レンタルチャイルド: 神に弄ばれる貧しき子供たち

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103054528

作品紹介・あらすじ

物乞いが憐れみを誘うべく抱いた赤ん坊は、月日を経て「路上の悪魔」へと変貌を遂げていく。執筆に10年をかけた渾身のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 目を背けたくなるような話。でも、どこか知らない世界の自分に関わりのない話ではない。忘れちゃいけないのは、ここで書かれてる子どもたちは私たちとまったく変わらない同じ人間だってことだ。
    私が人を殴ったり貶めたりしないのは、私が彼らより偉いからじゃない。
    私が今日寝る所や食べるものに困らないのは、私に能力があるからじゃない。
    ただそういう環境に生まれて、それを享受してなんとなく生きてるからだ。

    10年かけて少しずつ環境は良くなってるように見えるけど、単に見えないところに掃いてすみっこに寄せてるだけにすぎない。
    神がいるから大丈夫と彼らは言うけれど、彼らが言う神ってなんなんだろう。
    私が思う神とは違う人のような気がする。

  • かなり危険で強引な取材であったと思う。物乞いにて少しでも多く稼ぐために目をつぶしたり手足を切り落として生き延びる、戦場のような現実。作中は取材年ごとに3章に分かれており、少しずつ環境の改善はみられるが、それゆえの新たな苦難も発生している。
     あまりに絶望的な現実に、自分はこの本を読んで一体どうしたいのかといった虚無感すら覚えた。

  • インドと言えばカレー、ヒンズー教、ガンジス川、経済発展、映画、そしてカースト制

    カースト制に代表されるインドの差別の歴史は、学校の勉強で習っただけでも僕の心に暗い影を落としています。生まれた瞬間から既に差別が始まっていて、そこから抜け出すという事自体が容易ではなく、日々食べるだけで精一杯なひと達が沢山居ます。これは国家が貧しい訳ではなく、インドという発展著しい国であっても、そもそも人権という考え方が希薄である所から始まる貧困だと思います。
    この本では「レンタルチャイルド」という衝撃的なテーマを中心に据え、ドリーミーにインドを賛美する人々ののど元に鋭い刃を突きつける重さ100万トンのルポタージュです。
    マフィアたちは、物乞いの成功率を上げる為に、子供の目をつぶし、手足を切り落とし、熱した油をかける。幼児を女乞食に貸出し、その上前を撥ねる。
    そして、大きくなって稼げなくなった子供を放逐し、そんな子供たちが徒党を組み、さらに弱い女性やヒジュラ(いわゆる心が女性の男)を襲い暴力の雨を降らせる。
    負の連鎖は断ち切られる事は無く、弱い所へとその矛先を向けていくのでありました。
    既に15年ほど前の事を書いていますので、今はどうなっているのでしょうか。
    発展しているとはいえ被差別階級、不可触民がいなくなるとは思いません。しかもこれは誰かがボランティアでどうのこうの、寄付でどうのこうのではなく、経済発展著しい大国の内部の事なんで、国ぐるみで変えない限り変わらない事柄なんだと思います。
    この重苦しく辛い本を読むと貧困というものの本質というか、人間というものがいかに環境や境遇で決まってしまうかが詳らかにされているようで身に染みます

  • 物乞いをするとき、より悲惨に見えるほうが恵んでもらえる額が多くなる。
    五体満足な者よりも障害や怪我がある方が稼ぎがよかったりする。
    また、女が一人で物乞いするよりも乳飲み子を抱えて「この子のミルク代を」と手を伸ばす方が喜捨は増える。
    そのため、子供がいない女は仲間から子供を借りて道に立つ。
    そこに目をつけたのがマフィアで、親を騙して預かってきた子や誘拐してきた子を物乞いたちに「レンタル」する。

    旅の中でこの「レンタルチャイルド」の存在を知った石井さんは、マフィアとも接触しながら数年の月日をかけて三度のムンバイ取材を行い、レンタルチャイルドについて調べる。
    この数年の月日の中でレンタルチャイルドたちは成長し、犠牲者だったはずの彼らは凶暴な悪魔となっていく。

    大人たちの金儲けのために誘拐され、手足を切られ、使い物にならなくなったら捨てられる子供たちが、その後どのように成長していくのか。

  • インドのスラムに住む子供たちを追ったルポルタージュ。
    一度のインド行きではなく、何回もインドへ行き、ずっと同じ子供ではありませんが、子供たちの境遇と生き方について語っています。
    なんとなく知っていましたが、物乞いをするために自分たちの身体を傷つけたり、親やその他の大人に身体を傷つけられたりして生きている子供たちの多いこと…。発展していくインドの影で彼らがどう生きていくのかが気になります。

  • ノンフィクションです。
    梁 石日さんの『闇の子供たち』を読んだ時もとてもショックを受けましたが、これも衝撃的でした。
    貧しさとは何なのか考えさせられます。

    【福岡教育大学】ペンネーム:猫

  • 貧困、物乞い、暴力、薬物、売春、臓器売買、窃盗、強姦…何でもありだった。とにかく暴力なんて当たり前で、片目を潰された(自ら潰した)人、手足のない人、唇を切り落とされた人、生傷を負って膿の出ている人、瀕死の状態で蛆が這いずり回る人、強姦され誰の子かもわからない子を妊娠している人が当たり前のように出てきて、汚水や虫にまみれた中で生活している。その日の食うだけで必死なのだ。想像できないがこれがリアルなのだからただ打ちひしがれるしか無かった。
    貧困から生まれる物乞いビジネス。ただの物乞いでは稼げないので自ら傷つけたり、一般人からの同情をひくようマフィアにわざと傷つけられる。その中で命を落とすものもいる。レンタルチャイルドも物乞いビジネスの一つで他人の赤ちゃんを借りて物乞いして稼ぐ。運が良ければ養子に出されるが、そうでなければ物乞いやマフィアなどの組織に混じって自分の力で生き抜くしかない。

    著書は3回にわたりインドでの取材をしている。1,2回目の訪問の時は上記のような状況だったが、2回目から4年後の3回目の時は状況がガラリと変わり、ムンバイの乞食やマフィアは一掃された。しかし貧困が解決したわけでは無く郊外に移動しただけ。物乞いビジネスの取り締まりも厳しくなったが、病人の処方箋を売り飛ばし、死ねば遺体を引き歩いて火葬代で稼ぐというやり方にもなっていた。
    しかし4年でかなり変わったように思う。今は2023年。もうこんなことが起こっていないと願いたい。

    また、読んでいて思ったのは、皆貧困の中で生きているが、とんでもなく逞しく、人としてのプライドを捨てていない。そして血の繋がりなど関係なく仲間を大切にしている。3章のムニとその母とサジの部分は切なくなった。いくら生活が地に落ちようとも人として大事な所は捨てていなかった所にただただ感服した。

    しかしここまで命をかけてまで取材されたのは本当にすごいと思います。というか不衛生な環境や見るに堪えない状況に入り込んでいけるのがただただすごいとしか…しかし場合によっては子供達も巻き込んでまで取材をする目的がわかりませんでした。

  • マノージ(路上生活者→石井さんのガイド→テントハウス暮らしで靴磨き→バラックに住み家庭を持つ肉体労働者)と
    ラジャ(浮浪児→浮浪青年、ギャング的な生き方→最下層の路上生活者)
    の対比が際立っていた。
    2人とも片目の障害者だったけれど、生き方が違う。マノージは幸せを手に入れることができた。

    同じ地球で本当に起きていたこと、今も起きていること
    神も人権も何もない…

    読み物としては秀作
    石井光太さんのルポは、読んでおくべき作品群だと思う。2023年、今知れてよかった。

  • インドの乞食に焦点を当て、筆者が自らスラムに入り込み話を聞きまとめあげた “ノンフィクション”。

    生々しく詳細な描写で読み応えはありすぎるのだが、本当にノンフィクションなのかは不自然さを覚えてしまう。
    各登場人物の発言や行動がいちいち大袈裟だし、ことの展開も都合が良すぎるぐらい進んでいく。

    とはいえ浮浪少年や乞食の生活の厳しさは現実問題として存在していると思う。
    読んだからと言って何かできるわけではないが、世界で起きていることをリアルに知るためには良い本でした。

  • 数年おきにムンバイに訪問し、浮浪児を追った3部構成のルポ。インドは本当に闇が深すぎて、フィクションにしか思えない…。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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