灰色の虹

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (549ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103038726

作品紹介・あらすじ

身に覚えのない殺人の罪。それが江木雅史から仕事も家族も日常も奪い去った。理不尽な運命、灰色に塗り込められた人生。彼は復讐を決意した。ほかに道はなかった。強引に自白を迫る刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士。七年前、冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。ひとりの刑事が被害者たちを繋ぐ、そのリンクを見出した。しかし江木の行方は杳として知れなかった…。彼が求めたものは何か。次に狙われるのは誰か。あまりに悲しく予想外の結末が待つ長編ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 貫井徳郎さんも読んでみたいと思っていたミステリー作家さんのひとり。
    そんな貫井ワールドには最新刊で足を踏み入れました。
    面白かったです!!
    これはもう、他の作品も読まなくちゃ~。楽しみがまたひとつ~♪

  • 図書館にて借りました。
    再読ですが、やっぱりいい・・・。
    そして辛い。

    「冤罪」
    このたった二つの文字で人生が変わる。
    昔ながらの「刑事」により、私益しか考えない「弁護士」により、「司法」を神とする検事により、「法」の番人の裁判官により。
    そして、見えない矢を放つ一般市民により。

    事件は明らかな「状況証拠」で「自白」と「目撃者」の証言が決めてになった。
    だったら何故自白を?と思ってしまうが、今まで何の関わりも持たずにいた「警察」に連れ込まれ、怒鳴りつけられたらそりゃあ怯むでしょう。
    いいたい事半分云えたらいいくらい。
    この刑事にさえ当たらなかったら、とついつい感情移入してしまう。

    白かったものが疑えば疑うほど灰色に見えてくる。
    そして、灰色は黒に近くなり「これも黒だよな?」と冤罪が生まれる。

    正直、江木に復讐のひとつもさせてやりたくなる。
    特に「目撃者」の雨宮。
    しかし彼を責めても、責めきれないこともある。
    記憶と云うモノは時が経つにつれ曖昧さを生む。
    その曖昧さに漬け込んだのが、「正義」と言う名の冤罪だからやり切れない。

    「だって、誰も信じてくれなかったじゃないですか!」作中より

    この叫び声が実際に聞こえてきそうな程、緊迫した終焉。
    誰がなんと云おうと、江木を信じていた母親。
    その深さに引き摺りこまれそうになる山名刑事。

    「復讐は連鎖する」

    正論で解っているけど・・・けど。
    そんな言葉に出来ないもどかしさを感じる。

    ラストの章がまた哀しい。
    江木も由梨恵も悪くないのに。

    個人的に最初の章の事件は冤罪なのか冤罪じゃないのかがものすごっく気になります!
    そして、裁判官・石嶺がやたらと頭髪を気にしていたのが笑えた。
    奥さんの不倫疑惑相手の写真を見て、
    「その(相手の)年齢の時には既に頭髪の心配をしなければならなかったのにー!」の所は最高!
    何であんな所で変装して死んだのかは一生言われると思うよ。

  • 冤罪をテーマにした話。重い。とにかく重い。やっと幸せを掴もうとしていた主人公の人生が、一転して不幸になっていく様は読んでいて辛く、主人公と母の無念を思うと泣けた。時折世間を騒がす、こういった冤罪。やはりあってはならないと痛感させられる。悲しいがよい作品だった。

  • ●あらすじ●
    刑事、検事、弁護士が殺害された。
    捜査を担当する刑事の山名は、彼らがある事件で繋がっていることを突き止める。

    小さな運送会社に勤めていた江木雅史は、顔に目立つ痣があり、無口でまじめな青年だった。ある日同僚で恋人でもある由梨恵が上司に理不尽な叱責を受け、江木は思わず上司につかみかかる。
    ところがその夜、上司が何者かに殺されてしまう。社内での出来事と、一人で夜釣りに行っていたせいでアリバイがなかったことから、江木はやってもいない殺人の罪で逮捕・起訴され、暴力刑事の取り調べに屈して罪を認めてしまったのだ。
    自白は強要されたものだし物証もない。江木は無罪判決を信じていたが、「灰色のレインコートと顔に痣がある男を見た」との目撃証言が決定打となり、懲役6年の判決が下されてしまう。

    控訴も上告も棄却され、打ちひしがれながらも服役を終え出所した江木だったが、父は自殺しており、姉には絶縁され、恋人も去り、唯一彼の帰りを待っていた母・聡子は世間に白い目で見られながら暮らしていた。
    前科者となった江木に世間は冷たく、仕事もなく、ついに疲れ果てて自殺を図る。
    しかし一命を取り止めた江木に、母は涙ながらに生きろというのだった。

    目的も、逃げ場もなく、死ぬ事すらできない…。江木はついに、自分を冤罪に追い込み全てを奪った者たちへの復讐を決意する。

    そして起こる連続殺人事件。
    山名刑事は7年前の事件が冤罪である可能性に気づき、江木が犯人だと確信する。一方で、殺人を繰り返している筈の江木の姿が、まるで煙のように現場から消えていることに不安を感じていた。

    姿なき殺人者を警戒し、山名刑事は、7年前の事件の目撃者だった雨宮と接触した。そして実は、江木を見たという目撃証言が不確かなものだったと知った。
    山名刑事は、母・聡子に江木は無実だと伝えるが、聡子は「もう遅い」と繰り返すばかり…。

    江木雅史はどこへ消えたのか?
    連続殺人の犯人は、ほんとうに彼なのか?

  • 冤罪、という重いテーマの本。このように冤罪は作られていくのか・・というリアリティある描写は説得力があった。そして一人の人生のみならず、その家族をも取り返しのつかない破滅へと導いてしまうこの冤罪は、本書にあったように「複数の人達に少しずつしか責任がない」という事実が恐ろしい。殺人事件の場合、真実は被告本人しか分からないので、冤罪がなくなる事はないと思うと救いもない。

    但し、本書について具体的に言えば「乱反射」と根本のテーマは似ているのと、これが貫井の書き方でそれはそれで飽きさせない効果は抜群なのだが、話の視点が何度も切り替わる手法も似ているので、この2冊を短期間のうちに読むと既視感を覚えるというか、「また?」という印象を抱いてしまった。

    そして、冤罪に関わった警察と司法関係者を批難する内容ばかりだが、やってもいないのに「やりました」と嘘の自白をすると当人はやはり自分の言葉に責任を持つべきなのではないか、と相当な反感を覚えてしまった。いくら警察の追及が怖くても、気が弱くても。

    ちなみに冤罪はごく一部の話であり、警察の強引な取調べによって明るみになった事件も多くあるはず。そこも忘れてはならないと思うので、すぐに警察の取調べ手法を批判するとか、前面可視化については私は賛成できない。悪いやつは悪いやつだから、相当な覚悟と態度で持って警察だって対峙しなくてはならない。

    多少ミステリーっぽい部分についてはあってもなくても、本書の内容に大きな影響は与えない気がした。

  • 怖いです。怖かったです。
    身に覚えのない殺人の罪。
    市民の味方であると思っていた警察官による
    自白偏重主義による強引な自白強要。
    「いいか!このままおとなしく帰れるなんて、そんな甘いことを考えるんじゃねえぞ!お前が正直に何もかも話すまで、何日でも何十時間でも付き合ってやるよ」の脅し。

    やっていないことをやりましたと認めさせらてしまった・・・

    報酬の少ない(意外だった)当番弁護士のやる気の無さ。
    (もっと誠実に弁護していただけないものなのか?!)

    膨大すぎる仕事の量と自分をクレバーだと上から目線の
    冷徹検察官。
    (クレバーすぎると心情は欠けてしまうものなのか!?)

    堅物マシーンの裁判官。
    (なんだこいつのマシーンなような生活は!?)

    ちょっと刺激を求めた興味本位の安易な目撃者。
    (なんなんだよ~自分の言葉に責任をもって欲しいよ)

    なんで冤罪になってしまったんだよ~
    なにか俺がしたっていうのかよ~
    普通に日常を送っている人が!!
    殺人の罪に仕事も家族も日常も奪い去られた
    理不尽な運命、灰色に塗り込められた人生。

    怖いです。怖すぎます。

  • 伊佐山の心のどこに正義感があるというのかまったく分からなかった。死んで当然、と思ってしまうほどの胸糞悪い人物。
    終盤でやや捻りに欠けるものの、それを補うくらい、母親である聡子の「今になってあたしたちを責めるくらいなら、どうしてあのとき雅史を信じてくれなかったんですか?」という声が重過ぎる。

  • 結局、いちばん悪い奴が生き残るのね。
    刑事も悪いがこの目撃者がいちばん悪い。

    冤罪は怖い。

  •  刑事は不快感しか感じなかった。性格悪いし、強引だし、どんどん冤罪作りそうだから、死ねとは言わなくても刑事やめるべきだと思った。でもそれ以外の人はどうなのかな。それぞれの仕事をしただけだし、かといって江田はもちろん悪くないのに人生狂ってるし。。刑事が全ての根源と思えてならない。

  • 2013/11/24冤罪恐ろしい。読みやすい文書でどんどん進んだ。展開は概ね予想通りでした。やや甘の★4つ。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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