草祭

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著者 : 恒川光太郎
  • 新潮社 (2008年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103130413

草祭の感想・レビュー・書評

  • 美しい山奥…「美奥」と呼ばれる土地で次々に起こる不思議な現象。
    そこかしこで暗闇が息を潜めて囁き合う。
    昔からその土地にだけ残る言い伝えや、ふと感じる不思議な気配。
    そして時々出現する太鼓腹のおじさん…。
    気付かずに済む者もいるのに、偶然なのか必然なのか気付いてしまった彼ら…。
    ゾクゾクする連続短編集。
    全てを読み終えて感じる、太古から繋がる不思議な縁。
    こうやって「村」は出来ているんだな…。

    ちょっと怖い短編の中でも地域の守り神が出てきて酒盛りを始める「屋根猩猩」とクトキのために対局する「天化の宿」はとても好きな話。
    「仲良しのお酒」は呑んでみたい。

    気付いていないだけで、私の住んでいる土地にも似たような現象があるのかもしれない、とちょっとゾワゾワしてしまう物語だった。

  • 美奥という土地を舞台にした短編集。登場人物がリンクしているものもあり、そして大好きな恒川さん独特の叙情的な、寂寥感のある世界観。
    けものはら、屋根猩猩、が好きだなあ!
    恒川さんの作品を読みたい気持ちは強いのだけれど、読む本がなくなってしまうのが嫌で、少しずつ読んでいます。次は「南の子供が夜いくところ」を読もうと思います。

  • 「美奥」という地域に場所を限定し、オムニバス形式で
    そこに暮らす色んな人々の視点から物語が広がりを見せる。

    ある話ではチラッとしか名前が出てなかった人が、別の話では
    主人公になっていたり、とある話では相当な重要人物・キーパーソンで
    あったりするのに、また別の話ではほんの通行人Aのようにしか
    主人公が見ていないのも面白いです。

    読み進めていくうちに出会う、美奥で起こる不思議な現象……
    そしてその根本となった古えの出来事までが紐解かれ……
    一篇ずつでも大変面白く読めるし、全体を読み終えた時は、
    自分の中で「美奥」が実際にどこかに存在するような、立体感を
    持った世界として感じられる作品です。

    面白いといっても、ワクワクどきどきではありません。
    フラットな愛惜を感じさせる話です。
    幻想的で朧げな美しさがこの作家さんの魅力だと思います。

  • すごく良かった!

    「屋根猩猩」は、あまりにも入り込みすぎて、
    障子戸を開ける音まで聞こえたような気がしたし、
    「天化の宿」で出てくるクトキの「天化」のゲームは
    自分が盤を回しているように胸躍った。

    見たこともない異界のおはなしなのに、
    どうして、こんなに懐かしい風景なんだろう…
    ふしぎ。

  • 「夜市」「雷の季節の終わりに」「秋の牢獄」に続く、第四作品。

    今までで一番好きな世界観。
    一回読んでみてから、また読み返すとたくさんの発見がある。
    世界がクロスワードパズルのように、繋がっていて、不思議な世界。

    この作家さんの作品はどうして、読んでいると映像が脳内で再生されてしまうのだろう…。

    この作品は続編や外伝みたいなのがあってもいいのでは…(個人的には作ってほしいです。)

    恒川さんの本をデビューから、ずっと読み続けていて良かったなーと思いました。納得のいく内容だな、と思います。

  • 恒川光太郎4冊目の単行本。「美奥」という町を舞台にした5編の小説からなる構成となっている。「くさのゆめがたり」と「天化の宿」がすばらしい。ちなみに封建時代を舞台にした「くさゆめがたり」では初めて(第一作から順に読んできたのだが多分)性的なこと、暴力についてのある程度の具体的描写がある。とはいっても相当に控えめなものだが。
    そして「天化の宿」。傑作ではないだろうか。そこで描かれるゲーム「天化」の描写は目がくらむようにまばゆく鮮やかな表現である。恒川の文章世界に酔いしれた。ラストもいい。
    と思っていたのだが最後の「朝の朧町」を読んでさらにやられた。整合性、感情の動きの説明という点では足りないものもあるように私には思われたが、それを補ってあまりある文章の力、物語が伸びていく勢いという点ではさらに新しい領域に達したように思われる。最後の10章などはもうこれは詩である。すばらしい。

  • かげろう蜥蜴は特別に存在があやふやな領域に棲んでいたんだろうけど、考えてみれば今世に在るものも、みな多かれ少なけれあやふやなバランスに在るものなんじゃないかと思うよ。

  • 【再読】美奥という少し懐かしいような土地の物語を描いた短編集。

    装丁の美しさが圧倒的。
    オレンジと紫のコントラストが美しいし手触りもいいし、カバーを外しても紺に銀刷りのタイトルがシンプルイズベスト。
    中身も幻想的で美しく、美しさだけでない不気味さもあり、それでいて重苦しい内容から軽い語り口のものあって翻弄される感じがいい。
    「屋根猩猩」と「天化の宿」がお気に入り。

  •  恒川さんらしい幻想的な連作品です。
     読後、何とも不思議な気持ちになります。美しく優しいようでいて、淡々として残酷。不思議なところです、「美奥」。

  • 恒川さんが描く物語は、日本の昔話のようにどこか懐かしく、何とも言えない安心感がクセになる。
    異界の入り口“美奥”を舞台としたこの5篇も、恐怖と再生が表裏一体となって美しかった。
    ある日突然屋根神さんに任命(?)されると、地域住民の世話を焼かずにいられなくなる「屋根猩猩」がおもしろい。こんな守り神がいたら、お年寄りがオレオレ詐欺の被害に会わずに済むのかも…。だけど、自分がその町に住むとしたら微妙だなぁ。

  • 幻想的な恒川ワールドの短編集。中では「天化の宿」が一番面白かった。以下に詳しい感想が有ります。http://takeshi3017.chu.jp/file6/neta17003.html

  • ただホラーとも言えない。
    ファンタジーとも言い切れない。

    なんだこの世界観は!!!

    このようなジャンルも、
    短編小説集も、そう読む方じゃないけれど
    これはどっぷり「世界」にハマってしまい
    しばらく抜け出せなかった。。。。

    『美奥』。心惹かれる。

  • 続いて読んでいる。短編小説集。
    作品ごとにゆるくつながりのある世界。
    がっつり伏線にまみれたつじつま合わせではなく
    固有名詞や風景の中に時間を隔ててつながっていく感じ。
    凄惨な描写はなく全体に淡々とした空気。
    「天下の宿」の疾走する感じが好きだなあ。
    最後の「朝の朧町」はさすがに設定が都合よすぎるような。

  • 同じ本を引き当てた・。
    なんでまた・・・・・・

    同じように途中で挫折。。。。
    なんでまた・・・・

  • さすが恒川氏!
    この作品はホラーというよりファンタジーだと思う。
    読み終わって、思わず『ブラボー!』と叫びたくなりました。(←そういう話ではないですが。)
    やっぱり、恒川氏の描く世界観が好きです。
    短編集とも言えるストーリーで、1つ1つの話がそれぞれ微妙に重なっていたり、リンクしていたりします。
    これはもう一度読みたい!
    おすすめです。

  • 2014/7/28。2014年21冊目。
    美奥という、不思議な土地をめぐる短編集。

    友人がけものになってしまう「けものがはら」

    趣味で詩でも小説でもないハウトゥ本(バカトラ。馬鹿な男子に一生消えないトラウマを与える100の方法)を書いてしまう藤岡美和さんが屋根神様になるまでの話「屋根猩々」

    美奥の由来「くさのゆめがたり」

    森の奥の廃屋のような不思議な家で、天化という、始めたら最後まで終わらせなければならないというゲームを始めたゆうかの話「天化の宿」は、ラストが痛快。

    これまた不可思議な街の物語「朝の朧町」

    どれもいいけど、淡々とした藤岡さんやゆうかちゃんの話がお気に入り。
    というか、物語だけじゃなく登場人物も好きなんだな。

  • 美奥という街が舞台の5編の短編集。
    時系列はバラバラだけど、それぞれが何となくつながっていて、もう一度読んでみると「あっ」と気づかされるところがある。
    どの話も時間がゆったり過ぎていき、独特な(表紙絵の影響を私が受けているからか)夕暮れを感じさせる雰囲気がいい感じ。
    特に好きだったのは朝の朧町。自分と向き合わなくてはならないけど、この町に私も行ってみたいと思った。

  • 美奥、オロチバナ、クサナギ、苦解き、双子と親分。

    魅力的なファクターが現れては隠れ、そしてまた現れる。
    胸が詰まるような郷愁と畏れに似た思い。
    どの作品も恒川さん独自の世界観で構成されているが、
    この作品は特に良い。


    一番好きなのは「くさのゆめものがたり」。
    あっという間に物語に引きずり込まれ、最後の一文ではっと目が覚める感じ。
    「屋根猩猩」を読んだ時点で世界観がつながっていることは分かっていた筈なのに、それまでの伏線の描き方が巧み過ぎて短編のひとつであるということも忘れていた。
    主人公が自身の信条を最後まで通して理想郷を作ろうとしたことに胸うたれる。

    「天化の宿」は、少女の華麗な逃げ切りが小気味よい。


    読後は、心地よいがどこか怖い夢を見て、
    目が醒めたらすべて忘れてしまった時のような気分。
    何度も読み返したい。

  • 14.02.27読了。途中、間隔があいてしまい中途半端になった。今度じっくり読めば評価は上がるかも。

  • すぐそばにあるようで、遠い町「美奥」。
    そこに暮らす人々、風習、歴史が個々の短編を通じて拡がって深まって全部読み終えた後には「美奥」という町の虜になっていた。恒川ワールドすごい。

    「屋根猩猩」と「くさのゆめがたり」が好きだな。
    あとはショウちゃんと双子!

    そうしてできた町だから、住人さえも夢ごこち。
    路傍の花よ、その通りだ。
    やがては忘れたことすら忘れる。

    わたしも獅子舞の予約待ち。
    まだかなまだかな。

  • 恒川作品3冊目。美奥という架空の場所が舞台の連作短編集。彼の作品は日常に隣接する非日常の異空間、日常の裏側に連れていってくれる。幻想的でいてどこかにありそうで。ただ連続で読むと個々の作品の良さが失われてしまうなと思った。2011/633

  • 美奥と言う土地を舞台にした五つの短編集。

    現実世界と妖しいものの世界が重なる不思議な世界がありました。
    静かな、穏やかな世界に潜むこの世ならぬものたちの息遣いが聞こえてくるようで時折、ぞくりとしながら読みました。

    その土地が美奥と呼ばれるようになった由来が書かれた『くさのゆめがたり』が緋と橙の鮮やかなオロチバナ、秘薬のクサナギと言った登場する言葉の印象も美しく、一番心に響きました。

  • 恒川さんの作品で一番初めに手に取った作品です。

    美奥という町に纏わる不思議で恐ろしく、美しい物語です。
    言葉にすることが難しい感覚が詰まっています。
    なんというか、まさにこの表紙のような感覚。なんだかおそろしいのに美しくて惹きつけられるような夕暮れ。鼻の奥でつんとする切ない気持ち。かなぁ
    この空気感はこの方にしか作れないだろうなと思います。

    ホラーくくりみたいですが、内容はホラーという程怖くはないです。どちらかというと怪しい、恐ろしい(微妙なニュアンスなのです。)感じです。

    たぶんずっとずっと好きな作品、作家さん!

    怪しい話が読みたい人、夏の夕暮れ、秋の夜長におすすめです。

  • 美奥という土地で繋がる5つの物語。そこでは危ういバランスを保ちながら日常と異界が混じり合う。恒川作品はこの境目の曖昧さが癖になる。切なくて心ときめく静かな怖さ。

    ・けものはら
    ・屋根猩猩
    ・くさのゆめがたり
    ・天化の宿
    ・朝の朧町

  • 「深遠なパーツで組み立てられた町」

    町の水路から原始を思わせる謎の野原に迷い込む「けものはら」、木造瓦屋根の古い民家が並ぶ尾根崎で地区の守り神として選ばれし者を描く「屋根猩猩」、草に精通する少年「てん」が苛酷な体験の末にに生み出した薬・くさなぎ。美奥の名の由来を物語る「くさのゆめがたり」、森の奥を抜けた家で一生に一度だけ行える「天化」。人の苦を解くのだというゲームの行方―「天化の宿」、カラスのくれたガラス玉の中にある町はそこを訪れた人々の記憶により常に変化していた。町を知ったことにより再生される未来を予感する「朝の朧町」。いずれも「美奥」の町に絡めて語られる6編。

    日常のすぐ隣にある異世界を描いて秀逸というのは『夜市』でも感じたことだったが、『草祭』では全ての短編を「美奥」という一つの町をキーワードとして描いたことで、不思議で哀しくてなぜか懐かしい、その世界観がより鮮鋭化して見えたように思う。五感にまで働きかけてくるその表現や描写は言うまでもないのだが、各編ごとにある、物語の鍵ともなるパーツが素晴らしい。

    「けものはら」では太い注連縄の張られた卵型の岩。大小さまざまな無数の獣たちが、月の光を浴びてその岩を囲んで蹲っている。その輪の中で彼らとともに蹲るとき人間は名も無き獣であり、原始的なものの一部としてそこに深い安堵があると書く。

    「天化の宿」なら、一生に一度だけできやり直しはきかないというゲーム「天化」。「細部のルールは複雑怪奇で、それらがゲームの世界に緻密に、そして有機的に絡んでいき、原因と結果―因果の糸が独特な世界を浮かび上がらせて」いき、「理性の材木で城を作ろうと試みるも、全てはでたらめに破壊されて」いくのだという。何十枚ものカードを使って世界を構築する「天化」とはいったいどんなゲームなのか。

    ひとつひとつのパーツが実に深遠なのだ。そうしたパーツが組み合わされることによって、ひとの心を捉えて止まないこの異空間・美奥の町は出来上がっているのだろうと思う。

    その意味では今回手にした本の装丁はこの美奥の物語の世界を見事に表現していて興味深い。モダンな線で描かれた和風とも洋風ともつかぬ町の一角。卵型の岩やゲーム「天化」こそないものの、けものはらへの入口となる水路、猩猩の守る瓦屋根、森の奥へ続くトロッコ電車の線路、禁断の神薬クサナギの原料となるオロチバナなど、重要な物語のパーツが描き込まれている。

    時間帯も気になるところ。オレンジ色の空のもと紫に染まった町。黄昏なのか暁なのか。だが昼でも夜でもないこの微妙な時間帯は見ようによっては「恒川ワールド」の真骨頂でもある。人が一切描かれていないことにも注目したい。この物語の主役は、人を包み世にも稀なる方法で再生させる美奥という「町」に他ならない。

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