島尾敏雄日記: 「死の棘」までの日々

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103101079

作品紹介・あらすじ

海軍特攻隊として迎えた敗戦、島の娘ミホとの結婚の困難、そして作家になるまでの日々が綴られる貴重な記録。

感想・レビュー・書評

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  • -2005.06.19記

    夫の不貞から心病み狂気に彷徨う妻・ミホにただひたすら向き合うしかないトシオとの、果てしなくつづく地獄図としかいいようのない日常。
    それは妻の快癒へと闘いにあけくれる日々でもあるのだが、その決してほぐれぬ縺れに縺れた泥まみれの日常の描写が全編を貫く。
    出口のない堂々めぐりの回廊、微かな救済の光さえ見えぬ、あまりに非日常的な結ぼれの日々が、なにか鉛の塊状のものとなって読み手の私の喉へと力づくで呑まされ、内臓深くにまで達したような感じがして、どうも日頃の身体感覚から遠く、その感触が五臓六腑になにやら重く沁みわたっているのだ。

    著者島尾敏雄は’55年(S30)に「死の棘」に着手、’77年(S52)の最終章発表にいたるまで23年に及んで書き継いでいる。
    この間、’61年(S36)に芸術選奨を受け。完成翌年の’78年(S53)には日本文学大賞と読売文学賞を受賞している。
    高橋源一郎氏曰く、埴谷雄高の「死霊」や大西巨人の「神聖喜劇」、武田泰淳の「富士」を差し置いても、ぼくはこれを第一位に選ぶと、「死の棘」を戦後文学最高の作品と推奨している。

    以前にも触れたことがあるが、私は殆ど小説を読まない読書人である。
    少年期の文芸への疎遠ぶりが尾を引いたのだろうが、私の守備エリアからは、小説世界がもっとも遠いところにあるという自覚で、もう何十年このかた過ごしてきている。
    ところがどうしたはずみか、ここ数日は、島尾敏雄の「死の棘」ワールドに嵌まりこんだまま過ごしてしまった。
    全十二章、文庫本で610頁というかなり長大の、その扉をたいした覚悟もなく開いてしまってからは、トシオとミホのなんとも形容しがたいくんずほぐれつの結ぼれように、なにか暗い洞穴に無理矢理押し込まれ逃れ出る術もないままに、ただひたすら読み進むしかなかったというのが実情にちかい。

    なに、読んでみようと思った動機のほどはたいしたものではない。
    何週間かまえに、小説「死の棘」の母胎ともいうべき「死の棘日記」が単行本化されているのを新聞誌上で知ったのだが、その紹介の書評から此方に食指を動かせたのだが、待て待て、小説の本体そのものを敬遠したままでというのも、戦後文学の代表的傑作と称される本書に対し失礼千万だろうし、ここは一番、小説から入ってみるかと思ったのだ。

  • カバーをよく見れば、そこにあるのは燃やされた日記。ミホさん、やるなあ。

  • もさっとしてたら、8月に出版されていたのに気がつかず、購入。
    「加計呂麻敗戦日記」はちょうど大学生のときに、新潮に掲載されたので、それはゼミ誌で取り上げたけど、どういう風にとりあげたのかすっかり忘れてしまった。
    たぶん卒論の一部になってるような気がするけど、忘れた。
    あれ(卒論書いたとき)から10数年経ち、島尾に関するいろいろがだいぶでてきている。そしてあたしのまわりもなんだか少しは変化があって、なんかもういちど整理したいなあと思うけど、整理したところでナニになるの?って気もするんだよな。

    ま、これからじっくり読みます。

  • 加計呂麻島敗戦日記+戦後日記昭和20-26年まで
    日記とか手紙を読むのは好きなのですが
    長かったなー
    長い中にも
    特攻の命令が出ないうちに
    終戦で復員し
    島からミホさんを呼び寄せて
    結婚したり
    父のすねかじりから
    教員の職を得たり
    子供が生まれたり
    東京で作家暮らしを決意したり
    その前に指宿に旅に出たり
    いろいろ身の回りに変化のある年月でした
    リアル小さなおうちです
    戦後の暮らしはこんな風に変化があったのだろうと…
    父と同居で神戸にいるので
    お芝居を見に行ったり
    (ミホさんはヅカも観に行っている)、
    映画館でニュースを見たり、
    ケーキやパンとやたらと食していたり、
    アリラン食堂や中華料理店で食事をしたり、
    そんな生活シーンも楽しむことができました

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著者プロフィール

1917-1986。作家。長篇『死の棘』で読売文学賞、日本文学大賞、『日の移ろい』で谷崎潤一郎賞、『魚雷艇学生』で野間文芸賞、他に日本芸術院賞などを受賞。

「2017年 『死の棘 短篇連作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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