ローマ人の物語 (15) ローマ世界の終焉

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (423ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096245

作品紹介・あらすじ

ローマはいつどのようにして滅んだのか。一千三百年に及ぶ巨大帝国の興亡のドラマを描き尽くした最高傑作シリーズ、ここに完結。

感想・レビュー・書評

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  • ローマ人の物語は、塩野ファンのみならず、どなたにもお勧めしたいシリーズ。ついに「ローマ人の物語」が完結。西ローマが滅びついに永遠の都ローマが、ローマ人以外のものの手に落ち、ここにローマ帝国の滅亡をみる。キリスト教から発生したイデオロギーに最後の活力をそぎとられたローマの終焉はあまりにもあっさりしすぎて、なんの感慨も起こらない。実にあっけないものであった。第一巻の出版は、私がまだ大学生だったことを考えると、一時代が終わったような寂しさを覚える。当時、これを手にしながら、これが完結するころ、世の中はどう変わっているんだろうかと考えたものであるが、大して変わらないなー、自分の肉体以外は。

  • 2021/11/4
    テオドシウスの息子である西ローマ皇帝ホノリウス下でスティリコ、アエティウスという優れた将軍が生まれるが彼らは皇帝によって殺されてしまう。蛮族の定住、金による講和、ローマへの恫喝とローマ劫掠が起こるが皇帝はラヴェンナから動かない。最終的には、オドアケルによって西ローマ帝国は滅ぶ。
    オドアケルの帝国のあと、西ゴート王国がイタリアを支配する。カソリックのユスティニアヌスはアリウス派からの解放を掲げて、北アフリカのヴァンダル、イタリアの西ゴート王国を滅ぼす。しかし、東ローマ帝国はパクスを提供できず重税を取り立てるだけで、戦場となったイタリアは荒廃する。
    これが、ユスティニアヌスのハギア・ソフィア建築、ローマ法大全の編纂に次ぐ、西ローマ帝国領の再服という三大事業の一つの実態である

  • 塩野七生 「ローマ人の物語」最終巻 テオドシウスからのローマ帝国滅亡まで。

    ローマ帝国が 何を失って滅亡したのかを伝えている

    著者の最後の言葉〜地中海の役割の変化〜が印象的
    「多民族、多宗教のローマ帝国にとって、地中海は内海(つなぐ海)であったが、地中海が、つなぐ海でなく、異なる宗教や文明をへだてる境界に変わったとき ローマ世界は終わった」

    カエサルやアウグストゥスと比較すると ローマ帝国末期は皇帝の資質が低い。キリスト教の王権神授説により、人意でなく 神意で 皇帝を決めたことが 資質の低さとなり、市民の参政意識や国家防衛の士気は薄れた原因とする論調

    ローマ帝国隆盛時にローマ市民が持っていた寛容の精神には未来を感じる。寛容=降伏した敵に対する寛容。異なる宗教、文化の許容

    名言「人間社会は活力を失うと閉鎖的になる」

  • 東西分裂から西の滅亡、ユスティニアヌス帝が失地回復したあたりまで。
    言い換えるとムスリムの台頭ぐらいまで。
    西の終焉とか、めっちゃ地味なのね…。東が壮絶な最期を遂げたのと対照的。
    終焉後もそれなりに安定してたのに下手に取り返そうとしてかえってめちゃくちゃに、とか。
    後講釈ではあるけど。
    まあ何にしてもこれにて完結。面白かった。

  • 前巻でギリシア・ローマ文明がキリスト教に敗れ、ボロボロになったローマ帝国を扱った本巻は、巨人の死を看取る思いで読んだ。
    11巻以降を簡単にまとめると、カラカラのローマ市民権法をきっかけに人材・社会の流動性が低下、ガリエヌスのミリタリーとシビリアン分離により指導層の質が低下。一方で、北方蛮族の流入激化とササン朝ペルシア登場という外部環境の悪化。環境悪化に対して良かれと思って取った策が裏目に出て、ローマは体力を消耗していく。
    コンスタンティヌスは皇帝位の安定のため、支配の道具としてキリスト教を国教化したが、司教アンブロシウスは主従逆転させテオドシウスを「羊」として従える。キリスト教はローマにとって終末期医療の麻薬であった。
    そして本巻。東西分離後の皇帝は全くの無能。優れた将軍はいても歴史の流れを変える力はローマにはない。これまで蛮族と一括りにしてきたゲルマン人の中に現代ヨーロッパ諸国の原型が現れ、ローマ世界がひっそりと終わりを告げる。
    改めて現代社会に目を向ける。宗教を旗印にした善悪二元論、排他的な主張がぶつかり合う。しかるに、2200年前、ハンニバルとスキピオによるザマの会戦の後の下り:『戦争という、人類がどうしても超脱することのできない悪業を、勝者と敗者でなく、正義と非正義に分けはじめたのはいつ頃からであろう。分けたからといって、戦争が消滅したわけでもないのだが。』全く、人類の歩みは単調ではない。我々がローマ人から学ぶこと大である。

  • 滅亡とか落城とか崩壊を食い止めようとして
    それができなかった人達の物語は悲しい。

    統一ローマ最後の皇帝テオドシウスは、
    死に際して長男と次男に国を継がせ、
    有能な将軍スティリコに後見を頼んだ。

    しかし、スティリコ一人だけのがんばりではもう支えきれない。
    一生懸命、能力を最大に発揮し、ローマ人の誇りをもって
    職務を遂行しているのに、
    その共同体自体が腐りかけているので、
    彼の努力はまったく報われない。

    滅亡にいたる時期は、ほかにもそういう人が多いんだろう。
    がんばっても、がんばっても、報われない。そういう社会には、したくない。
    なので、(自分たちの世代で)今ある問題を先に延ばすことなく
    解決していく気概をもちたいものだ。

    2011/09/30

    <全巻読んでの感想>
    これは、歴史書ではなく小説、です。
    登場する人物の心情を大胆に書いてあるところがありますが
    そこが読み応えがあります。
    また、切り口にぶれがありません。
    キリスト教文化圏以外のバックグラウンドをもつ作者だからこそ、
    冷静な目で観察できている、といえるのではないのでしょうか。

    最後に、ローマ精神というところを作者が解説してくださって
    います。
    読めば読むほど、質実剛健、という思いが深くなります。
    私は質実剛健という感覚は好きです。
    いまどきあまり流行らないかもしれませんが。

    2011/10/31

  • ローマ人の物語15巻を読み終えた。

    紀元395年、テオドシウス帝の死、東ローマ帝国と西ローマ帝国への分割から、紀元476年西ローマ帝国の滅亡、帝国滅亡後のイタリア、紀元613年、預言者モハメット布教を始める…

    長いながいローマとローマ人の物語、

    なぜ、どのようにしてローマは興隆し、繁栄し、衰退し、滅亡していったのか・・・人間が、社会が、宗教が、自然が、広大な空間と時間の中で折り重なっていく物語だった。

    機会があればもう一度読み直してみたい物語だ…

  • 表紙が好きなので、単行本で登録させてもらっているが、実は文庫本で読んでいる。文庫本だと薄くて冊数が多くなりすぎるし。しかし、まさか文庫本まで年1回の発行だとは思わなかった。こんなことなら単行本で全部集めておけば良かったと思いながら、初心貫徹でじっくりと文庫本を買い集め、めでたく完結である。

    最初から呼んでいた人なら誰でもそうであるように、僕もすっかりローマ人のファンになっているから、さすがに滅びていくところを読むのはつらかった。でも、ローマ帝国は退場するけど、その後にうごめく「蛮族」たちは生気に満ちていて(その分残酷だけど)、もう少し前の徐々に衰退していく頃の物語よりも、正直言ってずっとすがすがしい気持ちで読んでいた。

    特に、「最後のローマ人」スティリコと、皮肉な形ではあるが新たな平和を創ったテオドリックは印象的で、長い物語を締めくくるにふさわしい星だったと思う。

    最後のページを閉じて、改めて長かったなと感慨を持つ。そして、僕自身のものの考え方に、実はずいぶん影響を与えてくれた本であり、影響され続けた10年だったような気が改めてしてくる。

    人間について考える、すばらしい材料を与えてくれた作者に感謝したい。

    2011/09/11

  • 「ローマ人の物語」も、とうとうこの15巻で完結。第一巻の発行が92年(だったと思う)ので、だいたい15年かけて完結に至ったということになる。私自身が読み始めたのは、文庫化されてからのことなので、それほど前のことではないが、ここ何年かは、決まって年末に発行されるこの本を買い、年末年始に読むということを続けてきた。とにかく面白くて、読みごたえがあり、自分自身の生涯ベスト10に必ずはいる本だ。ローマ帝国の誕生から滅亡までを、物語風に記録し、著者自身の考えをあらわした本。歴史本というと、事実(のみ)を記述した無味乾燥なものか、あるいは、歴史上の特定の人物や出来事に焦点をあてたフィクション等が多いが、この本は歴史を、興味を持てる形の物語にし、とても面白く読めるようにしたところに、人気の理由があったのだと思う。とにかくお勧めです。

  • とうとう最後まで読みました。年内に読み終えることができて良かったです。ローマの滅びる直前と今の日本に共通点があるかも!?減税して子どもを安心して育てられる世の中になってほしいです。

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