- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103096122
作品紹介・あらすじ
ハンニバルを倒し、帝国カルタゴを滅亡させ、一気に地中海の覇者となったローマ人。しかし大国への道のりの速さゆえに、ローマは内部から病み始める。権力が集中しすぎた元老院に対して改革を迫る若き護民官グラックスは同国人に殺され、続く改革者たちも、内なる敵に向き合わねばならない-ローマ人はいかにしてこの"混迷の世紀"を脱脚するか。
感想・レビュー・書評
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領土が拡がり、地中海での有力国家となったローマが、混迷する様子が描かれています。
本書でも、人間の愚かさをローマの歴史を通して知ることができます。
国を思い改革を進めるもの、既得権益を守るため、それを阻むもの争いが描かれています。
現代日本には、国を憂う人は沢山いるかと思いますが、政治家に見えないのは何故でしょうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
如何に先見の明がある人物でも、周囲の利害によっては潰されてしまうという、現実味のある巻。また、どんな英雄でも年を取ったり、嫉妬に狂ったりするとかつての栄光にそぐわない人物になってしまうという嫌に人間臭い部分が垣間見えた。
しかしそんな中でも上手に、ある種冷酷に『人』を使うことができる人が国を作っていけるのだな、とも感じた。正義感、先見性よりも強かさが重要。 -
ハンニバルとの闘い以降カエサルの出現までが本書の舞台だ。ローマ史の谷間と思っていたが、非常に面白かった。共和制ローマを守ろうとする元老院とスッラ等為政者との攻防、ポントス王ミトリダテスのローマとの戦い、スパルタカスの反乱など実に多彩である。
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前作のハンニバル戦記がめちゃめちゃ面白かっただけに、今回は盛り上がりには欠けるかなと。ローマの覇権が拡大された一方、国家として大きくなるとやはり内部に問題が巣食うのが世の常のようだ。ハンニバルの言った肉体の成長についていけない内臓疾患、というのは実に的確。
本作でも魅力的な偉人たちが登場。グラックス兄弟、マリウス、スッラ、ポンペイス。スッラの狡猾な人を食ったような描かれ方が印象的。元老院、市民、執政官の統治システムが少しずつ軋み始めてきているローマが、これからどのような歩みを進めるのか、次回も楽しみだ。 -
図書館長 井上 敏先生 推薦コメント
『ヨーロッパの歴史を理解するにはまずローマの歴史。独特な書き方だが、ローマの建国から西ローマ帝国滅亡までの通史を知るにはちょうどいい。研究者からの批判もあるが、理解しやすい。』
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/196619 -
20210321
・ポエニ戦争後、スペインやガリアの反乱を鎮圧し、アンティゴノス朝マケドニアとセレウコス朝シリアとの戦争に勝つことでローマは属州を広げる
・属州の拡大により、中小家内農家を主体としてきたローマ経済は、奴隷を使う大農家と通商が盛んになり変容する。小規模農家は都市にプロレタリアートとして流入し、社会不安が生じるようになる。これを防ぐ労働政策(農地改革と植民都市建設)と政治改革を構想したグラックス兄弟は元老院派の反撃を受けて命を落とし挫折する。
・戦場が属州に移り、属州からの収益をローマが独占することで、ローマが大きな負担の代償として指導権を得てきた自衛同盟のバランスが崩れる。結果、同盟市戦争がおこり、イタリア全土にローマ市民権が与えられることになった
・プロレタリアート向けの福祉政策である小麦の低価格配給は行われ、彼らを支持母体とする民衆派勢力が現れる。民衆派と元老院派の争いは、属州平定の功績があるマリウスとスッラの私兵を使った軍事力によるローマ掌握によって血で血を洗う内部抗争に変わる。若いスッラはミトリダテス戦争後の内乱で民衆派を壊滅させ、元老院の質量ともの充実させ、一人に権力が集中することを防止し、市民集会と護民官の権力を削った。
・スッラ派のポンペイウスは、キリキア海賊討伐と第三次ミトリダテス戦争で独裁官を上回る権力を自身に集中させ、実力で反対する元老院を沈黙させた。スッラの元老院体制の強化はポンペイウスによって1世代持たずに崩壊する
★戦略とは実行するためのものであり、実行につながらない概念、言葉、思想は戦略でない -
カルタゴを滅ぼしたローマは敵を外から内に抱えることになる。グラックス兄弟の改革は兄の惨殺、弟の自害というかたちで阻まれ、兄弟の死後護民官になったマリウスは徴兵制から志願制へと改革するが、これが原因の一つになり同盟者戦争を引き起こす。スッラは独裁官となり国政体制の改革を行うも死後体制は崩壊。ローマの覇権を地中海全域にまで広げたポンペイウスは何故後に歴史に名を残す人物にならなかったのか…というのが次巻の楽しみ。
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外敵からの苦悩から内部への苦悩へ。