天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語

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著者 : 中村弦
  • 新潮社 (2008年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103120810

天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語の感想・レビュー・書評

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  • 第20回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
    大正~昭和初期に活躍した天才的建築家にまつわるエピソードが6つ。「死者とともに住まう家」「永久に住める家」など、無茶ぶりをふるクライアントの要望に応えるどころかそれ以上のものを作ってしまう、少々人間離れしたところのある建築家。
    けれども、彼はその能力と引き換えにあるものを失わなくてはいけなかったという。

    明治~大正~昭和初期にかけて、それぞれの時代が映画でもみているかのように鮮やかに浮かび上がる。ほとんどのエピソードが地に足の着いたリアリスティックな筆致で描かれており、唯一魔法的な要素は建物が人の心にもたらす劇的な変化。どこがファンタジーなんだろうと思っていたら、主人公の建築家の存在そのものがファンタジーだった。
    もしも天使という存在があって、彼らが人に救いの手を差し伸べるために地上に降りてきたらならば、どんな姿を取るのだろうか――その答えの一つがここにある。そして人間界に降りてきた天使はたいてい透明な悲しみを抱えている。

  • これで、ファンタジー? 初めのうちは、そんな疑問を抱かずにいられなかった。
    中盤あたりからようやくファンタジーの片鱗が現れて、ラストまで一気に独特の世界に引き込まれた。
    ある建築家を軸としたスペシャリストものとして十分に堪能できるぐらい、しっかりした物語の土台部分。その上に、施主の内なる願いを叶えてくれる不思議な建築物が立ち現れる。
    明治から昭和の初めを舞台とした手堅い筋立てに、幻想的な要素を組み合わせるとは、その勇気と筆力に正直驚いた。
    作品の中で主人公・笠井泉二が設計したいくつかの建物の姿を、読みながら頭の中であれこれ想像するのだが、挿絵があるわけでもないので、きっとイメージする建物は読者によってだいぶ異なるのだろう。それはそれで楽しいと思う。
    派手がましさはないけれど、清々しい余韻が残る一冊。

  • 第20回ファンタジーノベル大賞受賞作。

    施主の求めているものを正しく理解し、その願いを叶え具現化する造家師(建築士)の物語。
    明治~昭和初期。
    目まぐるしく変化して行く時代背景を盛り込みながら、時間軸を行きつ戻りつ静かに紡がれていきます。
    象徴的に用いられる天使のモチーフ。
    世界のあちらとこちらを繋ぎ人の心を満たしていく異色の建築物。
    迷宮閣という名前だけでもわくわくさせられますが、作中で描かれるその様相はゾクゾクするほど魅惑的でした。
    『冬の陽』で施された仕掛けが展開する様はただただ美しく、その優しさと奇跡に心が洗われるようでした。
    とても良かったです。

  • 明治時代を舞台に異才の建築家・笠井泉二の建築に取り込まれる人々を描いた連作集。

    派手な話ではないため盛り上がりに欠ける部分が多く前半はなかなか乗り切れませんでしたが、この本の登場人物と同じく徐々に、笠井泉二の人物像やその不可思議な建築物に引き込まれていった、という印象です。

    明治という舞台設定が話をリアルにしてくれていると感じます。現代の高層マンションが立ち並ぶような世界で、不可思議な家の話をされたとしたらになんだかピンとこなかったような気がします。そのあたりは筆者の方の時代背景の選択の妙が表れていると感じました。

    家の描写は結構想像力が必要で苦労しましたが、やはり美しく幻想的。さすがファンタジーの賞を取っているだけあるなあ、と思わされました。

    第20回日本ファンタジーノベル大賞〈大賞〉

  • 日本ファンタジーノベル大賞受賞作だそうで。

    明治から大正にかけてが舞台で、異能の天才建築家・笠井泉二の作る不思議な建物と、彼をめぐる人々から語られる笠井泉二のお話。

    うーん、
    文章や設定がどうとか、
    強いてあげつらうほどの不満も無いかわりに、
    別段心を動かされるほどの感銘も受けなかったです。

    笠井泉二が一度も語り手になることはなく、
    周囲の人々が語っていくなかで人物像を明らかにしていくのってよくあるけど、

    異能な部分があるにしても笠井泉二に掴みどころが無いようにしか思えず、

    泉二の作る建物を淡く想像するだけしかできない自分には、

    周囲の人々が彼にこだわるほどの魅力を感じられませんでした。残念。

    とにかく、のめり込んで読むほどはまれないけど、放り投げてしまうほどもない、
    可もなく不可もなく、という印象で締めくくられる本でした。

  • 依頼者が望んだ以上の建物をつくりだせる建築家・笠井泉二。彼の建物は「住む者の心を狂わせる」とのうわさもあって……。
    第20回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。初めは少しずつ、そして物語が進むにつれ、ぐっとファンタジー色が強まっていく。
    明治から大正の雰囲気たっぷりの時代小説で、美しかった。

  • 図書館で借りた本。明治14年から昭和7年までを背景に、笠井泉ニという建築家の物語。6話の短編形式で書かれていて笠井泉ニの幼少の頃から始まる。建築家となって依頼人が希望する家を設計、完成時に出来上がった家の詳細を文字の表現だけでちゃんとイメージが伝わってきたのは、作家として力量かな。それぞれの話が繋がっていく巧みさも良かった。切ないファンタジーのジャンルに入る本と思うが凄く気に入りました。

  • これはすごい物語。
    面白いというより、すごいっていう感想。
    ファンタジーノベル大賞に巡り合えて
    よかったなと思えた一作。

  • 第二十回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

    笠井泉二と彼がつくる建物をめぐる六篇の短編からなる作品。短編で時系列がバラバラだが、それぞれ微妙につながっていて、一つ一つのエピソードを積み重ねることによって不思議な建築家笠井泉二の輪郭が徐々に浮かび上がってくる。

    うまいなあ、と思ったのが雨宮利雅の醜い虚栄心の表現。地の文の説明がたとえなくても彼の台詞を二、三読むだけですぐ感じられる。読者はすぐに彼のことが嫌いになるはず(笑)

    一番好きなエピソードは第一章「冬の陽」。章子夫人の強さと儚さ、最後の奇跡には胸を打たれる。ハッピーエンドなのだが、それが他人から見ると彼女は心を狂わせられてしまった悲劇の人でしかないところも皮肉的で面白い(第六章での雨宮の台詞から)。

    急勾配の手に汗握るストーリーではないが、静かに心に染み入る類の優しい物語。
    私も笠井泉二に家をつくってもらいたい。

  • 建築物への造詣が深くないせいで笠井泉二の建築物を想像しきれず、あまり世界観に浸れなかった。残念。

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