仮想儀礼 上

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103133612

感想・レビュー・書評

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  • 「もし行政の中級管理職が宗教をたちあげたら?」

  • いったいどうなっちゃうんだろう~、っていう展開でまずまず楽しめました。ラストの盛り上がり方が鮮烈!

  • 作家になるはずで都庁を退職したのに出版はキャンセルになり妻には去られ窮地に陥って、破れかぶれで新興宗教を起した主人公。
    調子のいい元編集者矢口といい加減さに呆れるような出だしで「聖泉真法会」は始められるが。
    もと役人の真っ当さで案外人心を掌握して会はどんどん成長していく。
    いい加減な筈の矢口は、その純真さで若い信者の信奉を得る。
    上巻はトントン拍子に拡大してい「聖泉真法会」、下巻はスキャンダルに見舞われ信者に去られ、果ては…。
    残った信者たちはデタラメで始まった宗教を信じ、さらに異議を唱えると教祖までもリンチするような狂信集団となって行く。
    終章に向う迷走劇は、始まりのいい加減さにと対象的に、悲壮を通り越して荘厳ささえ感じられた。

  • 感想は下巻へ。

  • 下も読了。
    途中これで纏まるのかと心配したが、さすが篠田節子、上手い。
    宗教をビジネスとしてやっていこうとする主人公が宗教団体を軌道に乗せ、ビジネスとして成功させる前半、足元をすくわれ失墜していく後半、そしてラスト。
    これだけの長編を破綻なく仕上げた力量に感服。
    性的にえげつないシーンはあまりなく、宗教なんてものに下手に手を出したら痛い目に会う、女性心理はコントロールし難いといった作者の考えが伝わる。
    教祖の公務員的な誠実さに途中違和感を感じたりもしたが、こういう人物だからこそ読者が不快感を覚えることなく最後まで読み進めることができるのだと思う。
    現代の家庭や若者の病理も巧みに描き、エンタメとして文句のない仕上がり。

  • さすが篠田さん、脱帽です。実際にありそう。

  • やられた。9.11を逆手に取って、世の中に進んでいくという道を小説の中で実現してしまう。
    篠田節子なら、小説を書くだけでなく、この手の団体を立ち上げられるかもしれない。

    役所勤めという経歴といい、
    「社会のシステムや精度についての正確な知識を持って折らず、そのために問題が解決できず、相談相手もいない状況に置かれている」「論点がはっきりせず、果てのない愚痴としてしか語られることのない彼女たちの悩みに、家族は本気で耳を傾けてくれない。家庭の中心にいて家族の生活を守っているはずの彼女たちが、その家庭の内で孤独に陥っている。」
    という現状分析といい、的確だ。

  • 上下巻ともずっしりとボリュームあり。これは時間がかかると思い、半年ほど手がつけれなかった作品。数日休みがあったので、とりかかる。
    宗教、チベット、ネパール、国際問題など、篠田作品の醍醐味が詰まっている。上から下のつなぎも流石。切れ目なく下に突入させてもらった。二日で読み終える。休憩は何度か入れたが、気がつくと三時間休まず読んでいたりと、作品から離れられなくなる魅力がある。

  • ■あらすじ
    失業した二人の男が、生活のためにインチキ新興宗教を立ち上げる。運にも恵まれ、信者を数千人規模獲得して組織が大きくなるが、いろいろな問題にも直面して悪戦苦闘するという話。上巻は事業が軌道に乗ってうまくいっているところまで。

    ■感想
    笑えるコメディではないが、真剣に悩み恐怖・不安に駆られて宗教にすがる人達と、それを利用して儲けようとするがボロが出そうになり取り繕う主人公の姿は、ある種 喜劇だ。新興宗教の裏側はどこもこんな感じなのかもしれない。

    おそらく、組織を大きくして儲けるためだけだったら、オ●ムや統●教会のように、まやかしの超能力で自分を超人として信者に見せたり、死後の世界の話を持ち出して脅して行動を強制させたりするのが、一番手っ取り早い方法なはずである。
    しかし、主人公の教祖は、いろんな問題に直面しても「オカルト」と「脅迫」は否定し続ける。
    なので、信者達は騙されててかわいそうなんだけど、嘘がばれそうになりながら綱渡りしている教祖たちを応援しながら小説を読み進めていくことができる。
    下巻はおそらく、積み上げてきたものが崩れて、組織が崩壊していく話だと思うが、どんなバッドエンドを迎えるのか楽しみに読みたい。

    ■この小説を読んで、宗教団体のリアルな事情が分かって興味深かった点

    1.宗教をビジネスとして捉える考え方
    主人公(教祖)は、「悩みの相談と精神の安定をサービスとして信者に提供し、その対価としてお布施を受け取る」ことをビジネスモデルとして捉え、当面の生活確保だけでなく、将来の事業拡大や社会貢献を考えて、彼らなりに真摯に取り組んでいく。特に、集会施設の家賃や、信者グッズをいかに低コストで仕入れて売るか、付近の住民にどうやって信用してもらうか、等に悩んだりする姿は、中小企業の社長となんら変わらないように感じた。

    2.宗教にハマる人たちの分類
    宗教ユーザには、2パターンあるらしい。
     (1)主婦・社会人 … 仕事や家庭でストレスにさらされ、精神の安定を得るために対価を払ってもいいと考えている大人
     (2)学生・ニート … 安定した日常生活を送っているが、対人関係のうまくできない「生きづらい系」の若者
    (1)から見たら(2)の若者はワガママを言って甘えているように見えるし、(2)からしたら(1)は口やかましい大人だ。実社会と同じく、両者が分かり合うことは簡単ではない。
    なるべくお互いが顔を合わさないようにする、というのが現実解であり、実際の宗教もそのような対策を取っているのではないかと思う。

  • いつだったかの"このミス"にランクインしてて気になってた本。宗教と聞いて食わず嫌いしていた。
    しかしもっと早く読めばよかった。宗教は宗教なんだけど、なんというか事業的な感じ。もっと言えば人間ドラマ? 昔だったら途中で辞めてたかもしれないが、今なら楽しめる一冊。ぐいぐい読める。宗教ってやっぱり金儲けなのか。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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