- Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103143222
作品紹介・あらすじ
なぜ全員が男女二人組でなくてはならないのか。川を二つ越えながら、日々を営んでいた。埼玉とたまプラーザ。この小説の舞台は狭いアパートだ。社会とつながりに切り込む"反恋愛小説"。
感想・レビュー・書評
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うん。やっぱり面白いなぁ。
ナオコーラさん。底なしの想像力を感じる。可能性の拡大。
人は、想像力のために生きてるのかもしれないなぁ。だから、本を読んで、新しい思考とか、表現とかに出会うと、拡がっていく感覚を味わえる。
うん。やっぱり、それが一番気持ちのいいことなのかも知れない。
だから、新しい出会いを求め続けるんだなぁ。
そこを存分に感じさせてくれる。
まだ途中です。
小説を書く。物語を紡ぎ出す。
もっぱら経験をもとに私小説的に書いたとて、「生み出す」っていいよなぁ。
生み出して生きていきたいなぁって言う前向きになれる作品を作るよなぁ。
読了。
20代前半の主人公「シオ」。すごく客観的で冷静で、独立的な女の人。主人公が大学から社会人になって小説家になるまでの物語。
主人公が紙川さんという半年年上で学年が1つ上の先輩と付き合い、別れるまでの物語。
私小説なのかなぁ。小説家を目指して書きながら社会人として働く主人公。公務員を目指すために距離を置くようになる2人。徐々に離れていく心。
一般的。常識的。社会通念。などなど。そういうことに意味ないよなぁって思わせてくれる小説。
最後の数ページの文章がとても良かった。
「私が歩けば、空気は避けてくれる。居場所ができる。
社会が温かいものだということを、みんな知らな過ぎる。自分を必要としてくれる場所で、自分の力を使うのは当たり前だ。人間は遺伝子の乗り物ではなく、文化の乗り物である。」
うーん。いいね。
あなたから目を逸らしたら、世界が見えた。なだらかな線でみんなと繋がっていく。
別れとは、とても切なく寂しい物だ。
でも、出会いからつながることで学び、癒された時間…
別れの絶望感。その先に……
必ず、それを経たことで見えるようになった世界がある。
ナオコーラさんみたいな、新しい思考、視点、感じ方を発見させてくれる女の人に惹かれるなぁ
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栞と紙川。ちょっとモテるタイプで適当っぽい紙川に対し、付き合うことに承諾はしたものの、当初は栞の熱はあまり感じない。やや引き気味に受け止めつつ、自身の夢である作家になるべく、こつこつ働き執筆に精を出す。
同じ78年生まれ、会社勤めをしながら書き上げた作品でデビューするなど栞は著者自身を投影したようなキャラクターである。
付き合い、時間や夢や思い出を共有して、半同棲もして。結婚を考え、すれ違って、別れて。半ば終わりが見えているのに紙川にお金を貸してあげる栞のきっぷの良さと強さが悲しい。そういう「強い」女はなかなか幸せになれないのだ。か弱く甘えてこそ、殿方は「俺がなんとかしてやらにゃ」と決心するのだろう。そんな分かりやすい、か弱さを表に容易く出せる女の方がよっぽど「強い」だろうに。
「カップル」や「夫婦」といった二人組になれなければ、どこか世間から取り残されたように感じること。今まさにその渦中にあり、二人組になるべく模索を続ける私には栞のような生き方は出来ないだろうが、それでも響く部分があった。真剣に恋愛しても結婚を選ばない人の思考回路が少し分かったような気もする。
分籍についても全く知らなかったので、(多分実際必要になることはないが)戸籍という、このよく分からないシステムに少し詳しくなれた。 -
話の、自分の人生の主人公にはどうしたらなれるのか?
話し手・シオちゃんはずっと「自分」を持っている。自己実現を最重要事項として生きている。でも夢を実現してもどこか虚ろで、ずっと寂しい。ロストジェネレーションって感じだ。
一見「ひとつの恋愛を経験して凛としていく女性の物語」みたい。だけど違うと思った。
この話の主人公はシオちゃんではなく紙川さんだ、と最初の方で述べていた。
紙川さんはひとりよがりでぐるぐるしていて、情けないし、将来への道を選ぶのもへたくそだ。でも、なんだかんだ言って自分の人生を生きている感じがする。
話し手シオちゃんは、自分の頭でしっかり考えて未来を選択して切り開いていく。でも自分は主人公じゃないと思ってる。2人の違いは何なんだろう。
軸を他に置いているかどうかだろうか?と思ったけど違う。紙川さんは他人の評価をかなり気にしてる。シオちゃんは他人のリアクションが自分の内側に入ってこないようにガードしてる。なのになぜか主人公なのは紙川さんだ。
2人の恋愛は、確かなあたたかさはあれど、相手のことがちゃんと見えていなくて表面を撫でているだけ。2人とも同じだ。馬鹿だから見えない人と、見えるけど拒否してしまってる人の違いだろうか。
あるいは、単純に自分が物語の主人公と思って生きているかどうかなのかな。
シオちゃんは主人公になりたくなさそうだけど、私はやっぱり なったっていいと思う。せっかくだし。
紙川さんみたいに自分で作った世界から出ないでその枠の中から人に声をかけて生きるのは嫌だけど、シオちゃんみたいに外の世界と一定の距離を保って表情少なく生きるのは、もっと嫌だ。
傷つこうか見苦しかろうが迷惑かけようが「人と近付こうとする」ほうが豊かだってことなのかな。う〜〜ん難しい。
それか もしかして紙川さんの方も 自分を主人公と思ってないのかもしれない。誰も主人公になれない世代なのかもしれない。
若者はさみしいな。みんなさみしいのかな。みんなロストしてんのか。そうだとしたらさみしいことだ。 -
私が考えたことをもののずばり書いてくれている。
10年以上前にこういうことを書いてくれていたのが、救いになる。
紙川さんと私の対話には、特にうなずくものが多かった。
だが私は紙川さんが思うほど、彼から影響を受けていない。私には紙川さんと出会う前の20年ほどの時間があって、その中で傷ついたり、苦しんだり、本を読んだりして、自分自身で自分のセンスを鍛え、自分という人間を作り上げてきたのだ。
この文章は特に心を打たれた。
2人だけの世界ではなく、社会にやさしく包まれながら、たゆたうように生きていく。
そういう人たちが増えればいいと思った。 -
76:主人公の栞が小説家志望で、働きながら新人賞に応募している、という姿を何となく自分に重ねてしまったせいか、ものすごく共感してどっぷりはまりこんで、図書館の本なのにも関わらず付箋を貼ったりラインを引いたりしたくなりました。何気ないことばのひとつひとつが引っかかり、刺さる。「二人組」でいることから距離を置くことで見える、ゆるやかな世界とのつながり、世界の広がり。描写がとても心地よくて、事件らしい事件はほとんど何も起こらないのに、ぐらぐらと揺すぶられる感覚が不思議で、でもはまっちゃう。お勧めです!
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おもしろい話の書き方だなあと思った。エッセイと、創作の間にあるような話。主人公が考えていることの輪郭がはっきりとしていて、ほんとうにこういうふうに考えてるんだなあと思える。
自分の社会的役割とかつながりたいという欲求とか生きることによって派生する原因不明の窮屈な感じとか、すべてにおいて常日頃考えている事柄ばかりでうわあってなった。けど、こうやって真正面に立ってみたいとも思った。というか、立っているわけじゃなくて立たされているってのもあるんだろうけど。
自分の世界があればいいやと思うひとには、読後ちょっと心の中に小石を投げ込まれた気分になるかもしれない。
一生を水の中で過ごすのもいいかもしれない、けれど、たまには外に出てみればいい。たぶん、自分が思ってる以上に世界はやさしいものかもしれない。
(173P) -
メンタル的に強者な女子・栞の目線から
語られるあれこれ。
一人で立って、社会とゆるく繋がるような
そんな精神状態、強すぎる。
そこに共感は出来なかったけど、そこまで
自分を認められたら良いよなぁと思った。
「家族」のこと、「男女」のこと…
普段自分が考えてるようなことを栞も考えていて
共感する文が多かった。
人間が乗り物だとしたら
遺伝子の乗り物?
文化の乗り物?
自分はなんと答えるだろう。 -
1ページ読み進めるごとに言葉の重みをバツンバツン感じた。文章が奏でるエネルギーが凄い。
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性別とか関係性とかじゃなくて、人と人として向かい合うこと
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この著者の本は、ただの恋愛じゃないのがいいんだよね〜。世界を感じている主人公がかっこいいし、その中でもやりたいこととやれないことがあって、葛藤する姿もいい。カップルという二人組が既定路線で、そこにどう到達するかにみんなあくせくしてるけど、そうじゃないよ、と軽やかに提示してくれる本。心が軽くなる。
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「社会とは一体なんであろうか」
そんな一文から始まる物語は、少しとっつきにくさを感じるかもしれませんが、20代女子のリアルな悩みや社会に対する疑問が描かれていて、主人公「栞」のころころ変わる言動にひき込まれていきます。
大学で知り合った紙川さんとの恋愛も描かれていますが、どこか一歩引いた栞の視点で描かれていて、恋愛に重きをおいていない栞の心情がうかがえます。
常に何か(社会情勢、仕事、恋愛、親etc・・)を考えている栞。
周りに流されず、自分の意思を意地でも貫こうとする栞の姿は、とても生きにくいのではないか、と感じてしまいます。まるで栞の頭の中を覗き込んでいるような小説です。
図書館スタッフ(学園前):トゥーティッキ
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帝塚山大学図書館OPAC
https://lib.tezukayama-u.ac.jp/opac/volume/566882 -
さいたまとたまプラーザに住むゆるやかな男女の関係を中心にしながら、結婚や出産、性別、戸籍など、現代社会へのさまざまな疑問が主人公の思いにのせてつづられている。
主人公は私より少し上のロスジェネ世代。
その世代だからこそ見てきたものや感じるものがあるのだろう。
「二人組」にならず、社会と人と、ゆるい糸で繋がっていたい、という価値観は、実は誰もがほんとうは持っている思いなのではないか。
◽︎
日々が過ぎていくのはわりと奇跡
恋人というのは運命の結びつきというようなものでは決してなく、お互いがそれぞれに生きているだけで、ただ寄り添うということに過ぎないのだ -
5年前に読んだ作品。
何が起こるわけでもないが、この作家の凄さを実感した。
とても大好きな作品。
また本棚から引っ張り出してきて読もうと思う。 -
2016年7月25日読了。
ぐさっとくる~。すごいな~。これはすごいな~!! -
おもしろかった。彼女の本もっと読みたい。
何度も素敵なフレーズがあったのに、最近ふせんを持ち歩いていなく、
引用をひとつしか登録できずに残念。
紙川と栞のふたりだけの会話がへんてこで、おもしろかった。 -
あなたから目を逸らしたら、世界が見えた。
依存から放たれていく様子が清々しかった。 -
ナオコーラさんの世界観、相変わらず分かるようで分からない。
他作品に比べて結構清々しい読後感を覚える。
とりあえずナオコーラ作品のヒロインとは絶対合わないだろうなあ...と毎度慄くこと必至。 -
坦々と。
考えたくないことも突きつけられて辛くなる。
ぐちゃ、
ぐちゃ。
考える。
ナオコーラの熱い主張。
今な小説と思う。
他の年代の人が読んだらどんなことを思うのだろう。もしかしたら、意味がわからないかもしれない。
彼女の小説の、会話文がすき。
栞は、彼だし私だし、著者だった。
きっと、他の誰かでもある。 -
社会って何?という疑問から始まる、小説家志望のしおちゃんと紙川さんの恋愛、社会との関係のお話。
なんか山崎ナオコーラさんの文書って読みやすい。するする読める。
2人ぼっちじゃなくみんなで生きている、とか、二人が好きあっていたのではなく二人が世界から好かれていただけ、とか、なんか、ああ、そうだよね、と思いながら読んだ。