皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上

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著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (2013年12月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096375

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皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上の感想・レビュー・書評

  •  今まで塩野七生が書いてきた作品の多くが、古代ローマとルネサンスである。

     そんな彼女が十字軍を題材にした『十字軍物語』を書いた時も、正直驚いた。

     私が個人的にずっと中世を独学で学んできたことや十字軍から北方十字軍へと興味を移してきたせいもあるのだろう。

     まだ物語は序章と云うべき部分を読んでいる。だが、わくわくする。(完読してしまった、もったいない……。下巻はもう少し楽しみながら読もう!)

     オランダの歴史学者であったホイジンガがルネサンスとは中世の秋であると称したことは余りにも有名であるが、それを彼女はどう描いてくれるのだろう。
     この暗黒の時代と呼ばれることもある中世の巨星フリードリッヒ二世のまさに生涯を……。

     一ページごとに捲るのが楽しい知的な冒険の一冊である!

  • こういう人が世の中を引っ張って行くんだな。という感じの中世の異端児フリードリッヒ2世。
    ルネサンスの先駆けではあるけど、あの時代では生まれてくるのが早すぎたような気がします。
    ルネサンスに生まれていれば、宗教との対立や批判もなく過ごせただろうに…。だからこその先駆けとはいえ、彼の生涯とその後が気になる展開です。

  • 塩野七生さんの最新刊。

    構想に40年以上とかいうことだったのでかなり期待。
    あのカエサルやマキャベリ以上の思い入れがあり、さぞ素晴らしい考察をされているかと思いきや肩すかし。

    確かにあの中世で思い切った改革を行い、ルネサンスの先駆けとなったフリードリッヒⅡではあるけど、その凄さが伝わってこなかった。

    伝わってこなかったのは、そもそも皇帝と法王という二元的対立軸に陳腐化したためか、それとも中世のカトリックが権威どころか権力を持っていたことが日本人として肌で感じにくいことか、そもそも著者の文章表現によるものかは分からない。全体を通して単調で、ローマ人の物語のような著者の気迫による人物描写がなかったように感じる。

    しかし、フリードリッヒⅡという人物を取り上げてここまで詳述した邦人作家はいなく、その点では世に出した功績は非常に大きい。

    洞察力、先見性、実行力にずば抜け、政治機構を大改革し、それがために法王と対立したがその対立すら主導していく。

    しかし、フリードリッヒⅡは取り組み方が非常にまじめすぎる。
    ガチガチのコチコチ。

    カエサルがもしその時代にいれば、あれば遊び心満載、対立することなくそつなくかわしていたように思える。

    カエサルが政治に躍り出る際に真っ先にしたことは、まったく信仰心など無く遊び暮らしていたくせに、自ら神官に立候補。若くしてローマで最高の神祇官になっちゃった。宗教的権威を良く知っていてかつ利用方法を知っていて、対立するというか自分がそれと同体化するという離れ業。結局カエサル以降アウグストゥスも最高神祇官を兼ね、以降の皇帝は全てカエサルを模す。キリスト教を国教化したテオドシウスから兼ねなくなったけど。

    フリードリッヒⅡは法王との対立に終生悩まされたのは、カエサルの時代とは比較できないくらい当時のカトリックの影響力が大きかったのはよく分かる。フリードリッヒⅡという叡智の塊のような人物が法王との対立を考え抜いて外交と武力で交渉していたが、それでも暗い中世という時代には通用しなかった。勧善懲悪的物語構成でいえば「敵に勝てなかった」という結末に終わったのがすっきりしない読後感になったのかな。

  • タイトル通りの中世ヨーロッパ物語。

    上巻は誕生からロンバルディア同盟軍との勝利(1194年~1237年)のお話。
    作者自ら中世史の真打ちと銘打っただけ、生き生きと描かれている。
    「ローマ人の物語」のカエサルへの肩入れ以上かもしれない傑作であろうと思われます。

  •  塩野さんが「ルネサンスとは何であったのか」の中で,ルネサンスの先駆者としてアッシジのフランチェスコととともに挙げた,フリードリッヒ二世の伝記のうち,42歳までの前半を扱っています。
     塩野さんは,ルネサンス時代を中心に扱ったルネサンスモノから執筆活動を始められ,その後に15年をかけて「ローマ人の物語」で古代ローマを書き終えられてからは,ルネサンスとローマの間の中世を舞台にした作品で間の時代を埋めていらっしゃるいますが,その中世モノの最後として,この「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」を執筆されています。

     この作品は,塩野さんの強烈な自信が感じられる,次の書き出しから始まっています。
    ---
     これら中世モノの最後が,この『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』です。今度はキリスト教世界内部の対立であり,聖権と俗権をめぐっての対決ですから,中世モノの「真打ち」という感じでもある。
     とはいえこれらの諸作はいずれも,中世の一千年間を舞台にしていることでは同じです。同じ時代を,照明を当てる対象を変えながら書いていった,としてもよいかもしれません。
     ゆえに私が,読んでくださるあなたに保証できることはただ一つ,これらを,とくに中世ものの真打ちの感ある「フリードリッヒ」をお読みになれば,中世とはどういう時代であったかがわかるということ。そしてその中世の何が古代とはちがっていて,なぜこの中世の後にルネサンスが起こってきたのかもおわかりになるでしょう。 
    皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上) 読者に より
    ---

     ルネサンスへの扉を開いた,皇帝フリードリッヒ二世がどのような幼少時代を過ごしたのか,そしてその幼少時代の環境が彼にどのような影響を与え,時代を転換させることになったのか。また,神聖ローマ帝国皇帝であり,シチリア王という立場にあった彼が,どのような対内政策や対外政策を行うことで,時代を転換させようとしたのか。彼の半生と時代を転換させた思考や行動という観点からの塩野さんの叙述は,塩野さんの歴史物の中でも,冒頭の自信につながる内容になっていると考えます。
     これまで,塩野さんの作品を読んでこられた方々には,ルネサンスモノとローマ人の物語で,「ローマ」,「中世」,「ルネサンス」というそれぞれの時代の特徴が何度も叙述されているのをご存知だと思いますが,その特徴をフリードリッヒ二世の生涯を通じて,より明確にまとめられているなという印象を持っています。

  • 中世の神聖ローマ皇帝とローマ教皇の権力構造について、細かな人間模様の描写から理解を深めることができた。

  • ルネサンスの先駆けとも言える皇帝の生涯。
    膨大な資料と著者の豊かな想像力と表現力の結果なのでしょうがまるで見てきたような文章でその場面が目に浮かぶシーンが多くあります。
    著者の本を読んでいると遠い過去の人々がふと身近に感じることがあるのですがこの本もそうでした。

    二度も波紋を言い渡す法王と対抗する皇帝の姿に『カノッサの屈辱』を思い出し、ハインリヒ4世との対応の違いに彼の先進的な思考を感じました。あの当時、今で言う政教分離を考えていたとは。

  • 13世紀ヨーロッパに現れた「玉座上最初の近代人」と呼ばれた神聖ローマ皇帝の伝記。前巻は治世の中盤まで。キリスト教の影響から政治を独立させるべく、優れた人々を率いて奮闘するのは後世の、しかもカトリックでもない人間にはわかりやすい。ただこれが当時のキリスト教世界の常識人にとっていかに認めがたいことだったか。皇帝一党に寄り添うような著述であるためアンチ皇帝派の気分がわからず、それゆえに事績の偉大さ、迫力を理解しきれなかったのがちょっと残念。

  • ★2015年8月29日読了『皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上』塩野七生著 評価B+

    私としては、面白くて何年もかけて、読み切った『ローマ人の物語』に続く塩野さんの著作。
    物語の中心は、1220年に神聖ローマ帝国の皇帝の座を25歳で戴冠したフリードリッヒ2世。彼は、混沌の中世の欧州において、珍しく近代的で革新的な施策を次々と打ち出した皇帝である。塩野さんは、その中世欧州に現れた織田信長のような魅力的な人物フリードリッヒ2世を活き活きと描き出してくれる。

    世界史の中で学んだ破門、公会議、神聖ローマ帝国、ロンバルディア同盟、北イタリアの都市が勃興したのはなぜだったのか? 十字軍とはいったい何だったのか?などの歴史的文化的背景が深く掘り下げて解説されており、いまさらながらなるほどそういうことだったのかということが沢山出てきた。

    ローマ法王がキリスト教世界の中心として、宗教的、世俗的な物事をすべて指図する時代に、宗教世界はローマ法王、世俗世界は、自分=神聖ローマ皇帝が仕切るという根本思想を持っていた。その明確な法による秩序の確立への意思表明が、1231年のアウグストゥス憲章(メルフィ憲章)である。常設王室会議すなわち閣議が最高意思決定機関として設置され、そこには皇帝を中心として、官房長官、内務、司法、財政経済、陸軍、海軍、建設大臣の他、聖職者代表4名、諸侯代表2名が参集し、国の政策を決める仕組みを作った。

    現代の中央集権体制に近い統治を目指し、地方分権的な封建体制の変革を目指していた。司法は、ナポリ大学出身の官僚さらには養成機関卒業の官吏たちに運営をさせて、あくまで法治国家を志向した。また、税制は、国に払うべき12分の1税(ローマ帝国時代は10分の1)とカトリック教会へ支払う10分の1税、また農民や手工業者、商人などの庶民は、生活の保証料として、封建諸侯に収入の5割を収めなければならなかった。
    ローマ時代に比べて、税が軽減したのは、神聖ローマ帝国の常備軍を極度に減らし、その運営費用を無理やり下げたからである。その代り、塩、鉄、真鍮、タールを国の専売品として扱い、その抑えられた買取り価格と市場価格の差で足りない財源を補った。
    さらに、フィエラと呼ぶ見本市を国の定めた時期、都市での開催を決めて、経済力の向上を目指した。

    1231年のアウグストゥス憲章は、当時のローマ法王グレゴリウス9世への挑戦と受け取られ、ますます神聖ローマ帝国とローマカトリック教会の軋轢は増した。
    その結果、1232年初頭には、悪名名高い異端裁判所が設置され、ドメニコ宗派の修道僧たちを各地に派遣した。

    フリードリッヒ2世は、神聖ローマ帝国フリードリッヒ1世(バルバロッサ、赤ひげ)の子、ハインリッヒとシチリア王国ノルマン王朝グイエルモ2世の伯母コンスタンツァの政略結婚で生まれた。結果、南のシチリア王国と北の神聖ローマ帝国の両方に王位継承権を持って生まれてきた。両親の早逝により、天涯孤独の身となったフリードリッヒ2世ではあるが、その逆境が良く作用して、独学・独歩で成長する。フランス語、ドイツ語、イタリア語、ギリシア語、アラビア語をマスターした。また、当時のシチリア王国では、カトリック・キリスト教徒のノルマン系シチリア人、ギリシア正教を信仰し続けるギリシア系シチリア人、イスラム教を捨てないアラブ系シチリア人の3者が混然一体となって共存し、当時としては異色な社会を構成しており、フリードリッヒ2世はそのような中で自由に育った。その自由な少年時代の環境が、その後の自由な発想に大きな影響を与えていたことは間違いがなさそうである。

    14歳に自ら成人になったことをフリードリッヒ2世は宣言する。これに対して、ローマ法王インノケンティウス3世は、10歳年長の出... 続きを読む

  • 法王グレゴリウスが怒りのあまり二度立て続けに破門を出すシーンは何度読んでも笑いが込み上げます。雪の降るなかボロをまとって謝り続けろ!と思ったら、フリードリッヒさんは温泉につかりながらめんごめんごってお手紙を書いて寄越すし。しびれる~

  •  神聖ローマ帝国皇帝、フリードリッヒ二世。1194年に生まれ、1250年に死ぬ。

     中世ヨーロッパの文献など聖職者や官僚の記録から探るしかないだろうに。

     それなのになぜ、塩野七生は実際に彼を見てきたかのように描写できるのだろうか。

     特に、鷹狩りに出かけるフリードリッヒ二世の馬の蹄の音を聞き、住民たちが一日の始まりとして起きだしてくるという描写がある。

     そんな文献は無いだろうに、しかしまるでフリードリッヒ二世が馬にまたがり丘から駆け下りてくる情景を眼に浮かべることが出来る。

     そのイメージを脇立てる書き手の筆の力というのは抜きんでている。


     幼少の頃より皇帝になることを運命づけられ、
     皇帝になるまでの旅の途中で敵対する町の兵士に追われ馬ごと川に飛び込み、
     神聖ローマ帝国とシチリア王国を手中に収め、
     ローマ法王と対峙し、聖地を巡り異教徒と交渉を重ね、
     国の在り方を変えようと全力で取り組んだ。

     こんな面白い男がいたのか。ヨーロッパの暗黒時代と呼ばれる中世に、心躍らせるような男が。

     ただの伝記ではない。気持ちの良い男の生きざまを描く。

  • なかなかこの人に焦点を当てる人はいないと思う。
    でも、知れば知るほどすごい人。
    感想は次にでも。

  • シチリアに行きたくなります。

  • なんと構想45年!
    私は、彼を好きになってまだ32年です。こりゃ負けました(笑)
    日本ではまだまだ有名ではないフリードリッヒを、ここまで詳しく多角的かつ情熱的に取り上げて下さった著者に感謝!です。
    アッシジの聖フランチェスコとの繋がりもふくめ、少年期の彼に想像が膨らんで楽しく読みすすめることができました。
    (下巻に続く)

  • 中世にルネサンスの先駆けとなる業績を遺したという皇帝の生涯。

    カエサル程の入れ込みはなく、淡々と業績を描く上巻だった。伝記としての面白みを感じるエピソードが無く、歴史書のような内容で残念。なした業績自体はおもしろそうなので、しっかりした本を読んでみたい。

  • 「世界の脅威」とも称された、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の伝記。
    中世の多才な皇帝を描いているが、どうしても彼のよい面しか描かれていないのではと思ってしまう。当然権力者としての暗い面もあっただろうが、その部分があまり描かれておらず、一面的なのではないだろうかと感じた。

  • 読んでいて常に頭に浮かぶのは、社内政治に明け暮れる人たち。今も昔も、どこもかしこも既得権益を守ることに命を燃やす人たちは、山のようにいる。
    その人たちが、それなりの要職をしめているからまた達が悪い。

    凝り固まった価値観と手にしている権力を振りかざし、新しい考えの人たちを駆逐していく。新しい考えを持つ人たちは、それにあらがおうと手を変え品を変えとがんばる。
    実に無駄の多い時間のように思えるが、変わっていく過程ではさけられないことなのかもしれない。

    ピークとも言える時期を迎えたフリードリッヒ2世、このあとどうなるのか。下巻が楽しみ。

    この本を読めた今週一週間は実に幸せでした。

  • 神聖ローマ帝国、ロンバルディア同盟、マグナカルタなどなど。世界史で薄く知っていた内容の裏の話を知る事が出来た。久々に面白い内容。
    ヨーロッパでは一般常識なのかもしれないが、この人物が傑出した人であったことを初めて知った。
    ローマ教皇など、歴史は一方だけの記録なんだなぁと改めて思った。

  • 恋する女の小説は面白い。歴史上のいい男に恋するっていいなあ。塩野節全開。

  • やはり塩野七生さんの本。
    まるで、その時代にいるかのように感じさせる文章。

    恥ずかしながら、神聖ローマ帝国やフリードリッヒ二世など高校の世界史で学習しただけで。詳しくはない。

    しかし、それでも充分に楽しめたし、いつものように丹念に参考文献や資料に基づいて人物を描いているのだと感じさせてくれる。

    下巻を読み切るのが楽しみ。

    上・下巻を読了すれば、関連する本を読んでいきたい。

  • 今さらですが、塩野七生の著作は初めてです。塩野さんは、膨大な資料を読み込み、現地を実査し、時間をかけて人物像を醸成させるようです。書き出した時には、造型は定まっており、曖昧なところが無く分かりやすいのが人気の秘密でしょう。フリードリヒ二世の造型も、著者の感性と感情が込められ生き生きとしています。全体の感想は下巻にて。

  • 私にとってフリードリッヒ2世と言えば、18世紀の啓蒙専制君主であるプロイセン王の方なのだが、本書は、13世紀に世界の驚異と呼ばれた同名の神聖ローマ皇帝の一代記。
    塩野七生の手にかかると、ルネッサンスよりも100年も前の中世に、法の支配や政教分離という現代に通じる考え方を実践していた奇跡の人の一生がドラマチックによみがえる。特に、この上巻は、いわば昇竜のような成功譚で、読んでいてもわくわくする。

  • あいかわらず塩野節 好調♪
    緻密にして洒脱。素材重視・薄味なのに多彩。

    暗黒の中世と言われる時代で、徹底した合理主義の皇帝。ということは必然的に、優雅なまでに唯我独尊。
    つくづく、塩野さんは、こういう「クール」(冷徹なまでに合理的思考を持った政治家)なオトコを発掘してきて、魅力的に描くのが上手いなあ。

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