ギンイロノウタ

著者 :
  • 新潮社
2.89
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本棚登録 : 398
感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103100713

作品紹介・あらすじ

私となんの関係もないあなたを、私は殺したい。ブログで、書評で、注目度No.1の新鋭、最新作品集。

感想・レビュー・書評

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  • いやあ、これはすごいですね。なんと書けばいいのか。読み終わった後、しばらく、ぼうっとしてました。2つの中篇それぞれに共通しているのが、女の子が人生の思春期を、一人きりで考えて突き進んでいくところ(それが他人からはどんなに奇異な光景に思われたとしても)、色彩(世界、あるいは自分自身)の変化を求めているところ、両親が娘に全く愛情を注がないところ、でしょうか。               「ひかりのあしおと」は、蛍の存在が結果として、誉を助けてくれたことになり、それを誉自身が分かっているところに救いがあると思います。蛍の涙がちょっと意外に思いつつ(純粋にいい人?)、ここでの2人のやりとりは、ほろりとしました。また、全体の文章が主人公の女の子の「ですます」口調なのが、何とも言えない雰囲気を醸し出しています。         「ギンイロノウタ」は、リアルな感じがあると思いました。主人公の思春期を、幼稚園、小学校、中学校、高校、アルバイト、引きこもり(厳密に書くとこもっていない時もあるが)と、ページ数をかけて、これでもかと女の子がどのように成長(?)していくかを、本当に細かく描いてあります。読んでいて怖いなと思った箇所もあったのですが、私自身の思春期を思い返してみて、分かると思ったりもしました。冷蔵庫を蹴ったり物を投げつけたり等は、私もしましたし。若気のいたりで恥ずかしながら。若いから、知らない事が多いから、視野が狭いことに自分で気づいていない等で、客観的に観るとものすごく恐ろしい事を堂々としようとしている、その感覚を、人は絶対に持っていないとは言えないのではないかと思うと、そのリアルさがすごいと思うのです。また、両親が子供じみていて、娘と満足なコミュニケーションを取れない(大人が大人に成りきれていない)のが、現代社会へのメッセージ性があると感じたりもしましたが、この小説は、そういう次元で問いかけてる感じではないですね。あと、この結末はどうなんでしょう。主人公は幸せそうに見える。まだまだこの先、人生長いけど。なら、いいのか。でも、その後、この女の子がどんな人生送るのだろうと想像すると、なにかものすごく悲しい気分になるんですよね。酷いことしてるけど、責められないんですよね。気楽に読むという作品ではないと思いますが、色々考えさせられました。

  • 読書備忘録630号。
    ★★★。
    大好きな村田ワールド。
    引き続き図書館の予約本が全然回ってこないので手に取りました。
    中編2本。村田ワールドの中でも難易度が高いのではないでしょうか?
    作者が病んでいるのではないかと思ってしまう。笑
    ただ、どちらも凄く悲しい物語でした。

    「ひかりのあしおと」
    古島誉。小学校低学年のころ、高学年の女子たちのいたずらで公園のトイレに閉じ込められ怖い目にあった。その時から光を恐れ、イタズラの時に浴びかけられた呪文「ピジイテチンノンヨチイクン」が大人になっても頭から離れない。
    それがなぜか大学生になると性欲と繋がる。そして男性に対して強姦・殺人まがいの行為まで発展していく。

    「ギンイロノウタ」
    土屋有里。内気な女の子。
    家庭内で絶対的支配権をもつ父親。こびへつらう母親。母親は夫に怒られるとそれを全て有里のせいにしてきた。幼稚園の頃から、有里はダメだダメだダメだ、と。
    テレビアニメの主人公、魔法少女パールちゃんが憧れ。
    文房具屋さんで指示棒(ラジオのアンテナのように伸びる銀色の棒)を購入。
    それを魔法のステッキのように使って遊ぶ。パールちゃんの服が脱げて下着だけになってしまうハプニングの回。パールちゃんを囲っていた男性陣の目がハートになったことで、自分の価値を見出すのは男の目だと気づく。押入れの天井に新聞広告から切りぬいた男性の目玉を無数に貼り付けて自慰行為を始める・・・。有里はまだ小学生。
    そして有里は中学生に。粗雑な男子中学生にやらせろ、と家に連れ込まれる。これをきっかけに自慰行為が指示棒を使ったものにバージョンアップ。
    そしてハラスメントまがいの熱血教師にクラスの晒し者にされ、ノートにその教師を殺し死体を切り刻む文章をひたすら書くことが自慰行為となる。
    そして有里は女子高生に。指示棒を使って、自分の身体にある銀色の扉を開けるんだぁ!となる。

    理解不能でした。笑
    ほんとに悲しい。主人公の2人が自分では制御できない状況になっていく様が痛々しい。決して本人たちが狂っている訳ではなく、そうなっていく悪意に満ちた周囲のプロセスが明確にあること。それは親であり、イジメであり、ハラスメントであること。

    繰り返しますが、村田ワールドでも難易度超A級でした。最近の作品の方がより洗練された狂気になっているような気がする。笑

    • ほくほくあーちゃんさん
      どちらの作品も病んでましたよねー笑
      読んだ本なので「うんうん!!」と頷きながら、shintak5555さんの感想を読んでましたー!!
      どちらの作品も病んでましたよねー笑
      読んだ本なので「うんうん!!」と頷きながら、shintak5555さんの感想を読んでましたー!!
      2021/12/24
    • shintak5555さん
      ほくほくあーちゃんさんが読まれていたので手に取った訳です。笑
      初期作品の方がこの作者の原点が溢れていますね。
      世の中の常識だと考えられている...
      ほくほくあーちゃんさんが読まれていたので手に取った訳です。笑
      初期作品の方がこの作者の原点が溢れていますね。
      世の中の常識だと考えられていることをホントにそうなの? という感じで。
      強く感じるのは、性に対して男性が能動、女性が受動というのは正しいの?ホント?
      というテーマですね。
      タダイマなんとかも読む予定です。笑
      2021/12/24
    • ほくほくあーちゃんさん
      初期作品は本当に原点に溢れてますね!!
      独特過ぎて、理解が追い付かないときもありますけどー笑
      同じ本を読んでると嬉しいですねー(*´ω`*)
      初期作品は本当に原点に溢れてますね!!
      独特過ぎて、理解が追い付かないときもありますけどー笑
      同じ本を読んでると嬉しいですねー(*´ω`*)
      2021/12/24
  • 病んでる女の子話でしたー。
    読んでる最中は、こっちまで少し病んじゃうくらいー。

    ひかりのあしおと
    ピジイテチンノンヨチイクン。呪文の言葉。
    ギンイロノウタ
    ステッキを使って、銀色の扉を開けるんだー!!

    2つのお話が入ってたけど、どちらもヤミヤミー笑
    考え方が偏り過ぎてる女の子たちで、
    まぁー全く共感はできませんー笑
    でも、このブッ飛んでる病み加減が、
    私には中毒なんだろぅなぁー。

  • 自己保身にまみれた親、大人、人間社会からの疎外、虐待。「ひかりのあしおと」「ギンイロノウタ」の2編とも壮絶な物語だ。

    そこには自我の問題、自分と何か?という問題が密接に絡んでいる。純粋な自我ではこの世は生きられないのだ。いわゆる普通に生きるということが難しい人にとって、「適応」はとてつもない「もがき」が必要とされる。もがいても報われるとは限らない。しかし、避けては通れない。

    物語では、最後にどちらも「扉」は開かれる。その先は、茨の道かもしれないけれど。

  • 表題と「ひかりのあしおと」の二編。
    アカオさんという表現には心底びっくりした。これ以上のぴったりな表現ってないと思う。覚えがあるだけに怖い。
    どちらの話も最後までニコリとも出来ない話だが、私にとってはこの本、変な母親によって育てられた子の行く末…みたいな気がして気が気じゃなかった。やがて母と娘の立場が逆転する。我が身を化け物と位置づけながら…。寝付くのにとても時間がかかった一冊。

  • 久しぶりに読み進めるのが辛い本だった。
    でも、読み進めなきゃならない気持ちにさせられる。
    ちょっと怖いぐらい。

    短編二つとも、「何か」に怯えそこから狂気に向かう少女が主人公。

    最後には救われたように描かれているけれど、私にはとてもそうは思えなかった…
    でも、別の作品も読んでみたい。

  • 「ひかりのあしおと」「ギンイロノウタ」の二話。どちらも世界からはじき出されてしまっている女の子が主人公で、この女の子たちが生きるために自分をゆがませていく過程が凄まじい。

    特に「ギンイロノウタ」は小さな声で始まった禍々しい祈りがエンディングに向かって何もかもを覆い尽くしていくような迫力があり、出色の出来だと思う。ちょっと急いで書いてますねっていう箇所がなくもないのだけれど、こってり描写されたら耐えられなくて読み続けられなさそうだから、この分量で助かったような感じもある。

    「ひかりおのあしおと」の自意識ゼロ系男子の蛍は、読み終わってみるとほとんど聖人みたいな存在だった。聖人に体を張ってもらえなければ終了だった女の子の話。なんでこんな辛い話を書くんだろうなあ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「なんでこんな辛い話を書くんだろうなあ。」
      表紙のインパクトに惹かれているのですが、、、最近辛い話は敬遠気味。
      逃げずに何かを掴んで欲しいと...
      「なんでこんな辛い話を書くんだろうなあ。」
      表紙のインパクトに惹かれているのですが、、、最近辛い話は敬遠気味。
      逃げずに何かを掴んで欲しいと思われている感じなのでしょうか?
      2012/09/18
    • なつめさん
      nyancomaruさん
      ポジティブな要素は全然なくて、日にあたれない植物がどんどんねじれていくようなお話です。元気づけられるような本ではな...
      nyancomaruさん
      ポジティブな要素は全然なくて、日にあたれない植物がどんどんねじれていくようなお話です。元気づけられるような本ではないように思います。
      2012/09/18
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「日にあたれない植物が」
      うーーん。パス。。。
      「日にあたれない植物が」
      うーーん。パス。。。
      2012/09/20
  • 村田沙耶香先生の小説は「コンビニ人間」から始まり5冊目の読了です。何冊か読んでいると、「コンビニ人間」は「まとも」で理解しやすい作品だったなあ…と感じます。村田先生の小説を初めて読む人は「コンビニ人間」からぜひ、どうぞ。

    こちらは「ひかりのあしおと」と「ギンイロノウタ」の二部作。どちらも毒親持ちの主人公ですね。常人には理解できない作品かも知れません。一言で言うと狂気です。私もなんだかよくわからないですが、いつもながら村田沙耶香ワールドすごいなあと思います。話の展開もそうですが、よくそんな表現が思いつくなあって。「ギンイロノウタ」の中の、「青い天井にこんなにしっかりと塞がれているのに、なぜここを「外」と呼ぶのか、私には理解できなかった」という一文がとりわけ好きです。どうしてこんなことを思いつくことが出来るのか…先生の頭の中はどうなっているんでしょうか?知りたくて、先生の小説を全て読んでみたいです。

  • 面白いけど怖い。
    思春期の危うさを凝縮している感じ。

    「しろい街の、その骨の体温の」と似ているけど、
    しろい〜 はまだ救いがあったけど、
    こちらは救いがない。
    とにかく怖い。

  • 「ひかりのあしおと」神経症的な、『世にも奇妙な物語』的な話。自分を襲おうとする光の人影のきっかけがただの悪戯だった事が判明した後もそれから逃れられず、光の人影という怪物を造り出したのは自分自身だと思っていたら、実は光の人影は自分を救おうとしていて、怪物は自分自身だったというどんでん返し。
    「ギンイロノウタ」関心を持たれず、何も出来ない駄目な子供と貶められ、萎縮して育った主人公の生き延びていこうとするもがき、って感じで読んでたんだけど、“私が選ばれた人間だからだ”と何かに目覚めたみたいな展開はよく分からず。
    『タダイマトビラ』と立て続けに読んでいて、三編の主人公は何れも家庭環境に問題があって、ともすればそこに帰着してしまうようにも見えるのだけれど、或いは上手く作動せず、統御できず、不具合を抱える「自分」というシステムへの異和感、異物感というようなものに彼女達は苦しみもがいているようにも感じられる。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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