都度修正していくことで、本物の付き合いになっていくんだろうなと思う。

    この小説では、「図書館内乱」での設定との絡みで、女性側が聴覚障害を持っている。しかし、聴覚障害に限った話ではなく、すべてのことにつながる話なのだ。お互いに違う人間が近づいて寄り添って生きていこうとするとき、必ず価値観がぶつかる。それをどうすり合わせていくか。
    2人の、ぎこちなく、でも一生懸命向き合う姿が清々しかった。

    障害に対する向き合い方を真剣に考えさせられる作品だった。

  • きっかけは「忘れられない本」そこから始まったメールの交換。あなたを想う。心が揺れる。でも、会うことはできません。ごめんなさい。かたくなに会うのを拒む彼女には、ある理由があった。

    図書館戦争シリーズの「図書館内乱」から、出てきた本。
    とても、素敵なお話でした。

    聴覚障害者の方の大変さなどが、スムーズに書かれておりなるほど・・・と考えさせられる部分もたくさんありました。

    夏に読んでさっぱりする爽快ラブコメでした。


    有川先生らしい、終わりで私は好きです。

  • 心情の、心のその描写がとても美しい文章でした
    話が都合良く進まず、それでも乗り越えていく、とてもリアルでどんどん読み進めてしまいました

  • いい話でした。
    オンラインとオフライン、絶対に起こりそうな問題。
    相手のことを自分の世界で作り上げてしまってるからなんですよね、相手は、知りあう前からその人そのものだったのに。

  • 聴力に障害が無ければ、情けなんていらないのにね。文だけなら、分からなかったのに。知らなかったのに。
    補聴器は、標ですか?小さいものが出ている現状より、補聴器の存在がどういうものか分かります。
    「考える」ことを課題にしてくれるレインツリーの国。毬江ちゃんは、どんな想いで手に取ったのでしょう。

  • 図書館戦争を読んだのはお勤めしてた頃やから、三年前やっけ??
    その中に同タイトルの本が出てくるけど、完全に忘れてました。

    思い入れのある本のレビューをきっかけに、メールでやり取り→実際に会ってデート…って展開。

    目次の「…重量オーバーだったんですね」から、会ってみたら関取系?と早合点したけど、まるで勘違いでした。

    所々、読んでて恥ずかしくなるくらい、くさい表現も出てくるけど、それがまた効果を生んでるのかも。

    自分を健聴者と意識したことはなかったけど、考えさせられた。

著者プロフィール

高知県生まれ。2004年『塩の街』で「電撃小説大賞」大賞を受賞し、デビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊』3部作、その他、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』等がある。

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