烈しい生と美しい死を

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103112235

作品紹介・あらすじ

岡本かの子、伊藤野枝らが熱く烈しく生きた道に、波瀾万丈の自らの人生を重ねて描く。90歳の著者から若い世代への熱いメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • 2017.3.12

  • 久しぶりに、寝る間も惜しんで読みたいと思った。私が知りたいことを調べていると、だいたい寂聴さんが既に本にしている。この本も、伊藤野枝の生き方を知りたくて調べていたらあった。知りたかったことがほぼほぼ書いてある、ありがたい本。伊藤野枝や、「青鞜」に携わった女性たち、岡本太郎の母親・岡本かの子(この人についても寂聴さんの著書あり)、大逆事件で幸徳秋水と殺された管野スガ、等々、明治のぶっ飛び女たちの生き方が書かれている。主に恋愛周り。遺族や、恋人、子孫など、実際の関係者たちに会って取材しているのもとてもよかった。これも長生きな寂聴さんしかできないこと。もう亡くなってしまっている方がほとんどなので、とても羨ましいと思った。
    「明治の女性たちの生き方」が書かれているが、明治維新だの女性解放運動だの、教科書みたいなことでなく、もっと人間らしい、ひとりの女の烈しい生き方が描かれている。今も昔も人間の業は深いものである。
    やりたいことやって死ねるっていいな、と思う。
    どうして、こういう人間らしい一面を、学校で教えないのかと思う。そしたら、もっともっと日本史が楽しくなると思うのに。日本史は人間が紡いできたものなのだから、もっと人間らしさを出してもいいんじゃなかろうか。
    この本の登場人物と寂聴さんで、恋のから騒ぎをやったらすごく面白いと思う。

  • 幸徳秋水だの、青踏だの、固有名詞は学校の歴史の教科書でならったものの、何のことだかさっぱり身についていなかったので、とっても新鮮に読み進めました。
    甘粕大尉・満州関連本には必ずでてくる、伊藤野枝・大杉栄両氏についても、いろいろ知ることができたし、100年前の数々の事件が妙に鮮明で、つい今しがた報道される昨今の事件より、ぎらぎらしていて、時代は変わっているようで、実は同じなのかも。。?とか思ってしまう。
    それにしても、伊藤野枝は同じ九州女として、ちょっと羨ましくもある「生」のパワーを持ってるなぁ・・・・・

  • 今から百年前、女性がまだ男性の属物として扱われていた時代に、奔放に生きた女性たちについて綴っている。彼女たちの生き方は、今でも圧倒されるほど烈しい。まさに時代を生きたという表現がピッタリだと思った。

  • 2011年は「青鞜」発刊100年目だったという。そのことにマスコミはほとんど触れなかったと著者は言う。初めと終わりに第一線で活躍するキャリアウーマンとくったくのない若い女性たちの章を設けつつ、100年前の青春の声を800字で新聞連載した「この道」の書籍化。
    取りあげられた人物たちの強い個性と、それを活写する筆力に強く惹かれた。

  • 作家の軌跡がよくわかる。
    なぜ寂聴さんは「岡本かの子」や「伊藤野枝」に惹かれるのか。
    女の生き方の変化にドキドキする。

  • 昔の方が 自由奔放な恋愛をしていたと実感した。というか、何事にも 真剣に取り組んでいた結果だと思う。
    寂聴さんの語り口が さらっとしていて 読みやすかった。

  • 瀬戸内さんがこれまで取材、執筆してきた女性たちから、
    "烈しい生と美しい死”をテーマにまとめられたもの。

    伊藤野枝はじめ、平塚らいてう、岡本かの子など、
    時代を彩った女たちは、まさしく烈しい生を生きていた。

    わずか二十数年で亡くなった伊藤野枝は、
    その寿命を悟っていたのかと思うほど精一杯で、
    3人の男を巡り歩き、子供を多く生み、
    「青鞜」に、社会運動に精魂を注いだ。

    寂聴によって語られる彼女を読むと、
    おそらく背筋の伸びた、はっきりと物を言う女性
    だったんだろうなと思う。

    妻のある大杉栄との愛えさえも、
    なんの憚りも無く自信に満ちた堂々たるものだった。

    きっとそれだけ自分に自信を持てる生き方をして
    いたんだな。


    なんてことのない「日常」の大切さは頭では分かっているが、
    その「日常」が続く先にあるものが見えていないと、
    それはなんの意味もない。と感じてしまう。

    進みたいという道があるものの、現実を見て先延ばしにしてしまう。
    そんな私自身の現在のもやもやに、熱々の石を投じられた気分だ。

  • 久しぶりの瀬戸内節。子供の頃、母の本棚に出家前の「晴美さん」の小説があって、隠れて読んだら、子供にはエロの何物でもなかった。平塚らいてう、岡本かのこ、伊藤野枝、おそるべし。女の武器はなんとやら。本能のまま生きる、とはこのことか。女性が生きにくい、生きることが苦しい時代だからこそ、なのか。
    聞き書きという手法がところどころに生かされていて、これが森まゆみ氏評するところのうらやましさにつながるわけだ。それは確かに。

  • 明治・大正・昭和の時代に、波乱万丈な人生をおくった女性を、
    彼女たちと近しい人たちの証言も交えて、
    紹介したノンフィクション。

    恋や主義に生きた女性たち。

    例えば、

    岡本かの子。    
    『太陽の塔』 を制作した芸術家・岡本太郎さんの母。小説家。

    あの時代に信じられないのですが、
    彼女には何人かの愛人がいました。それも、夫公認で。。。

    とても魅力的な女性だったらしく彼女の愛人たちは
    『 とても素敵な女性だった』 と
      口をそろえて言ったといいます。

    夫公認で、彼女の愛人も一緒に暮らし、
    彼女の執筆の際には、資料を集めるために 
    夫も愛人も奔走した。。
    などのエピソードが書かれています。

    そして、

    伊藤野枝。
    婦人解放運動家。

    彼女も、すごい人生を送っています。
    今でいうダブル不倫をして、
    アナキズム運動の中心人物の大杉栄の元に走り、
    28才の若さで、憲兵に連れ去られ大杉栄とともに、扼殺されています(甘粕事件)

    彼女は常々『私たちは、どうせ畳の上で死ねない』 と
    言ってたらしいのですが、
    彼女を知る人たちの聞くエピソードから、
    イキイキとした魅力的な女性だったとわかる。

    この本には、そのほかにも、
    精一杯、恋に生き、主義に生きた女性たちが出てきます。

    女性の自由がほとんどなかった時代に、
    力強く生きた女性たちの姿を、
    知ることができる興味深い一冊でした。

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著者プロフィール

1922年、徳島県生まれ。東京女子大学卒業。63年『夏の終り』で女流文学賞、92年『花に問え』で谷崎純一郎賞、11年『風景』で泉鏡花賞を受賞。2006年、文化勲章を受章。2021年11月、逝去。

「2022年 『瀬戸内寂聴 初期自選エッセイ 美麗ケース入りセット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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