マザーズ

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著者 : 金原ひとみ
  • 新潮社 (2011年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103045328

マザーズの感想・レビュー・書評

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  • ドリーズルームという保育園に子供を通わせる同世代の母親3人の物語。
    作家であるユカは昔から手をつけていたドラッグを手放せない。
    モデルの五月は夫との不仲を抱え大学の非常勤講師である待澤と不倫。
    専業主婦の涼子は神経質な母と育児に無頓着な夫との間で育児の孤独を味わう。

    3人の誰もがみな、何かしらの問題を抱えそれを話せずに包みこみ隠し込み
    押し殺して日々の生活を送っているが
    少しずつ歪が生まれ、それが徐々に浸透してくる。

    全く異なるタイプの3人に共通するのは、孤独であるという事。
    自分のおなかから生み落とした、分身とも言える、自分に一番近しい存在があることで
    彼女たちは「母親」であり続ける。
    そのために多くの事を犠牲にして、言葉に出せずに、伝えられずに
    「母親」ではない本当の自分を殺して、孤独に苛まされる。

    母親であることの嬉しさ、幸福感、そして絶望と孤独。
    を苦しいまでに細かく細かく書き綴られている。

    ◇◇◇

    この本、全編を通して一貫しているのは「孤独」

    母親は子どもにとって神よりも絶対的な存在で
    いつもそこに変わりなく
    自分のすべてを
    ただただ丸ごと受け入れてもらえるものです。

    子どもはそれを無意識に認識します。
    社会は母親が子供にとってそういった存在であることを当然であり、
    それが出来ない母親は悪であると認識しています。

    そして母親はそれを完璧に一片の曇りもなくやり遂げなければいけないという認識をせざるを得ない環境にいて
    孤独にならない方がおかしいでしょう。

    この本はそういった孤独を本当に細かく伝わりやすく(伝わりすぎるくらいに)書かれています。


    育児だけではなくて女として人としての考え方にもはっとさせられる部分も多くて
    今回特に印象に残っている言葉は

    「(子宮を摘出した母がホルモンバランスのせいで鬱になった事から)男は、女が陥ったら鬱になるような状態で生きているのだ。
    女にあって、男にないものは、自分自身の胎内にありながら自分自身を大きく左右し、人生をも変えてしまう抗う事の出来ない絶対的な存在だ。
    女は成長過程で思いのままにならない体や現実を受け入れ、
    その条件下で生きていく術を身につけていくのに比べて、
    男は絶対的なものが自分の胎内ではなく外にあると思いこむから幻想を追い続けながら生きていくことが出来るんじゃないだろうか。」

    「理解できないものはとりあえず否定、という人たちを私は否定しない。
    理解できないものをとりあえず肯定しようとする人たちは偽善者だし、
    それは肯定を装った否定だ」

    まだまだあったけど、この二つを挙げます。

    とりあえず、この本はいつも自分が目をそ向けたい部分にばかり切り込みを入れてくるから心が苦しくなるし
    自分のいやしい部分が浮き彫りにさせられる。

    この本を読んで、どこにも心底共鳴できる部分がなかったとしたら
    その人は女神かそれとも自分の事を何も知らないんじゃないかなあと思う。

    そのくらいに女性の事が緻密に書かれてるんじゃないでしょうか。

    同時に、男性がこの本を読んだらどういう感想を持つんだろうと気になりました。
    もしこの本を読んで登場人物に不快感を持つだけだったとしたら
    きっと母親たちの孤独は今後も深まっていく気がして怖いですね。

  • 私はモデルでもないし作家でもないし、
    クスリもやらなければ不倫もしなかった。
    そして虐待も。

    だけど子供を2人育ててきた上で
    悩みにぶつかったり「なぜ私ばっかり」と思ったことも
    多々あった。
    ちっとも何も悩まずに苦しまずに子育てできる人って
    いるのかな。
    よく雑誌で素敵な奥さんライフを紹介している
    女優やモデルや素人さんがいるが
    あれはきっとうわべだけなのだ。
    みんな何かしらぶち当たっているはずなのだ、あの時期は。

    金原さんは残酷なことをズバズバと書く。
    もうここら辺で…と言うことをしない。
    たたみかけるような叩きつけるような長台詞が続く。

    読んだ後は疲れと重いため息。
    そして判らないでもない若い母親の苦しみ。

    これは是非「男性」に読んで欲しい。
    結婚を考えている男性とか、子供が出来る前の旦那さん。
    怖いけど読んで欲しいな。

  • 文字が胸に入ってくる度、閉塞感で窒息死するかと思ったー。
    小説を読みながら手が震えて身体が硬直して、わなわなしたのは久しぶり。
    三人の女を生きて、私がぶっ壊れるかと思った。パーンするかと思った。
    それほど、本作で描かれる三人の女は私であり、どこにでもいる女であり、容易に想像できる未来の自分でもあったのだった。

    けれど勝手に悔しく感じちゃうのは、きっと思ったより多くの人がこの小説を本当の意味で受容し、許容し、理解するということがないだろうということだ。

    残念だけれど、育児は、そして母という生き物には、実際になって、しかもこうした苦しみを経験してみなければ本当には理解したといえないのだ、きっと。
    病気だって小さな悩みだって、その当事者になってみなければ分からないと言えるかもしれないが、育児というのはそれとはまた少し違うと思う。

    何故なら、多くの人の根底に「母は子を無条件に愛し、保護し、養育すべきであり、だから自分のことを優先したり自由を欲したりなど愚かなことであり、つーかそんな母親に育てられる子供マジ可哀想ありえない」というどこで植え付けられてしまったんだか分からないが、思ったより深くまで根付いている幻想が少なからずあるからだ。

    書かれている苦しみに顔を歪ませ、目を背けたくなり、胸を痛ませても、結婚出産未経験の女性や男性、結婚出産をしていても幻想の中で生きていけた人やその幻想を崇拝している人にとっては、それは分かった気になっているというだけで、どんなに痛ましさや苦しさに涙しても、心の奥深くにはそうして狂う母親たちに僅かでも嫌悪を覚え、軽蔑を滲ませた人がいるはずだ。
    特に涼子になどは、なんだこの女サイテーだなと引いてしまう人が思った以上にいる気がする。

    でもそれは当然のことなんだろう。
    遺伝子のせいなのか、メディアのせいなのか、私には到底分からないが、私たちには(もちろん全ての人にとは言わないが)前述したような幻想がいつしか根付いてしまっているのだし、実際弱者に暴力をふるう行為は最低だ。
    勿論育児や母親の在り方というものには色んな考え方を持っている人がいるし、何が正しいかは価値観の違いによって様々に変化する。
    普通はそうだ。

    でも、本作で描かれた子育てをする母の、全ての思考台詞が「全部、完璧に一寸の狂いもなく分かって受け止めて欲しい」という叫びなのだと私は感じた。
    だからこの小説の中に正しさは一つしかないんじゃないかと思う。
    それはひどくざっくばらんに言うけれど、育児には周囲の深い理解と手助けが必要だ、ということじゃないかなーと。
    ……うーん、難しいな、ほんとざっくばらんすぎで伝わっている気がまるでしない……!


    でだ(震え声)、つまり感想的に一番何が言いたいかってーと、その負のスパイラルが絶妙に描かれているんだよおおってことなのだ。
    分かって貰えないという絶望と、分かってるのに抜け出せない絶望とが合わさって最強に地獄なカクテルが出来上がってるのだ。
    悪酔いしまくりなのである。

    でもまさに「書ききった言い切った」と言わんばかりの文章に、こちらも思う存分悪酔いさせてもらって、なんかもう一周回って気持ちいい状態で昇天しているのであった。
    あんまりトランスしすぎて、ここはどこわたしは誰状態だけれども、だがそれがいい……!!


    本当のところはどうか、判然としないけれど、三人の女の中にひとみさんが散りばめられているような感覚がある。
    特にユカは小説家という設定なので、特にそれが強く感じられる。
    普段なら、そうして作家自身が色濃く反映されたことが読みとれる小説は苦手だ。
    けれど、これは作家が投影されればされるほど成功する稀有な小説と言えるような気がする。(私が作家という人種が大好きだというのも多分にあると思うが

    途中までは三人の中に均等にひとみさんを感じすぎて、どんなにバッググラウンドを書かれてもユカと涼子と五月の区別が全然つかなかったんだが、中盤を過ぎてからやっと三人それぞれににおいが出てきて、最後の方などにおい感じるだけで吐きそうなくらいにどっぷり浸からせてもらった。


    ああ、しかしひとみさんはいつの間にこんな場所まで行っていたんだ。
    ページを捲り、三人の女の言葉を思考を追う度に、そう思わずにいられなくなってしまった。
    当時、『蛇にピアス』のひとみさんの文章は、私には少し幼い感じがして、そのうえ自己を剥がして貼りつけるような投影方法で小説を構築していく彼女の文体に苦手意識があって、もうずっと手にしてこなかった。
    苦手意識というのは、飲み込まれてしまうんじゃないかという恐怖があるからだ。
    けれど、彼女がいつの間にか二児の母となったことを知り、放射能について言及しているのを目にしてから『マザーズ』はずっと気になっていて、今回やっと手にする機会を得た。

    私にはついAV嬢のブログとか手記とか、今にも自殺しちゃうんじゃないかとヒヤヒヤさせられるようなキャバ嬢のブログとか、売れてたアイドルが突然ヌードになる背景とかに勝手に色々かきたてられて夢中になってしまうところがあるのだが、ひとみさんの小説を読んでいると、どうもそうした気持ちになってしまっていけない。
    要望の二つ先のポーズを自分から曝け出す痛々しさが、かえって私の興味をそそり、目を奪うのだ。
    ああ、だから苦手なんだ、と思いながらも没頭させてもらった。
    そして案の定、彼女の起こす奔流に押し流され、訳の分からない場所まで吹っ飛ばされた。
    私はその間、子を持つ三人の女になった。
    気が狂ってヤクに翻弄され、子をひどく虐待し、不倫して流産し、我が子を失った。
    そのあまりの激動した時間に、まだ眩暈がしている。
    一体いつになったら再び地に足がつくのだろうか!(嬉しい悲鳴


    あああちょっと後で絶対書き直すと思う。
    今は全然思うように感想なんか書けないいい。
    まだまだ全然吐きだし足りないお。
    超ちなみに私事だが、私は育児未経験だが今腹に子がおるので、ぜひ本作を夫に読んでもらいたいんだが、それは読書嫌いの夫の前では叶わぬ夢なので今から育児gkbrしている。
    でも本当に今読めて心から良かったー。

  • 途中まで著者の私小説かと思った。もしくは柳美里の私小説かと。

    作家・モデルの主人公設定に少しの違和感は感じたものの、
    中盤からの展開にはかなり引き込まれた。
    汚い言葉で相手を罵倒するシーンなど、まるで著者は
    生霊が乗り移ったエクスシストのようにタカタカタカタカ…と、
    キーボードを打ち込んでいるのではないかと思ったほど。

    「子育て」という行為は社会との断絶を意味しているんだ、
    ということを著者が繰り返し叫んでいる。
    ノイローゼ闘病記を読んでいるようで、
    読み進めるのはしんどかった。
    業というか、欲望を全肯定していくラストが素晴らしい。

     女にあって男にないものは、
     自分自身の胎内にありながら自分自身を大きく左右し、
     人生をも変えてしまう抗うことのできない絶対的な存在だ。
     女は成長過程で思いのままにならない体や現実を受け入れ、
     その条件下で生きていく術を身につけていくのに比べて、
     男は絶対的なものが自分の胎内ではなく外にあると思い込むから、
     幻想を追い続けながら生きていくことができるんじゃないだろうか。(p.57)

    昔は親と同居が当たり前で、
    親と2人体制で子供を育てる時代だったけど、
    今は核家族が当たり前で、
    夫が手伝わないと嫁が1人ですべてを背負うことになる。
    すべてを背負った母親に起こる「ひずみ」が
    数々の問題を引き起こしていく。

    「イクメン」という言葉が持てはやされるのは、
    育児をしない男性が主であるからという
    前提に成り立っているわけで。
    むしろ、「育児をしない男性」を一言で表す言葉が
    流行するような世の中になればいいのに。

    サエコさんの対談があったら読みたいなと思った。かみ合いそう。
    梅宮アンナさんとの対談も合わせて読みたい。
    子育て論がぶつかり合うさまを。
    江角マキコさんとの対談もいいかもしれない。
    とにかく著者との化学反応をみたい。

  • 「新潮」連載中から、単行本化を心待ちにしていた一冊。
    読んでいると本も自分の内面もどんどんヒートアップしていくような、
    そんな危険な読書体験になった。

    主人公は3人の母親たち。
    夫と別居し頻繁な夜遊びを繰り返しながら娘を育てる作家のユカ、
    閉鎖的な育児状況からノイローゼに陥っていく主婦の涼子、
    一見理想的な家庭をもつが、夫との関係が冷え切り不倫に至ったモデル、五月。
    彼らが子供を預ける保育園「ドリーズルーム」を介して、
    ゆるく繋がっていく3人の世界は、言葉を失うほどに、とてもつもなくヘビーである。


    本書の中で描かれるのは、
    仲睦まじい親子の笑顔の影に、隠れているたくさんの事実。
    命を生きる、生かすという熱く重たい義務が、
    母親の上に倍倍ゲームで増殖し、のしかかっていく様。

    筆者自身が母親であるからこそ書けるのだろう文章が、
    ものすごい説得力を持って書面から迫ってきた。
    育児に悩み苦しんだその先で、
    手を差し伸べてくれる人、もしくは自分からすがりにいける相手が、
    もし誰もいないとしても、母親は母親をやめられない。
    そのことの残酷さがひりひりと心に痛かった。


    母性は絶対的に「狂気」を孕んだものだと思う。
    そうでしか、きっと人は人を産めないし、育てることはできない。
    そんなことを強く感じた。

    読了後、自分が将来母親になることが怖くなる一方で、
    現役で幼い子供を育てている母親が読んだら、
    絶対に救われるのではないかと感じた。


    重量級なので読むのはそれなりに体力があるときがおすすめだけれど、
    たくさんの人、とくに女性にはぜひ読んでほしい一冊!

  • 何と言う小説だろうか。

    話の中に出てくるお母さんたち。
    自分にも身に覚えがあり過ぎて、不快感を感じた程。
    母親とは、そう孤独なものなんです。
    愛していると憎たらしいの間を毎日行き来して、
    自分はこんな母親で良いのだろうか、いやまだ大丈夫だ。と否定と肯定の繰り返し。

    ここまで生々しく突っ込んで母親の精神を描いた作者は物凄い繊細か鈍いかのどちらかだと思う。

    これは気持ちが浮上するのにしばらく時間がかかるぞ。

  • 今の私には大きく心が揺さぶられる本だった。
    3人の母の心情に、すごくリアルに共感した。
    でも、共感している時点で、私も、「母」に幸福感を抱けてないということなのだろう。
    とても気持ちが重くなる。全部読んで、すくわれるわけではない。正解が書かれているわけでもない。どこまでも見えないゴール。
    それを、希望ととるか、絶望ととるか。私は・・・

  • すごかった。辛かった。
    誰もが持っている悪や闇の部分(ユカがいうところの魔界?)にこれでもかというほど目を向けていく。
    やめて、やめてと思うのに、どんどんと流れるように広がる展開を止めることができない。
    誰もが持っていたはずだった部分がどんどん腐食して爆発し、戻れなくなっていく。
    消耗したけど、すごい小説でした。

  • 金原ひとみさんの作品の中で一番人間らしかった。

  • 同じ保育園に子どもを預ける三人の若い母親たち―。
    家を出た夫と週末婚をつづけ、クスリに手を出しながらあやういバランスを保っている“作家のユカ”。密室育児に疲れ果て、乳児を虐待するようになる“主婦の涼子”。夫に心を残しながら、恋人の子を妊娠する“モデルの五月”。
    現代の母親が抱える孤独と焦燥、母であることの幸福を、作家がそのすべてを注いで描きだす、最高傑作長篇。

    なんてリアルな小説なんだろう、と思いました。
    現在1歳半の娘の子育てまっただ中で読みましたが、三人の母親に幾度も自分の影をみつけ目を背けたくなる思いでいっぱいになりました。こんなに愛しているのに、どうしてこんなに私を苦しめるのか。娘はひたすらに可愛くて可愛くてしょうがないのに、どうしてこんな気持ちになってしまうのか。母親は本当に孤独だと思います。
    幸い、私には頼りになる優しい夫がおり、育児にもとても協力的で本当に夫婦で一緒に子育てをしているのでここまで思いつめることはありませんが、この作品で描かれているのは紛れもない現代の母親たちだと実感しました。
    その母親たちが、金原ひとみさんの勢いのある圧倒的な文章でめまぐるしく交錯しており、ページをめくる手が止められませんでした。『蛇にピアス』を読んだときも感じましたが、彼女は比喩表現が多彩で上手く、何度も引き込まれ感情移入してしまいます。
    なんだかあまりの息苦しさに体力かなり消耗しました。
    読んでいる最中も読了後も、自分の娘をぎゅーっと抱きしめ頬ずりしたくなります。

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同じ保育園に子どもを預ける三人の若い母親たち-。家を出た夫と週末婚をつづけ、クスリに手を出しながらあやういバランスを保っている"作家のユカ"。密室育児に疲れ果て、乳児を虐待するようになる"主婦の涼子"。夫に心を残しながら、恋人の子を妊娠する"モデルの五月"。現代の母親が抱える孤独と焦燥、母であることの幸福を、作家がそのすべてを注いで描きだす、最高傑作長篇。

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