サヴァイヴ

著者 :
  • 新潮社
3.63
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本棚登録 : 1887
感想 : 371
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103052531

作品紹介・あらすじ

他人の勝利のために犠牲になる喜びも、常に追われる勝者の絶望も、きっと誰にも理解できない。ペダルをまわし続ける、俺たち以外には-。日本・フランス・ポルトガルを走り抜け、瞬間の駆け引きが交錯する。ゴールの先に、スピードの果てに、彼らは何を失い何を得るのか。

感想・レビュー・書評

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  • 「サクリファイス」シリーズ3作目、6編収録の短編集。

    「老ビプネンの腹の中」
    老ビプネンとは、フィンランドのカレワラという神話に登場する巨人の神様。
    エデンの少し前、チカがフランスに移って4ヶ月ほどのころのお話。
    取材の対象を調べもせずに、煽っておもしろい発言を出させようとするような記者には「サクリファイスとエデンを読んでから出直してきたまへ」と言ってやりたい。

    「スピードの果て」
    サクリファイスの2年後で、終章のすぐ後ぐらい。
    我が強く勝気なエース気質で、脚質はスプリンター。誰よりも速く走り、勝利を手にすることを望む伊庭。そんな彼が思わぬトラウマを得、思ったように走れなくなる。
    伊庭の意外にナイーブな面が見られるが、反面、チーム内からの孤立・対立は気にしないのも彼らしい。
    最後にたどりついた結論も彼らしく、悔しさも笑顔も不敵を越えていっそ清々しい。
    伊庭目線のお話はまた読んでみたいな。

    「プロトンの中の孤独」
    赤城&石尾がオッジに入ったころのお話。
    石尾はわかるけれど、赤城もチームから浮いた存在だったとは驚き。

    「レミング」
    プロトンの――から2年後。
    オッジの単独エースになった石尾と、すっかり角が取れてきた赤城。
    石尾と周りとの緩衝材になり「石尾係」とまで呼ばれているが、肝心の石尾のほうにはまだ壁がある。
    そんな石尾が赤城に敬語を使わなくなる=垣根が取れた瞬間が描かれていて感慨深い。
    赤城のアシストとしての感情の発露がきっかけなのだが、そこから石尾の本当の意味でのエースの自覚ができたのかもしれない。
    アシストの夢を喰らって手にする重い勝利を背負い立つエースの。

    「ゴールよりももっと遠く」
    レミングの5年後。チカと伊庭がオッジに入った年。
    石尾は押しも押されぬエースとなり、オッジは彼のためのチームとなっている。
    描かれるのは、スポンサーあってのスポーツの闇の部分。仕方の無いことと思う気持ちと納得の出来ない気持ち、割り切れなさ……。
    石尾の静かで激しい、彼なりの抗議行動がかっこよすぎる。
    ラストシーンのふたりの会話がまたいい!

    「トウラーダ」
    エデンから数ヵ月後、ポルトガルに移ったチカ。
    一本目のチカ話と同じくドーピングがらみのお話で、死人は出ないものの、やるせなくてちょっと後味もよくない。
    ゴールよりも――のラストがとてもよかったので、そのまま終わってほしかったかも。

  • 感想
    第三弾は今と昔の話が混ざった短編集。自転車競技が日本でマイナーなこと、チーム競技であること、薬物問題とは切っても切れない縁があることなどが書かれている。読みやすい。

    あらすじ
    シリーズ第三弾。白石が新しく入ったフランスのチームで過酷なレースに参加する話。世界選手権で伊庭が奮起する話。昔に戻って、赤城が若い頃に現れた石尾が新しくエースになる時の話。石尾が単独エースになってからも不穏な空気が流れつつ、沖縄レースに参加する話。新しいチームが不正をしてスターを作り出そうとする話。現在に戻って、白石がポルトガルで過ごす間にお世話になったチームメイトのルイスの家で、ルイスの薬物使用にあう話。

  • シリーズ第三弾 第二弾の続きでミッコとポルトガルのチーム サポネト・カクトに移籍となった白石誓の物語かと思ったが、第一弾で出てきた伊庭和美や石尾豪・赤城の短編集

    チームの絶対的エースとして君臨していた石尾豪とからのアシストに徹していた赤城のそこに至るまでの絆どのように築かれたのかよく分かった

    捉えどころがなく冷徹で勝利のためには手段を選ばないというような非情な人間のように描かれていた石尾の若い頃、どのようにしてエースになったのかが分かり、もう一度「サクリファイス」を読みたくなった

    ただ石尾は山に挑み、山を走りたいだけだったのだと
    そして、誰よりも不正を嫌い純粋に自転車を愛していた男だったのだと

    それだけに石尾がこの世にいないことが、悲しい

  • 『嫌いな奴でも愛想よく振る舞っていれば、相手もこちらに悪い感情を抱かない。そうなるとこちらも嫌いな気持ちが薄れてくる。最低な奴以外は、良いところを探して好意を持つようにすれば大抵うまくいく。それでも好きになれない奴なら無理に付き合う必要もない。』 たしかに。なるほどと思う。

  • 自転車ロードレースの話で、今回は短編集。1つはStory Seller1で読んだ事のある話だった。
    今までのような激しいレースシーンに興奮する事はないが、ロードレーサーの苦悩や葛藤が描かれていて、読み出すと夢中で読んでしまった。非常に面白かった。
    「サクリファイス」でも重要人物の石尾さんの話が読めた事が嬉しい。(3作あり、それぞれStory Seller1~3に収録されている模様)やはり、石尾さんは真のロードレーサーだった…。

    • 九月猫さん
      taaa('∀'●)さん、こんにちは!

      この短編集、石尾さん&赤城さんの過去話が読めて嬉しかったです♪
      「ゴールよりももっと遠く」の...
      taaa('∀'●)さん、こんにちは!

      この短編集、石尾さん&赤城さんの過去話が読めて嬉しかったです♪
      「ゴールよりももっと遠く」のラストで不覚にも萌えてしまいました(^^;)
      孤独なエース石尾さんの、夢を共有するようなあの言葉!
      赤城さんのことを心から信頼してるんだなぁって。

      そうそう!!
      taaa('∀'●)さんに教えていただいた「弱虫ペダル」、
      放送日が10月からに決まりましたね!
      漫画はまだ読めていませんが、アニメは楽しみです♪
      (どこの局なんだろう・・・見られる局だといいな(^^;))
      2013/06/03
    • taaaさん
      九月猫さん☆

      コメントありがとうございます(^-^)

      「サクリファイス」の時は私の中で無口なイメージだった
      石尾さんの人間らしい姿が読め...
      九月猫さん☆

      コメントありがとうございます(^-^)

      「サクリファイス」の時は私の中で無口なイメージだった
      石尾さんの人間らしい姿が読めたような気がして
      短編3作はとても面白かったです(*^^*)
      すっかり「石尾係」な赤城さんも良かったですね!
      確かにお互い信頼し合ってる姿は萌えます(笑)

      弱虫ペダル、どこの局でしょうか…
      私も楽しみです(*´∇`*)
      2013/06/03
  • 4.6
    面白かった、やはりスポーツ物は好きみたい。
    短編集ですが、話は繋がっていて、主人公も3人が代わる代わるという内容。
    近藤史恵さんの自転車物は初めてですが、もっと評判のいい本があるようなので、そっちも読みたいと思わせる内容でした。

  • サクリファイス、エデンに続く自転車ロードレース界を描く第3弾。前2作の過去、未来を収めた短編集。最初と最後には誓が、他の章では誓の日本でのチームメイトが主人公となって、描かれている。長編に比べ、比較的ミステリー色が強く、この作品の方が近藤史恵らしさを感じる。自分が興味があるから、最近目に付くのか、作品が書かれた時期より、メジャーになってきているのかは分からないけど、まだまだ誓の活躍が読みたいシリーズ。

  • サクリファイス、エデンのスピンオフ。
    サブキャラ達のストーリーや誓が入る前のチームメイト達の出会い等が描かれている。
    ラストのドーピングの話が切なかった。
    読後、シェアバイクでかっ飛ばしてみた。寒かったけど、爽快でスカッとした。

  • 短編集。
    第1弾に登場した伊庭、赤城、石尾らが別の一面をもって登場。ロードレースの世界が興味深い。

  • 連作短編の形です。いつもの雰囲気はあるものの物足りなさもありました。個人的には最後にあの作品かな?と感じました。

  • 自転車レース

  • 読了。サクリファイスシリーズの外伝的な短編。日本ではまだメジャーではない自転車のロードレースが舞台。ロードとは団体競技か?個人競技か?そしてチームのエースとは?

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「サクリファイスシリーズの」
      シリーズになってたんだ!
      「サクリファイス」が文庫になったので、読もうかなと思っているところ。
      他のは文庫にな...
      「サクリファイスシリーズの」
      シリーズになってたんだ!
      「サクリファイス」が文庫になったので、読もうかなと思っているところ。
      他のは文庫になってるのかなぁ~もう少し待って纏めて読もうかなぁ(長い独り言)
      2012/07/07
  • サバァイブ。近藤史恵さんのロードバイクレースの本。3冊目のこの本は外伝のような作りで、チカの周りの人たちの短編物語。
    ショーとしてのロードレースと競技としてのロードレース、ドーピングなどの問題が、オッジの絶対王者石尾さんの過去や、石尾を支え続けた赤城、スプリンター伊庭の苦悩を通して描かれていて、本編とはまた違った面白さがありました。

    あと作品自体とはあまり関係ないですが、近藤史恵さんの風景の描写の仕方がとても好きです。

  • やっぱり石尾は個人的に好きです。
    彼こそまさにプロでしょ

    ああいう我が道をいきながらも、ポイントどころは押さえて行動する姿勢は、格好いいです。

  • 【内容】
    自転車ロードレースのシリーズ第三段。
    短編集。
    題名通りこの世界で生き残ろうとする選手たちの物語。
    『サクリファイス』で印象的な選手だった石尾の若い頃の話もいくつか。

    ≪人間は自分の運命さえ、自分で選べない≫
    ≪結局のところ、ぼくは自転車で走ることだけが楽しいのかもしれない≫

    【感想】
    今回はドラマ性よりも苦しさを先に感じるような一冊。
    とはいえおもろないというのではない。

  • 危惧した通り、最高峰を舞台にした前作からはやや物足りなく、陰湿話に食傷気味。

  • 「サクリファイス」、「エデン」の過去、未来の話を扱った6つの短編集ですが、非常に面白く、短編であったため読みやすくサクサク読むことができました。
    特にあまり目立たなかった赤城とエース石尾の関係を扱ったサブストーリー3作が個人的には好きでした。
    このシリーズの主人公である白石の「エデン」後のストーリーも含まれてましたが、今後、ちょっと展開が難しいと思いますが白石の続編を期待したいのと、赤城と石尾の関係のようなスピンオフ的な作品もまた作って欲しいと思います!
    フィクションであるにも関わらず臨場感があって、このシリーズは本当に読みごたえがありますね。

  • 白石誓がミッコ・コルホネンと初めてチームメイトになる話が最初に出てきたので、シリーズの順番を間違えてしまったのかと思い、各発行年度を再度確認してしまった。
    話の中での年代が行ったり来たりしているだけのようで、間違ってはいなかったようだ。
    内容を忘れてしまった1作目のサクリファイスも、同時にもう一度図書館から借りてきて簡単に内容を確認した。

    全くの個人的印象…シリーズ3作目でやや飽きてきてしまったが、面白くないわけではない。
    4作目はまた設定が違うようなので、読もうかどうしようかちょっと悩む。

  • サクリファイスからエデン、その過去と未来を主に赤城やチカの視点で描く。ロードレースの団体競技としての魅力と面白さもさることながら、基本的にストーリセラー等に収録された既刊の短篇集ですが、若かりし頃のエースを狙う石尾とそれを支える赤城の思いや、チカがヨーロッパに渡ったあと日本でもがく伊庭の姿、ミッコと共にポルトガルに渡ったあとのチカの姿が、物語の隙間を埋めて行くかのよう。しかし、ここまでくると、チカのロードレース選手としての到達点へ至る本筋の物語を長編で読みたい!どうかお願いしますm(_ _)m

  • サクリファイスの番外編。
    何人もの懐かしい人達のエピソードが短編集として綴られている。
    舞台裏を覗く楽しさを味わえる。

  • 2013.09.14 読破
    ☆3.5
    サクリファイスシリーズのキャラクタースピンアウト版。サイドストーリーテイスト。
    赤城さんが等身大すぎて、味があっていい。

  • このシリーズ大好き。

  • レースというものは残酷でもあり、優しいものでゴールが必ず設定される。ゴールに到着すること自体が難しく、途中でリタイアする様はまさにどの世界でも存在する。
    その中で、上位を取ることを運命づけられたものとひたすらその人のために脇役に徹する人間とのカースト制の中で、中途半端な才能は、無用に人を惑わす。神と人と悪魔の間の中で揺れ動き、とりあえず人の形を保ちながら、レースのゴールは駆け抜けてもどこに行こうとしているのか見えない人たちの苦悩は、まさに僕達が抱えている不安と同じだ。魂を悪魔に売ってでも神になろうとする人や、世界から降りることを選んだ人たち、人であることの限界を極めようとする人たちのまさに「人間模様」が、この本では、自転車ロードレースという箱に詰められている。

  • サクリファイスシリーズ3作目。少し時間を巻き戻して赤城の視点からチームを見る。ときどき前作の場面が私の中でフラッシュバックする。
    近藤史恵という作家は「いい奴」を描くのがうまい。世渡りがあまりうまくなく不器用だがいい奴、を描くのが。

  • 『サクリファイス』『エデン』に続く最新刊。短編集です。前の二巻に描かれている時期の出来事や、その前後の出来事が描かれています。海外での挑戦を続けるチカに共感し、感情移入して読みました。石尾と赤城の連作はもちろんですが、伊庭にスポットを当てた作品もあります。どれも面白く、読みごたえがありました。自転車競技が日本人に理解されない、と嘆くチカの姿には、作者の思惑も秘められているように感じました。

  • ロードバイクシリーズの短編集。ストーリーセラーで読んだことがあるので、新鮮味にかけたけどやっぱり面白い。

  • サクリファイスとエデンのサイドストーリー。

    個人的には白石誓の話が少なかったのは残念だったけど、
    石尾豪の話を読むと愛らしいキャラクターだったことが意外だった。

  • このシリーズ、大好きです。

    自転車ロードレースの知識は何もない私ですが、このスポーツに興味がわくぐらい、面白い。

    やはり一作目の「サクリファイス」の衝撃には及ばないけれど、サイドストーリーとしてこの短編もとても良かった。

    またサクリファイスを読み返したくなりました。

  • 「サクリファイス」「エデン」に続く自転車ロードレースシリーズ第3弾。

    第3弾だけれど、続編ということではなく、2つの作品の未来と過去を描く短編6片。視点も、前2作の主人公であるチカだけではなく、色々な角度から、1つ1つの短編の世界を、そして、過去2作では語られなかった別視点での深い部分を読むことができた。

    自転車ロードレースの世界で…、あの2つの物語の中で…、生き残った者たちが語るあの時の心情、あの事件を越えて前へ進む時間。過去には語られなかった人物像が生き生きと描かれていて、時をさかのぼって、全ての出来事をもう一度見てみたい…という気持ちになりました。


    この短編集だけ読んでも面白いかもしれないけれど、もしも興味を持ってくれた人がいたら、「サクリファイス」を読んでから読んで欲しい。そしてこの短編集を読んだ後に、もう一度「サクリファイス」を読んで欲しい。

  • 石尾さんがいいかなあ
    白石さんは、あんまり出てこない

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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