長女たち

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103133636

感想・レビュー・書評

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  • 短編が3つ、互いに関わりはない。

    最初は、認知症の母親を抱えて生活を奪われていく長女。愚かであったはずの次女との対比が痛々しい。損なわれ歪み憎しみながらも確かに在る親子愛が救い。

    二編め、医業に自らの生の意義を見いだした女性が、その灯火を見せてくれた先人の遺志を継ごうとネパールの貧村に赴く。そこで、自分の信じてきたそれとは全く違う死生観をつきつけられる。

    最終話、信頼される開業医である父を支えながら、糖尿病の母を介護する女性。どうしても自らの健康をかえりみようとしない母の心中が彼女にだけは見えてしまう。

    この本が迷わず手に取られるのは、「長女たち」というタイトルそのものが 女性に対する期待や価値観が時代とともに変化することにより生じたギャップを雄弁に語っているからであろう。
    こうあるべきと信じて歩んできた道が、たいして理解されず、評価もされず、気づくとひとりぼっちの母親達の絶望感。 無意識にひずみを埋めることを期待され、 母の孤独も そのように期待されていることも理解できてしまう長女の悲劇。
    自立とは、単に自分の食い扶持を自分でなんとかできる、ってことではないのですね。
    親には読ませられない、
    が、同時に、老いては子に従えと肝に銘ずるのだった。

  • 親の介護。
    後数十年したら現実的になる言葉がリアルにのしかかる。
    うちは兄弟の中で唯一の女だからもっと切実に感じた。

    母親って娘に甘えて何言ってもいいと勘違いしている節がある。明らかに男兄弟とは対応が違う。それはとても良く感じる。

    じゃあ後に私達もこんな関係になってしまうのかと思うと背筋が凍った。他人の家に放火する痴呆老人も全くいうことをきかない重度の糖尿病患者も、面倒見る自信がないですよ。

    下手なホラー見るよりもよっぽど怖かった。

  • 面白かった!
    自分も長女だからか、自分のこととして感じてしまうところもあったかな…
    近代の医療行為を介入させることにより延命は、色々なレベルで(例えば、癌)見解が別れるだろうなと考えさせられた。
    何が幸せかは、本人が決めること。

  • 篠田節子さんという作家を全く知らず、図書館返却本を借りる。表題作「長女たち」含む中編3編、周りから仲良し姉妹とも見られた母の痴呆のせいで、同僚の恋人と別れ、仕事も辞めた直美。以前嫁いだ家には娘がいるが大きくなるにつれ行き来が途絶え、出来の悪かった妹は自分の見合い相手とデキ婚で良家に収まり、痴呆介護に疲れた直美にもっと母を大事にしろと意見する始末。痴呆診察で診察を嫌がる母に手こずっている場面で、知り合った男と付き合いが始まると…。リアルな姉妹の葛藤・実母介護のやるせなさ・苦悩を見事に描く。

  • 篠原節子の新作。何かの雑誌で見て借りたやつ。ずっと桐野夏生だと思って読んでた。どおりで毒が少ないと思った。3つの短編集。私も長女なので、非常に気持ちは分かるというか。でも最後のお母さんに腎臓をあげようと思うとか、ここまで一体化するだろうか。正直、うちの親が糖尿病になったって知ったこっちゃない。最初の認知症の話も恐ろしい。ほんとその前にぽっくり逝ってほしい。そう思うと、2話目の秘境の地では突然死が良しとされる、というのには納得いく。そんな場所ではやっぱり医療なんて求められてないのかもしれない。生きながらえることが良しとされるなんて、一昔前の考えだろう。こないだも安楽死を選んだ人がニュースになってたけど、そんなのがニュースにならなくてすむような時代も来るのだろうか。

  • 痛ったい!
    ああどの話も、突き刺さってくる。
    でも読んでしまう。

    母親の娘との一体感というか、繋がってる感とか。
    なんで、長女なんだろ。
    なんで次女でなく、長女。
    長女の連鎖ってあるのか、な。
    たぶんあるよね。
    それはどこかでたちきれないのだろうか?

    真ん中の話。
    現代医療が本当に人類を幸福にしたのか?
    治療ってなんなんだろ。
    延命して、そこに魂は存在するのかな?

  • 親の介護の話。めっちゃ身につまされる。
    ヘルパーさんを拒否する母親、お前が嫁に行ったら俺はどうなるんだとのたまう父親、追い詰められて殺意を抱く娘・・・ほとんどホラーです。
    ヒマラヤの麓の村の人々の老いと医療の話にはちょっと考えさせられるものがあった。

  • 長女として読んだ。母を憎みたくなる気持ちと、同情し寂しくなる気持ちと、寄り添えない自分への罪悪感、叱責したくなる気持ち、どれも中途半端に混ざった感情描写がリアルだった 妙にリアルなので再読したくない

  • 長女たちの3話短編集。生まれた順番が違うだけで何となく長女としての役割や末っ子のポジションがあるのは感じる。年老いた母親の介護など長女だけに重くのしかかる重圧。兄弟姉妹との関係など苦しくなる。読後感も苦い。

  • 長女ならではのしがらみを描いた3篇。
    妻として、母として、家族の生活を支え続けてきた女が老いて最終的にもたれかかる先は、自分で産み育てた同性の子ども、何より可愛がるだけでなくある種の責任を分かち合ってきた長女なのだ、という非常に生々しすぎる話だった。
    身勝手な要求を押し付ける母親とそれに反発しながら見捨てられない娘のやり取りが続くため、読んでいて気が滅入ってしょうがなかった。親子といえど距離感が大事だよなあと思わされる。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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