「リベラル保守」宣言

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103027522

作品紹介・あらすじ

「左翼は嫌い。けれど、今の保守はもっと支持できない」と嘆くあなたへ――。保守の概念が揺らいでいる。「憲法改正」を叫ぶだけが、「あの戦争」を肯定するだけが、保守なのか――。否。それは「反左翼の“俗流保守”」に過ぎない。真の保守思想は、自由を積極的に擁護し、その源流にはリベラルなマインドが宿る。「リベラル保守」という新たな立場から、この国のあるべき「思想のかたち」を探る意欲的論考。

感想・レビュー・書評

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  • 自分は現場で葛藤しながらやってきて、中島さんが言う、リベラル保守に近づいているのだなと思った。だいぶ楽になった。

  • 元々はNTT出版で出す予定が、橋下徹批判の章を削除するかどうかでもめたため、別の出版社になったようだ。

  • 2017年衆議院選挙の特番で、池上彰氏が立憲民主党党首の枝野氏に対し「リベラルと保守という相反する考え方を併せて掲げることについて」質問をしていた。ここで枝野氏が「リベラルと保守は対立しない」こととその理由を説明していた。

    不勉強な自分にとっては、大きな衝撃だった。
    それ以来、このことについて詳しく知りたいと思いこの本を手に取った。

    まさしく、枝野氏が説明していた話であった。

    保守=右翼、と考える方がいるならば是非読んでほしい。

  • 本書は、保守思想の解説を交えながら、原発問題や橋下・維新の会など、具体的なテーマについて筆者の意見を述べている。以下に詳しい感想が有ります。http://takeshi3017.chu.jp/file6/naiyou23201.html

  • コミュニタリアン(サンデル)と同様、「負荷なき自己」を想定するリベラリズムを批判し、いわば「負荷ある自己」を前提とするのが「真の保守思想」であるとする。
    そして、「真の保守思想」において重視されるべきは、自己を否応なく規定する「負荷」=「自己の場所」=「ポトス」であり、それがあるからこそ、「公民」としての意識が醸成され、「大衆」に堕することが防止される、人民の大衆化による民主制の堕落を恐れるのが「真の保守思想」である、と論じる。
    「保守思想」ないし「保守主義」に独特な意味合いを持たせるのは、著者が影響を受けたと認める西部邁に由来する態度と思われる。
    本書は、「左翼」と並んで「新自由主義」を主たる論敵としているが、「新自由主義」を明確に定義しないので、見えない敵と戦っているように思える。
    また、その論調は、設計主義的合理主義を批判したハイエク(しばしば保守派の論客と位置づけられる。)の主張と大きく重なる。しかし、ハイエクには一切言及がない。それは、保守主義は「主義」ではなく態度に過ぎず、保守派は全体主義及び社会主義と闘うために自由主義を借りたに過ぎないというハイエクの保守主義に対する批判的態度を嫌ってのことかもしれない。
    本書は、その前書きにあるとおり、後に出版を企図している著書のメモであるから、続編で詳細な理論が明かされると思われる。

  • なぜ「保守」を自認する安倍政権が「改憲」を目指すのか。不思議で仕方なかったが、要するに彼らは真の意味で「保守」ではないということか。「保守と「リベラル」が対立する概念ではないようです。本書は「保守」のあるべき姿とはなにかに多くの紙幅が割かれていますが、「リベラル」とは何かについての言及にまでは至っていません。タイトルにある「リベラル保守」とは何か、消化不良でした。

    (以下引用)
    「リベラル(liberal)という単語を辞書で調べると、「自由」以外に「寛容」という意味が出てきます。「自由」は常に「寛容」とてもに存在します。(P.20)

    保守は特定の人間によって構想されたイデオロギーよりも、歴史の風雪に耐えた制度や良識に依拠し、理性を超えた宗教的価値を重視します。(P.33)

    保守にとって重要な能力は、ユートピアを設計する能力ではなく「経験の神秘と不確実性とを従容として受け入れる能力(マイケル・オークショット)です。このような人間の不完全性を謙虚に受け止める「冷静さ」と「懸命さ」こそが、まずは保守に要求される基礎的な能力です。(P.35)

    日米安保の強化を唱える自称保守は、リアリズムという観点から、左翼陣営の平和論を批判してきました。曰く、「絶対平和論は空想的な理想主義で、現実政治のリアリティの中では意味をなさない」と。周辺諸国の脅威がある以上、それに対処するには日米安保を強化することこそが現実的な選択であるというのが彼らの主張でした。その結果。「理想主義の左派」vs「現実主義の保守」という対立構造ができあがり、多くの人びとがこの構図を自明視する状況が続いています。保守は日米安保というリアリズムを選択をするのが当然という感覚が浸透しているようです。しかし、この構図は正しい対立図式なのでしょうか。(P.90)

    チェスタトンの言うように、同質な者ばかりとの関係性に安住していると、価値の葛藤に耐えられない自閉的存在になってしまいます。(P.141)

    この日本型雇用・福祉システムを破壊し、新自由主義的な政策を導入したのは、他ならない自民党です。家族の基盤を破壊した上で、なおかつ「家族に頼れ」というのは無理な話でしょう。(P.144)

  • 今の日本は右傾化しているという指摘がよくなされているが、果たしてそうなのか。どうやらちがうのかもしれないということがわかった。思想に基づいて思考することが正しいのかどうかは置いておくが、目先の利益の優先、もしくはいわゆる「仮想敵」をつくりあげてただ難癖をつけたい、誰かを罵倒したいというだけで、保守という思想のもとに思考している人は皆無に等しいようだ。でも、そういう自覚のない言論が何の躊躇もなく流布していることがいちばん恐ろしいことなのだと思う。

  • 保守の思想を「人間の理性によって理想的な社会を作ることなど不可能である」と断言している.この発想は左翼のそれの反対をなぞったもので、泥臭い人間の本生から出てくるものと理解した.となると、今保守と呼ばれている連中が本当に保守思想を持っているのかと、あらためて考えてみると疑問点が多い.原発や橋下維新、大東亜戦争、徴兵制などのトピックで定義した保守思想を検証している.ただ、断言出来にくい問題だかも知れないが、論点がややボケている感じがした.

  • 学術論文だから良いとかエッセイだから悪いとかそういう議論は抜きにして、大変読みやすく戦後「保守」とは何か考えさせられる内容だった。そして、おそらく自分は保守ではないだろうと悟った....。

  • 13/11/09読了。

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著者プロフィール

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『思いがけず利他』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『保守のヒント』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『保守と立憲』『親鸞と日本主義』、共著に『料理と利他』『現代の超克』などがある。

「2022年 『ええかげん論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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