校舎の静脈

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著者 : 日和聡子
  • 新潮社 (2015年9月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103037729

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校舎の静脈の感想・レビュー・書評

  • 『その合間に、犬をちらちら見たり、そのまわりにいる人たちを視線の端に入れつつも、絶えず誰からも目を逸らすようにして歩いた。先ほど少しだけ降った雨にかすかに湿る地面をゆく足の運びに合わせて、じゃ、じゃ、じゃ、じゃ……、と音が鳴り、その音を立てる靴裏の感触が、ふくらはぎに伝わって、背中にはりつくようにして後ろからついてきた』ー『兎』

    言葉の響かせる音は時に字義通りの意味とは別に何かに成りかけのものを連想させる。うっかりしていると頭の中はそんな中途半端な出来損ないの未成熟の言葉で埋め尽くされ息苦しくなる。詩人と呼ばれる人の頭の中はさぞやそんな風に次から次に浮かび上がる意味を掴みかけたもので埋め尽くされているのだろうなと常々想像しているのだが、人の頭の中など容易く覗き込む訳にもいかず中々得心することは叶わない。日和聡子はそんな滅多にない機会を与えてくれる稀有な文章を提示する。

    言葉の意味を伝って文章を紡いで行くのではなく音の波が進んでいった先で跳ね返されることの繰り返しを考え過ぎずに重ねること。その跳ね返された音を再び言葉に置き直しまたその音の響いて行く先を追いかけて行く。意味を繋いでその足跡を辿ろうとすればたちまち迷路に入り込み、かと言って言葉遊びのように構えていると無意識の沼底から意識の水面に浮かび上がりそうになるものを掬い損ねる。まるで半眼の境地のような心持ちで日和聡子の心の動きと同期することに集中する。意識せず意識する。意識しつつ意識していることを忘れる。そんな読書の楽しさを味わう。

    見えていることは本当に表層的なことばかり。意味は本当は定義を必要としない。意味は文脈の中にだけ存在し文脈は曖昧な音の重なりの作り出す共鳴に依存する。言いたいことを直裁に言おうとすれば意味は言葉の隙間からこぼれ落ち言いあぐねていること程伝搬する力を持つ。そんな理不尽さをものともせず、詩人は言葉を重ね一時の躊躇いや逡巡を無意味なものに変換し置き去りにする。その力強さに驚愕する。

    日々自らが重ねる言葉の皮相さと風向きを意識した言葉尻の曖昧さを否が応でも思い返さずにはいられなくなる。日和聡子の言葉の強さを思う。

  • 詩人というとやたらレトリックを駆使したり奇をてらった言葉の術で煙に巻いたりが昨今の流行り?なのであるが日和さんの小説はそれが少なく直球勝負が多いように思う。
    だからこそその飾りのない剥き出しの言葉の破壊力は凄まじく例えばそれがスーパーのチラシや給食の献立表の羅列からでも易々とドラマを産み出すことが出来るのだ。
    そしてその感性が学校という日常を切り取るとき校舎に生命を与え子供たちの他愛ないことばや行動が赤い血となって流れ出す。
    当然動の対には静があり青く流れる血がこの作品の主題となるのだが…踏み込んで心の臓は何かを探すのも一興かも知れない

  • 言葉の綴り方が綺麗。形が曖昧な宮沢賢治のような世界観。でも、あやふやすぎてすっきりしたない。

  • 少年少女たちを主人公にした、裏日本の鬱陶しい天候のようなパッとしない4つの短編から構成されている。面白くもなく、徒然なるままに幻想世界を書いているような作品。

  • 不思議なんだけれど、淡々としている。

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校舎の静脈に関連する談話室の質問

校舎の静脈の作品紹介

校舎というラビリンスでは日常はたえず奇妙にゆらぎつづけている! なかに入るとタイムスリップするという給食運搬用のリフト。毎日屋上からフェンスを越えて飛び降りるとささやかれる安行という謎の男。こことは並行して存在する異世界に思いをめぐらす少女。一見平凡そのものにみえる学校のかげに生じるかすかな綻び……。現実に微妙なズレを感じつつ生きる少年少女達を描く表題作他三篇。

校舎の静脈はこんな本です

校舎の静脈のKindle版

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