長女たち

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著者 : 篠田節子
  • 新潮社 (2014年2月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103133636

長女たちの感想・レビュー・書評

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  • 読み終わって、鳥肌が立っていた。

    だからと言って、長女に依存する親たちのこの物語が
    特殊なケースだとは思わない。

    年をとって、自分でできなくなり
    命まで自信がなくなってきたら、
    藁をもつかむ思いで、
    私だって何を言い出すか…自信がない。

    その相手が娘であって、娘が独身の長女であるから
    遠慮なく双方から言葉が打ち下ろされるんだと思う。

    『ミッション』の死生観。超高齢化社会に突き進む私たちの国。
    こうあるべきという形は陰と陽に滲みながらぼんやり分かれる。

    どこにも正解のない問題。
    物語を読んで、1日でも多く介護と真っ直ぐ向き合うために必要なものなんて、
    何もないんだと思い知った。

    何をすればいいかわからない時は、
    とにかく体力をつけておこう。

    仕事が多忙の時に読んだので…介護する長女たちに
    「そんな仕事、ちょろいじゃないの。」
    と鼻で笑われた一冊です。

  • <人生のピークを下ろうとしている「長女たち」3題>

    「家守娘」、「ミッション」、「ファーストレディ」の中編3編を収める。
    いずれも軽くない。

    「家守娘」は、レビー小体型認知症を発症した老母と暮らす40代の「出戻り娘」、直子の物語。5歳年下の妹は、資産家の息子と結婚して家を出ている。
    「ミッション」の主人公、頼子は、一度社会人になったものの、母ががんで闘病後に死亡したのをきっかけに、医学部に入り直して医師となる。さらには、アジア奥地の医療施設に身を投じていた恩師が客死したのに突き動かされるように、同じ地で働くことを志す。46歳。結婚して家庭を構える兄がいる。
    「ファーストレディ」の慧子は、開業医で地元の名士である父のファーストレディ役を務めている。家に引きこもりがちの母は、あるときから甘いものに極度に依存し始め、重い糖尿病に罹りつつも甘味を断つことができない。慧子は30代半ば。弟は国際結婚し、子供も設けている。

    主人公が長女で独身であるという以外、少しずつ毛色が違うので、いささか括りにくいが、それなりの年となり、しがらみもある中で暮らしている女たちの物語といえようか。
    もう1つ、共通点を挙げれば、いずれの物語も医療が一つのキーポイントになっている。
    「家守娘」・「ファーストレディ」の場合は、親自身が病気である。認知症・糖尿病は、いずれも患者が多い疾患であり、高齢化や栄養状態のよさが背景にある、現代ならではの病気とも言える。
    「ミッション」の頼子の両親はすでに亡くなっているが、頼子自身が医師であり、医療スタッフとして、外国に赴いている。

    全般に、日常に忍び込む、冷ややかな恐怖がうまく取り入れられていると思う。著者のベースはホラー作家なのではないか、と端々に感じさせる。「家守娘」に描かれる、知らぬうちに近づき、親しげに入り込んでいる”狂気”。「ミッション」のシャーマンに誘発され、頼子が見る幻想。「ファーストレディ」のそれぞれの思惑の方向性のずれ。
    怖い話なのだけれども読ませてしまう、という著者の力量にも感じ入る。

    「家守娘」も「ファーストレディ」も、家族の物語である。どちらの主人公も母を重いと思いつつも、「え、そこまでするのか」と思うほど母に尽くす。このあたりは、読者自身の母との関係で、読み方・捉え方もさまざまな部分なのだろうが、私には少し行きすぎに見えた。一卵性母娘的な関係に共感する人と違和感を覚える人に分かれそうな設定ではある。

    作品群中で個人的に一番印象的だったのは、「ミッション」である。
    これはある意味、現代医学と民間療法のせめぎ合いの話なのだが、個々の患者が生きる上での「物語性」というものについても考えさせられる。健康に悪い食事をとり続けたために生活習慣病になって死んだと言われるよりも、誰々の霊に導かれて安らかにあの世に旅立ったと言われる方が、納得できる人がいるのだとしたら、他人がそれを否定することに何の意味があるのか。
    例えば、5年後に死亡する確率を数値で語られるより、死ぬ直前まで懸命に働き、ぱたりと死ぬ方が悪いとなぜ言えるのか。例えば、精霊を呼ぶ儀式よりも、病院でチューブにつながれている状態の方がよいとなぜ言えるのか。
    それは死生観にもつながり、また現代医療が抱える問題を抉り出すようでもある。
    主人公の頼子が、民間療法が提示する「別の視点」を受け入れないのも、なかなか象徴的である。
    現代医療が必ずしも患者の思いに添うものではないという点は、他の2作にも共通する部分がある。

    3編、いずれも軽くない。そしていずれも割り切れない。
    巧者の手による物語であるから、いずれも結末に幾分かの爽快感はある。そうではありながら、なお、先行きの不安も、不透明さも、やりきれなさも、ぬぐいきれない。
    「その先」が順調ではないことがわかる程度には世の中を見てきてしまっている。
    それがこの作品群の主人公たちが属する中高年の持つ澱や苦さだとするならば、その部分は誠にうまく書けている、というしかない。
    折々の幾分かの達成感を胸に、心は羽ばたきながら、しかし足には足枷を感じながら、それでも前に進む、いや、進まざるをえない、そんな年代であるのかもしれない。


    *この本、「女たちのジハード」のいわば後日談、というような評をどこかでちらっと目にして手に取ってみたのですが、思ったより苦かったかな・・・? 「女たち・・・」は細部を覚えていないのですが、爽快感があって好きな1冊でした。それはそれとして、今やジハードという言葉をタイトルに入れることは不可能なのではないかと思うと、いずれにしろ時が経ったということかもしれません。

    *ちょうど、ベトナムの助産師さんのドキュメンタリー(『ベトナム 山里の助産師』)を見ておりまして。地元民族の女性に助産師としての教育をし、彼女らは地域の風習と西洋医学のどちらも取り入れているというようなお話でした。「ミッション」と重ねつつ、興味深く視聴しました。

    *アジア奥地の物語といえば、『弥勒』や『ゴサインタン』もそうでしたね。自分ではレビューを書いていないのですが、いずれも重厚で読み応えがありました。篠田さんがこの地域を舞台にすると凄みがありますね。

  • 「家守娘」「ファーストレディ」つくづく母の重さに気が滅入ってしまった。
    とくに「家守娘」のように、周りの協力が得られず一人での介護を余儀なくされるケースはリアリティがあって、実話なのではないかと思ってしまったほど。
    これだけ母親に振り回されながらも、母親の病気によって難を逃れたり、一線を越えようとした相手の正体を見抜き親密になることを間一髪回避したり、宗教に入れ込んだところを連れ戻したのが母親だったり・・・
    100%の悪意ではなく、ほんの少しだけれど『母親』の部分を垣間みることができ、こうした描写が上手いなぁと思わせられた。

    「ミッション」はラストの方向性が想定外のものだったため、裏切られた。
    オカルトっぽい要素もあり、読みながら背筋がゾクゾクした。
    価値観が違うということは、こんなにも相容れないものなのだとよく分かった。

  • 中編三篇。

    ①姉妹。認知症母と長女の二人暮らし。
    ②長女感はやや低め。途上国の医療について。
    ③姉弟。糖尿母に腎臓をねだられた長女。

    うへぇ。あるある過ぎて辛い。

    家そのものがしがらみに思えない。けど割りきれない血の繋がりがホント厄介。ほどよい距離、お付き合いの仕方はあるはずなので、長女に限らず搾取子さんニゲテーって感じ。

  • 家に縛られ、親のいいように使われる長女の苦悩が描かれた三編。
    いずれも病気関連の話で、病人をケアするのはもちろん長女である。
    長女を自分の所有物のように扱い、厄介事をすべて押しつけ、それが当たり前と思う母。
    他の家族とは明らかに違う、母の自分への待遇に不満を募らせるも、
    その重い責任感から、見捨てることができない長女。
    家庭内という閉じられた空間で、ストレスの捌け口も無く、
    先の見えない看護(介護)の不安で我慢が限界を超えたとき、
    彼女が下した決断を責めることはできない。

    人生の断崖に追いつめられた者の苦しみが、切々と胸に迫りくる。
    冴え渡る筆致。さすがは篠田さん。
    最後の話で、家族から逃げると決めた主人公に安堵するとともに、
    カタルシスを感じた私は、やはり長女です。

  • 一時帰国中、図書館に予約して読むことができた本。
    「家守娘」、「ミッション」、「ファーストレディ」の3編。
    私自身、長女ということもあり、身につまされることも・・・

  • 他人事じゃない。弟妹いるけど、やっぱり介護となると
    私がやるしかないのかなぁと考えてる自分がいる。
    (こんな風に考えるのも長女のサガ?)。
    私の場合は老いた親が4人(実父母と義父母)。
    義父母に関しては、あちらの娘がしてくれる?
    ・・・そうだといいけど。すごく不安。

    薬や医療で長生きさせることが本当に幸せなこと
    なのかなぁと考えてしまいます。
    私は器としての自分の身体がダメになれば自分の役割が
    終わったということで、周囲に迷惑かけないように
    生を終わらせたい。
    だって自分の介護のために、娘や息子の時間や人生を
    拘束してしまうのは親子でも心苦しいもん。

  • 長女は実家の調整弁?スタート(生まれた時)から重いものを背負わされてる。両親が「大人」なら、たとえ長女であろうが一人っ子であろうが、こんな生き辛さを味わうことないと思うのだけど。
    逃げる選択をした最後のページに希望を感じました。

  • 現実に起こっている問題を扱い、お話としてもうまくまとまっている3編。特に認知症は、他人事と思えない人が多いのじゃないか。医療、介護、結婚… 誰にもふりかかる可能性のある問題ではある。しかし現代日本では、女性が悩まされるケースが圧倒的に多いと思う。特に、未婚のまま30代から40代にさしかかるときの不安定感がこの小説には表現されている。「誰かの妻」でなければ「誰かの娘」。そういう形でしか居場所を保てない、未だに家父長制をひきずる社会が見える。「ミッション」はメインテーマが少しずれるが、人類学的に興味深い。

  • ( ;´Д`)こ、怖いわ…リアリティあり過ぎて…こんなふうになりたくない、と心から思わせる一冊。どれもこれもが恐ろしい…。

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長女たちの作品紹介

痴呆が始まった母のせいで恋人と別れ、仕事も辞めた直美。父を孤独死させた悔恨から抜け出せない頼子。糖尿病の母に腎臓を差し出すべきか悩む慧子……当てにするための長女と、慈しむための他の兄妹。それでも長女は、親の呪縛から逃れられない。親の変容と介護に振り回される女たちの苦悩と、失われない希望を描く連作小説。

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