皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096375

作品紹介・あらすじ

この人を見よ! その生と死とともに、中世が、壮絶に、終わる―― ! 構想45年、ユリウス・カエサル、チェーザレ・ボルジアに続いて塩野七生が生涯を描き尽くした桁違いの傑作評伝が完成! 神聖ローマ帝国とシチリア王国に君臨し、破門を武器に追い落としを図るローマ法王と徹底抗戦。ルネサンスを先駆けて政教分離国家を樹立した、衝突と摩擦を恐れず自己の信念を生き切った男。その烈しい生涯を目撃せよ。

感想・レビュー・書評

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  •  今まで塩野七生が書いてきた作品の多くが、古代ローマとルネサンスである。

     そんな彼女が十字軍を題材にした『十字軍物語』を書いた時も、正直驚いた。

     私が個人的にずっと中世を独学で学んできたことや十字軍から北方十字軍へと興味を移してきたせいもあるのだろう。

     まだ物語は序章と云うべき部分を読んでいる。だが、わくわくする。(完読してしまった、もったいない……。下巻はもう少し楽しみながら読もう!)

     オランダの歴史学者であったホイジンガがルネサンスとは中世の秋であると称したことは余りにも有名であるが、それを彼女はどう描いてくれるのだろう。
     この暗黒の時代と呼ばれることもある中世の巨星フリードリッヒ二世のまさに生涯を……。

     一ページごとに捲るのが楽しい知的な冒険の一冊である!

  • 中世ヨーロッパといえば神聖ローマ帝国VS.ローマ法皇。
    とりわけ今回はフリードリッヒ2世の生涯を追体験する伝記的作品。

  • こういう人が世の中を引っ張って行くんだな。という感じの中世の異端児フリードリッヒ2世。
    ルネサンスの先駆けではあるけど、あの時代では生まれてくるのが早すぎたような気がします。
    ルネサンスに生まれていれば、宗教との対立や批判もなく過ごせただろうに…。だからこその先駆けとはいえ、彼の生涯とその後が気になる展開です。

  • 塩野七生さんの最新刊。

    構想に40年以上とかいうことだったのでかなり期待。
    あのカエサルやマキャベリ以上の思い入れがあり、さぞ素晴らしい考察をされているかと思いきや肩すかし。

    確かにあの中世で思い切った改革を行い、ルネサンスの先駆けとなったフリードリッヒⅡではあるけど、その凄さが伝わってこなかった。

    伝わってこなかったのは、そもそも皇帝と法王という二元的対立軸に陳腐化したためか、それとも中世のカトリックが権威どころか権力を持っていたことが日本人として肌で感じにくいことか、そもそも著者の文章表現によるものかは分からない。全体を通して単調で、ローマ人の物語のような著者の気迫による人物描写がなかったように感じる。

    しかし、フリードリッヒⅡという人物を取り上げてここまで詳述した邦人作家はいなく、その点では世に出した功績は非常に大きい。

    洞察力、先見性、実行力にずば抜け、政治機構を大改革し、それがために法王と対立したがその対立すら主導していく。

    しかし、フリードリッヒⅡは取り組み方が非常にまじめすぎる。
    ガチガチのコチコチ。

    カエサルがもしその時代にいれば、あれば遊び心満載、対立することなくそつなくかわしていたように思える。

    カエサルが政治に躍り出る際に真っ先にしたことは、まったく信仰心など無く遊び暮らしていたくせに、自ら神官に立候補。若くしてローマで最高の神祇官になっちゃった。宗教的権威を良く知っていてかつ利用方法を知っていて、対立するというか自分がそれと同体化するという離れ業。結局カエサル以降アウグストゥスも最高神祇官を兼ね、以降の皇帝は全てカエサルを模す。キリスト教を国教化したテオドシウスから兼ねなくなったけど。

    フリードリッヒⅡは法王との対立に終生悩まされたのは、カエサルの時代とは比較できないくらい当時のカトリックの影響力が大きかったのはよく分かる。フリードリッヒⅡという叡智の塊のような人物が法王との対立を考え抜いて外交と武力で交渉していたが、それでも暗い中世という時代には通用しなかった。勧善懲悪的物語構成でいえば「敵に勝てなかった」という結末に終わったのがすっきりしない読後感になったのかな。

  • タイトル通りの中世ヨーロッパ物語。

    上巻は誕生からロンバルディア同盟軍との勝利(1194年~1237年)のお話。
    作者自ら中世史の真打ちと銘打っただけ、生き生きと描かれている。
    「ローマ人の物語」のカエサルへの肩入れ以上かもしれない傑作であろうと思われます。

  •  塩野さんが「ルネサンスとは何であったのか」の中で,ルネサンスの先駆者としてアッシジのフランチェスコととともに挙げた,フリードリッヒ二世の伝記のうち,42歳までの前半を扱っています。
     塩野さんは,ルネサンス時代を中心に扱ったルネサンスモノから執筆活動を始められ,その後に15年をかけて「ローマ人の物語」で古代ローマを書き終えられてからは,ルネサンスとローマの間の中世を舞台にした作品で間の時代を埋めていらっしゃるいますが,その中世モノの最後として,この「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」を執筆されています。

     この作品は,塩野さんの強烈な自信が感じられる,次の書き出しから始まっています。
    ---
     これら中世モノの最後が,この『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』です。今度はキリスト教世界内部の対立であり,聖権と俗権をめぐっての対決ですから,中世モノの「真打ち」という感じでもある。
     とはいえこれらの諸作はいずれも,中世の一千年間を舞台にしていることでは同じです。同じ時代を,照明を当てる対象を変えながら書いていった,としてもよいかもしれません。
     ゆえに私が,読んでくださるあなたに保証できることはただ一つ,これらを,とくに中世ものの真打ちの感ある「フリードリッヒ」をお読みになれば,中世とはどういう時代であったかがわかるということ。そしてその中世の何が古代とはちがっていて,なぜこの中世の後にルネサンスが起こってきたのかもおわかりになるでしょう。 
    皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上) 読者に より
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     ルネサンスへの扉を開いた,皇帝フリードリッヒ二世がどのような幼少時代を過ごしたのか,そしてその幼少時代の環境が彼にどのような影響を与え,時代を転換させることになったのか。また,神聖ローマ帝国皇帝であり,シチリア王という立場にあった彼が,どのような対内政策や対外政策を行うことで,時代を転換させようとしたのか。彼の半生と時代を転換させた思考や行動という観点からの塩野さんの叙述は,塩野さんの歴史物の中でも,冒頭の自信につながる内容になっていると考えます。
     これまで,塩野さんの作品を読んでこられた方々には,ルネサンスモノとローマ人の物語で,「ローマ」,「中世」,「ルネサンス」というそれぞれの時代の特徴が何度も叙述されているのをご存知だと思いますが,その特徴をフリードリッヒ二世の生涯を通じて,より明確にまとめられているなという印象を持っています。

  • 世界史の教科書で皇帝派と教皇派の争いは習っても、この人の名は出てこなかった。読んでみると、中世末期に生きながら、法に基づいた中央集権国家を目指し、そのための官僚を育て、イスラム教のトップとも友人になって平和を保ち、学者を保護し、…と多方面にすごい君主だった。とても面白い。

  • 13世紀初頭に神聖ローマ帝国の皇帝になるフリードリッヒ二世に関する本ですが、恥ずかしながら私はこの人物の知識がほとんどない状況で本書を手に取りました。事前の知識がないからか、むしろ本書の内容は乾いた布にしみる水のようにどんどん吸収できました。また塩野さんの他の作品はかなり読んでいますが、塩野さんが気になる人物であるというのは上巻で分かった気がします。極めて現実主義かつ合理主義者であり、古代ローマの初代皇帝アウグストゥスに対するあこがれがあったということで、平定そして平和を築くためのシステム構築を大胆かつ繊細に行った人物ということが随所に記述されています。またローマ法王が強い権力を持っていた時代に、単に法王との権力争いをするのではなく、今で言う世俗主義を先取りした発想をしていたということで、極めて先見性もあったという印象を受けました。しかも見方によれば、古代ローマ帝国のアウグストゥス以上に多くの制約があるなかで、それなりに大きな帝国のシステム作りをするという難事業に取り組む話は極めて興味をそそられました。ビジョンだけでなく、それを実現する才能(政治、外交など)、人を見る目、そして何より運が揃うと世界は変わるということでしょうか。細かいところでは法王とのやり取りを情報公開する話など、興味深いエピソードが多数含まれていると思います。

  • 皇帝フリードリッヒ二世の功績とローマ法王との対立が実に痛烈で興味深い。

  • あい変わらず、塩野さんの本は読ませます。最初からぐいぐい引き込まれていくこの感覚は塩野節とでもいうものだろうか。皇帝の伝記という形を取って、中世とはどういう時代だったかを知るための好著と思う。

    以下注目点
    ・人間は同じようには出来ていない。親と子でも、同じようにはできていない。逆境でも克服できる人はいるが、克服できない人も多いのだ。そのうえ、さらなる逆境に、自分で自分を追いこんでしまう人さえいるのである。

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