蛍の森

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著者 : 石井光太
  • 新潮社 (2013年11月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103054542

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蛍の森の感想・レビュー・書評

  • 人生折り返しを過ぎた(はず)だと言うのに知らないことばかりだ。
    自分の無知にまたしてもあきれ果てる。
    ハンセン病の名前くらいは聞いたことがあった。
    ハンセン病訴訟のニュースもうろ覚えだけれどなんとなく知っている。
    そう言えば小泉さんがハンセン病患者と握手とかしてたっけな。
    私のハンセン病の知識はこの程度。
    なぜハンセン病訴訟がこれほどまでに長引いたのかその裏には何が隠れているのか
    考えたこともなかったし考えようともしなかった。
    この本を読むまでは。

    この本はハンセン病患者の歩んだ苦悩の道を描いた作品である。
    ノンフィクション作家出身の著者だけあって、圧倒的なリアルで迫ってくる。
    ハンセン病と分かった時点で故郷を追われ、療養所に入るか放浪の生活を強いられるしかなかった患者たち。
    人々の差別はあまりにもひどくむごたらしい。
    そもそもが国による政策と無理解によるためなのだから遣り切れない。

    内容そのものは非常に重苦しく、読み進めるのが辛かった。
    しかしミステリー仕立てになっているためか小説とも十分楽しめる。
    過去の事だとは言え、ハンセン病患者のたどった道を知ることは有益だ。
    これは氷山の一角。
    ハンセン病に限らず国の政策が誤っていることも当然あるだろうし、人々の無知による悲劇はまた繰り返されるのだろう。
    それを防ぐためにも何が真実なのか見極める力を養いたいと痛感した。

    良い作品です、色々な意味で。
    お仲間さんのレビューのおかげでまた一つ勉強になりました。
    ありがとう。

  • なぜこの本を予約したのか全然思い出せないのだけど、図書館からメールが届いて読んでみて驚いた。こういう小説は感想を書くのが難しいです。

    ハンセン病が癩病と言われ、ひどく忌み嫌われ差別されていたさかりの1952年と、2012年の現在が交互に話が進む。

    昔、実母が10代だった頃(←60年くらい前かな)、田舎の山中にも当時でいうなら癩病の男性が住んでいて、母や友人が遊んでいると山から里に下りてきて「その姿がこわかったんだよー。ふっ、ふっー」とふっ、ふっと手で払うしぐさをする実母を、私は「なんでそう手で払うしぐさをするの?」って不思議でならなかった。実母は「うつるから」と平然と答えて…。こういう部分で違和感をずっと思っていた。(私と昔話をしているだけなのに、その当時を思い出して…今でも実母は手で払うしぐさをする。当時の子供の間で当たり前だった、うつらないためのおまじないが今でも習慣化しているらしい…。)

    この小説を読み、自分は裁判の行方や病名は知っていたけど、時代の背景や差別の事を何も知らずに育ったんだな…と感じました。

    内容は推理も少し入っていたので複雑で…その複雑さには理由があって、一体何が「悪」で何が「善」なのか悔しくって混乱し、あまりのひどさや理不尽さに数回涙がにじみました。(自分も乙彦と同じ傍観者の気分を味わった。)

    フィクションなんだけど、ベースは限りなく現実に近いんだと思った。あとがきにも書いていましたが、その注意書きを読んでフィクションとノンフィクションの境い目の判断がとても難しい…と思った。

    黒婆なんていない事実、貧困の中でのさらなる貧困、同じ患者内での優劣。そして風紀委員と平次憎し!と感情移入してしまったけど、そこはあくまでもフィクションだし、だけど差別は実在しているだろうし…。気持ちの持っていき場がなかった。とらえ方と区別が私の中ではとても難しい小説だと思った。

    ハンセン病、精神障害、村八分、虐待、性的暴行、貧困…に、何度も何度も目を覆いたくなった。『生きるために罪を犯さなければならない人もいたということ伝えるためです。』という注意書きに衝撃を受けた。評価はちょっと出来ないです。「絶対貧困」や他の作品も読んでみたいと思いました。

  • ノンフィクション作家による初のフィクション。
    緻密な取材をもとにして描かれるのはあくまでフィクション。しかし、ハンセン病に対する当時の差別は史実に残る以上のものなのかもしれない。そう思わざるを得ないほどの生々しさと現実感があった。インタビュー等で多く残されているのはあくまで隔離施設に収容されていた人々の声。しかし、著書のように施設にも入らず、ひっそりと身を寄せ合うようにして生き抜いてきた人々は確かにいたのだろう。そしてハンセン病に対する差別意識はおそらく著書にあるのと同様なもしくはそれ以上かもしれない事実があったことを想像させる。それは国の集団の偏見と先入観による誤りであったということを忘れてはいけない。そして、集団の力というものの危うさを胸に刻まなければいけない。
    それは決して過去のことではない。
    ハンセン病の謝った歴史を知る事ができるとともに、ミステリーとしても読み応えのある1冊。
    フィクションという形式で描かれているからこそ夢を託す事ができるのかもしれない。

  • 重い内容ですが、読むのが止まらず、です。

    ハンセン病。よく知らないけど、こんな偏見による差別って、昔はこんなひどいものだったのかと、ただただ驚き。

    プロローグが、どこかで繋がってるのかと思いながら読んでいたけど、最後に、あぁぁここで!と涙がぽろぽろでした。

    子供の頃の乙彦と、大人になってからの乙彦が、あまりに繋がらなさすぎたけど、最後あたりで、やっと、同じ人なんだと、ぐぐっときた。

    この人の本、もっと読んでみたい。

  • ミステリーとしては犯行にいたる経緯や心の動きに無理があるような気がして違和感を感じる。ただ作者が本当に書きたかったのは過去の章の方だと思う。
    ハンセン病に対する偏見や差別は知識としては知っていたけど、これほどのものとは思わなかった。犯行を犯した小春の娘は50代、ということは私の母より年下。そんな年齢の人でも学校にも行けず差別や貧困に苦しみながら人生を送っている人がいるとは。おそらく今現在も…。ハンセン病差別は決して過去の出来事ではないとつくづく感じた。
    後半は一気読み。ラストに救われる。

  • これは、ノンフィクションではない。
    しかし、この物語の根底に流れているのは、丹念な調査、取材に基づく真実。
    著者は、その真実のあまりの過酷さに、作品をフィクションとして書くことを選んだのだと思う。
    単純に、本書を推理小説として読むことはできない。

  • ボクは完全に舐めていました。
    ハンセン病をテーマとする本書は、訴訟の終結により、その歴史や差別を追うだけのものだと思って読み始めましたが、衝撃を受ける内容でした。

    フィクションとはいっても、生々しい描写で、読み進めるのは苦痛でしたが、本書を読み終えたことで、ボクはどん底とも言える人の人生があることを知りました。
    また、そういう中でも生き続ける人のたくましさを知ることができました。

  • 蛍の時期なので題名と表紙で選んだら、ハンセン病をテーマにしたミステリーで思いがけずヘビーな話でした。
    老人が失踪し殺人事件が起こりますが、ハンセン病に対する迫害に重きを置いた内容なので、途中で犯人が誰かなどどうでもよくなってしまいました。
    迫害について残酷に描写されていますが、フィクションなのでどこまでが本当か分からず、ハンセン病に興味を持つきっかけにはなると思います。
    これから先もしも似たような状況に陥った時、ここまで酷い事はせずとも差別しない事ができるのか考えさせられる内容でした。

  • ハンセン病患者のお遍路専用の寺があったとは知らなかった。
    本文中にもチラッと「東の方が偏見が少ないらしい」との表記があるが、ハンセン病だけでなく、部落問題なんかもその傾向にある気がする。東北出身のダンナと話をしていて微妙な背景の違いを感じることも多々あるし。
    石井光太は「物乞う仏陀」の作者。目を背けてはいけないことを徒然思い出させてくれる貴重な作家だ。

  • つい最近、多摩全生園とハンセン病資料館に足を運んだ。
    国がここまで法的に人権を奪っていたなんて…そして、それがずっと昔のことではなく、1996年まで続いていたという事実に絶句した。
    差別自体は今も解消されたとは言いがたい上に、このような罪深い日本の歴史を知らない人も多い。

    本書は、「療養所」への収容を拒み人知れず「カッタイ寺」で生きてきたハンセン病患者と、ハンセン病を忌み嫌い迫害してきた人々の運命を描く物語である。
    著者も強調している通りフィクションであり、事実がどこまで再現されているかは定かではないが、人々の内面の描き方にはリアリティがある。

    ハンセン病資料館に訪れた際にも感じた、
    「人は人をここまで迫害できるのか…」
    という衝撃。
    虎之助の無念を思うと本当に、本当にいたたまれない。
    だが、一筋の希望が残るエピローグには少しだけ救われた。

  • ハンセン病患者の悲惨な虐げられた現実を、生々しくドキュメンタリータッチで描写されています。人間の行為とは思えない酷い仕打ちを繰り返してきた村の中心人物。悪業を繰り返しながらも、村の長老として君臨してきたのは、許せない思いに浸りました。

  • ドキュメントを読んでいるように感じるミステリー。2012年に起こった事件と、1952年のある村での出来事が交互に進行してゆく。60数年前に日本で本当に起こった「ハンセン病」への間違った意識がテーマの話。集団心理の怖さを垣間見る。人は「免罪符」さえもらえれば、どこまでも残酷になれる生き物なのかもしれない。ミステリー要素があったので、かろうじてこの本を読み通せた。現在の事件とある村での過去が結びつく。「蛍」のような小さな光から、大きな光になり、差別されて生きてきたハンセン病患者のこれからを照らす事を願う。

  • 四国の山村に起こった謎の連続老人失踪事件をめぐるミステリー小説のスタイルをとりながら、ハンセン病および精神障がい者に対する差別問題や、国や社会の過ちを告発する異色の書。ハンセン病回復者などへの取材を重ね、差別をする側の狂気や残酷さ、人間性を奪われ行き場を失った人々の哀しみをあぶり出している。著者の石井光太は、貧困・医療・戦争などをテーマに多数の作品を発表してきたノンフィクション作家。

  • 15.nov.6

    ルポライター(でいいのかな)石井光太氏の小説。

    氏の著作を何冊か読み終えた後だったので、海外の路上生活者や子供達と出会い遭遇した実際のエピソードをアレンジして小説にしているところもあるのだろうと既視感も覚えた。(吉原の存在や、獣姦のシーン等)
    それらを読んでいても衝撃のシーンばかりだった。。

    ハンセン病は裁判も終わり解決されていることだと勝手に認識していたけれど、その枠からあぶれ今も憎しみと苦しみに支配されている人が沢山いるのだと知った。ハンセン病に限らずどんなことにも言えると思う。

    事件の犯人は本当に悪いことをしたのか、復讐とはどういうことなのか、罪を償うとは、色々考えたが答えが出ない。
    ハードカバー版でそこそこ分厚かったけど一気に読めた。

  • ハンセン病の壮絶な差別・いじめの話を
    殺人事件を軸に小出しに展開していく感じ。
    ハンセン病の差別話は凄惨でゾクゾクしましたが、
    ストーリー的には都合良すぎるところがあって微妙かな。
    特にエピローグの「永遠の0」風な実は血のつながりが…のところはしらけてしまった。

  • 衝撃的。
    小説だけど、きっと現実にあったことを題材にしているのだろうと思う。知らなければ良かった。いや、知らなきゃいけない。…どっちかな。
    この本について誰かと語れるようになるには時間がかかりそう。

  • ノンフィクション作家による初の小説。小説として仕立てられてはいるけれど、そこにある真実はまさにノンフィクションなのだろうと思う。ハンセン病という名前は知っていても、それがどういう病気でどんな差別があったのか何一つ知らなかったので、読んでいてとても重苦しくつらい物語だった。自分より少し上の世代でもこれほどの差別があったという事実を、もっと多くの人が知る必要があると思う。涙なしには読めないつらく悲しいお話だったけど、最後に希望があって良かった。本当に、読んでよかったと思う。

  • 最後のページ著者の言葉“日本にあったハンセン病や精神障害を抱える人々に対する差別をフィクションとして描いたものです。”
    ハンセン病について取り上げた小説を読むのは二冊目だが、こちらは過去の出来事がかなり書かれていて、読むのが本当に辛かった。

  • ノンフィクションとして読むべき小説

  • ライ病ゆえの偏見と差別をうける呪われた遍路たち。

  • 読み進むにつれ、気持ちが重くなっていく辛い本です。ハンセン病への偏見、知的障害者への偏見・・・。子供の頃近所にいたおばあさん、今思えばハンセン病だったんだなぁ。

  • ハンセン病について詳しくは知らなかった。どんな病気でも研究され解明されていなければ、容易にどんな時代でもこうい迫害は起こりうるだろう。
    石井光太は注目の作家だ。

  • フィクションだが、おそらく事実を基に書かれていると思う。一気読み。エピローグで泣ける。傑作。

  • 2014.4.3読了。素晴らしかった!!初の小説らしいが...。今年一番?と早くも思ってしまう。ハンセン病について、ほとんど知らなかったけれど。

  • 社会はミステリー。石井氏の本はこれが初めてだけどミステリーというよりも差別のひどさが伝わってくる。
    ノンフィクションだけど実際にこういうことはあったんじゃないだろうか。暴行の場面は本当に怖かったけど話の進め方が過去・現代と章が分かれていて読みやすくおもしろかった。ラストは一応ハッピーエンドで良かった。最終章ですべてのひっかかりを解いてくれた。
    前半は黒婆の登場でホラー的なものかと思ったけどそんなことはなかった。すべては人間が犯した恐ろしい出来事。

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蛍の森の作品紹介

その森は国に棄てられた者が集う場所――ノンフィクションの旗手が挑む慟哭の社会派ミステリー! 四国の山村で発生した謎の老人連続失踪事件。容疑者となった父親の真実を探るべく、私は現場へと向った。だが、そこに待っていたのは、余りにも凄絶な「人権蹂躙」の闇だった……いま蘇る、理不尽な差別が横行した六十年前の狂気。人はどこまで残酷になれるのか。救いなど存在するのか。長年の構想を結実させた情念の巨編!

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