氷壁

著者 :
  • 新潮社
3.61
  • (12)
  • (30)
  • (26)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 159
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103025122

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 63年も前の本。イギリスのボーイソプラノ合唱団Liberaが歌う「彼方の光」という美しい曲を今度演奏することになり、2006年のNHKドラマ「氷壁」の主題歌として作られた曲ということで、ドラマは観たことが無かったのでその原作はどんなだろうと興味を持って読んでみた。

    山を愛する魚津と小坂という2人の男が中心となって話は進む。2人で雪山登山中にナイロン・ザイルが切れて滑落した小坂は亡くなってしまい、失意の中日常に戻った魚津は切れるはずのないナイロン・ザイルが何故切れたのかという追究を始める。行われた再現実験ではザイルは切れず、世間では2人の技術的な問題があったかどちらかが故意に切ったという憶測が広がる。雪解けシーズンを迎え遺体を収容してみると、ザイルは故意に切られたものではないということが分かった。ではなぜ切れたかということは判然としないまま夏になり、1人で事故後初めての登山をして、降りたところで事故後親しい仲になっていた小坂の妹かおると落ち合う計画を立てた。しかし予定を過ぎても魚津が姿を現す気配はなく、捜索したところ遭難して亡くなっていた。

    登山用語など全然知らないので雰囲気で読み進めたところもあったけど、500頁超ずっと引き込まれるものがあった。ハッピーエンドではなく結局短期間のうちに2人も亡くなってしまうし、ザイルはなぜ切れたのか分からないままだし、物語に関わってくる2人の女性が握っているものもとても大きいのではと勘ぐらせる終わり方。「もしかして美那子がすべての厄の元なのでは?!」とか思ったり。そういうことや季節に応じた山の描写含め、とても想像力を掻きたてられる物語だった。63年も前の本だけあって、夫を立てる妻や男女の立場の描写などには流石に時代を感じた。
    登場人物で一番いいなと思ったのは魚津の上司の常盤。豪胆だけど人を信じるということにおいて強靭な信念を持っている。無条件に自分を信じてくれる上司のもとで働けたのは魚津も幸せだっただろうと思う。

  • ドラマやってた時見てたなー。

著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

井上靖の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×