花のレクイエム

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (105ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103142188

感想・レビュー・書評

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  • 花とつかの間の出会いの物語。儚げで美しい人と花はオーバーラップするものがあるけれど、人にはいつか最期が来るが、花は翌年もその先も延々と同じく咲く。それが切ない。

    (山茶花)城下町、自分の目の前で嫁いで行き、早くに亡くなった初恋の人。(アネモネ)慎ましく亡くなった叔母の、アネモネを一輪一輪雪の中に撒きながら踊った過去。(すみれ)「彼女の美しい清らかな身体からすみれが咲きますように」・・・あなたに合えたことだけは運が良かったと最後の手紙をくれた子。(ライラック)つかの間預かった難民の少女とのモーブ(薄紫)色の思い出。(クレマチス)森の奥のクレマチス(一番好きな花)を教えてくれた加奈。彼女の「軽やかな微笑み以上に私が好きなものは地上にはないのだから」(紫陽花)雨に濡れた花の記憶(自分のなのか母のなのか)と男の影。「紫陽花がはじめから心に見えていたように、すべてははじめから決まっているように思えた」(百合)情熱的なばかりではなく、「ひっそり高貴に匂う恋だってあるのだ」(向日葵)「お日様に憧れて、・・・結局、恋焦がれて、しおれてしまうんですものね」(まつむし草)お互いテニス好きで、自分以外とテニスをしてると嫉妬するほど好きな彼女との薄青い可憐な思い。(萩)実家の清楚華麗な花の前で女は愛する男のために殉じるほかないという思い込みは婚約者の言葉で違うものへと書き換えられる。(猿捕茨)思いがけない頃に無言来ては木の枝だけ差し出す。「やさしさと同時になぜか冷酷な残忍さも感じた」恋捕茨。(クリスマスローズ)養女になって離れ離れになった双子の妹との再開。美しい花弁は萼で、小さな蕊の塊=貧弱な茎のようなものが花。美しいものに守られた謙虚な人。

  • その季節にその花が咲いて誰かを思い出すって祈りのような呪いのような、とても哀しくて幸せな事だなと思った。

  • 絵と文章なので絵本にカテゴライズしたが,とても味わいがあり12ヶ月がそれぞれの花で彩られていて素敵だ.関係ないようで不思議と響き合った絵と物語.素晴らしい.特に「すみれ」が好きだ.

  • 2018.01.24 図書館

  • (1999.10.31読了)(1999.10.31購入)
    (「BOOK」データベースより)
    難民の少女が希望のしるしとしたライラック、放浪癖の兄が好きだった向日葵、明治維新で自害した女の前で咲き乱れていた萩…。山本容子の銅版画をカラーで収録した文学と絵画が深く共鳴し合う小説の宝石箱。

    著者 辻邦生 ツジ・クニオ
    1925年、東京生れ。
    東京大学仏文科卒業
    1957年から1961年までフランスに留学。
    1963年、長篇『廻廊にて』を上梓し、近代文学賞を受賞。
    1968年、『安土往還記』芸術選奨新人賞受賞。
    1972年、『背教者ユリアヌス』毎日芸術賞受賞。
    1995年、『西行花伝』谷崎潤一郎賞受賞。
    1999年7月29日 死去

  • 淡く仄かに匂い立つような珠玉の短編集と言っていいだろう。   -20101202

  • 花に秘められた登場人物たちの思いが一月ごとに語られた短編集。表面はとても静かでありながら、内側では狂おしいほどの情熱が描かれていて、一話一話は短いながらなかなか密度の濃い仕上がりになっている。死と別れはそのままの意味をもつこともあれば、新たな旅立ちを示すこともある。鎮魂歌でありながら、どことなく賛美歌の雰囲気も漂い、鮮やかな色彩と馥郁たる香りにあふれた品のある一冊だった。

  • 山本容子が好きで、花が好きで、本が好きな人、には、時折プレゼントする本です。ただし「レクイエム」だから病気お見舞いには不適当です。各月の花を思い起こすよすがとして、辻邦生の短い文章を楽しむものとして、そして1冊の完成された小振りな本として。

  • この本自体が芸術作品のような素敵なコラボレーション。
    贅沢な時間でした。

  • 花にまつわる小作品です。
    それぞれの思い出が、なんとも美しくロマンティック・・・。
    山本容子さんの銅版画が、想像に色をつけてくれて、それでまたうっとり。

    高1の春休みの図書館で、心を打たれた作品です。

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著者プロフィール

作家。1925年、東京生まれ。57年から61年までフランスに留学。63年、『廻廊にて』で近代文学賞を受賞。こののち、『安土往還記』『天草の雅歌』『背教者ユリアヌス』など、歴史小説をつぎつぎと発表。95年には『西行花伝』により谷崎潤一郎賞を受賞。人物の心情を清明な文体で描く長編を数多く著す一方で、『ある生涯の七つの場所』『楽興の時十二章』『十二の肖像画による十二の物語』など連作短編も得意とした。1999年没。

「2014年 『DVD&BOOK 愛蔵版 花のレクイエム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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