ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

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著者 : 塩野七生
  • 新潮社 (2017年1月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096405

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ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊の感想・レビュー・書評

  • 人でも国でも、ゆっくりと破滅に向かっていく姿を見るのはつらい。それが、自らの選択による、無意識でゆっくりとした自殺的行為なら、なおのこと。

    ローマのように一千年の時を享受した巨大帝国にはなれずに衰退してしまったけど、ローマ人が傾倒し、後世から「ギリシア・ローマ時代」と呼ばれるほどの影響力を持った古代ギリシア。

    シリーズ第2巻は、ギリシア最大の都市国家アテネに民主政と海軍を確立したテミストクレス亡き後の、アテネの束の間の繁栄とギリシア世界全体の衰退に向かった約六十年が、テミストクレスの政策を踏襲しながら民主政を最も良く機能させたペリクレス統治時代以前・以後として描かれています。

    「形は民主政だが実態はただ一人が統治した」と言われた、ペリクレス統治時代。
    彼は、「貴族的」な精神と合理性、巧みな演説を武器に、ペルシア戦争に勝利し自信に満ちていたアテネ市民たちの要求と国益を両立させ、近隣の国家ともバランスをとりながら、三十年もの間、「非民主的」に、民主政の指導者として君臨します。

    しかし、長年のライヴァルであったスパルタとの間で起こったペロポネソス戦役の半ばで彼が死ぬと、アテネは「民主政」から「衆愚政」へと陥ってしまいます。
    そして、スパルタも、アテネとは異なるその国体によって、硬直化と迷走の時代を迎えており…。

    第1巻の、ギリシア世界一丸となりながら大国ペルシアに勝利し、興隆期を築いた姿とは対照的に、第2巻は、繁栄を極めながらもギリシア人同士で争い自滅していく姿を描いています。

    第2巻には、第1巻のような、稀代の武人たちによる知略や胆力を尽くした劇的な一大決戦の描写もなければ、人を喰った天才テミストクレスのような大胆で愉快な描写もありません。

    それまで栄華を誇っていたのに、些細な不安と扇動から、自らを傷つけ弱っていくばかりのアテネを含むギリシア世界の姿を読むのはつらかったですが、塩野さんの、情熱的ではあっても、直情的ではない、冷静な書き方のおかげで、読み切ることができました。

    第3巻では、ついにギリシア世界の滅亡が描かれるとのことで、なんだか悲しい気持ちながらもファンとしては楽しみで、複雑です。

  • ペリクレスの時代とその後。
    ペリクレスの基でのアテネの繁栄とその死後の衆愚政の時代の衰退の落差が酷く、後半は呆れつつ読み最後は悲しくなるほどでした。
    施政者の資質次第で国は簡単に傾くのだと改めて付き付けられた気分です。
    扇動者によって左右され、声の大きな者の意見に引き摺られる人々は現代でも何ら変わらないように思えます。
    アテネでの民主制の利点と欠点が書かれているのにいつの間にか現代と重ねて読んでしまいました。

  • 「ギリシア人の物語Ⅱ」
    民主政とは何かを考えるに良い題材だ。
    スパルタでは寡頭制を取り市民=軍人の陸軍国家で、農業に従事するヘロットや商工業が仕事のペリオイコイには市民権はない。そして最強の陸軍が自国の体制を守り、体制維持を重要視しそれほど覇権を求めなかった。
    一方、アテネは海洋国家で、奴隷を除けば資産の違いで身分の違いはあったもののすべての市民が市民権を持つ民主政を取り、最強の海軍が同盟国を率いて大きな貿易経済圏を持つ覇権国家だったといえる。
    当然のようにアテネは反映し、アテネの民主政がスパルタに影響を与え体制維持に影響すると考えたスパルタは、最強の陸軍を持つとはいえアテネは鬱陶しい存在であったに違いない。
    アテネの民主政が最もうまくいっていたペリクレスの時代は民主政とはいえ、民衆を把握しコントロールして内実はたった一人、すなわちペリクレスがすべてを決めていたという点は興味深い。
    そして民主政である以上選挙で選ばれる必要があるが、ペリクレスの選挙区では必ずペリクレスが選ばれており、まさに田中角栄を彷彿とさせる。
    民衆の期待と政策が一致し、おそらく経済が上向いているときは民主政は放っておいてもうまくいくのだろう。
    しかし、ペリクレスの死後、市民が扇動者煽られて政治家が政争に走り、政権が安定しなくなると、民主政は衆愚制に陥る。
    海外覇権のための海戦でスパルタに敗北したアテネは一時深刻な状態に陥るが、市民が団結できる間は持ち直す。しかし、政局が安定せず強力な指導者が不在のアテネでは、アテネ市民がスパルタの海軍に高額な給料で引き抜かれて頼みの海軍が弱体化しどうにもならなくなってしまう。
    アテネの派遣同盟であるデロス同盟は解体し、その経済圏がなくなってしまえばもはやどうしようもない。
    アテネも何度か改革をするものの、うまくいかず衰退が進んでしまう。
    ペリクレスの死後25年で覇権国家ではなくなってしまい、都市国家としては存在したが昔の栄光はなくなってしまう。たった25年、一世代である。
    現代と状況はかなり違うと思うが、民主的に権力を持ち民衆を満足させて率いていくことの難しさを考えさせられる。一体何が問題で民主政が衆愚制になってしまうのかがいまひとつよくわからない。独裁にならない強力な指導者というのは実現できるのだろうか。

  • 「将来を予測するために歴史を学ぶ」とはよく言われる事ではあるが、人々の不安と、それに向き合うためのリーダーシップについて考える機会となる本であった。
    民主政も衆愚政治も、全て民主主義である。形態が若干違うだけにすぎない。
    民主政のリーダーは、民衆に自信を持たせることができる人。
    衆愚政のリーダーは、民衆が心の奥底に持っている漠とした将来への不安を、煽るのが実に巧みな人。

    民衆は一時の苦境は我慢できても、徐々に悪くなっていく状況には耐えられないもの。それは、将来への漠とした不安は、人々がごく自然に持っている感情だからである。

    不安から生じた民衆の怒りは、理性をもったリーダーの言葉によって抑えなければならない。
    アテネの民主政は、優れたリーダーが生まれた事によって完成した。
    そして民衆の怒りがリーダーとなるべき人材を排除したことによって、滅んだ。

  • 光と影がともにあってこそ、物のかたちをはっきりと認識できるように、国家の隆盛と衰退は、その国家のかたちを明確に浮かびあがらせる。本書では、エーゲ海におけるアテネの覇権の確立からその失墜までが一冊にまとめられているだけに、明暗はいっそう際だって見える。
    アテネの繁栄を支える要因は四つあった。民主政体、強力な海軍、アテネ市街と外港ピレウスの一体化、そしてデロス同盟である。これらは互いに密接にして不可分の関係にあった。どれか一つでも失おうものなら、残りすべての維持もおぼつかなくなるのである。
    このことを正しく理解し、これらの維持・強化に努めたのが、稀代の政治家ペリクレスである。彼は優れたリーダーだったが、国民のニーズをくみ上げ調整をはかるタイプの政治家ではなかった。国が進むべき道を自ら指し示し、国民にはその賛否のみを問う。一見、非民主的にも見えるが、このようなリーダーの下でこそ、民主政体はよく機能すると著者は説く。
    やがてこのペリクレスが死去すると、民衆の漠たる不安を煽るデマゴーグ(扇動者)が幅を利かせるようになる。27年にもおよぶスパルタとの戦争でも、アテネはいつも不安を抱えて右へ左へと揺れ動き、一貫した方針を持つことができないのだ。デロス同盟の盟主の迷走は、同盟下の国々の相次ぐ離反を招く。海軍を支える有能な船乗りたちは、スパルタに引き抜かれる。結果は、アテネの無条件降伏。アテネは、先に挙げた四つのすべてを、手放すことを余儀なくされるのである。
    民衆の不安は、いつの時代にも多かれ少なかれ存在するものだろう。だがデマゴーグは、不安というものが持つマイナス面を露わにする。デマゴーグとなる者は、何も政治家に限られない。ウェブなどを通じて我々もまた、自覚しないうちにデマゴーグとなりうるという著者の指摘に、はっとさせられた。「デモクラシー」と「デマゴジー」、いずれの言葉も「衆」(demos)に由来することの意味は重い。

  • ペルシア戦役後のペリクレス時代から、まさに地獄のペロポネソス戦役までが綴られています。
    ペリクレスが腕、いや口を振るった時代のアテネは黄金期を謳歌します。
    ペルシアとスパルタの二国とも平和を取り決め、経済と文化の発展が止まりません。
    その最中、ペロポネソス戦役の火種が燻り始めます。
    アテネとスパルタの長は、お互いに辺境の略奪というちょっかいで国内の不満を解消しようと努力します。
    しかしその消耗戦も長くは続かず、悪いことに二人の長はほぼ同時期に亡くなります。
    斯くして、デロス同盟とペロポネソス同盟は水と油の存在となり、講和の機会を逃し続けて27年の歳月を戦争に捧げることになります。
    アテネだけでなくギリシア世界の繁栄と衰退の大きな波が、2巻のお話でした。
    3巻にも期待します。

  • ようやく読み終わり。
    ロングライドシーズンに入り、読書時間が後回し気味。


    そんな中でも、ペロポネソス戦役に始まるアテネの自滅までの25年の中盤から、読みたいという気持ちが強くなる感じでした。

  • 全三巻になる予定の塩野七生の『ギリシア人の物語』の第二巻。この巻では、ペリクレス時代(現代からは「民主政が最も良く機能していたとされる時代)とそれ以後、アテネがペロポネソス戦役といわれる泥沼の戦争にはいっていき、敗北するところまでが描かれている。それは、まるで明治維新に成功し、日清、日露の両戦争に勝利し、帝国化した日本が第二次大戦で破れ、解体されていく過程と重なってしまうのだった。

  • 社会不安の中でジワジワと崩れていき、ペロポネソス戦役の敗北により一気に崩壊した感じです。
    しかも、社会不安の長期化が人々の気質まで変えてしまうのは恐ろしいことです。

    戦役の長期化やシラクサの大敗から分かることは、なんでも「あともう少し続けたい」と思っても、切りが良い所でやめておく自制心が大事だということだと思う。

  •  民主制が定着したペリクレス時代、そしてその後のペロポネソス戦争の時代のアテネ。デロス同盟の中心国としてスパルタ、コリント、テーベなどペロポネソス同盟と対峙する。スパルタは一方の中心国でありながら、一国独立主義で、しかも貿易にも文化にも関心がない国。27年にも及ぶ両同盟の戦争において、今一つ戦争に積極的でないアテネ・スパルタが、同盟国の戦争に巻き込まれ、盟主として参戦せざるを得ない歴史がまるで現代を思い起こさせる。そしてアテネに難民が押し寄せ、ペリクレスが批判を浴びる状況も、今のドイツなどの欧州諸国そのもので、苦笑いである。古代3大美男というアルキビアデスがアテネ、スパルタ、ペルシャと渡り歩いた姿には、意外とこの3国が疎遠な関係ではなかったことを感じさせるものだった。アテネがシチリア島シラクサ征伐の遠征の大敗北から勢いを失っていく歴史は、超大国アメリカに重ねてみざるを得なかった。ペリクレスが愛した女性アスバシア、そして若いソクラテス。そのソクラテスに愛されたアルキビアデス、ペリクレスの親友ソフォクレス。彼らの時代関係がよく理解できた。ペリクレス、スパルタ王アルキダモス、そしてペルシャ王アルタ・クセルクセスの3者の信頼関係の深さなどは想像もつかないテーマだった。

  • ギリシアの盟主の座をめぐってアテネとスパルタの戦いが延々と続く。27年間にもわたって戦ったという。民主制と軍事体制の国家の戦いであり、今の価値観からすれば「がんばれアテネ」となるのだが、どうもその内実はいただけない。国家の繁栄のためには「優れた指導者がいること」と「国民の民度が高いこと」だというのが分かる。結局、アテネはスパルタに敗れる。読後に残るのは「行き過ぎた民主主義には罠があるのでは」という疑問。民主主義は金科玉条でない。「アラブの春」や「ローソク革命」は本当に正しいことのか。大きな問題意識が残る。

    【このひと言】
    〇戦場には、市民権をもつ兵士しか連れて行けないのが、当時のギリシアの不文律であった。ぶっちゃけて言えば、アテネの民主制には、戦場へ連れて行ける兵士の数を増やすという意図がひそんでいたのである。
    〇「主導権をにぎった側が勝つ」とは戦場では有効な考え方だが、この考え方は、政治・外交・経済、そして文化に至るまで、通用可能な真理ではないだろうか。
    〇先を読める人は過去を忘れない。
    〇ペリクレスが男にいっさい応じなかったのは、言論の自由を尊重したからではない。言論の自由を乱用する愚か者に対する、強烈な軽蔑ゆえの振舞である。怒りもしなかったのは、この種の愚か者の水準にまで降りていくのを、拒否したからにすぎなかった。怒りとは、相手も対等であると思うから、起こる感情なのだ。
    〇政体がどう変わろうと、王政、貴族政、民主政、共産政と変わろうと、今日に至るまで人類は、指導者を必要としない政体を発明していない。
    〇勝者は絶対に正しく、敗者は絶対に悪い、とは思っていなかったのだ。勝敗はときの運に左右される場合が多いことを、知っていたのだと思う。ホメロスの叙事詩やギリシア悲劇が、"教科書"になっていたのかもしれない。
    〇兵士たちが司令官の口から聴きたいと願うのは、自分たちはどう行動すればよいかという、これ以上ないくらいに具体的な話なのである。また、批判や非難は人々を絶望させるが、兵士に向って司令官が伝えなければならないのは希望である。必ず勝つ、という希望なのだ。
    〇やはり、ソクラテスの教えは正しかったのだ。人間にとっての最大の敵は、他の誰でもなく、自分自身なのである。アテネ人は、自分たち自身に敗れたのである。言い換えれば、自滅したのであった。

  • ギリシャのペリクレス時代の巻。面白いがやはりローマ人には負けローマの方がダイナミックですね。民主制は良いが体制に流される。そこが難しいところ。 

  • ペリクヘス時代からペロポンネソス戦争、そしてデロス同盟の解体とアテネの敗北まで。

  • BC546-BC404~BC546ヘロポネソス同盟結成。BC477経済面を含むデロス同盟が結成されテミストクレスにより強化される。地震をきっかけにラコーニア地方でヘロットの反乱が相次ぎ,アテネに支援を要請され,アリステイデス死去後のキモンと4千の重装歩兵派遣を決めるが,キモンが退去を命じられ,アテネでも陶片追放され,急進民主派のペリクレスが指導的立場になる。デロス同盟の金庫がアテネに移り,処分を解かれたキモンがスパルタとの間で休戦協定を結ぶが,キモンはキプロス遠征途中で病死。BC450キモンの義兄カリアスがペルシアに派遣され,アテネとペルシアの講和成立。BC447パルテノン神殿着工。BC446休戦協定が失効しナウパクトゥスにアテネが基地を建設,汎ギリシア会議でペロポネソス同盟・デロス同盟の30年間の相互不可侵が決議される。BC438パルテノン神殿完成。BC436ペリクレスが黒海遠征。BC435コリントとコルフが対立。コリントが半島から傭兵を募り汎アテネ非正規軍を編成。BC431テーベがプラタイアに進入するが撃退され,ペロポネソス戦争開始。スパルタはアッティカを荒し,アテネは半島沿岸都市を攻撃する。BC430アテネの市民集会が難民増加と疫病流行による国力衰退を政策の誤りとしてペリクレスを公金悪用の罪で弾劾しストラテゴスから解任。BC429ペリクレス死去,煽動者クレオンに対し穏健派はニキアスを推す。プラタイアが陥落するが,スパルタ王アルキモダスも死去。ピロス・スファクテリアの戦闘でアテネが勝利し,ペルシア王アルタ・クセルクセスが死去。ブラシダス率いるスパルタ非正規軍がカルキデア地方へ進軍し,アテネはヘウクレスとツキディデスを送るが,カルキデアから撤退し,ツキディデスは20年間の国外追放とする。ニキアスの消極策をクレオンが批判するが,BC422ブラシダスとクレオンが戦死し,休戦となる。BC420アルキビアデスが司令官職に当選し,アルゴリス・エリス・アルカディア諸都市と4カ国同盟を結成する。BC417マンティネア敗戦の責を逃れるため他の煽動者を陶片追放することで対抗し,この年を最後に制度廃止。民心一進のためアルキビデスはオリンピアの四頭立て戦車競走に七組を出場させ,表彰台を独占。BC416アルキビアデスがシチリアのシラクサ遠征を訴えるが,翌年出発間際にヘルメス神像破壊事件が起き,アルキビアデスが主犯とされ本国帰還を命令されるが途中逃亡し,スパルタに政治亡命。シラクサはスパルタに援軍を求め,アウトサイダーともいうべきギリッポスが到着。BC413デロス同盟軍壊滅。その間スパルタ王妃との間に男児を作ったアルキビアデスはサルディスに赴きサトラプの軍事顧問になっており、サモス島に上陸してアテネ系住民を煽動して寡頭制に移ったアテネに反対し、事実上アテネに復帰する。アルキビデアスはへレスポントス海峡内のキジコスでスパルタ海軍に勝利し、アテネは民主政に復帰。エーゲ海東方に出発するが、スパルタのアウトサイダー・リサンドロスはアルキビアデスの不在を衝いて勝利を収め、アルキビアデスはマルマラ海西岸に亡命。エーゲ海東方でアテネ・スパルタが衝突し、煽動者のせいで司令官を処刑。BC405リサンドロス率いるスパルタ海軍がアテネ海軍を一網打尽に殲滅。殺害を免れた捕虜は本国帰還を命じられ、アテネが食糧難に陥る。アルキビデアスが暗殺され、デロス同盟が崩壊。アテネ領はアテネとサモス島だけになり、ペレウス港とアテネを結ぶ壁も破壊される~美男のアルキベデアスはソクラテスとプラトンの中間に位置し、ソクラテスの教えを受けて、弁論は巧みだった

  • ペリクレスの時代からスパルタに敗北するまでの話。これ以前はヘロドトス関係である程度分かっていたし、これ以降についてもアレクサンドロス大王周辺なら少しは知っていた。しかしここで語られる時代についてはほぼ初見の状態で読むことに。

    ペルシャを撃退した後にペリクレスという天才が登場する。強力な海軍を持ち、スパルタと違って経済的にも繁栄している。まさしくギリシアの覇権国家となったアテナイ。それがあれよあれよという間に落ちぶれていくから困る。

  • 古代ギリシアのアテネが繁栄していた頃の歴史物語。
    アテネが繁栄していた頃を中心に話が進み、スパルタとのペロポネソス戦役が終わるまでが綴られている。
    民主政治のさきがけとなったアテネは、言論の自由が守られており、良い方に転ぶと繁栄する一方、悪い方に転ぶと扇動者が現れ、衆愚政治におちいり、衰退の道を辿った。
    国を方針を決める時に庶民はえてして近くを見てしまう。リーダーは遠くを見据えつつ、近くにも利がある政策を取っていかねば人気は失墜する。
    かと言って不安を煽り立ててリーダーを落とし入れると、役立たずがリーダーとなり、国は滅ぶ。という事を現代に教えてくれている気がする。

  • 読書日:2017年3月27日-29日
    Περικλῆς(Periklēs)が亡くなってからはἈθῆναι(Athēnai)に於いて弁舌に優れた政治家が欠け、坂から転げ落ちる様に崩壊して行きます。
    ここが転げ落ちて行く事は、Σπάρτα(Spártā)の勢いが増す事を意味します。
    そして融通が利かない事で知られていたΣπάρτα人らしくないΣπάρταが三人登場した事により、
    この国の意外な一面も観れて、Greece中は戦争で活気を帯びます。

    Ἀθῆναιでは転げ落ちて行く中、
    "虎の子"と評され"愛した、憎んだ、それでも求めた"と評されるΑλκιβιάδης(Alkibiádēs)が踏ん張った事により、
    持ち直すも、彼を暗殺した事により同盟は解体となり、以後はΣπάρταの属国となります。

    Σπάρταは一国平和主義を貫き通している国なので、
    今後どの様にGreeceの経済や文化が進むのか、次巻が楽しみで待ち遠しいです。

  • 作品の帯にも書かれている通り、「民主主義の罠」というテーマは、現代のトランプ政権などを考えると最もタイムリーなテーマものだろう。
    古代で(あるいは近世までで)唯一の民主制であったギリシャが陥った「ポピュリズム」という罠は、民主主義が必然的にもつ欠点なのか考えさせられた。

  • 第一部は紀元前461年から429年までの民主政(デモクラツィア)がよく機能していたペリクレスの時代。
    アテネの覇権がデロス同盟としてエーゲ海全域に及んだ繁栄の時代。
    スパルタのペロポネソス同盟とのペロポネソス戦役が紀元前431年に始まる。
    第二部は紀元前429年から404年までの民主政が機能していない衆愚政(デマゴジア)の時代。
    何度か講和のチャンスが有りながら、
    長期を視野に入れた政略の無いデマゴーク(扇動者)のために
    ズルズルと27年も戦役は続いてしまう。
    魅力的な政治家アルキビアデスの登場も、
    考えていたことを終わりまでやらせてもらえなかったこと3度。
    最後は広域経済圏であるデロス同盟が崩壊し、
    アテネがスパルタに全面降伏、ギリシア世界での覇権を完全に失い戦役終結。
    アテネの自滅の物語第2巻の終了。
    ペルシア戦役、ペロポネソス戦役ときて次巻はアレクサンドロスによる東征。

  • なんとも辛い内容であった。
    ローマ人の物語と同様に、世界最大の帝国の衰退が描かれている。ローマ帝国では何世紀にも及んだ帝国がギリシアではほんの数十年も続かなかったのである。
    本書の中ではアルキビアデスに最も惹かれたが、その運命は酷い。才能溢れる人物が才能を発揮できずに消えていく、もし本書が架空の世界を描いたファンタジーならば作者のセンスを疑ってしまう、そんな内容であった。

  • 著者の「ローマ人の物語」には耽溺したものだが、「ギリシア人」もいいね!と思った。
    本書の前半は政治、後半は戦争を扱っているが、読者により興味の対象はどちらかに傾くのではないか。小生は「政治」に強い興味を持つ。
    シーパワーのアテネとランドパワーのスパルタの地中海世界の覇権をかけての闘い。
    現在の世界では、シーパワーの英米とランドパワーの中ソの21世紀の覇権をかけてのせめぎ合いの真っ最中である。まさに二重写しになる思いを持つ。
    しかも本書では史上初の民主主義システムがどういう結果をもたらしたのかの歴史的事実が描かれている。「衆愚政治」となるとまるで「トランプ」ではないか!
    政治システムにいたるまで考察させてくれる本書は実に面白い。著者に尊敬を込めて声をかけたい「塩バア凄い!」と。

    2017年2月読了。

  • 第II巻はペロポネソス戦役。
    デロス同盟のアテネ 対 ペロポネソス同盟のスパルタで、
    国、民衆としてすぐれていた(先進的だった)と思われるアテネが敗れてしまう。民主制の自壊。
    スパルタの意固地さ、頑なさ、融通の無さは笑ってしまうが勝利するもはスパルタ。
    I巻は少々飽きたところもあったが、II巻は面白く、一気に読んだ。ギリシャ人の名前が覚えづらいのは変わらないが。
    第3巻はアレクサンダー大王だ。

  • ギリシア3部作のアテネの民主制の成熟から崩壊までの第2部。前半はアテネって、スパルタって、ギリシアって、って同じようなフレーズが頻出して、それもうわかったからーってなるんだけど、後半の崩壊期に入ると史実に動きが出てくるから、それなりに塩野節にもリズムが出てくる。それだけ成熟期の前半は、派手な動きがなく、資料も乏しく、持て余している感があるんかなと。
    また塩野さんには、ローマ後の中世モノを期待したい。

  •  ギリシア人の物語の第II巻はペルシア戦役の後のペリクレスの時代とその後のペロポネソス戦役の時代の話です。

     アテネの黄金期をもたらしたペリクレスはどのようにして繁栄に結びつけたのか,そしてその後のペロポネソス戦役でアテネはどのようにしてすべてを失って行くのか,この一連の流れを読んでいると,組織としての継続性を確保する仕組みとそれを牽引して行く指導者の重要性を強く感じました。

     ペロポネソス戦役におけるアテネの戦略の一貫性のなさと,一貫性のない中でどのような経緯で迷走して行ったのか,そしてその迷走を牽引した煽動者は何に目をつけて煽動して行ったのか,そのようなことに注目しながら読み進めていました。一方で,外的環境の変化に適切に対応できるように,全体の戦略機能を担う機関の柔軟性も大切だと,ペロポネソス戦役における主役の都市国家であるアテネとスパルタの対応を読んでいると感じます。
     戦略を立てる人,戦略に関わる人がどのように一貫性を持つのか,一貫性を確保するシステムと外的環境の変化に対応した柔軟性をどのように確保するのか,それとともに,扇動などの不安をかき立てる情報に対してどういう姿勢に臨むのか,ということを考えるヒントになると思います。

     最後の三巻でアレクサンドロス大王とギリシアの最後をどのように記述されるのか,今から楽しみです。

  • 古代ギリシア人世界を描く歴史物語の2巻目。

    本巻ではペルシア戦争後のペリクレスによる最盛期からペロポネソス戦争を経ての自滅というアテネを中心に描かれています。
    民主制をうまく運営していくのは難しいし、責任の所在も分かりにくいものになる事が良くわかりましたし、民主制を採用する以上は参画する民衆のレベルが問われると思いました。
    作者は女性を愛する政治家が好きなようで、ペリクレスとアルキビアデスは魅力的に描かれていたと思います。
    次巻は予告では最終巻でアレクサンドロス大王の物語になりそうで、期待したいと思います。

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ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊の作品紹介

アテネに栄光をもたらした民主政の最大の敵は〝ポピュリズム〞だった――。国内の力を結集することで大国ペルシアを打破した民主政アテネ。不世出の指導者ペリクレスの手腕により、エーゲ海の盟主として君臨し、その栄光は絶頂をむかえた。しかし、ペリクレス亡き後、デマゴーグが民衆を煽動するポピュリズムが台頭、アテネはスパルタとの不毛きわまる泥沼の戦争へと突き進んでしまうのだった――。

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