ローマ亡き後の地中海世界 下

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著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (2009年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096313

ローマ亡き後の地中海世界 下の感想・レビュー・書評

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  • 本棚を温めていた2冊を読むことができた。実は初めての塩野七生だったが、すばらしきストーリーテラーに導かれ、完全に地中海をタイムトラベル。海賊といえば、ワンピース並みにキャラの濃い実在の人物たちが生き生きと描かれ、著者がいうように樹と森のうち森がテーマな本書だけど、ちょこちょこ面白い逸話(=樹)を混ぜてくれる。読むの大変だけど、いっきに読むべし!

  • 塩野七生氏が言うように彼女の作品の殆どは樹であったのだが、今回は森を書いている。

    中世5世紀から15世紀にかけての千年を地中海を、即ち広がりのある森を中心に描いている。

    その森の中には、レパントの戦い、ロードス島の戦い、コンスタンチノープルの戦いなどこれまで氏が書いた物語が含まれている。

    そして、ヴェネツィアと十字軍もこの森の中に含まれるが、それらはちょっと広がった林といえるだろう。

    歴史は地上を中心に形成されるのは確かであろうが、海である地中海に着目したのはなかなかの慧眼であろう。

    それまで地中海を「我が海」としていたローマ帝国が滅びたあと、なんと千年以上にもわたってそこは海賊が暴れまわる世界であったことを知っている人は少ないのではないか。

    当然、海賊がヨーロッパ世界に与えた影響は小さくない。
    小さくないどころか、地中海はキリスト教とイスラム教が相対する主戦場であったのである。

    両宗教の対立といえば、十字軍や、ポワティエの戦いや、コンスタンチノープルあるいはウィーン攻防戦を連想しがちだが、海上の戦いもそれに劣らず歴史に大きな影響を与えていたのである。

    しかしながら、正規軍対正規軍にスポットライトが当たり、海賊という非正規軍との戦いは日陰に追いやられざるを得ない。

    地中海北岸の村や都市が海賊によってどれほどの被害を蒙ったか、その影響は計り知れない。

    その日陰の部分にスポットライトを当てた塩野氏の功績は大と言えるだろう。

  • イスラム、キリストの対立が中世から続いており、現代の世界情勢につながっていて、勉強になった。

  • 古代ローマ帝国滅亡後からルネッサンス期までの地中海世界に焦点を絞った、中世ヨーロッパの歴史叙述。

    あの名著「ローマ人の物語」の続編です。

  • 西のローマが滅んだあとを、地中海の動きから中世の1000年に渡る歴史を俯瞰する。
    北アフリカに進出を伸ばしたイスラム勢力は、シチリアを始めとするイタリア諸国にも海賊として襲撃を繰り返すようになった。
    上巻は彼等イスラム海賊とローマ亡き後のイタリアとの興亡がメインとなる。
    略奪とともに常態化していたのが人民の拉致だったらしく、なんと200年ほど前まで続いていたというから驚かされる。
    一時はシチリアまで占拠されて、ティレニア海航海の安全さえ保てなかったイタリア諸国は、神聖ローマ帝国にもビザンチン帝国にも頼れなかった。
    長く続いた苦難の歴史のあと、イタリアの海洋諸国アマルフィ、ピサ、ジェノバ、ヴェネティアが勃興するとともに、ローマ法王を中心とした勢力としてイスラムへ対抗することになり、西地中海の覇権を取り戻していく。
    ヴェネティアについては「海の都の物語」に、その流れと共に始まった十字軍の歴史は「十字軍物語」に詳細が示されており、併読すると分かりやすい。(はず。十字軍は次に読む予定なので)

    下巻では東地中海に覇権を固めたトルコとキリスト教国の対決がメインとなる。
    地中海の制圧は外部に頼ると決めたトルコは、赤ひげ(バルバロッサ)やドラグーといった著名な海賊の棟梁を海軍の重鎮に登用して西地中海を攻めさせる。
    これに対するキリスト側は、ローマ法王、神聖ローマ帝国を中心に付かず離れずしながらの抵抗を続ける。
    ここに登場するのがルイ9世、皇帝カルロスやアンドレア・ドーリアといった人物たち。
    下巻は上巻と違い、これら個々の人物の存在感が際立っており格段に興味をそそる。
    やはり塩野物は魅力ある人物が登場してくると俄然盛り上がってくるが、カエサル、アウグストゥス、ハドリアヌス、、、、と皇帝たちの性格が各時代でにじみ出ていた「ローマ人の物語」でも同じだったなぁ。
    そして全盛期を迎えたヴェネチアを中心としたキリスト側海軍とトルコは歴史上有名な戦いを何度も繰り返し、地中海全体の覇権が揺り動かされていく。
    この中で起こった戦いに焦点をあてた「コンスタンティノープル陥落」、「ロードス島攻防記」、「レパント海戦」なども読んでおくと話が分かりやすい。
    マルタ島騎士団の攻防戦は独立した著作がなく詳しく知らなかったのだが、これほどにも映画のような筋書きの戦いがあったとは驚きだった。

    相変わらずの塩野歴史絵巻は圧巻であり、地中海に焦点を当てた歴史を一望にして魅せる構成の取り方、そして重要な歴史的事件は改めて書をたてて書き込んでいるところは読者にとっても嬉しい限り。
    この本のあと、十字軍とフリードリッヒ二世を取り上げるなんて、次々と読者の興味をむんずと掴んで引きずり込む企画力もさすが。
    次もハマってみましょう。

  • 下巻はコンスタンティノープルの陥落後、いよいよオスマントルコの勢力が地上でも海上でも西欧の脅威となっていた時代。オスマントルコ軍は赤ひげというギリシャ人海賊の頭目を海軍の司令官にしし、以後有力な海賊たちを利用することで、対西欧の海上での戦力としていた。一方西欧側もジェノバ人アンドレア・ドーリアなど、海上戦術に優れた指揮官を登用することで対イスラムの海上防衛を組織的に行うかに見えたが・・・。 当時の強国スペイン、フランス、そして交易国家のヴェネチア、さらにローマ法王庁のそれぞれの利権とキリスト教国としての立場が錯綜していて、まあ統制のとれないこと!よく500年後の今現在EUというひとつの共同体を組成できていると思う。そもそもイタリアという国もよくひとつの統一国家に成れたと思うけど。それも戦争の功罪?
    この本は主にヴェネチア共和国を軸に描かれているように思うが、1600年代以降の記述がないのは残念だと思う。でも、地中海が世界の中心であった時代は確かにここまで。以後新大陸の発見で舞台は大西洋へと移ってく。
    上巻は海賊と奴隷の話に終始していたが、時代が下るにつれ、今巻では突出した個人が活躍しているので、読みやすさではこちらかな。でもあまりに登場人物が多くて混乱してしまいます。
    少し前に「コンスタンティノープルの陥落」を読んだばかりだったので、入っていきやすかったですね。

  • 16世紀の地中海を巡るイスラムとキリスト教世界の対決は中々ドラマティックです。1453年のコンスタンチノープル陥落、1571年のレパント沖海戦はすでに詳細な著書がありましたが、この本の中では、スレイマン・トルコ帝国の1565年のマルタ島攻撃とマルタ騎士団の防衛戦争が最も印象に残りました。著者によれば、この闘いはヴェネティアが絡んでいないため、書き残していたとのこと。世界遺産のTVでマルタ島の要塞を見ていただけに、リアルにその様子が思い浮かびます。この時代の西欧がスペインとフランスの2大国の対立に振り回され、英国、ドイツ、そしてポルトガルも表舞台に出てこないというのは、新鮮な読書感です。ローマ1000年史、そしてヴェネティア1000年史、ルネサンス史が著者の中心著作群だとするとこれはヴェネティア時代の裏側から見た地中海史ともいうべきものでしょうか。この本の最後近く、いよいよスペイン無敵艦隊が英国に敗れ覇権者の時代が変わっていくとともに、ガレー船の古代海戦から近代海戦へ変わっていく時代を感じました。

  • 巻末には14頁にわたる参考図書が記載されているが本文中に書名が出てくることはない。これこそ歴史小説だと思う。自署についても最初に注意書き、後は注釈程度で良かったと思うが。
    欧州諸国の何故は充分読み応えがあるが、イスラム世界側は今ひとつである。その地に今立っても書いている時代に戻れたほどの資料は集まらなかったのだろうか。肖像画などビジュアルがないことも影響しているかもしれない(イスラムでは自画像は御法度らしい)。ローマ時代には緑豊かな農業地域であったという北アフリカが、緑化も困難な土地になってしまった経緯をもっと知りたかった。住み着いた人々の民族性だけが問題だったのだろうか。海賊産業に貿易業は無理だったのは理解できるが、周辺企業?の人々はどうやって食べていたんだろう。
    一神教は度し難い。人が人のために作ったものであるとつくづく実感した。

  • 海賊の歴史の話は初めて知った。

  •  本書では、1453年のビザンチン帝国の首都コンスタンチノープルの陥落以降の地中海世界の歴史を描いている。この時代以降、イスラム教とキリスト教の対立は「大国のパワーゲーム」の世紀となる。オスマン・トルコのスルタン、スレイマン。フランス王フランソワ1世。スペイン王で神聖ローマ帝国皇帝でもあったカルロス。そしてローマ法王パオロ3世。キャラの立つ登場人物が繰り広げる国際政治は、現在といささかも変わらぬリアルでシビアな冷酷さを持ったものであると感じた。
     著者は戦いの描写がうまく、おもしろい。それぞれの勢力の背景である社会制度や経済状態、また文化の違いの描写は詳細にわたっており、興味深い。
     「マルタ騎士団の戦い」は、読んで人間の残忍さとともに、血湧き肉踊るワクワク感をも感じた。全ての力を振り絞った戦いには残酷さとともに感動をも覚える。そして、戦いの最終決戦のような「レパントの戦い」(1571年)へと物語りは盛り上がる。
     地中海世界におけるイスラムの海賊は、正規の事業として運営されていたことが本書で詳細に紹介されている。時代と価値観が違うとはいえ、あまりにもむごいと感じた。我々が「海賊」というと、ディズニーのカリブの海賊を思い浮かべるが、この地中海世界ではつい最近まで多くの「海賊」が跋扈しており、あらゆる海賊行為の厳禁を宣言した「パリ宣言」が成立したのは1856年だったことを本書は教えている。本書は、「平和」の価値と、それが成立するための条件をいろいろと考えさせてくれると思った。上・下巻ともに飽きずに読める良書であると感じた。

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