あめりかむら

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 176
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103034520

作品紹介・あらすじ

病再発の不安を消そうと出た旅先で、体の異変に襲われた道子。その瞬間脳裏に現われたのは、あれほど嫌っていた青年の姿だった-。エリートビジネスマンへの道をまっしぐらに進み、周囲の誰からも煙たがられた友人との心の絆を描き、芥川賞候補作となった表題作。下町の、古本屋を兼ねた居酒屋で繰り広げられる人情ドラマ「大踏切書店のこと」。いじめにあう幼な子と、犬との心の交流を描いた「クリ」など五篇を収録。著者初の小説集。

感想・レビュー・書評

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  • ちょっとでも落ち込む事があると、
    (死んだ方がましかも。)
    なんてやけっぱちになったりする私。

    でも、
    考えてみると不思議。
    生き物はいずれ死ぬのに。
    今、
    わざわざ死に急がなくても
    待ってれば
    いつかは死ぬのに。

    5編の物語を読んでいて気がついたのは

    (落ち込んでいる時の私って、
    逆に、永遠に生きるつもりでいるのかも。)と、いう事。

    淡々と、
    粛々と、
    泣きながら眠っている人を
    起こさぬように、と気遣うような優しさで

    「死」を語る短編集。

    いや、間違い。

    生(活)を語る短編集。

  • 初めて読んだ『きなりの雲』が、ヒロインの編むセーターそのままに
    ふんわりと包み込むような温かさで、大好きになった石田千さん。

    2冊目となるこの本を張り切って読み始めたら。。。
    ん?なにか印象が違う。。。そうか、台詞にちゃんと「 」と、鉤括弧がついてるんだ!
    『きなりの雲』では、地の文と渾然一体となった台詞が
    なんとも心地よい、不思議な浮遊感を漂わせていたのですが、
    鉤括弧で括る、それだけでかなり現実的な印象になるものなのですね。

    収められた5篇のうち4篇は、同じ女性を
    現在→幼少期→高校・大学時代→数年前の順に描いている感じがするのだけれど
    1篇めの『あめりかむら』以外はヒロインの名前が出てこないし、
    読み手の想像にまかせる、といったところなのでしょうか。

    この4篇は、ヒロインが再発の恐れのある病を抱えていることもあって
    喪失、後悔、不安、苛立ちが行間からぽろぽろと零れ落ちて痛々しく
    ほんのりと救いの暗示があっても、読んでいてやっぱり苦しくて。

    でも、芥川賞候補となった『あめりかむら』は、病と死に憑りつかれたようなヒロインが
    大雑把だけどプラスのエネルギーに満ちた大阪のおじちゃんの親切をきっかけに
    死を選んでしまった友人に向かって叫ぶ言葉が鮮烈で、凄味を感じさせるし、
    ラストの「あめりかむら、きれいな色の服を買う」というつぶやきからも
    とりあえず生きていこうという意思が立ちのぼって、救われます。

    私としては、第1回古本小説大賞を受賞したという、5篇めの
    『大踏切書店のこと』が、ほのぼのとした味わいがあって、一番好きで

    ちいさな飲み屋の中に、ひとつだけ書棚を置き、
    古書店を営んでいた夫が遺した本を並べて売っている「かねの家」、
    カウンターに並んでつくしのはかまをとるおばあさんたち、
    毎日やってきてコップ酒を一杯だけ飲むハルおばあさんのためにだけ
    立ち退かず、店を開け続けるおかみさんのふみさん、と
    懐かしく、ぬくもりに満ちた描写が素敵でした。

    • 円軌道の外さん

      石田さんはエッセイストとしても有名で、
      商店街での
      面白可笑しい日々の移ろいを切なく綴った
      デビュー作の
      「月と菓子パン」は
      ...

      石田さんはエッセイストとしても有名で、
      商店街での
      面白可笑しい日々の移ろいを切なく綴った
      デビュー作の
      「月と菓子パン」は
      何度読んだか分からないくらい好きな
      自分にとっての
      バイブル本です(笑)


      残念ながら
      小説を書き出してからの作品は読んだことないんやけど、
      まろんさんの魔法のレビュー読んでたら(笑)

      ああ〜変わってないんやなぁ〜って
      また読んでみたくなりました♪

      踏み切りフェチだったり(笑)、
      散歩して
      商店街で買い物するのが好きな石田さんだけに、

      小さな下町の店への愛情あふれる観察眼は
      本当に秀逸ですよね(^_^)


      2012/12/07
    • まろんさん
      『大踏切書店のこと』は、円軌道の外さんならぜったい気にいってくださると思います♪
      だって、下町の小さな飲み屋のカウンターに
      おばあちゃんたち...
      『大踏切書店のこと』は、円軌道の外さんならぜったい気にいってくださると思います♪
      だって、下町の小さな飲み屋のカウンターに
      おばあちゃんたちがちんまりと並んで
      つくしのはかまを取ってる風景とか、
      そのおばあちゃんのうちのひとりは
      冬はあつあつのおでんやさん、夏はかき氷やさんをやってるとか
      なんだかもう、それだけで胸がぽわんと温かくなちゃうでしょう?(*'-')フフ♪

      石田千さんデビュー☆をはかるにあたって、
      実は『月と菓子パン』は、ものすごく気になっていたのですが
      1冊めにこれを選んでしまったら、「やっぱり食いしん坊のまろんさん!」と言われそうで
      ちょっと回り道してしまったことを、今、告白します(笑)

      次は心おきなく、円軌道の外さんオススメのエッセイを読みますね♪
      2012/12/07
  • 「とにかく、きょうまで生きて年をとれた。みんな一日ずつ死んでいる。だれだって等しい。」
    主人公の女性の心の悲鳴が私の心を抉る。
    病気の再発。
    手術後の五年間、無事に来れたと思っていたのに、またふりだしに戻るのか…。
    若くして死と隣り合わせに生きる主人公のひりひりした思い、突きつけられた現実はとても他人事には思えない。
    そんな主人公が辛い現実から逃げるようにして、流れ流れて辿り着いた先で出逢った大阪のおっちゃんの、あっけらかんとした明るさに救われた。
    おっちゃんの生々しさは「生きる」力をくれる。

    幼い頃から不器用に生きてきた主人公。
    特に子供時代、周りのみんなに何とか波長を合わせようとする緊張感や心細さは手に取るように分かる。

    ラストの古本小説大賞受賞作『大踏切書店のこと』はほのぼのと描かれた日常がとても良かった。
    小さな飲み屋にひっそりと置かれた一つの本棚「古書大踏切書店」に夜な夜な集まる近所のお婆ちゃん達。
    熱燗と冷やっこと古本。
    こういう余生もいいな。

  • とても良かった。多分女性の読者の方が共感するところが多いんじゃないかと思う。どの話も私は共感するところがあった。

    作者の石田さんは大学の先輩になる。諏訪哲史さんを読んでから、國學院大学卒の作家さんが意外といると知って読むようになった。
    私は中学生の時に國學院大学に行きたいと思って付属の高校に進学した。美大に行きたかったけど両親が絶対に許さないと分かっていたからもうひとつの好きなものである本と日本文学に強い大学に行こうと思い、大学の図書館の蔵書が凄いと知って國學院大学に決めた。それに、実家が塾だから教員免許を取らなければいけなかったというのもあるし、勉強が大嫌いだから受験勉強とか試験勉強をしなくても入れるレベルというのもある。

    國學院大学は知名度が低い。本当はとても伝統ある大学なのに神道というせいで目立たないように地味に存在している。第二次大戦頃は確かに国が創った神道を学ぶための大学というのは肩身が狭いだろうけど、今なら素晴らしい大学なんだともっとアピールしたらいいのにと思う。だって、大学の前身は明治15年(1882年)に国が創立した「皇典講究所」なんだし、初代所長は有名な山田顕義なんだし、神道だけじゃなく国学の歴史も引き継いでいる(歴史的に価値のある書物や資料だってたくさんある)わけだし、めちゃくちゃスゴい大学なのにそういうのが世間に全然伝わっていなくていつも残念に思う。伝承文学はめちゃくちゃ興味深くおもしろかったし、古典も色々選べるし学べるし、他にも面白い授業が沢山あった。

    文学部だけじゃなく、考古学や哲学も割と有名なせいか、國學院大学卒の作家さんの作品は精神的なところやニッチなところを掘り下げる傾向があるように思う。

    石田さんの作品は人間の内側を重くなり過ぎないタッチで描いていて、バランスが良くて、本当に良かった。

  •  自伝では?と思わせるこの小説はエッセイの千さんのままだった。エッセイよりもちょっぴり深みが足りないような、気はしたけれど。

     心の昏さやいたみをゾクリとするほど自然に表現するところが好きだ。

     収められた「クリ」「カーネーション」「夏の温室」はエッセイのようだった。
    デビュー作「大踏切書店のこと」をやっと読むことができた。

     いい一冊だった。

  • はっきり書かれないといろいろ想像するが、あっているのかと気になる。まあ勘違いでもいいか。

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  • 「あめりかむら」読んでいるうちに、大阪の「アメリカ村」であること。
    三角公園のポリボックスすぐ近くなんだけど、この本のような所を知らない。

    初めて読む作者なのだが、この本は、私にとって、複雑であり、少し違和感を持つ作品であった。

    5話からなるのだが、連作ぽくもあり、それでいて、主人公が男性だと、読み進むと、女性ぽくもある。
    病気を背景にその不安さを描きながら、嫌っていた青年の自殺、幼き時代のいじめ、、、、どれをとっても、少し暗い話であり、読み終えても、印象が薄かった。

  • 『店じまい』の著者の小説ってことで読んでみた。5作品が入っていて小説ごとの主人公が男なのか女なのか読み進めないとはっきりしないものがある。静かな作品で静かに終わった。私の読むタイミングが悪かったのか何も残らなかった。

  • 面白かったです。初めましての作家さんでしたが、すっかり惹きつけられました。病気の影がまとわりつくお話がほとんどでしたが、ほの暗さの中に生きていく力を感じたり。ひとりでふらっとどこかへ行きたい気持ちにもなりました。興味深い作家さんです。

  •  短編集。『あめりかむら』がいい。芥川賞候補作だったとか。受賞作であれ、候補作であれ、読むことがなかった。重い病を持った不安を、凛とした文章で、自らの命に対するけなげで真剣な様子が伝わり、引き込まれました。最後の『大踏切書店のこと』を読んでいて、語り手も作者も、男性なのかと急に気になりました。居酒屋でお酒を飲む場面が頻出するのです。内容にとっては、どうでもよいことか。

  • 20151112読了。
    やるせなくざらつく後味からもちゃんと読み終わらせてくれて、お見通しなんだな、と思った。

  • 間の2作品がちょっと退屈。

  • 石田千初読み。芥川賞の候補になった表題作含む、著者初の作品集。表題作は流石芥川賞の候補になったともあり、この中では完成度が高い。主人公の男友達の広告マンみたいな人っているなーって思う。でも彼には他の人には見えない何かを抱えていたんだろうなー。ただ大阪にたいしてネガティブ過ぎてなんか嫌だった。「大踏切書店のこと」は第一回古本小説大賞を受賞した作品。私はこれが一番好きかな。純文学の香りがする短編集。2012/442

  • 辛い話。

    この本から出会っていたなら、千さんに惚れ込むことはなかった。

  • 芥川賞候補となった表題作を含む5つの短篇集。
    主人公が過去を振り返る、という形で進む話が多かった。
    http://www.horizon-t.net/?p=1193

  • ほわんとする。ほわん系だね。

  • 「大踏切書店のこと」がよかった。ご近所付き合いがうらやましくなるけど、自分だったら距離がはかれず煩わしくなるのかもしれない。でも、いいなあ、と思う。肩に力が入らない付き合いがご近所で成立したら幸せに違いない。

  • 最初の一話以外は、誰がどこを向いて話しているのかよくわからず、集中できないまま終わってしまった。

  • インタビュー記事を読んだら、もっと静かな小説かと思っていたけど、
    苛立ちばかりの小説だった。意外。
    普段はわざわざ気に留めないような、他人の無関心や不親切が、許容できなくなる時って、あるのだろうな。

  • 石田千、好きなんです。
    ただ、最近は難しくてちょっと縁遠くなってました。
    でも、表題のあめりかむら、そしてデビュー作の大踏切書店のこと、の2作はなかなか面白かったです。

  • 2012 5/16

  • 5つの短編が収められている。最後の話の「大踏切書店のこと」がじんわり来るしみじみといい話。この一話だけで星4つ。

  • わかるなーと思うところもあったけど、重かった・・

  • 芥川賞候補になった石田千さんの著作を、始めてよみました。
    エッセイで活躍されている方なんですね。

    時代や名前に、匿名性を感じました。
    主人公が女だと思っていたら、男だったとか。私の読解力が足りないんだと思いますが、この人誰だっけ、と思う箇所がいくつもありました・・・時間も結構いったりきたりしますし。
    でも、食べ物がどれも美味しそうですね!お酒がすすみそうで、深夜にも関わらず冷蔵庫を漁りそうになりました。
    桜の塩漬けなんて、私も貰ってみたいです。

  • 「大学にいたいた、あんなヤツ」って思いながらみんな読むんじゃないだろうか。ざらっとした不快感と、苦い懐かしさのミックスがなかなかいい。

  • エッセイの印象が強いため、フィクションであってもつい(何も知らないはずの)著者の実生活に重ねてしまう。さりとてそれを狙って書くような著者とはとても思えず、なんだかさらに重くなり...友人の日記を読むような心持ちとなり、物語を楽しむところまでたどり着けず。

  • 表題作と古本小説大賞を受賞した「大踏切書店のこと」が好きです。あめりかむらは小さい意外な事件がぽつぽつと起こるので気になって楽しく読みました。ディープな大阪、昔のアメリカ村の変なところを思い出しました。面白かったです。これは芥川賞でしょう!と思いました。女同士の友情を描いた「夏の温室」も好きです。

  • 「さっき、あなたの捨てたこの世で、やさしくされたのを見てたでしょう」

    まぎれもなく、私の好きな、石田千だ、とおもった。

    なぜなら「みなも」を読んですこし、がっかりしてしまったので
    嬉しかった。

    とくに
    表題作と、書下ろしの「夏の温室」と、「大踏切書店のこと」が素晴らしい。
    どれにも病気とか死のにおいがある。
    だからこそ、生き生きと日常が描かれている。
    抽象的な文章ではなく
    具体的な文章の似合うひとだ。

    余韻と行間をきちんと読者に提供してくれる短篇集だった。

  • 町の人の細かい動作を見る視線が、無表情なようでいて、その時その時の主人公の気持ちをとても映し出しているようで、すごいと思った。
    せりふも、実際に町の人が言いそうなもので、主人公の心の動きが生々しく感じられた。
    主人公が男性のものがいくつかあったが、女性作家が書くような細かい描写が多かったので、途中主人公を女性だと思って読んでいる時がたびたびあった。
    病気の影が見え隠れする作品が多くて、少しだけ暗い気持ちになる。

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著者プロフィール

石田千(いしだ・せん)
福島県生まれ、東京都育ち。國學院大學文学部卒業。2001年、『大踏切書店のこと』で第1回古本小説大賞を受賞。「あめりかむら」、「きなりの雲」、「家へ」の各作品で、芥川賞候補。16年、『家へ』(講談社)にて第3回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞。16年より東海大学文学部文芸創作学科教授。著書に『月と菓子パン』(新潮文庫)、『唄めぐり』(新潮社)、『ヲトメノイノリ』(筑摩書房)、『屋上がえり』(ちくま文庫)、『バスを待って』(小学館文庫)、『夜明けのラジオ』(講談社)、『からだとはなす、ことばとおどる』(白水社)、『窓辺のこと』(港の人)他多数があり、牧野伊三夫氏との共著に『月金帳』(港の人)がある。

「2022年 『箸もてば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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