本にだって雄と雌があります

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著者 : 小田雅久仁
  • 新潮社 (2012年10月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103197225

本にだって雄と雌がありますの感想・レビュー・書評

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  • 実は、本にも雄と雌があって、
    相性のいい本を隣同士に並べると、跡継ぎをこしらえる。
    だからして、本がいつのまにか増えるのは、致し方ないことなのだ!

    家の床が抜けたら、ぜったいママのせい!と断言される私には
    なんと魅力的かつ便利な言い訳でしょう♪
    (この文章を書いているところを見られてしまったので、娘には試せないのが残念。。。)

    でも、この本の中では、これは言い訳でもなんでもなくて
    主人公の深井博は、遥か昔の小学生の頃、エンデの『はてしない物語』と
    サルトルの『嘔吐・壁』を、禁を破って並べてしまったばかりに
    『はてしなく壁に嘔吐する物語』という幻書を誕生させてしまうのです。
    幻書が背表紙を上にしてぱたぱたと飛び回るのをつかまえて
    真っ白な象牙から掘り出した蔵書印を捺して従わせる。。。
    本好きならば、ひそかに夢見てしまうステキ体験ですよね。

    幻書と深井一族の不思議な繋がりを息子の恵太郎に伝えるため
    博がワープロでこそこそ打った文章、という体裁をとっているこの物語。
    「自叙伝を書こう!」講座に持っていったら必ずや、「一文が長すぎる!」
    と添削されそうにだらだらと長くて、しかも段落もなかなか変わらない。
    ついてこれるヤツだけついてくるがいい☆と言わんばかりの雰囲気が
    楽しそうに悪ノリして書いているときの筒井康隆さんや森見登美彦さんを思わせます。

    歯切れのいい、簡潔な文章を好む方には、深井一族の歴史を延々と描いた
    序盤、中盤はかなり苦痛に感じられるかもしれませんが
    そのあとには、本と家族への愛情が大海原の波のように打ち寄せる
    感動的なラストシーンが待ち受けています。

    本が引き寄せる過去。本が予言する未来。
    未来を綴った本に巡り会ったとき、
    この本の中のヒトラーのように、世界を思うがままに操ろうと野望を抱くのか、
    それとも家族のささやかな幸せが続くよう、節度をもって対処するのか。
    本読みの品性が問われるところでしょうか。
    本への敬意と愛情が、たくさんの幻書となって大空にはばたいていくような
    摩訶不思議な1冊です。

  • 横丁のご隠居の昔話を延々と聴かされる気分で読み続けております。
    「ええ、ええ聴いておりますとも」
    姿勢を正して相づちを打ち、時々愛想笑いなんぞを浮かべながら、
    「とんでもない長話につきあわされるぞ」
    しかし年寄りの話はちゃんと聴くもんですな。
    蔵書家の与太話かと思っておりましたら、30ページ辺りでナチスの『予言局』なんてキーワードが。
    ちょっと面白くなってきたぞ、なんて思っておりますとまた昔話。
    結局じっと我慢の子。
    このご隠居のはなしにオチはあるのか、ええい半分までつきあったんだからこうなりゃ一蓮托生だ。槍でも鉄砲でも持ってきやがれってんだ。なんて大口叩いたら、アルファケンタウリの方角から超弩級の隕石が如きファンタジーが攻めて参りました。
    とんでもない奇書でございます。
    読了後、もしやと思い扉を見返すと、やはりそこには『深井與次郎』の蔵書印が押してございました。

    こんなふざけ半分の紹介文を書きたくなるような、いや書かざるを得ないような、なんとも説明のし難い物語。
    百人が百人、面白いと言う本ではないと思う。
    けれども僕はいつの間にか、この本の魔力に取り憑かれていた。

    本の雄と雌が睦み合って子を産む。
    サルトルの『嘔吐・壁』とエンデの『はてしない物語』から『はてしなく壁に嘔吐する物語』が産まれるという展開も、読み終えてみればギャグではなく、とても示唆的な本のチョイスだったと思う。

    講談のような漫才のような昭和の大衆小説のようでありながら、SF・ファンタジーのような時空を縦横無尽に飛び越える、まさに「深井家サーガ」とでも呼ぶべき物語。
    そしてラストのカタルシス。
    いろんな物が渾然一体となった文体もいまならば分かる。
    (こうやって感想を書いていて「あっ、そういうことか」と気づくことがたくさんある。)
    再読するとまた違う景色が見えてきそうだ。

  • 本棚に本を並べていたら間に本が増えていた―。
    大阪の四代にわたるある一族の、幻書にまつわる荒唐無稽なファンタジー。

    本にだって雄と雌があり、交尾をすれば相性のいい本の間には子どもが生まれる…なんていう人を喰った与太話が、クセがある文体で長々と饒舌に語られ、もうおなかいっぱい!というほどに楽しめました。

    中盤までは主人公の一族のエピソードが四代にまたがって延々と語られ、ちょっとダレてしまうのですが、後半は怒涛の圧倒的展開となり、ここに至ってやっと前半の無駄だと思った部分が生きてきます。

    私たちは何のために生まれ、どこへ行こうとしているのか。
    一冊の本のように私たちの人生もまた常に誰かの物語の続きであり、それは円環の中で生き続け、やがては永遠へとつながっていく。
    そんな深い思索へと読者をいざなっていきます。

    そしてこの本も、数々の名作の中から生まれてきた――生まれるべくして生まれてきた本なのだと気づかされるのです。

    著者の書物への愛情が随所に感じられる、本好きにとってはたまらなく愛おしい物語だと思いました。

  • 在りもしない書物の引用で物語をぐいぐい推し進めていく構成はまるで『ドグラ・マグラ』のようで、物語中の「読む者」と「読まれる者」がいつしか入れ替わり、ループして、それ自身が果てしなく物語を紡いでいくという展開は『はてしない物語』のようで、祖父から自分を挟んで息子へと至る四代の壮大な歴史物語は、一本の大河ドラマのようだった。本にだって雄と雌があって、従って夜な夜な本棚から這い出して勝手に子供を作ってしまうこともあるのだ、という荒唐無稽な書き出しに、小難しい衒学的な文章、そして人物の喋りが大阪弁、とくれば、まあ森見登美彦とか万城目学ふうなマジックレアリズムなのかな、という印象だったのだけれど、そんな枠組みには収まらない、むしろそんなことどうでもよくなる小説でした。これは「新・日本3代奇書」に数え上げてもいいんじゃないかと思うスケールだ。ほかの2つが何かは知らないけれど。

    死んだ人が本になるのだとしたら、それが読み継がれ、語り継がれ、新たな本の一部になるのだとしたら、それほど幸せな死はないだろう。この世に文字があって、言葉があって、本があって良かった。本好きで良かった。
    書店員という自分の仕事に誇りが持てた一冊だった。

  • 最初はなかなか進まなかったけど、中盤からどんどん面白くなった!
    読み終えた今、たまらずニヤニヤしてしまう。

    「幻書」にまつわる深井一族の話を息子に語る語り手、土井博。
    口調はちょっと森見登美彦とか町田康のようでいて(関西弁だからかも)、そこまでアクが強くはないけどダジャレは次々放り込む、というような雰囲気。最初は「しつこいわー」と思っていたがいつのまにかクセになります。

    小ネタがあちこちにちりばめられていて、電車で読むにはちと危険です。
    『はてしない物語』『嘔吐・壁』のあいだにできたこどもが
    『はてしなく壁に嘔吐する物語』!いやー読みたくない(笑)

    「本好きな夢のあるおじいさんがいたんだよ」というようなファンタジーで終わるのかと思いきや、
    途中から家族の愛や戦争の惨さまでおりまぜて、意外に感動が押し寄せます。ファンタジーなのにいろいろ腑に落ちる。
    本好きにはたまらない本。
    最後はいろんな伏線が回収される感じが心地良い。

    表紙をじっくり眺めてもおもしろいし、中表紙にも意味があります。
    なんて本!
    こいつ本当に飛ぶんじゃないか…

  • 最初の数ページで、なんだか登美彦氏の小説を思い出しました。
    ムズカシイ言葉やヘンテコな理論をこねくりまわす感じ・・・。
    著者紹介を見たら、この著者も日本ファンタジーノベル大賞を受賞されているとのことで、なんとなく納得。

    本にも実は雄と雌があり、そのあいだに子供だって生まれるのだ・・・という奇想天外な話から始まる本書。
    生まれた本は「幻書」と呼ばれ、ページを羽ばたかせて宙を舞う・・・。
    そんな幻書の蒐集家である祖父を持つ語り手が、息子に宛てた手記が本書です。
    祖父・深井與次郎の人生を語りつつ、深井家の周囲で起こった幻書にまつわる不思議な出来事の数々が綴られています。

    ばかばかしいなぁと思ってしまったり、阿呆だなぁと思ってしまうところが多々あるのですが、私はこんな感じが結構好きなのですw
    かの大英博物館長・アントニオ・パニッツィが白い象に乗ってエセ関西弁を駆使したり・・・。
    やや冗長にも感じましたが、楽しく読みました。

  • 本と本から生まれた空飛ぶ本「幻書」と、手記の書き手の祖父や家族を巡るファンタジー。
    本当に面白かった!!読み終わって本を閉じる瞬間、あぁよい本だったぁとため息出ちゃうくらい、とてもステキな本だった。ハードカバーで買おうと決心。

    文章をこねてこねてこねくりまわしているうちに話が逸れていって気が付いたら川向う!といった印象の文章は、語彙に富みユーモアに溢れているけども、人によって好き嫌いがあるのは確か。私はどちらかと言えばかなり好きなのに、最初はなかなか苦戦した。後半尻上がりに面白くなって、ファンタジーで、家族愛でほっこりして、冒頭で文体に苦しめられていたことをすっかり忘れてしまっていた。

    世の中には夥しい量の面白い本があって、人間の短い寿命ではそれらのごくごくごく一部しか手に取ることができないことを、日々悲しく思う私は、ラディナヘラ幻想図書館の司書に選ばれたらなんて楽しいんだろう!と素直に憧れを抱いてしまった。私もいつかラディナヘラの司書になるべく、毎日小賢しく本の並べ替えに勤しみたい。

    本をファンタジーと家族を愛する人に、ぜひおすすめしたい一冊。

    --

    旧家の書斎に響く奇妙な羽音。そこでは本たちが「結婚」していた! 深井家には禁忌(タブー)があった。本棚の本の位置を決して変えてはいけない。九歳の少年が何気なくその掟を破ったとき、書物と書物とが交わって、新しい書物が生まれてしまった──! 昭和の大阪で起こった幸福な奇跡を皮切りに、明治から現代、そして未来へ続く父子四代の悲劇&喜劇を饒舌に語りたおすマジックリアリズム長編。

  • 1ページ当たりの文字数の多さと、ホラまみれボケまみれツッコミまみれの関西感?まるだしの文章に、読み始めはかなり苦労しました。なかなかページが進まない。

    そもそも、本文始まって2ページ目の「チツテト」の意味が分かるまで、不覚にも数分を要してしまった(汗)こりゃ、進まないのも当然だね。

    小説は、「私」が、「私の息子」宛てに書いた 「私の祖父」の一代記の体裁であるが、更に数代前の世代から現在までを行きつ戻りつし、親類縁者のエピソードも詳述されるので、中盤までは 面白いんだけど とりとめなくてごちゃごちゃした印象。

    だが、祖父・深井與次郎がボルネオに出征したあたりから、今までバラバラだったそれぞれのエピソードが、パズルのようにぴたりと組み合わさって、想像もしなかった巨大な世界が眼前に現れてくる。

    「幻書」という、摩訶不思議な存在をめぐる、ありえないファンタジーであるにもかかわらず、読後妙に納得できるのは、そんな「ありえなさ」を超越した夫婦愛、家族愛が描かれているから。かな?

    命のつながり、それ以上に不思議なものはない、ということかもしれません。

    とにかく、本が好きでよかった!!

    これが一番の感想です^^




     

  • 本を題材にした森見登見彦的なファンタジーというよりも
    深井一族の話である事を理解し、
    内容のテンポのわりに回りくどい文章を乗り越えられれば
    面白くてほっこりできる本だと思う。
    仕掛けという程ではないかもしれないけど、最後まで読むとニヤリとして
    また初めのページに戻りたくなる。

    何より登場人物たちと作者の本に対する愛情を感じられるのが良い。
    自分の本棚の本を入れ替えたら「幻書」が生まれるかなー?とか
    自分もラディナヘラ幻想図書館の司書になりたいなーとか
    本好きにとっては妄想が広がるステキなお話。

  • 本好きにはたまらない、というより、Sci-Fiではない「Sukoshi Fushigi」が好きな人には良いんじゃないでしょうか。本好きホイホイは、冒頭だけ。中身は本好きものというより、ファンタジックな家族もの。
    かけねなしに面白いとは思えなかったけれど、なんだか良い話だったので読後感はなかなか良いです。なんだろう、登場人物の誰一人、リアル感というものがないのが却ってすがすがしい気がする。

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本にだって雄と雌がありますの作品紹介

大阪の旧家で今日も起こる幸せな奇跡。本だらけの祖父母の家には禁忌があった。書物の位置を決して変えてはいけない。ある蒸し暑い夜、九歳の少年がその掟を破ると書物と書物がばさばさと交わり、見たこともない本が現れた!本と本が結婚して、新しい本が生まれる!?血脈と蔵書と愛にあふれた世界的ご近所ファンタジー。

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