葬られた王朝: 古代出雲の謎を解く

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103030232

作品紹介・あらすじ

ヤマタノオロチや因幡のシロウサギなどで知られる出雲神話、それは天皇家につながるアマテラスの系譜とは別個の、スサノオを祖としたもう一つの王家の物語である。もしこの王朝が歴史的に実在するものであったなら…『隠された十字架』『水底の歌』以来の、日本古代史を塗り替える衝撃的な論考。

感想・レビュー・書評

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  • 過去に自身が書かれた出雲神話についての論を自ら覆すという英断に出た本です。「隠された十字架」以来の梅原さんのファンですが、出雲神話については、ちょっと不自然に感じていたので、今回の本を読んで納得しました。
    あらためて、出雲大社に行ってみたいなぁと思いました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「出雲大社に行ってみたいなぁと」
      とっても荘厳な感じに圧倒されますよ、「葬られた王朝」を読まれた後なら尚更感慨深いかも、、、
      「出雲大社に行ってみたいなぁと」
      とっても荘厳な感じに圧倒されますよ、「葬られた王朝」を読まれた後なら尚更感慨深いかも、、、
      2013/02/05
  • 図書館で見かけて斜め読み。84歳での著作ということで梅原猛のかつての気迫は感じられず、また内容的にも目新しさが無く面白くなかった。自著「神々の流竄」での出雲神話フィクション説を撤回し、その分やけに出雲を持ち上げ、最後は出雲の王オオクニヌシにフィクションと主張していたことを謝罪する、という本。 
    梅原猛といえども発掘された遺跡(荒神谷遺跡の銅剣358本、加茂岩倉遺跡の銅鐸39個、出雲大社の巨大柱)には勝てなかったわけで、もっと考古学的研究に予算を付けて強化するのが効率的と思った。予算があれば投入できる新技術もあるのではないか。

  • 「葬られた王朝」梅原猛著、新潮社、2010.04.25
    319p ¥2,310 C0095 (2020.06.07読了)(2020.05.13借入)(2010.08.10/12刷)
    副題「古代出雲の謎を解く」
    2020年1月に上京した際に、「出雲と大和」という展覧会を見てきました。
    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    出雲と大和
    会期:2020年1月15日(水)~2020年3月8日(日)
    会場:東京国立博物館 平成館
    令和2年(2020)は、我が国最古の正史『日本書紀』が編纂された養老4年(720)から1300年という記念すべき年です。
    「幽」と「顕」を象徴する地、島根県と奈良県が当館と共同で展覧会を開催し、出雲と大和の名品を一堂に集めて、古代日本の成立やその特質に迫ります。
    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    展覧会の感想:
    会場に入ってすぐの所に、出雲大社の境内から発掘された巨大な柱の根元の部分が展示されていて、度肝を抜かれました。かつての出雲大社の模型も展示されていて、その巨大さがしのばれます。他にも、新聞紙上をにぎわした、銅剣、銅鐸、銅鏡、等も展示されています。古代出雲は、どれだけの富と権力があったんだろうと興味を惹かれます。
    大和の円筒埴輪というのも初めて見ました。大きさに圧倒されます。
    馬の埴輪、鹿の埴輪が出雲のものと大和の物が並べて展示してあります。よく似ているので、同じ文化圏なのではないかと思ってしまいます。
    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    帰って来てから図書館で、下記の二冊の本を借りて読んでみたのですが、古代出雲についての満足のいく情報は得られませんでした。
    「出雲と大和」村井康彦著、岩波新書、2013.01.22
    「古代出雲を歩く」平野芳英著、岩波新書、2016.07.20
    そこで、さらにこの本を借りてきました。
    1984年の荒神谷遺跡の発掘で銅剣358本、銅鐸6個、銅矛16本が出土し、1996年の加茂岩倉遺跡の発掘で39個の銅鐸が出土しました。さらに、出雲を中心に四隅突出型墳丘墓が数多く発見されています。この古墳の築造は、前方後円墳から遡ること約二百年ということです。(21頁)
    これらのことは、出雲を中心とした強力な権力が存在した証拠です。
    著者は、『神々の流竄』という本で、「出雲神話」はフィクションであると書いたそうなのですが、荒神谷遺跡、加茂岩倉遺跡、等の発掘結果を目の当たりにして、考え直してみたというのがこの本です。
    古事記で述べられている出雲神話は、古代出雲の歴史的な事実に基いて伝えられたものであろう、ということになります。出雲方面の神社などに伝えられている話を現地に足を運んで集めながら述べられています。
    ただ、古代のものは、書き残された文書などが新たに発見されるというようなことは、ほとんどないので、古代出雲の歴史がどのようなものであったのかは、具体的には見えてきませんね。

    【目次】
    はじめに 出雲へ
    第一章 出雲王朝はスサノオから始まった
    第二章 オオクニヌシ―王朝を繁栄させた大王
    第三章 考古学が語る出雲王朝
    第四章 記紀の謎
    おわりに 出雲大社の建造
    主要参考文献

    ●出雲王朝(29頁)
    『古事記』を素直に読む限り、アマテラスを開祖とするヤマト王朝の前に、スサノオを開祖とする出雲王朝が、この日本の国に君臨していたと考えねばならない。
    ●銅鐸(173頁)
    銅鐸は中国から来たものではなく、朝鮮の馬の首につける鈴が日本に来て、祭器になったものである(佐原真氏の説)
    ●銅鐸は出雲発祥?(192頁)
    銅鐸は出雲で生まれ、出雲王国の領土拡大とともに中国、四国、近畿で多く作られるようになったのではないかと思う。
    ●大量の青銅器を所有していたのは誰か?(194頁)
    これほど多くの宝器を所有したのは間違いなく出雲王朝の大王であり、おそらくオオクニヌシといわれる「人」であったに違いない。
    ●養老律令(232頁)
    藤原不比等は大宝元年(701)に制定された大宝律令をさらに改正し、不比等が死んだ養老四年(720)に養老律令が制定されたといわれる。大宝律令と養老律令の違いはしばしば問題にされるが、養老律令において天皇の権力は一層弱められ、太政官の権力、すなわち藤原氏の権力が増大することになったことは確かである。
    ●『竹取物語』に登場する五人の「色好みの」貴公子(279頁)
    この五人の登場人物はそれぞれ、持統朝から文武朝にかけての実在の重臣をモデルにしている。「石つくりの御子」が丹比島、「右大臣あべのみむらじ」が阿部御主人、「大納言大伴のみゆき」が大伴御行、「中納言いそのかみのまろたり」が石上麻呂、そして「くらもちの皇子」が藤原不比等である。なぜ「くらもちの皇子」かというと、不比等の母は車持氏の出自で、彼は車持の皇子と呼ばれていた。皇子と呼ばれているのは、彼が天智天皇の子であるという噂によるものであろう。

    ☆関連図書(既読)
    「出雲と大和」村井康彦著、岩波新書、2013.01.22
    「古代出雲を歩く」平野芳英著、岩波新書、2016.07.20
    「古事記」三浦佑之著、NHK出版、2013.09.01
    「古事記」角川書店編・武田友宏執筆、角川ソフィア文庫、2002.08.25
    「楽しい古事記」阿刀田高著、角川文庫、2003.06.25
    「日本書紀(上)」宇治谷孟訳、講談社学術文庫、1988.06.10
    「日本書紀(下)」宇治谷孟訳、講談社学術文庫、1988.08.10
    ☆梅原猛さんの本(既読)
    「仏像」望月信成・佐和隆研・梅原猛著、NHKブックス、1965.04.20
    「続・仏像」望月信成・佐和隆研・梅原猛著、NHKブックス、1965.10.20
    「湖の伝説」梅原猛著、新潮社、1977.01.05
    「空海の思想について」梅原猛著、講談社学術文庫、1980.01.10
    「隠された十字架」梅原猛著、新潮文庫、1981.04.25
    「水底の歌(上)」梅原猛著、新潮文庫、1983.02.25
    「水底の歌(下)」梅原猛著、新潮文庫、1983.02.25
    「ヤマトタケル」梅原猛著、講談社、1986.01.20
    「ギルガメシュ」梅原猛著、新潮社、1988.10.15
    「梅原猛の『歎異抄』入門」梅原猛著、PHP新書、2004.06.02
    (2020年6月10日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    ヤマタノオロチや因幡のシロウサギなどで知られる出雲神話、それは天皇家につながるアマテラスの系譜とは別個の、スサノオを祖としたもう一つの王家の物語である。もしこの王朝が歴史的に実在するものであったなら…『隠された十字架』『水底の歌』以来の、日本古代史を塗り替える衝撃的な論考。

  • 這本書因為考古學在出雲出土大量的銅劍,還有銅鐸和銅矛,顯示之前確實有個強大的古文明存在此地,作者相當具有學術良心地推翻自己四十年前的大和說。這卷分析古事紀和考古學的內容,此外還有點紀行的感覺,已經失去早年的鋒利,但是我依然對作者的學術良心和不斷進化感到敬佩無比。

  • 記紀の定説を大局的な観点で批判している点は良いと思った。ただ津田氏の記紀批判は世にありふれていて、今更感がある。
    考古学成果と古代史、記紀の関係性について掘り下げが深くなく、期待外れであった。特に出雲王朝という単語を気軽に使っていて、出雲の年代別の考察、勢力背景など言及がなく、あくまで神話の人物がいたのでは?というのを繰り返すのみ。
    自らが出雲に対する意見を変えました、というだけの内容。あまりおすすめできない本。

  • 2014/01/21:半分まで読了
    142ページまで

    次回読むときは 第3章 考古学が語る出雲王朝 (143ページから)

  • 先日、出雲のシンポジウムに参加して梅原先生の講演を聞いてきました。
    なので、この本を読んだんだけど、なかなか面白かった!
    専門知識がそれほどなくても読める本だったよ。
    読んでて出雲に行きたくなっちゃった(笑)
    やっぱりフィールドワークをしながら歴史は考えなくちゃダメだね。
    出雲王朝を歴史の裏に隠したのは藤原不比等という考えは、わからなくもないね…。

  • 「日本の表玄関としての出雲を想像してみる」

    自著『神々の流竄』において出雲神話がフィクションであるとの結論に至った著者が、40年の歳月経てその考古学的遺跡を歩いて尋ねることにより、国譲りに至るまでの出雲王国の存在を再度検証してゆく。

    今は差別にもつながるとして使われなくなった「裏日本」とか、あるいは「山陰地方」とか日本列島を太平洋側を基準にして呼ぶ認識はもしかしてここにルーツがあるのではと思った。

    人として(?)の魅力にあふれた「オオクニヌシ」を擁する出雲王国はかつて、日本海側を「越(こし)」と呼ばれた今の新潟地方にまで力の及ぶ大国だった。以前、某書で朝鮮半島側から日本海の向こうに見る日本の形を想像するという一文に非常に意表をつかれたことがある。古代の文化や人の流れを考えると当時はそんな風に大陸側から日本を見るのが普通であって、その認識から言えば、出雲王国は正に日本の表に当たる地域であったかに思われるのだ。

    大陸に面し表日本であったはずの出雲は、皇室の祖先にあたる高天原系の神にその国を譲って以来、日本の裏であり「山陰」に甘んじてきたのでは。つまり太平洋側を表とする考え方って、オオクニヌシが天孫ニニギノミコトに国を譲って自らは黄泉の国へ下ったというこの話以来なんじゃないかなあと、本書を読んで妄想が膨らんでしまった。

    若いころとはうって変わって何やらすっかり柔らかくなられたものの、梅原先生ご健在で良かった。出雲神話をNGとした自説を否定し、出雲大社に参拝して「オオクニヌシノミコトに申し訳ないことをした」と詫びる梅原先生に萌え。

  • 出雲王朝、あったよね。
    やっぱ、あったよね♪
    と、思わせてくれる1冊!!

  • 著者の本を読むのはこれが初めて。『ヤマタノオロチは、ヤマトの三輪山に住む大蛇ではないかという自分の考えは根拠なき妄想であって、いま改める』等々、自分の考えは間違ってましたゴメンナサイという潔さが印象的。私は『古事記』『日本書紀』に関する本を読むのはこれが初めてなので、少し難しかった。最初に読む本はもう少しくだけた感じのものがよかったのかな、と思う。
    とはいえ写真も豊富で、出雲に行ってみたい、もっと記紀に関する本を読んでみたいと思わせてくれた一冊です。

    ただ、この本は重い。通勤に持ち運ぶのはかなり不適。

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著者プロフィール

哲学者。『隠された十字架』『水底の歌』で、それぞれ毎日出版文化賞、大佛次郎賞を受賞。縄文時代から近代までを視野に収め、文学・歴史・宗教等を包括して日本文化の深層を解明する〈梅原日本学〉を確立の後、能を研究。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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