ローマ人の物語 (8) 危機と克服

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著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (1999年9月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096177

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ローマ人の物語 (8) 危機と克服の感想・レビュー・書評

  • (2016.07.20読了)(2009.07.05購入)
    この本で扱われている期間は、紀元68年から98年までの30年ほどです。
    この間に7名の皇帝が登場します。ガルバは、在位7か月。オトーは在位3か月。ヴィテリウスは、在位8か月。ヴェスパシアヌスは、在位9年6か月。ティトゥスは、在位2年3か月。ドミティアヌスは在位15年。ネルヴァは、在位1年4か月です。
    落ち着いて統治できたのは、ヴェスパシアヌスとドミティアヌスの二人だけでしょうか。
    皇帝ティトゥス在位中の79年夏にヴェスヴィオ火山の爆発によるポンペイやエルコラーノの埋没が起こっています。
    ティトゥスとドミティアヌスは、ヴェスパシアヌスの息子たちです。親子三人による統治は、トータルで26年9か月に及びます。
    皇位争いによる内戦が何回かありますが、ローマ帝国としては、比較的安定していた時期なのではないでしょうか。ローマ史を勉強したことはなかったので、この本に出てくる皇帝の名前には、馴染みのない方ばかりです。

    【目次】
    はじめに
    第1章 皇帝ガルバ
    第2章 皇帝オトー
    第3章 皇帝ヴィテリウス
    第4章 帝国の辺境では
    第5章 皇帝ヴェスパシアヌス
    第6章 皇帝ティトゥス
    第7章 皇帝ドミティアヌス
    第8章 皇帝ネルヴァ
    〔付記〕一ローマ詩人の生と死
    年表
    参考文献

    ●前線(26頁)
    ローマ帝国にとっての「前線」とは、ライン河とドナウ河とユーフラテス河につきる。
    ●財政再建策(27頁)
    ガルバは、帝国の財政再建策でも誤りを犯した。その実行を宣言したまではよかったが、具体策となると失笑を買っただけであった。ネロが贈った金銭や物品を返せ、としたのである。ネロは贈物をするのが大好きではあったが、有力者や金持に贈ったのではない。ローマ社会では下層に属する、歌手や俳優や騎手や剣闘士に贈るのが好きだったのだ。
    ●嫉妬(76頁)
    嫉妬とは、相手に対して能力的に劣ることの無意識な表れに過ぎない
    ●皇帝の責務(86頁)
    ローマ皇帝の二大責務は、安全と食の保証である。安全とは、外敵に対する防衛に加え、帝国内の安定の維持もある。
    ●戦闘の利点(107頁)
    戦闘という人類がどうしても超越できない悪がもつ唯一の利点は、それに訴えることで、これまで解決できないでいた問題を一挙に解決できる点にある。圧勝でなければ意味をもたない理由もここにある。
    ●神の介入(163頁)
    古代のローマ人は、人間の担当分野である政治に神が介入してくるような政体を、考えたことさえもなかった
    ●小麦(198頁)
    主食を輸入に頼るようになって以後の本国イタリアの必要量の三分の一は、エジプトからの輸入が占めている。
    ●休日(238頁)
    ローマ人には日曜を休む習慣はなく、神々に捧げられた祝日が休日になる。
    ローマ人にとっての休日は、神殿で神に祈りを捧げた後に、競技や闘技を楽しむものであったのだ。
    ●医療と教育(241頁)
    現代の福祉制度を知っている我々の考える国家による社会福祉には、医療と教育もまた欠かせないのではなかろうか。
    ところが、ローマ人はこの二つは、国家の責務とは考えていなかったのである。
    ●官邸の組織化(303頁)
    ドミティアヌスは、いわゆる「官邸」の組織化も断行した。皇帝に集中してくる大量な実務をさばく、秘書官システムの整備である。
    ドミティアヌスは、秘書官の全員を、騎士階級から登用している。

    ☆関連図書(既読)
    「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
    「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
    「ローマの歴史」I.モンタネッリ著、中公文庫、1979.... 続きを読む

  • 有名どころの皇帝の巻が終わった途端読むペースが落ちたが、読みはじめれば読んだでやはり面白い。
    ドミティアヌス帝の孤独に共感。治世後半のティベリウスも同じだが、皇帝としてやっていることはきちんとやっていてもっと評価されるべきなのに非業の最期を遂げる。。。唯一心を許せたのはユリアだったのか…。

  • 1年1冊のシリーズも西暦69年のネロ自死というローマの危機に始まり、軍人皇帝たちそしてヴェスチニアヌスによるフラビウス王朝の開始になりました。あまり知らなかった時代ですが、ボンベイの滅亡、ユダヤの反乱(マサダの砦)などで親しみのある時代でもあります。塩野さんの詳細な研究にはいつも圧倒されます。

  • ネロが自死せざるを得なくなってから、五賢帝があらわれる間のばたばたした期間。アウグストゥスの血を受け継ぐことを必要としなくなる過程というか。
    ガルバ・オトー・ヴィテリウスのごちゃごちゃはなんだか読んでいてもきつかった‥‥
    ヴェスパシアヌスは一応計画的に名乗りを上げた人だったので10年間の治世が続いた。それをついだティトゥスも治世であったが、ポンペイウスの火山とか災害で3年で死んでしまう。その弟ドミティアヌスは執政官経験の不足からかいいのか悪いのかって書かれ方・なぜ暗殺されたのかもよくわからんw妻が奴隷を動かしたってことなのかな?そしてショート・リリーフのネルヴァ。
    読んでいてなんともたるい巻でした。塩野さんのタキトゥスへの言い方じゃないけど、塩野さんも「乗っていな」かったんだろうな。

  • あまり世界史では習わないところかもしれない。
    ネロ帝が自害したあとの混乱から、いわゆる五賢帝時代、へいたるまでの時代(紀元68年~96年)を述べている。
    (もっとも、塩野さんは、五賢帝だけが賢いのかという疑問をもっておられるよう。「五賢帝」と記録を残したタキトゥスに対して、セクシーな男ではない、と判断されているようだ。)
    塩野女史の本は、ルネサンスものも大変おもしろい。

    歴史というと、シーザーやアウグストゥスなどの英雄を思い浮かべるが、実際はその政治システムの構築なり、運用なり、改善の地道な継続であったとおもう。
    ローマは覇権を握ったが、敗者も自分達の中にとりこみ同化することで、1000年以上もの隆盛を誇った。
    統治システムにほころびが生じていたときに、英雄ではない人たちがどのように危機に対して対応していったのか、という点で今を生きる我々にも参考になるだろう。
    異色な歴史本である。

    「人間にとっての最上の幸運とは、自分のためにやったことが自分の属する共同体のためになること、つまり私益と公益が一致することにある」
    との塩野女史の指摘は、まったくもって正しいと思う。
    新卒のときに就職試験を受けた会社の面接官さんが、これと似たようなことを言っていた。
    そのとき、その面接官さんを人間として信頼できる、と感じたことを思い出した。
    風の便りで、その人は異国の地で大変な苦労をされたと聞いたが、今どうされているのだろうか。
    こういったかたが、評価されるような社会であって欲しい。

    2006/09/30

  • 繰り広げられる意味なき争い、無惨な三皇帝の末路。帝国再生のため、時代は「健全な常識人」を求めていた―。皇帝ネロの死にはじまってトライアヌスが登場するまでの三十年たらずの時代を描く。

  • 文学的な歴史書、というところが面白いのだろうと思う。事実の積み上げではなく、筆者の推測、考えがところどころに色濃く出ていて、読んでいる方も楽しめる。
    本書の対象の時代はわかりやすい英雄もいないし、血みどろの内戦もあり、史実の部分は少々読むのがつらい部分もあった。それでも、前世の皇帝のどういう政策を引き継いだかとか、後世の皇帝がどの政策を引き継いだか、あるいは引き継がなかったか、という点から対象者を評価しているところなどはとても面白かった。

  • ネロの死後、1年で3人の皇帝が続いた後、フラウィス朝が終わるまでの巻。

    ヴェスパシアヌスの次男で暗殺されるドミティアヌスの15年の治世が、「記録抹殺刑」で残っていないというのが残念。

  • ・一年の間に3人も皇帝が変わった危機の時代。なにやら近年の日本を連想…。

  • 皇帝在位の短い皇帝がつづく。

  •  第1巻から読みふけって、すっかりローマのファンになっている身としては、内乱で傷つけ合うローマを見るのはつらい。愚かな皇帝がいると、最初におかしくなってくるのは「信頼感」のようなものなのだろう。

     ごたごたしている帝国を落ち着かせたのは「常識」であった、というのがおもしろい。ヴェシパシアヌスの、当たり前のことを当たり前にやっていくことで「信頼感」を取り戻していく動きに、とても共感した。

     それにしても、その二人の息子たちも、その後を継いだネルヴァも、それぞれに一生懸命だったと思うのだ。読んでいると、どうも不運だったんだな、と感じてしまう。それと同時に、巨大な権力を持ち、なおかつ幸運に恵まれるというのは、奇跡的なものなんだなと思う。

     カエサルとアウグストゥスのリレーは、やっぱりすごかったんだな。
    2007/4/18

  • 2010/03/06 皇帝オトーがわりと好き。
    いまが絶頂期ならば、すでに衰退の影が見えているということか。ローマの国家観が滅びてしまったことを惜しんでいるのが伝わってくる。

  • 普通の人ならさらりと飛ばしてしまうだろう時代を克明に、しかも「とはいえ面白いのよ」と描き出す著者の文章には脱帽。この人は本当によく人を見る力があるんだなと改めて思う。
    でもこの巻は次の五賢帝の前座でしかない、と少し歴史を知っていれば思ってもしまうけれど。なんだかカエサルの時代が懐かしい。

  • 第8巻は紀元68年、第6代皇帝ガルバから、紀元96年第12代皇帝ネルヴァの死まで。29年間に7人の皇帝が続く、内乱と混乱の日々、ヴェスヴィィオ火山の噴火によるポンペイの埋没もこの時期。
    「まず持って人間には、自らが生きた時代の危機を、他のどの時代の危機よりも厳しいと感じてまう性向がある」
    「政体が何であるかには関係なく統治者と被統治者の二分離は存続せざるを得ないのが現実」
    「平凡な資質の持ち主は、本能的に、自分より優れた資質の持ち主を避ける」
    「独裁体制の国家では、その国の持つ軍事力の真の存在理由は、国内の反対派を押さえることにあって、国外の敵から国民を守ることにはない」
    「人間が人間を裏切るのは、恐怖よりも軽蔑によってである」
    「戦闘という人類がどうしても超越できない悪が持つ唯一の利点は、それに訴えることで、これまで解決できないでいた問題を一挙に解決できる点にある。リーダーの第一条件は、自軍の兵士たちをコントロールする力量」
    「自由と独立の二語・・・他者を支配下におくことを考えた民族で、この二語を旗印にかかげなかった民族は皆無である」
    「他民族に長く支配された歴史を持つ民族は、精神の柔軟性が失われてかたくなになる。また、何に対してであろうと過敏に反応しやすい。そして、過酷な現実を生き抜く必要からも夢に頼る。ユダヤ教では救世主待望がそれに当たった」
    「多神教の民族では、政治と宗教は分かれているのに反し、一神教の民族では、宗教が積極的に政治に介入してくる神権政体にならざるをいない」
    「ユダヤ戦記(山本書店)・・・史書の傑作」
    「ユダヤ戦役・・・純粋を至上の生き方と信ずる人にとって、不純ほど唾棄すべきものはない、純粋であればあるほど、少しの不純も許せなくなる」
    「人間であることの宿命は、何かを成せば成したで、それによって起こる新しい問題に直面せざるをえない」
    「トライアヌス・・・運命とは何が機縁で変わるか分からない、人間の運不運を幸運の女神に気まぐれの結果にしたがる人の気持ちもわからないではない」
    「人間とはなぜか貴種には甘く、高貴な生まれでも育ちでもない人物が強権を振るおうものなら、ヒステリックなほどに反撥する傾向が強い」
    「人間にとっての最上の幸運とは、自分のためにやったことが自分の属する共同体のためになること、私益と公益が合致すること」

  • ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。このころのローマはまだ元気です。

  • いつかうまくいかなくなることがわかっていてもその時点で必要な改革があり,これを読んで使命感を新たにした政治家がいたに違いない。

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ローマ人の物語 (8) 危機と克服の作品紹介

繰り広げられる意味なき争い、無惨な三皇帝の末路-帝国再生のため、時代は「健全な常識人」を求めていた。塩野七生が書下ろす、刺激あふれる物語、第八弾。

ローマ人の物語 (8) 危機と克服のKindle版

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