ひっ

著者 :
  • 新潮社
3.23
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本棚登録 : 148
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103178224

作品紹介・あらすじ

ヤクザの見習い、フィリピン逃亡、クラブのボーイ、売れっ子作曲家を経て、半島でひとり隠棲する伯父の「ひっさん」は、身内で唯一の大人の男だった。おれは社会に出たものの、万年正月のような家庭内乞食に墜ち、あぶく銭を手に入れ、インドネパールを彷徨う。が、悟りも開けず帰国したら…。自由と自堕落、人の生き死にをとことん描く、天衣無縫の傑作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 一気に読了。どうってことのないストーリーだがところどころでクスッとしてしまう非日常。

  • 2018/02/10

  • 作曲家のひっさん。甥っ子の主人公との投げっぱなしにみせながら、優しい気持ちが感じられる本。特に甥っ子のことを考えてるわけではないけど、ギターを70万で売ったことに怒りながらも、旅に使ったことは良しとしてる。いいおじさんやな。

  • 芥川賞候補に3度くらいなっている作家戌井昭人氏が2012年に発表した作品「ひっ」を読了。

     暑さ故に軽い作品をと思いページ数の少ない本作品を選んだのだがページ数は少ないが以外にどぎつい物語だった。自由にに生きる男の徹底的なテキトー具合を読者に突きつけてくるのでそこのところを受け入れられるかどうかで楽しめるかどうかが決まる本だろう。

     タイトルの「ひっ」は彼の叔父のひっさんからとったものだ。叔父は親戚の中では突出した自由人だった男でやくざの見習いから、クラブのボーイ、クラブでひょっとしたことから作曲家へなり財をなすが何を思ったか最後には三浦半島の奥地で隠遁生活を始めてしまう。

     主人公はそんな自由人の叔父のギターを売りさばいたあぶく銭でアジア各地を放浪し、お金が尽き帰ってきたら叔父は既にあの世に行っていたが、叔父と近しい人たちとのドタバタが待っていたいうのが大筋だ。叔父の適当人生をなぞりながらも自分も徹底的に不埒な生活を続けていく主人公の様子に笑いを誘われつつあきれてもしまうのだが、テンポの良い文章に助けられ読み進めてしまったというのが正直なところだ。

     主人公のように自由に生きるのは実は難しい。今の歳になってもなかなか自由になれない自分と比較してこの主人公や叔父の生き方はとてもとても羨ましくもあるのだがその領域に足を踏み込める日々は残念ながらすぐには来そうにもない。いや来ないかもしれない。

     読後には数年後にやってくるだろう引退の日々の過ごし方を考えてしまった。もっと考えなきゃなあ。

     そんな人の生き死に、自由と自堕落、仲間との時間といったものを考えさせてくれるハチャメチャ小説を読むBGMとして選んだのはBill Evansの"How my heart sings"。
    https://www.youtube.com/watch?v=3ButnM9OsyM
    たまに引っ張りだして聞いてしまうアルバムだ。”Moon Beams”より甘くなくていい。

  • 「テキトーに生きろ」という破天荒な伯父の教えを受けた俺は家庭内乞食に墜ち、人生どん詰まりに…。自由と自堕落、人の生き死にをとことん描く、天衣無縫の長篇小説。

    12年上期芥川賞候補作。「すっぽん心中」と同じくどうしようもなく情けない男が主人公。それなのに物語のテンポの良さに惹かれてつい読み進めてしまう。不思議な作品。
    (B)

  • 格言めいたことを言ってるけどわけわかんない
    ひっさんや気球さんたち。
    戌井さんの書く人物の魅力。
    苦しい時は清く真直ぐな人から正しい言葉をかけられても
    何も響いてこなくて、
    彼らのようなテキトーさの方がグッときたりする。
    (ト)

  •  初めて著者の小説を読んだが、なんかインスパイアドバイ町田康みたいな感じで、もう日本のスモールな世界だけでしか通用しないダメ男の物語なんかうんざりだな、という気がした。

  • 鉄割アルバトロスケットのアクトを2006年くらいに何度か観てすごくおもしろかったけどそれっきりで、気がついたら戌井さんが3度も芥川賞候補になっていたと知り特に期待もせずに読んでみた。テンポはいいしさらっと進むけどフックも多くてドキドキしながらあっというまに読了。某バンドから名付けたであろう「むらむら帝国」など声を出して爆笑する箇所が何度もあり。

  • 感性の干からびを恐れるあまり遊びまわる作曲家のひっさん。波乱万丈、波ありすぎの人生が矢鱈めったらおかしい。「毎日しめじ食ってたらポロンとちんぼこが落ちて、代わりにしめじが生えてくるんじゃねえのか」 野卑で下世話なかけあいも他者を思いやる愛情に満ちており、思わず泣き笑いを誘う。人間も小さくなったり大きくなったり萎んだり万物は常に変化し続ける。ミミズでさえ常に前進し時はテレポートさえする。何だか何故か積極前向きになれる不思議なテイストがある。

  • よく分からない叔父がテキトーに生き、なんか成功し、よく分からない男に刺されて引退し、よく分からないまま隠居生活に。
    甥がよく分からないままギターを売ってそのまま海外に旅に出て、1年後なんとなく帰ってきたら叔父が死んでいた。
    そのまま遺品整理を叔父の友人たちとし、よく分からない裸の気球おじさんと会い、よく分からないまま終わった。
    -なんとなく引きこまれて読み終わったけど、なぜか芥川賞候補の作品らしい。読み終わってから気づいた。
    こういうのは意味不明さと性がなければいけないんだろうか。偉い人や文豪の考える事はよく分からない。
    ところどころ聞き覚えのある登場人物がいるのは気のせいだろうか。

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著者プロフィール

1971年東京都生まれ。劇作家・小説家。97年「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げ。2009年小説『まずいスープ』で第141回芥川龍之介賞候補、14年『すっぽん心中』で第40回川端康成文学賞受賞、16年『のろい男 俳優・亀岡拓次』で第38回野間文芸新人賞受賞。

「2022年 『沓が行く。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

戌井昭人の作品

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