仮想儀礼 上

著者 :
  • 新潮社
3.73
  • (57)
  • (79)
  • (85)
  • (15)
  • (2)
本棚登録 : 542
感想 : 97
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103133612

作品紹介・あらすじ

信者が三十人いれば、食っていける。五百人いれば、ベンツに乗れる-作家になる夢破れ家族と職を失った正彦と、不倫の果てに相手に去られホームレス同然となった矢口は、9・11で、実業の象徴、ワールドトレードセンターが、宗教という虚業によって破壊されるのを目撃する。長引く不況の下で、大人は漠然とした不安と閉塞感に捕らえられ、若者は退屈しきっている。宗教ほど時代のニーズに合った事業はない。古いマンションの一室。借り物の教義と手作りの仏像で教団を立ち上げた二人の前に現れたのは…。二十一世紀の黙示録的長篇サスペンス。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 上巻読み終わったところで、一言。
    さすがです!

  • もっと狂気じみた話かと思いきや、いたって真面目な宗教ビジネスの話。非常に面白い。お役所上がりの主人公の現実的で慎重な性格が良い。それにしても上手くいけばいくほどいつ崩壊するのかとハラハラしてしまうのは、やはり「虚業」なんて上手くいくはずないという先入観のせいでしょうか。一体この先どうなるのか、高まる不安を抱えつつ下巻へ。

  • いつもお世話になっているユミさんのブログの感想を見て予約した本。
    結構厚い上に上下巻ともなると読めるのか心配でしたが、無理なら読まずに返そうと思って借りました。

    私は割といろいろなことに対して冷めてるところがあると思っているので、何かを信仰することはないんじゃないかと今は思っています。
    結局みんな自分が1番なんじゃないかとどこかで思ってるところがあるのですよ。
    ただ夫や息子に対してはそんなこと思わないので、唯一無償で何でもしてあげられる存在なのかも。

    こういう冷たい考えと言うのは、やっぱり自分がちゃんと愛されて育ってないからなのかもしれないなーと親になってから思うようになりました。
    だけどそんな私でも大切にしたいと思える家族がいることはとても幸せなことで、実家にいた時の不幸は全て今の幸せを手に入れる為だったんじゃないかと思うことも。
    というか、そういう風に思わないと切ないのですよ。

    誰でも平等に幸せと不幸が訪れると言う言葉を全て信じているわけではありませんが、もしも多少なりともありえるのであれば、私は高校を卒業して家を出るまでに、生きている間の不幸が全て訪れてしまったんじゃないかと、世間や関わった人と話してみて感じることがあります。
    でも不幸を不幸と思わずに過ごしていたから、まだ幸せだったのかも。

    と、本とは全然関係ないようなことを書いてますが、私のような生き方をしてきた人は宗教にはまりやすいのかなとこの本を読んでいて思いました。
    何かに救いを求めたくなるんでしょうね。
    でも結局それは自分で何とかしないといけないとその辺はかなりクールに考えるので、冒険もしないけど、悲観もせずに、何ものにも縋ることがないのかなー。

    上だけ読むと、もうこれで終わりでもいいんじゃないの?と思います。
    もちろん同じくらいの厚さで下があるわけですが。

    何かを信仰することは自分を信じることでもあるのかな。

  • 再読

  • 夢破れた男が宗教という虚業に光明を見出し、張りぼての救いと癒しでお金を稼ごうと模索する、何とも面白い小説だった。上巻は、まさにゼロからのスタート。ホームページ作成~お悩み相談から始まり、拠点探し~居場所づくりを経て、はったりと、ついでにちょっぴりの真心で、悩める人々の心を繋ぎとめていく。凶悪犯罪を起こした宗教集団との差別化に苦心したり、トラブルメーカー系信者をいかに厄介払いし金払いの良い信者をいかに取りこむかに頭を悩ませたりと、難易度の高い課題ばかりながら、ときに失敗しつつも運に恵まれ順調に組織は大きくなっていく。

  • NHKで連ドラ化される(2023年冬)と云うので読んでみる。とても分厚い本が上下巻でへきへきしたが、文章は割と読み易い。宗教の始まりってこんなもんやろなと納得。下巻に続くのだが、破綻するに違いないとしか思えないわ・・・

  • 2023年12月ドラマ化
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99130006

  • 3.74/504
    内容(「BOOK」データベースより)
    『信者が三十人いれば、食っていける。五百人いれば、ベンツに乗れる―作家になる夢破れ家族と職を失った正彦と、不倫の果てに相手に去られホームレス同然となった矢口は、9・11で、実業の象徴、ワールドトレードセンターが、宗教という虚業によって破壊されるのを目撃する。長引く不況の下で、大人は漠然とした不安と閉塞感に捕らえられ、若者は退屈しきっている。宗教ほど時代のニーズに合った事業はない。古いマンションの一室。借り物の教義と手作りの仏像で教団を立ち上げた二人の前に現れたのは…。二十一世紀の黙示録的長篇サスペンス。』

    『仮想儀礼』
    著者:篠田 節子(しのだ せつこ)
    出版社 ‏: ‎新潮社
    単行本 ‏: ‎469ページ(上巻)

  •  崖っぷちの無職の男二人が、宗教を始める。

    「我々が実と信じたものが虚構、虚と信じたものが真実に変わるんです。実際には無いもの、人が作り出した神の概念に、人が命を捨てるんです。人のあらゆる不満が、欲望が、喜びが、希望が、こういう形で力を持つんです」

     ホームページを開設した途端にメールが届くとか、集会所を開設した途端に人が来るとか、由宇太の事件なんてそんだけ!?てほどアッサリ終わりすぎたのとか、「そんなうまいこといくか〜?」と懐疑的に、冷めた目で読んでる。だけど、案外そういうものなのかもしれない。SF世界のような荒唐無稽な出来事が現実に起こる現代では、何も起こらない穏やかな日常こそがファンタジーなのだ。寄る辺ない人、すがるものがない人は、この世にごまんといる。大きくなる渦の中で教祖たる正彦は道徳的で理性的で冷静。そんな様子が、読者としての自分の態度と重なる。

  • 宗教団体を立ち上げるお話。
    とても面白い。
    初めて読む作家さんだったし、分厚すぎる本を手にとったとき読みきることができるのか不安だったけど
    ずーっとだれることなくあっという間に読了。寝不足がつづいてしまうほどにひきつけられる。
    下巻では何が巻き起こるのが非常に楽しみ!!!!!!

全97件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

篠田節子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×