花宵道中

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103038313

作品紹介・あらすじ

吉原の遊女・朝霧は、特別に美しくはないけれど、持ち前の愛嬌と身体の"ある特徴"のおかげでそこそこの人気者。決して幸せではないがさしたる不幸もなく、あと数年で年季を終えて吉原を出て行くはずだった。その男に出会うまでは…生まれて初めて男を愛した朝霧の悲恋を描く受賞作ほか、遊女たちの叶わぬ恋を綴った官能純愛絵巻。第5回R‐18文学賞大賞&読者賞ダブル受賞の大型新人が放つ、驚愕のデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 「男に惚れる事は死へと向かう事
    意地でも死んでなるものか、死んでも惚れてなるのもか…。」
    「目を瞑って、愛しい人を胸に思って、他の男に抱かれるんだ…。」

    江戸末期の新吉原遊郭にある「山田屋」という
    小見世を舞台に綴られた5編の連作短編集。

    ●『花宵道中』
     遊女朝霧は深川八幡様に行った折、半次郎と出会い恋をしてしまう。
     偶然顔を合わせたのは馴染み客・吉田屋藤衛門の宴席だった。
     初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧…。

    ●『薄羽蜉蝣』
     初見世を控えた茜には、密かに想いを寄せる男がいた。
     角海老楼の売れっ妓・水連の間男だった…。

    ●『青花牡丹』
     島原遊郭の大見世の番付女郎・霧里。
     大見世の看板女郎・菫のお客を取った事が原因で吉原に追放されてしまう…。

    ●『十六夜時雨』
    ●『雪紐観音』


    それぞれ、主人公は異なりますが、読み進むにつれ
    各主人公達の関係性がどんどん繋がっていき、
    交錯していくので物語に深みが増していきます。

    冒頭の季節外れの彼岸花のように寝巻を真っ赤に染めて死んだ
    朝霧の姉女郎が誰だったのか…。
    阿部屋の半次郎がどうして吉田屋藤衛門を殺さなければならなかったのか。
    登場人物達の関係が、次第に紐解かれていく構成は、とても面白かった。

    愛する男の前で辱められてしまう朝霧の哀しみ
    そして、朝霧は死んだ男の後を追っておはぐろどぶに身を投げた…。
    水連は、愛する男と共に生きる事を選び地の果てまでよと足抜けし…。
    三津は、ずっと隠してた罪を打ち明けて病で死んだ…。
    そんな三人を思い
    八津は「あたしは此処で生きて行く」輝くような一言だった。

    貧しさ故に親に売られたり、女故に攫われて売られる。
    彼女達のあまりに過酷で切ないエピソードに心が痛みました。
    でも、儚く残酷な運命の中でそれぞれが自分の道に
    花を咲かせ…そして散っていった。
    遊女の悲哀・生き様、女性の弱さと強さを切り取り鮮やかに描いています。
    でも、とにかく切ないです。

  •  時代小説は苦手で、ほとんど読んだことがない。この作品ははじめて心に残る時代小説になった。
     とにかく切ない。
     自分の存在しなかった時代のことをこうも見てきたように描けるものかと思う。
     これが彼女のデビュー作。うますぎる。

  • 最近のマイブームが時代小説で色々読みあさっているが、これはまた今まで読んでた時代物とは色の違うもの。
    R18文学ってものがあるんですね。
    官能的と書いてある通り性描写はかなり容赦ない。
    でもそれがイヤラシイかって言うとイヤラシクない。

    哀しくて切なくて美しい遊女達の素敵な作品でした。

  • 江戸吉原の小見世「山田屋」を舞台にした連作短編。
    「目を瞑って、愛しい人を思って、他の男に抱かれるんだ」
    毎日を精一杯に生きる遊女達の、情や業の深さと芯の強さに胸を抉られる。
    見世にとって遊女は単なる「商品」と見なされる。
    けれど単なる「商品」では終わらせない彼女達の、粋で凛と気高い生きざまにざわざわと心が揺さぶられる。
    そして短編が進むにつれ明らかになる女達の真相に切なすぎて泣けてくる。

    生きることは困難で、生き抜くことはもっと険しい。
    それでも吉原で生きていく覚悟を決めた女達の強さに感動した。
    「女による女のためのR-18文学賞」にとても相応しい作品だと思った。
    宮木さんの作品をもっと読んでみたい。

  • R-18文学賞のことは耳にしていたけれど
    この作品が受賞作とは知らなかった。

    今回読んでみて感じたことは、
    性描写云々よりも、とにかく哀しい。
    そして、この作者さんは文章でもって
    色鮮やかな世界を紡げる人だということ。

    読み続けていくうちに、登場人物達の関連が分かってきて、「ああ!」と納得した。
    因果だ。そしてやはり、哀しい。

  • はわわわ…!大満足でした。
    緑ちゃんの章まで一気読み。
    くすぶる熱に溢れる想い。
    足枷となる己の身分…。
    み、満たされました。
    幸せな結末でない。そこに思いっきり揺さぶられました。
    みんな幸せにしたげたい…。



    ↓以下ネタバレ

    朝霧・半次郎夫婦
    ラブストーリーは突然に。的展開で熱が一気に沸き立ったと思ったら不穏な流れに一気に熱が冷めて胸中でやめてやめてやめたげてよおお!!!連呼。
    初っ端から大きな恋(クライマックス)が終わってしまって次章から(自分が読み切れるか)不安になる。(勿論いらぬ心配だった)

    霧里東雲姉弟
    遠く生き別れた二人を繋ぎとめた朝霧の中に生きる霧里の魂。自分の手で好いた女の笑顔を守ってみせると決意した半次郎。
    『数年後に訪れるであろう細々と幸せな日々』に泣いた半次郎に私が泣いた。見たかった。
    あんたたちの幸せを…。
    嗚呼純愛。悶絶。ぱたり


    八津三弥吉夫婦
    三弥吉のイケメンぷりに翻弄(私が)。普段それほどまでの激情を内に秘めていたんか…。な本番にジタンバタン。まぢやってくれるなカリスマ髪結師。この調子でどうか八津ちゃんの年季明けまでお見合いスルーしまくって下さい。


    桂山さん
    一生ついてイキヤッス!


    三津緑
    まさかの緑ちゃん登場の百合展開…。抜かりない…。


    弥吉
    ロリコン疑惑が最後まで拭えないまま迷宮入り。多分純粋にいい人……なのだろうか。(悶々)

    はぁ素敵だった。

    渡辺多恵子さんの風光る(特に山南さんと明里さん辺り)を読んでから花魁のお話読みたいなぁと思ってたら、ダ・ヴィンチの女性向け官能小説で紹介されててこれだと思い借りてきました。(そうか…官能小説なのか…)

    多分何回読んでもときめきは失せないだろう作品。漫画も宮木さんの他作品も読んでみたいです。

  • ホラ・・・、今、花街ネタってちょっと、興味がありますやん・・・(某乙女ゲームの影響で)。

    そもそもは、この本を原作にした映画を安 達 祐 実氏が主演するっていうのを聞いて、
    「あ、ちょっと観たいかも」
    と、思ったのよね・・・。もう数年前の話やけれども。

    安 達 祐 実氏はわりと好きで(演技が)、テレビ版の「大奥」に(和宮役で)出てたときなんか、
    「あんな童顔なのに、あんな芯のしっかりして、なおかつ可憐な感じになるのか・・・」
    と、かなり惹かれたのよね・・・。

    あの幼い感じが、いかのも箱入りな和宮にピッタリやったのかもしれへんけど、そのときの大奥は二部構成で、その前は菅 野 美 穂氏がやっていたのけど(篤子役のほう・・・。綱吉ではなくて・・・)、あの菅 野 美 穂氏との差もすごかったんだよねえ~。

    さすが、北島マヤを演じた人・・・(笑)!

    おっとそれまくり。
    で、そんな安 達 祐 実氏が、今度は太夫あたりを演じるのかーと、若干興味をひかれたんやけど、いかんせんR15。
    R15の映画なんて、ごめん、よう見れない。@40才

    ちゅうことでしばらく忘れていたんやけど、さらに数年前、数年ぶりに古本屋へ行ったらこの本が売られていて
    「あっ」
    と、手にしてんけどねー・・・。

    ぱらぱらっと見て、
    「イヤイヤ、たぶんまだ私には早い」@40才
    と、また棚に戻したわけやけど、今回、図書館で借りて読むハコビとなりました・・・。

    (長っ)


    きっかけは、ツイッターかブログでお友だちの会話を目撃してやと思う。笑
    (なんせ、本を読む話にはものすごいいきおいでくいつくので・・・)

    おふたりがこの本について話してられたのを見て、
    「うお、私も読んでみたい」
    と、思ったのでした。前々から気になってる本やし、きっと読むなら今なんやろうな! とか。


    元々私は官能小説というのはほぼ手にせえへんねんね・・・。

    まあ、見ての通り基本ライトノベルばっかり読むし、作中でちょっとしたイチャイチャに
    「うわあああ―――!!」
    と、もえたりもするんやけど、私がもえマックスなレベルって、最近なら「いい加減な夜食」程度。

    (どこにイチャイチャがありました? 程度の)

    だからこそ、この本を読むのに数年かかってるんやけど、官能小説というのは(あ、男性向けはハナから視野に入れてませんスイマセン)、コトに至る過程どころかコト最中の描写をするという「官能」よりも、コトに至るほどむき出しになる「本能」を描写するものやと思うのね・・・。

    (わかりにくい・・・)

    ようは、コトに至るなんて本能のみで成り立ってるでしょう。
    そこを堂々とさらけ出せるほどの、なんやろう、勇気というか吹っ切れ具合というか、私にはそういうのが皆無なんだよね。

    こんなけアレコレ文章に書きたがるくせに、本能をさらけ出せるかというと、それがなかなか出せない。
    それってきっと、スキーでスピードを出せるとか、大きな声で歌を歌うとか、なにか自分の一面を切り崩す代わりに新しい世界を見る、みたいな、そういうスリルと向き合えるかどうかっちゅうかなんちゅうか誰か助けてまとまらんわ(笑)。

    まあそういうわけで、もっとこう、キレイゴトだけを並べたような作風が好きなのでライトノベルばっかり読むわけやね。
    官能小説というのは、(特に女性の)一番芯の部分を掘り起こすものなんやと思うわ。


    たまには、いい・・・。
    たまには、よかった・・・。
    さすが、「本能」だけあって、読み始めたらとにかく先へ先へとページをくっていっちゃって、イッキ読み。
    ほんで、たくさんの女性が登場したうちで一番グッときたのが八津でした(一番、「本能」に従えない子やと思う)。

    著者の別タイトルも読んでみようかなあ・・・。

    (2016.07.09)

  • 図書館より。
    マンガが気になって先に原作を読んでしまった。
    もの哀しい。
    本当は☆☆☆☆でもいいんだが、やっぱり哀しい読了感。
    最近、この手の哀しい本は避けていたからか。
    なんだか切なくなる。

  • どんな男に抱かれても、心が疼いたことはない。誰かに惚れる弱さなど、とっくに捨てた筈だった。あの日、あんたに逢うまでは――。
    初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑…儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。
    江戸末期の新吉原を舞台に綴られる、官能純愛絵巻。R‐18文学賞受賞作。

    艶っぽく、丁寧で情緒に溢れた美しい文章。そしてこの何とも粋な相関関係。
    うっとりとため息をついてしまう程こんなにも雅やかな小説は初めてです。気付けばいつの間にか、華やかで物悲しい江戸吉原の世界にぐいぐいと引き込まれていました。
    遊廓という場所で遊女としてありながら、叶わぬ恋をしてしまう女たち。淫靡で、繊細で、無常で……豪華絢爛な衣で隠した心は何を叫ぶのか。
    過酷な人生を必死に生き抜こうとする彼女たちの強さと、淡く切ない恋心に胸が締め付けられます。

    とにかく素敵。読み終えてしまうのがもったいなく、「ずっとこの世界に浸っていたい」と思わせてくれる麻薬的な魅力がありました。
    一つ一つの言葉を噛み締めながら、何度もじっくり楽しみたい小説です。

  • 「女による女のためのR18文学賞」なるものをとっている本作品。
    確かにそういう場面はふんだんにあるけれど、時代小説で舞台が遊郭という日常とかけ離れたものであるせいなのか、耽美的な描写のせいなのか、みだらな感じはしなかった。
    普通の恋愛モノとして読めてしまいました。
    もちろん大人女子向けですけどね。
    確かに、この話をリアルに捉えるより悲恋な物語として読むほうが女として楽しめると思います。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。2006年『花宵道中』で女による女のためのR-18文学賞の大賞と読者賞をW受賞しデビュー。『白蝶花』『雨の塔』『セレモニー黒真珠』『野良女』『校閲ガール』シリーズ等著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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