大きな熊が来る前に、おやすみ。

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103020318

感想・レビュー・書評

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  • 大好きな酒井駒子さんの絵が表紙になっていた本。
    それだけでわくわくしてしまう。

    3本の短編は暴力にあった女性達の物語。
    恋人と些細なことから口論となり彼から暴力を受けたり、幼い頃から母親がらみで苦労したり、元彼から受けた仕打ちがいつまでもトラウマになったり。
    トラウマを抱え一人思い悩む彼女達をそっと応援したくなる。

    眠る間際、毎晩のように必死で祈る彼女。
    今夜はどうか悪い夢を見ませんように…何度も何度も祈る。
    「早く寝ないと大きな熊が来て食われるぞ」
    幼い頃呪いの言葉のように父に繰り返し言われていた彼女も、トラウマを乗り越えそのままの彼と向き合うことに決めた。
    穏やかに粛々と。

    ラストの短編は飼い猫と彼女と彼の距離感がとても微笑ましかった。
    どうか猫好きの二人の恋の行方が明るいものとなりますように…静かにそっと祈りたい。

  • 男の子たちがなかなか厄介。
    女の子たちが幸せでありますように。

  • 大きな熊が来る前に、おやすみ。
    同棲してる彼との間に子供ができた。彼はDVちっく。
    クロコダイルの午睡
    彼女いる金持ち男がごはんを食べに来る。ユニットバス嫌。
    猫と君のとなり
    中学の部活の後輩がなついてくる。猫のまだら。

    どの作品にも動物が出てきたよー。
    熊、ワニ、ねこ。
    それから、恋愛も絡んできたよー。
    個人的には、猫と君のとなりが好きだったなぁー。
    ほっこりする話だった。

    逆にクロコダイルの午睡は、最後が怖かった。
    無神経だと分かっている男が、それでも本音を言う所に
    生きづらさを感じてしまったよ。

  • 『大きな熊が来る前に、おやすみ。』
    同棲する男女。ふとしたきっかけで女は男に暴力を振い、男もそれに応えやり返してしまう。
    暴力は尾を引く。ふたりの間に残る傷。

    『クロコダイルの午睡』
    ひとの気持ちがわからない男に惹かれつつも、自分の気持ちが整理できない女。
    何気ない男の言葉に女は傷つき、男に苦い薬を飲ませる。

    『猫と君のとなり』
    再会した先輩後輩。
    男女の仲になっていこうとするふたりを拒むのは、女のなかに居座る昔の男。暴力の記憶。

    ------------------------------------------------------

    3つの短編すべてが軽い恋愛小説ではなかった。

    ノーベル文学賞候補の作家はこう言っている。
    「高く、堅い壁と、それに当たって砕ける卵があれば、私は常に卵の側に立つ」
    これは軍事行動とその脅威にさらされる市民がいるという現状に対する批判であり、とても勇敢なスピーチだった。

    小学校の教師が、「女子は教室、男子は外で着替えるように」と指示を出したときのことを思い出す。
    もちろん男子からは不満の声が上がり、おそらく一番大きい声で文句を言ってしまった私が、何か意見があるなら言うように教師から指名された。
    男子を代表するような気持ちで、これは不公平ではないかと私は抗議した。教師は思惑通りといったように笑い、「男女平等とはそういうことじゃない。男は女を守らなきゃいけない。そういうものなんだ」と言った。
    クソフェミニスト野郎!と覚えたての暴言を吐かなくて本当によかった。
    教室は静まり返っていて、正論過ぎてどこかしらけたような空気が流れていた。

    教師の言ったことは間違ってはいないと思う。

    多くの場合、
    車と歩行者がぶつかったら壊れるのは歩行者であり、
    男と女が殴り合いのケンカをしたら傷つくのは女であり、
    弱いものは守られるべきということ。

    壁にぶつかって壊れてしまう卵があれば、いつでもその卵は守られるべきなのだ。

    なんだか前置きがすごく長くなってしまった。

    『大きな熊が来る前に、おやすみ。』のなかで、男は女のクッション攻撃にやり返してしまった。殴り、背中を蹴った。
    これが男同士だったらもしかしたら問題なかったのかもしれない。
    でも、相手は女だった。守られるべき卵だった。
    男女の間に暴力はあってはならない。
    力という点において対等ではないから。

    男女平等とかDVとかすごくナイーブな話題だと思う。
    欧米のようにレディーファーストが浸透していない日本では、どうしても不自然になってしまう。小学校の教師もそれを伝えたかったんだと思う。

    男女平等の世の中ではあるけど、男女の違いというか、その本質を理解しなくちゃ、ただのフェミニスト野郎になってしまうなあとか考えながら読んだ。かなり良作だと感じた。

  • 3つの話が収まった短編集。
    表紙とタイトルから、なんとなく嫌な予感がしていたのだけど
    テーマに共通するのが「暴力」だ。




    「大きな熊が来る前に、おやすみ」
    この本のタイトルにもなっているお話。
    一緒に暮らしている彼氏に、一度だけふるわれた暴力。
    普段は優しい彼が見せた、歪み。
    そこに、自身の父親の姿が重なる。
    それぞれに抱えたトラウマ。

    微かに見えた希望は、本当に希望なのだろうか、と考えてしまう。
    なんとなくリアルで後味がちょっと悪い。


    「クロコダイルの午睡」
    テンポよくすすんでいってたら、最後にちょっとびっくり。
    でも、これもまたなんかリアルでちょっと、怖い。
    無神経さって、怖いわ。


    「猫と君のとなり」
    いままでのふたつの短編とは違って、ちょっとほっとした。
    読み終わった後に、
    他の二作にあった黒いもやもやとしたものはなくて
    平凡だけど、あったかくて、ほんわかする。

  • 主人公がみんな料理をちゃんとする子で憧れる。
    自分が彼女たちの歳の頃、カップ麺とスナック菓子ばかり食べてた気がする。

  • 二篇目がとても好きだった。生まれついて貧乏な人間の描写がすごい

  • 恋人との穏やかな暮らしを揺さぶった、突然の暴力。それでも互いが抱える暗闇に惹かれあい、かすかな希望を求める二人を描く表題作など、恋愛によって知る孤独や不安、残酷さを繊細に描く三つの物語。

    誰かと生活を共にするなどして相手との距離がぐっと縮まると、良いところ、悪いところを否応なく認識させられる。時にはその人自身が意識していないことまで気づいてしまうかもしれない。誰かにもっと近づきたいと願い、相手の今まで知らなかった面を知って傷つきながら、主人公たちはもがいていく。絶望の中にいるにもかかわらず、相手を、かすかな希望を信じて進もうとする。

    「クロコダイルの午睡」では女子大学生の霧島が、同級生の都築に惹かれていく。しかし霧島は都築の、裕福な家に育ったがために金銭感覚がずれていたり、他人の気持ちを察する事ができない面をどうしても受け入れられない。この物語から、恋に落ちることと、誰かの人間性をすべて認めることは全く別のことだと思った。恋は相手に近づくということの動機であり、関係性の始まりでしかない。距離を縮めて相手を知っていった結果、人間としてどうしても理解できない部分を見つけてしまうこともあるだろう。この物語の主人公も「好き」という感情とどうしても埋まらない価値観のずれとの葛藤に苦しみ、都築を許せなくなってしまう。二つの相反する感情を両立させてしまう恋とは、本当に厄介なものであると感じた。

  • 住宅街をゆっくりと流れている時間を、電車の速度がぐんぐん追い越していく。実際の時間の流れと、体感時間の流れと、乗り物に運ばれていく時間の流れ、すべてがばらばらで、だから私は時々、意図的に徹平や自分の時間の速度を落とさなきゃいけないと感じる。日常の忙しなさは無意識のうちに体内の速度も上げていくので、気が付かないうちに、疲れているのだ。






    大学生ってこうだよねって思う。
    でもこんな大学生になるためには自宅生ではだめで。

  • 内容が重いわりにはドライな感じ。
    男女の間に恋愛が絡むと、
    こんなにあっさり暴力が介在するのか。
    1話目のラストなんて、
    自分が友人だったら絶対止めるよ・・・
    でも、当事者だったら相手の言葉を信じて、
    一度の暴力を水に流そうとするんだね。
    人間っておかしな生き物だ。

    2話目はおっそろしいけれども、
    出てくる女の子がわからないわけではない。
    切ないねぇ、恋って。

    3話目はふつう。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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