軽薄

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著者 : 金原ひとみ
  • 新潮社 (2016年2月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103045342

軽薄の感想・レビュー・書評

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  • 相変わらず硬質というか他人を一切寄せつけないような凛とした文章でした。セレブ。上流階級ライフ。官能的すぎて官能小説かと思ったけどドライで淡々としている不思議な主人公カナ。甥の弘斗と越えてはいけない一線を越えてしまう。

    途中でコインロッカー・ベイビーズのような一文が出てきておっと思った。ストーリーはとっつきにくいけど最後はとてもよかった。想像しているような悲劇が起こるんじゃないかとハラハラしてしまった。

    セリフや文章でチラチラッと引っかかる部分があって謎だったけど、後半は「課題の分離」っぽいことを言ってるような気がした…。読んでいる間中、自己啓発のような雰囲気を感じてアドラー心理学っぽいと思った。

    身勝手にもうつるけどカナ自身が自分で描いた最善の選択をしたんじゃいかな。…たぶん。最初から中盤はきついものがあったけど後半はグイグイ読めてスーッとした。ラスト3ページは3回くらい読み返してしまいました。良かった。

  • 人物描写が丁寧で好き。ストーリーが面白いかと言われれば特にいうことはないのだが、言葉選びが非常に好み。
    ハッとさせられるような一文を書いてくる。
    「生きれば生きるほど無価値な人間に成り下がっていく気がする」というのが自分の思っていることを代弁してくれているようで共感できた。ここまでストレートにマイナスな感情表現をする作家はあまりいない気がする。
    昔から作者の攻撃的な文章は好きだったが、今回は攻撃性よりも諦観が強く出ていて、読んでいて心地よかった。

  • セックスと薬と酒にまみれた破滅的な生活から結婚を機に何不自由ない人も羨む安寧を一度のセックスで擲ってしまう。築いてきた関係性も積み重ねてきた言葉も行為も全て喪失する。行きつく先の想像のつかなさに途方もない気分が覆いかぶさる。ぽっかり心に穴が開いている感じ。自分の中から突き動かされるような衝動もない。愛しているのかどうなのかを確かめなければならないという衝動と、離婚することになったらという打算だけに突き動かされる。軽薄とは理由なのか結果なのか。

  • 平成12年『マザーズ』以来の、金原ひとみ久々の長編。

    この『マザーズ』は紛れもない傑作だと思ったのだが、その後上梓された短編集2編が色々と微妙だったので、本作は個人的にはとても注目していた。

    実際本作は期待に違わず、主人公カナのある意味ドライな世界観を通して描かれる、リアルかつ緊迫感溢れる筆致は、流石だと認めざるを得ない。

    だがしかし終盤、物語が動き始めると、その筆致に乱れが感じられてしまったのは残念だ。

    特に最後の主人公の選択......ジャンル的には純文学なので、これはこれで十分に「あり」なのだが、前半のクールかつドライな世界観からするとやや唐突感は否めない。

    特にその決断の大きな判断要素の一つが、夫の不貞(疑い)というもの、純文的にはなんか『コレジャナイ』感が拭えないのである。

    それなしに主人公の最後の選択に納得感(共感である必要はない)を読者に与えることが出来たなら、何倍も豊かな純文小説になっていたと思う。

    そうすると、もしかしたら題名も『軽薄』ではなく、別のものになっていたかもしれない......と考えると、作者がこの作品で表現したかったものは、いったい何だったのか?......という、残念な結論になってしまった。

    次作に期待する。

  • この方の作品と言うより、この方自体に苦手意識があったのですが。
    読んでみるとなかなか面白かった。
    ただ、あまりにリアリティがなくて。
    登場人物はハイスペックすぎて親近感ないし、全然感情移入できません。
    が、閉塞感いっぱいの不倫というテーマを、ここまで開放的に、未来への展望があるように書けるのはすごいと思った。

  • 新刊は見逃さないつもりであったのに、前作『持たざる者』と併せて2冊共に、発売から大分日が経ってから購入した。
    金原ひとみはずっとずっと、いちばん大切な作家だ。
    デビュー作が出た頃私は中学生で、それから10年とすこしが経ち、金原ひとみは結婚し子どもを産んで海外へ移り住む。彼女が歳を重ねると同じスピードで私も歳をとり、結婚も出産もしてはいないけれど、その時間経過と彼女の変わったところ・変わらないところを目の当たりに出来ていることがとても嬉しい。

    一気に読み切ってしまった。
    久々の長編小説。
    自分と誰か、そのふたりの間にしか分かり得ない秩序と、法や外部のものの干渉を受けない罪と罰とが存在していること。
    ある種の落ち着きというのか、かつての激しい感情のうねりや起伏は表立って描かれずにどこかに隠れて息を潜めている。けれど、突如すべてが崩壊して失われてしまうんじゃないかという危うさが張り付いていて、そのバランスに魅了される。
    過去の、喪失した自分と今現在の自分という点と点とが結ばれて、世界が色づく。
    やるせなさやある種の絶望感を纏って終わっていた過去作と比べて、勿論どうしようもなさ、みたいなものは後を引くけれど極めて希望的な終わりで、読了感の違いにすこし驚いた。

  • とりたててストーリーが面白いという訳でなくても、金原ひとみの小説は、何を読んでも痛覚を刺激されるというか、ヒリヒリします。

    タイトルの通り、主人公を取り巻く軽薄で通俗的な設定、タレントの淳が友人として登場したあたりでは、げんなり感さえあったくらいですが、その後の展開が少し意外でした。

    決定的な破たんを迎える前にお話が終わってしまいますが、この人の小説には「平穏な幸せ」はあり得ないのでしょう。
    もはや何が幸せで何が不幸なのかもわからなくなってきます。

  • 父と母、父親の違う姉との暮らし、高校生の頃は荒れてて、家にも帰らず、彼氏と同棲。激しい罵り合い、いつ殺し、殺されてもいい状況。酒とドラックとという生活。
    その彼の元を飛び出したが、その彼がストーカーになってしまい主人公カナは刺される。それをきっかけに渡英、そこでアパレル関係の学校、職を見つけ、赴任していた男性と知り合い結婚。学生の頃とは比べ物にならないくらいの、華やかな生活。
    そんな中、甥っ子との不倫。
    しかし、その甥っ子はかつて学生の頃、学校の先生と付き合っており、ストーカーまがいのことをして、傷害事件をおこしていた。
    不倫を続けるか、続けないか。夫との関係、華やかな仕事、息子との関係など、色々考えることはあるが、結局は第一に考えていることは、自分自身のことのように感じた。
    子どもでも、家庭でも、仕事でもなく、自分のしたいことを抑えようとはしているが、結局は行動が伴っていない。だから、軽薄なのか。

    若かりし頃の生活ぶりから、一転してリッチでしかもとても賢い女性のようにも見受けられる考え方やとらえ方に違和感を感じた。もっと頭の悪い、感情のまま進んでいくのかなと思ったが、そうではなかった。

    最後の方で、朝帰りをした時、どのように夫と話をし、解決したのか結局はわからなかった。離婚し、甥っ子と生きていくということを決断して終わっているが、その先もいろいろな展開がありそうだと感じた。

    文字がぎっしりとつまった感じではあるが、一気に読めてしまった。

    日本での生活と、日本以外での生活の対比があり、その部分の表現は何となくわかる気がした。

    ー日本にいると、自分には何かが足りていないような気がしてしまう。がむしゃらに生きていないと、一瞬でも停滞すると、少しずつ何かを喪失しているような気持になる。常に何らかの目標や理想を持ち、それに向かってひた走っていないと自分が何かひどく劣った存在であるかのような気がしてしまう。ー

    ー日本には辛い事がない。目に見えてない。人種差別も、言葉の壁、文化の壁、自分の権利を強く主張し、交渉し、訴え続けることもしなくていい。日本だと、そういう国に生きている緊張感から完璧に解放される。ここまで清潔で安全な国は世界中どこにもない。今ある平和を守ろうと過剰に閉鎖的になるのもある意味当然。温かいお風呂の中でぼんやりしている内、脳みそが耳から溶け出していくような、そういう浸蝕系の苦しみが、ガス室に僅かずつガスを送り込まれるような蝕みを体感する。-

    文化の対比ではないが、
    ー仕事というのは麻薬のようなものだ。充実感と達成感と金をもたらし、すればするほど、人から賞賛されるー

    以前違う人の本で読んだ、人の成長は仕事が一番達成感が得られるというのと似ていて、うなずいた。
    決して専業主婦を否定しているわけではないが、満足感は得られても、達成感と成長というものは、社会の中で
    得られるものではないかと改めて感じた。

  • 性描写が多いのがウザいけど、全体としては好き。この世界観。

  • 著者には書きたいことがあるのだ、それは血を吐くほど強い思いなのだというのが伝わる。
    今作ではまだその思いの先が散らばっていてまとまりのない印象だったが、いずれ洗練された力強い物語を見せてくれるのではないだろうか。

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軽薄の作品紹介

わたしは、軽薄の上に築き上げたすべてを差し出すだろう――。十代の終わりにストーカーと化した元恋人に刺された過去をもつカナ。だが二十九歳のいま、裕福な夫と幼い息子、充実した仕事を手にし、満たされた暮らしを送っていた。そこにアメリカから姉一家が帰国。すっかり大人びた未成年の甥に思いを寄せられる――。危うい甥との破滅的な関係。空虚の果てにある一筋の希望を描く渾身の長篇小説。

軽薄はこんな本です

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