ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀

  • 373人登録
  • 3.93評価
    • (46)
    • (45)
    • (57)
    • (0)
    • (0)
  • 26レビュー
著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (2000年9月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096184

ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 既製を無くし新しいシステムを作ろうとするとき。その方法を歴史から学ぶことが出来る。紀元前1世紀のローマ。カエサルは元老院体制の無力化を憂い、それを変えることを試みる。一人の力では難儀があるため、他の有力者ポンペイウス・クラッススを巻き込み三頭政治を構築する。カエサルがその実現に際し心を砕いたものが、私益(カエサルの利益)だけでなく、他益(ポンペイウス・クラッススの利益)、公益(もはや弱体化・無力化した元老院体制問題の解決が進まない)。私益ばかり強調してオジャンに終わることが散見される現代にも、大きな示唆を与えてくれる。

  • (2016.08.16読了)(2009.07.05購入)(2000.10.20・?刷)
    紀元98年から161年までの63年間の3名の皇帝の物語です。3名それぞれ20年前後の治世です。「賢帝の世紀」と題されていますので、それぞれに優れた皇帝たちということになります。
    トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、いずれもどこかで名前を聞いた覚えがあるので、比較的有名なのだと思います。

    【目次】
    読者に
    第一部 皇帝トライアヌス(在位、紀元九八年‐一一七年)
    皇帝への道
    気概を胸に
    ひとまずの帰都
    古代ローマの〝君主論〟
    ほか
    第二部 皇帝ハドリアヌス(在位、紀元一一七年‐一三八年)
    少年時代
    青年時代
    皇帝への道
    年上の女
    ほか
    第三部 皇帝アントニヌス・ピウス(在位、紀元一三八年‐一六一年)
    幸福な時代
    人格者
    マルクス・アウレリウス
    「国家の父」
    年表
    参考文献

    ●皇帝の振舞い(42頁)
    強大な権力を与えられた皇帝はどう振舞うべきか
    「主人としてではなく父親として、専制君主ではなく市民の一人として」
    人間的には、「快活であると同時にまじめであり、素朴であるとともに威厳があり、気さくでありながらも堂々としていなければならない」
    ●ローマ皇帝の三大責務(54頁)
    一に安全保障、二に国内統治、三に社会資本の充実
    ●ローマ人の橋(84頁)
    橋を道路の延長と考えていたローマ人の橋は、道路との高低差なしにつくられるのが常で、登っては降りる型の橋があれば、それらはすべてローマ帝国滅亡後につくられた橋である。
    ●アラビア(89頁)
    ローマ人がアラビアと呼んでいた地方は、後代のアラビア半島のことではない。香料や没薬や真珠の産地として知られた豊かなアラビア半島の南部を、ローマ人は「アラビア・フェリックス」(幸福なアラビア)と呼んでいたが、形容詞なしでアラビアと呼べば、それは現代のヨルダンを指していた。
    ●善政(151頁)
    善政とは所詮、正直者がバカを見ないですむ社会にすることにつきる
    ●推薦者(155頁)
    ユリウス・カエサルは、キケロが推薦してくる若者ならば誰でも自分の部下にしてしまったが、それはキケロの識見を買ったからである。トライアヌスも、プリニウスの依頼をほとんど満足させてやるが、これもまたプリニウスの誠実さと公共心の高さを認めたがゆえであった。人材登用は勝負である。この勝負の参加者には、登用者と登用されるものの二人だけではなく推薦者も加えるというのが、つまりお参加者全員に責任を持たせるというのが、ローマ人が縁故採用を多用した理由ではなかったかと思う。
    ●トライアヌスの欠点(162頁)
    ローマ時代の史家たちが、トライアヌスの数少ない欠点の一つにあげているのは、酒飲みであったということである。
    水か湯で割る習慣のギリシア人やローマ人の中で、酒飲みと評されるのはストレートで飲むことだった。
    ●トライアヌスの死(178頁)
    紀元117年8月9日、皇帝トライアヌスは死んだ。64歳を迎える1か月と少し前、20年におよんだ治世の後の死であった。死の直前に、ハドリアヌスを後継者に指名していた。
    ●あごひげ(262頁)
    ハドリアヌスは、はじめてあごひげを貯えた皇帝として知られている。共和政時代でもごく初期から、ローマの男たちはきれいにひげを剃ることを習慣にしていた。
    ●仕事と余暇(294頁)
    ローマ人は、「仕事」と「余暇」を分けるライフスタイルを確立した民族でもあった。一般の市民ですら、日の出とともに仕事をはじめ日没に眠るのを常としながらも、午前中は仕事、午後は余暇と分けていたのである。
    ●ローマの兵士(304頁)
    ローマの兵士は、戦時になってはじめて武器を取るのではない。
    まるで武器を手に生まれてきたかのように訓練を怠らず、訓練と演習にはげむ日々を送っている。
    ●調査(307頁)
    ローマ人は、思わぬ幸運に恵まれて成功するよりも、情況の厳密な調査をしたうえでの失敗のほうを良しとする。ローマ人は、計画なしの成功は調査の重要性を忘れさせる危険があるが、調査を完璧にした後での失敗は、再び失敗を繰り返さないための有効な訓練になると考えているのである。
    ●ローマ式の再建策(377頁)
    まずはじめに、皇帝からの義援金が届き、被害者たちに配分される。同時に、近くの軍団基地から派遣された軍団兵や補助兵によって、〝インフラ〟の復旧工事が行われる。さらに、ローマでは皇帝が暫定措置法を発令して、被害の状態に応じて免除年数が決められた、属州税の免除制度が実施される。免除年数は、三年から五年の間であるのが普通だった。

    ☆関連図書(既読)
    「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
    「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
    「ローマの歴史」I.モンタネッリ著、中公文庫、1979.01.10
    「古代ローマ帝国の謎」阪本浩著、光文社文庫、1987.10.20
    「ローマ散策」河島英昭著、岩波新書、2000.11.20
    ☆塩野七生さんの本(既読)
    「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
    「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
    「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
    「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
    「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
    「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
    「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
    「ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ」塩野七生著、新潮社、1997.07.07
    「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」塩野七生著、新潮社、1998.09.30
    「ローマ人の物語Ⅷ 危機と克服」塩野七生著、新潮社、1999.09.15
    「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
    「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
    (2016年8月18日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    紀元二世紀初頭、ダキアとメソポタミアを併呑して帝国の版図を最大にした初の属州出身皇帝トライアヌス、帝国をくまなく視察巡行し、統治システムの再構築に励んだハドリアヌス、穏やかな人柄ながら見事な政治を行なったアントニヌス・ピウス。世にいう五賢帝のなかでも傑出した三者の人物像を浮き彫りにした、極め付きの指導者論。

  • ローマ帝国の全盛期といわれる5賢帝の時代はあまり文献が残っていないらしい。トライアヌスやハドリアヌスは急務に対して忙しく立ち働いたのでその記録は残っていてこの本の材料として取り入れられているが、アントニヌス・ピウスにいたってはほとんど手がかりがないらしく二十数ページしかあてられていない。この3皇帝の在位年数はいずれも20年前後であったのに少々アンバランスな配分にならざるを得なかった。

    トライアヌスは敵対するダキアを打ち負かしその地域の先住民を完全に追い出した。今で言うルーマニアのあたりだ。この時代からこの国の名前通りローマ人の支配地域になった。トライアヌスはまた帝国全土のインフラにも力を注いだ。

    ハドリアヌスはトライアヌスの後を継ぎ帝国全土の再構築を行った。ユダヤ問題に決着をつけ、その結果ユダヤはそれ以来放浪の民となった。

    アントニヌス・ピウスは人格者ということになっている。何一つ実績は残っていないが無能というわけではもちろんなかったらしい。帝国にとっての「急務」がもはやなかったのだろう。そう考えるとアントニヌス・ピウスの時代がローマ帝国の歴史の頂点だったのかもしれない。

  • かなり面白かった。賢帝というだけに、君主論もしくはビジネス書・人生訓としても読めるかも。現在でも学ぶべきことが多いので人の上に立つ人にぜひ読んでほしい。
    キリスト教が広まるまえの日本のように宗教色が強くない多神教のローマは、本当に住みやすい国だったのではないかと思う。現在の世界の情況を鑑みるに、こんな国があったという事実は奇跡のようにさえ思える。

  • 評判のよいトライアヌス帝。ただ評判が良すぎて伝記を書かれる幸運には恵まれなかった故、ダキア戦記は円柱の場面を追う、という描かれ方になっている。塩野さんも苦労されて書かれたのだろう。
    帝国中動き回ったハドリアヌス。発行するコインで皇帝が成し遂げたことをローマ帝国に流布していたのはおもしろい。
    慈悲ぶかきアントニウス・ピウス。先帝の業績はほとんどすべて継承しつつも不都合なことだけは微調整した。

  • 五賢帝の2人目からトライヤヌス、ハドリヤヌス、アントニヌス・ピウスの3名を取り上げます。偉大な皇帝たちで、ゴシップも少なかったというだけに、記録が少ないという皮肉な時代だそうです。(老醜をさらし、晩節を汚したハドリヤヌスを除いて。やはり引き際の重要さを痛感します)にも関わらず詳細な調査で、3名の人生がこんなにも見事に蘇るのは流石です。面白いのはトライヤヌスのブリニウスへの返信書簡で急成長するキリスト教への対策について指示をしている件です。この時代からすでに極めて正しくキリスト教について認識されていたことが分かります。そして、ドナウ川にかけたトライヤヌス橋の建設、ダキヤ(ルーマニア)の征服、ハドリヤヌスでは公衆浴場の男女混浴禁止令などローマ法の整備、アントニヌスの善政など。

  • ローマ世界の完成形がここに!
    二千年前に多人種・多民族・多文化共生の仕組みが作られたことは驚嘆に値する。
    その理由の一つはギリシア人も共有する多神教だと思うが、都市国家から領域国家、そして広大な帝国への移行を可能ならしめたのは、宗教を超えて世事全般に渡るクレメンティア(寛容)の精神だろうか。ユダヤ人の選民思想とは対極にあるこの精神がローマ人に備わったのは偶然か、あるいは地政学的必然か?残りの衰退期の巻に進む前に考えてみようと思う。

  • 賢人皇帝の前まで。

    カエサル、アウグストゥス以降は、話のスケールは大きいんだろうが、話としては小粒。

  • トライアヌス、ハドリアヌス、アントニウス・ピウスの各皇帝の男っぷりと、仕事にかける情熱、といったところでしょうか。

    いずれも属州出身の田舎者ではあるが、田舎者であるからこそ、実直にローマ精神を体現しよう、と努力した皇帝たちである。
    前2人は、ぽっと田舎から都会にでてきたので、とにかくなんでもがんばっちゃった、という感じだけど、周りからずっと評判が良かったのがトライアヌス。年取って偏屈になってしまったのがハドリアヌス。
    アントニウス・ピウスは、じいちゃんの代から都会にすんでいるので一応田舎はあるけど都会育ち、みたいなひと。

    5賢帝、というが、なにが彼らを賢帝たらしめたのか、というと、強烈な使命感と持続する熱情なのではないか。
    今、何が必要とされているのか、何をしなければならないのか、何ができるのか、そういうものについてとにかく3人とも判断力がよく実行力がある。
    すばらしいリーダたちである。まじめなことはすばらしいことではないか。

    だがハドリアヌスあたりになると、まじめすぎて苦しい。多少不真面目なハドリアヌス、という感じの性格だと、皆とうまくやれそうだ。

    2006/11/30

全26件中 1 - 10件を表示

塩野七生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
三島 由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印

ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀に関連する談話室の質問

ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀を本棚に「読みたい」で登録しているひと

ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀を本棚に「積読」で登録しているひと

ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀の作品紹介

紀元二世紀初頭、ダキアとメソポタミアを併呑して帝国の版図を最大にした初の属州出身皇帝トライアヌス、帝国をくまなく視察巡行し、統治システムの再構築に励んだハドリアヌス、穏やかな人柄ながら見事な政治を行なったアントニヌス・ピウス。世にいう五賢帝のなかでも傑出した三者の人物像を浮き彫りにした、極め付きの指導者論。

ローマ人の物語 (9) 賢帝の世紀のKindle版

ツイートする