ロスト・トレイン

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著者 : 中村弦
  • 新潮社 (2009年11月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103120827

ロスト・トレインの感想・レビュー・書評

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  • 不思議な気分になるお話。
    日常にありそうで、でも非日常。もしかしたら本当に実際その辺に転がっていそうな不思議な話。
    別世界への憧れは、誰しも少なからず持っているであろう気持ちだけれど、そこへ行くか行かざるか、それに焦がれて焦がれてそれでも大事なものはなんなのか。漠然と、でも確かに、私たちの心の中に草笛線は存在している。

  • 「平間さん、今、幸せですか? 」

    小河内線の廃線跡でたまたま知り合った平間さんは「ぼく」にとって鉄道を通じ、年齢差を超えて語り合える人となったが、その平間さんがあるとき突然失踪する。平間さんがかつてネットで話題になった「まぼろしの廃線跡」を訪ねて消えたという確信を得た「ぼく」は、旅行代理店に勤め同じように平間さんと鉄道を通じて友情を結んだ「鉄女」の菜月とともに、かつて東北に存在したという草笛線の廃線跡に平間さんの行方を追う。だが、そこで二人が見たものとは…。

     廃線マニアは「禁断のテツ」だ。廃線はたとえそこにレールが残っていようとも、基本的には廃線だからいくら待っても現実にはそこに列車は来ない。だが「来ない故に待つ」というレールに寄せる熱い思いは逆にそのまぼろしの列車を呼んでしまうということがあるのではないか。

     仮にそんな列車が目の前に着いたとして、現実の世界で自分の居場所を失った者が自分を「ここではないどこか」へ運んでくれる鉄道に自身の人生を委ね、ここではない場所を求めてその列車に乗ってしまうことは確かに考えられる。鉄道に特別な想いを抱くものならばなおさらのこと。平間さん然り。菜月然り。それが二度と戻っては来れない旅とわかってはいても。

     同時にだからこそ、草笛線の駅伝言板に残された平間さんの言葉に絶句し、ロストトレインに乗ったまま自分の本当の居場所を求めてとうとう最後まで降りることをしなかった平間さんの覚悟を想う。自らの意思で列車に乗り戻らなかった人たちは果たして何処へ向かったのか?物語はミステリアスなファンタジーの様相を呈して意外な結末へ進んでいく。このクライマックスはちょっとジブリ的だ。

     廃線に列車は来ない。いくら待っても。でも来ないからこそそこにはロマンがある。ロマンはロマンのままに。廃線跡で仮に列車を呼び寄せてしまっても、決して乗ってはならない、と自分は思う。それはやはり現実逃避でしかない。「居場所がなければつくればいい」という「ぼく」の言葉は現実的だがまっとうなのだ。
    平間さん、今、幸せですか?

  • 鉄道は目的地に向かって敷かれたレールの上を、決められた時刻表に従って走る。それにもかかわらず、知らない土地で列車に乗るとき、自分がこのままどこかへ連れて行かれそうな錯覚に陥るのは何故だろう。日常と非日常が交差するかのような不思議な魅力が、この乗り物にはあふれている。この作品は奥深い鉄道の世界がファンタジーと融合して、マニアでなくても十分楽しめる。ロスト・トレインの車窓から眺めるキリコノモリの描写部分がとくに印象的で、力強い色彩が目の前に浮かんでくるようだ。小難しい言葉が一切使われていないせいか、奇想天外なストーリーでもさして強引な展開に感じなかった。

  • 廃墟、廃線に心惹かれるものとしては、手に取らずにいられない本。
    廃線にまつわる不思議な噂話といなくなった男。
    そこから出発する物語。
    鉄道マニアの描写も楽しく、ワクワクしながら読めたな。

  • たまたま手に取った雑誌の記事を読んで廃線跡に興味を持った牧村。そんな彼は廃線跡を見にいった先で出会った鉄道マニアの平間老人と、世代を超えて友情で結ばれることとなります。ところが平間は、始発駅から終着駅までたどれば奇跡が起こると廃線マニアのあいだでまことしやかに語りつがれている「まぼろしの廃線跡」のことを牧村に話してから間もなく、消息を絶ってしまいます。彼はどこへいってしまったのか?彼の手がかりを追って、テツ仲間だという菜月とともに東北へ向かうのですが…。

  • 廃線跡を巡るちょっとした冒険譚。
    パートナーである倉本さんが、無邪気なようでいて狂気を秘めており、それが終盤なんだか唐突に姿を現すので、前半の話が全部吹っ飛んでしまった。
    なんだろう、もうちょっと伏線というか、予兆のようなものが欲しい。
    何かを手に入れようとする「ぼく」と、何かを捨てにきた倉本さんの対比というか。
    捨てることをひとまず先送りにした倉本さんに対して、「ぼく」の方にそれに対応する何かが足りない。
    お互いに何かを先送りをしてバランスが取れるんじゃなかろうか。上手く言葉にできないけれど。

  • 20160603読了

  • 国産初めて作者本読了!
    職場本にしては近年まれに見るヒット……良かった良かった、そうでないとうちの書棚墓場に見えてくるもんね(T_T)

    主人公はちょっと廃線ウォークに興味ある、まだ若い社会人。
    ひょんなことから鉄道ファンのダンディな老人と知り合って交流していくのですが、あるとき老人はふっつりと消息を絶ってしまいます。
    「日本のどこかにあるまだ知られてない廃線路の始めから終わりまで辿れば奇跡が起きる」
    そんな話を主人公に残して……
    ヒロインを始め鉄ちゃんネタが目白押しで、よくわからない所もありつつも、電車とファンタジーって結構相性いいと思います。
    「銀河鉄道の夜」しかり、「千と千尋~」とか「イバラード」とか……電車がここではない違う世界に連れていってくれる感じ。

    それとは別に、図書館でがっつり調べものをしているシーンとかが文句つけるところなくて好印象。
    司書が利用者の秘密を簡単にばらしたりする作品とかちょいちょいあるけど、これにはそういうのがなく、ちゃんと検索やレファレンスを使い倒してる。
    著者が調べものをよくして書くタイプみたいだから、普段こうしてるんだと思う。
    うちには彼の作品はこれしかないのですが、地元で他のみつけて設定が嫌いじゃなければまた読みたいかな。

    装画 / 松岡 潤
    装幀 / 新潮社装幀室

  • ラストまで引きこまれた
    終盤の展開に不満な人も多いだろうが
    私はこれでいいと思う
    4.7点

  • 幻の廃線を求めて失踪した男性を探して主人公が奮闘します。鉄道好きの人には楽しい小説だと思います。

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ロスト・トレインの作品紹介

誰も知らない場所行きの列車が、いま、目の前で動き出す-なつかしくなる、旅に出たくなる、じんわり切ない大人の青春小説。

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