本にだって雄と雌があります

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著者 : 小田雅久仁
  • 新潮社 (2012年10月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103197225

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本にだって雄と雌がありますの感想・レビュー・書評

  • 実は、本にも雄と雌があって、
    相性のいい本を隣同士に並べると、跡継ぎをこしらえる。
    だからして、本がいつのまにか増えるのは、致し方ないことなのだ!

    家の床が抜けたら、ぜったいママのせい!と断言される私には
    なんと魅力的かつ便利な言い訳でしょう♪
    (この文章を書いているところを見られてしまったので、娘には試せないのが残念。。。)

    でも、この本の中では、これは言い訳でもなんでもなくて
    主人公の深井博は、遥か昔の小学生の頃、エンデの『はてしない物語』と
    サルトルの『嘔吐・壁』を、禁を破って並べてしまったばかりに
    『はてしなく壁に嘔吐する物語』という幻書を誕生させてしまうのです。
    幻書が背表紙を上にしてぱたぱたと飛び回るのをつかまえて
    真っ白な象牙から掘り出した蔵書印を捺して従わせる。。。
    本好きならば、ひそかに夢見てしまうステキ体験ですよね。

    幻書と深井一族の不思議な繋がりを息子の恵太郎に伝えるため
    博がワープロでこそこそ打った文章、という体裁をとっているこの物語。
    「自叙伝を書こう!」講座に持っていったら必ずや、「一文が長すぎる!」
    と添削されそうにだらだらと長くて、しかも段落もなかなか変わらない。
    ついてこれるヤツだけついてくるがいい☆と言わんばかりの雰囲気が
    楽しそうに悪ノリして書いているときの筒井康隆さんや森見登美彦さんを思わせます。

    歯切れのいい、簡潔な文章を好む方には、深井一族の歴史を延々と描いた
    序盤、中盤はかなり苦痛に感じられるかもしれませんが
    そのあとには、本と家族への愛情が大海原の波のように打ち寄せる
    感動的なラストシーンが待ち受けています。

    本が引き寄せる過去。本が予言する未来。
    未来を綴った本に巡り会ったとき、
    この本の中のヒトラーのように、世界を思うがままに操ろうと野望を抱くのか、
    それとも家族のささやかな幸せが続くよう、節度をもって対処するのか。
    本読みの品性が問われるところでしょうか。
    本への敬意と愛情が、たくさんの幻書となって大空にはばたいていくような
    摩訶不思議な1冊です。

  • 横丁のご隠居の昔話を延々と聴かされる気分で読み続けております。
    「ええ、ええ聴いておりますとも」
    姿勢を正して相づちを打ち、時々愛想笑いなんぞを浮かべながら、
    「とんでもない長話につきあわされるぞ」
    しかし年寄りの話はちゃんと聴くもんですな。
    蔵書家の与太話かと思っておりましたら、30ページ辺りでナチスの『予言局』なんてキーワードが。
    ちょっと面白くなってきたぞ、なんて思っておりますとまた昔話。
    結局じっと我慢の子。
    このご隠居のはなしにオチはあるのか、ええい半分までつきあったんだからこうなりゃ一蓮托生だ。槍でも鉄砲でも持ってきやがれってんだ。なんて大口叩いたら、アルファケンタウリの方角から超弩級の隕石が如きファンタジーが攻めて参りました。
    とんでもない奇書でございます。
    読了後、もしやと思い扉を見返すと、やはりそこには『深井與次郎』の蔵書印が押してございました。

    こんなふざけ半分の紹介文を書きたくなるような、いや書かざるを得ないような、なんとも説明のし難い物語。
    百人が百人、面白いと言う本ではないと思う。
    けれども僕はいつの間にか、この本の魔力に取り憑かれていた。

    本の雄と雌が睦み合って子を産む。
    サルトルの『嘔吐・壁』とエンデの『はてしない物語』から『はてしなく壁に嘔吐する物語』が産まれるという展開も、読み終えてみればギャグではなく、とても示唆的な本のチョイスだったと思う。

    講談のような漫才のような昭和の大衆小説のようでありながら、SF・ファンタジーのような時空を縦横無尽に飛び越える、まさに「深井家サーガ」とでも呼ぶべき物語。
    そしてラストのカタルシス。
    いろんな物が渾然一体となった文体もいまならば分かる。
    (こうやって感想を書いていて「あっ、そういうことか」と気づくことがたくさんある。)
    再読するとまた違う景色が見えてきそうだ。

  • 本棚に本を並べていたら間に本が増えていた―。
    大阪の四代にわたるある一族の、幻書にまつわる荒唐無稽なファンタジー。

    本にだって雄と雌があり、交尾をすれば相性のいい本の間には子どもが生まれる…なんていう人を喰った与太話が、クセがある文体で長々と饒舌に語られ、もうおなかいっぱい!というほどに楽しめました。

    中盤までは主人公の一族のエピソードが四代にまたがって延々と語られ、ちょっとダレてしまうのですが、後半は怒涛の圧倒的展開となり、ここに至ってやっと前半の無駄だと思った部分が生きてきます。

    私たちは何のために生まれ、どこへ行こうとしているのか。
    一冊の本のように私たちの人生もまた常に誰かの物語の続きであり、それは円環の中で生き続け、やがては永遠へとつながっていく。
    そんな深い思索へと読者をいざなっていきます。

    そしてこの本も、数々の名作の中から生まれてきた――生まれるべくして生まれてきた本なのだと気づかされるのです。

    著者の書物への愛情が随所に感じられる、本好きにとってはたまらなく愛おしい物語だと思いました。

  • 在りもしない書物の引用で物語をぐいぐい推し進めていく構成はまるで『ドグラ・マグラ』のようで、物語中の「読む者」と「読まれる者」がいつしか入れ替わり、ループして、それ自身が果てしなく物語を紡いでいくという展開は『はてしない物語』のようで、祖父から自分を挟んで息子へと至る四代の壮大な歴史物語は、一本の大河ドラマのようだった。本にだって雄と雌があって、従って夜な夜な本棚から這い出して勝手に子供を作ってしまうこともあるのだ、という荒唐無稽な書き出しに、小難しい衒学的な文章、そして人物の喋りが大阪弁、とくれば、まあ森見登美彦とか万城目学ふうなマジックレアリズムなのかな、という印象だったのだけれど、そんな枠組みには収まらない、むしろそんなことどうでもよくなる小説でした。これは「新・日本3代奇書」に数え上げてもいいんじゃないかと思うスケールだ。ほかの2つが何かは知らないけれど。

    死んだ人が本になるのだとしたら、それが読み継がれ、語り継がれ、新たな本の一部になるのだとしたら、それほど幸せな死はないだろう。この世に文字があって、言葉があって、本があって良かった。本好きで良かった。
    書店員という自分の仕事に誇りが持てた一冊だった。

  • 最初はなかなか進まなかったけど、中盤からどんどん面白くなった!
    読み終えた今、たまらずニヤニヤしてしまう。

    「幻書」にまつわる深井一族の話を息子に語る語り手、土井博。
    口調はちょっと森見登美彦とか町田康のようでいて(関西弁だからかも)、そこまでアクが強くはないけどダジャレは次々放り込む、というような雰囲気。最初は「しつこいわー」と思っていたがいつのまにかクセになります。

    小ネタがあちこちにちりばめられていて、電車で読むにはちと危険です。
    『はてしない物語』『嘔吐・壁』のあいだにできたこどもが
    『はてしなく壁に嘔吐する物語』!いやー読みたくない(笑)

    「本好きな夢のあるおじいさんがいたんだよ」というようなファンタジーで終わるのかと思いきや、
    途中から家族の愛や戦争の惨さまでおりまぜて、意外に感動が押し寄せます。ファンタジーなのにいろいろ腑に落ちる。
    本好きにはたまらない本。
    最後はいろんな伏線が回収される感じが心地良い。

    表紙をじっくり眺めてもおもしろいし、中表紙にも意味があります。
    なんて本!
    こいつ本当に飛ぶんじゃないか…

  • 最初の数ページで、なんだか登美彦氏の小説を思い出しました。
    ムズカシイ言葉やヘンテコな理論をこねくりまわす感じ・・・。
    著者紹介を見たら、この著者も日本ファンタジーノベル大賞を受賞されているとのことで、なんとなく納得。

    本にも実は雄と雌があり、そのあいだに子供だって生まれるのだ・・・という奇想天外な話から始まる本書。
    生まれた本は「幻書」と呼ばれ、ページを羽ばたかせて宙を舞う・・・。
    そんな幻書の蒐集家である祖父を持つ語り手が、息子に宛てた手記が本書です。
    祖父・深井與次郎の人生を語りつつ、深井家の周囲で起こった幻書にまつわる不思議な出来事の数々が綴られています。

    ばかばかしいなぁと思ってしまったり、阿呆だなぁと思ってしまうところが多々あるのですが、私はこんな感じが結構好きなのですw
    かの大英博物館長・アントニオ・パニッツィが白い象に乗ってエセ関西弁を駆使したり・・・。
    やや冗長にも感じましたが、楽しく読みました。

  • 本と本から生まれた空飛ぶ本「幻書」と、手記の書き手の祖父や家族を巡るファンタジー。
    本当に面白かった!!読み終わって本を閉じる瞬間、あぁよい本だったぁとため息出ちゃうくらい、とてもステキな本だった。ハードカバーで買おうと決心。

    文章をこねてこねてこねくりまわしているうちに話が逸れていって気が付いたら川向う!といった印象の文章は、語彙に富みユーモアに溢れているけども、人によって好き嫌いがあるのは確か。私はどちらかと言えばかなり好きなのに、最初はなかなか苦戦した。後半尻上がりに面白くなって、ファンタジーで、家族愛でほっこりして、冒頭で文体に苦しめられていたことをすっかり忘れてしまっていた。

    世の中には夥しい量の面白い本があって、人間の短い寿命ではそれらのごくごくごく一部しか手に取ることができないことを、日々悲しく思う私は、ラディナヘラ幻想図書館の司書に選ばれたらなんて楽しいんだろう!と素直に憧れを抱いてしまった。私もいつかラディナヘラの司書になるべく、毎日小賢しく本の並べ替えに勤しみたい。

    本をファンタジーと家族を愛する人に、ぜひおすすめしたい一冊。

    --

    旧家の書斎に響く奇妙な羽音。そこでは本たちが「結婚」していた! 深井家には禁忌(タブー)があった。本棚の本の位置を決して変えてはいけない。九歳の少年が何気なくその掟を破ったとき、書物と書物とが交わって、新しい書物が生まれてしまった──! 昭和の大阪で起こった幸福な奇跡を皮切りに、明治から現代、そして未来へ続く父子四代の悲劇&喜劇を饒舌に語りたおすマジックリアリズム長編。

  • 1ページ当たりの文字数の多さと、ホラまみれボケまみれツッコミまみれの関西感?まるだしの文章に、読み始めはかなり苦労しました。なかなかページが進まない。

    そもそも、本文始まって2ページ目の「チツテト」の意味が分かるまで、不覚にも数分を要してしまった(汗)こりゃ、進まないのも当然だね。

    小説は、「私」が、「私の息子」宛てに書いた 「私の祖父」の一代記の体裁であるが、更に数代前の世代から現在までを行きつ戻りつし、親類縁者のエピソードも詳述されるので、中盤までは 面白いんだけど とりとめなくてごちゃごちゃした印象。

    だが、祖父・深井與次郎がボルネオに出征したあたりから、今までバラバラだったそれぞれのエピソードが、パズルのようにぴたりと組み合わさって、想像もしなかった巨大な世界が眼前に現れてくる。

    「幻書」という、摩訶不思議な存在をめぐる、ありえないファンタジーであるにもかかわらず、読後妙に納得できるのは、そんな「ありえなさ」を超越した夫婦愛、家族愛が描かれているから。かな?

    命のつながり、それ以上に不思議なものはない、ということかもしれません。

    とにかく、本が好きでよかった!!

    これが一番の感想です^^




     

  • 本を題材にした森見登見彦的なファンタジーというよりも
    深井一族の話である事を理解し、
    内容のテンポのわりに回りくどい文章を乗り越えられれば
    面白くてほっこりできる本だと思う。
    仕掛けという程ではないかもしれないけど、最後まで読むとニヤリとして
    また初めのページに戻りたくなる。

    何より登場人物たちと作者の本に対する愛情を感じられるのが良い。
    自分の本棚の本を入れ替えたら「幻書」が生まれるかなー?とか
    自分もラディナヘラ幻想図書館の司書になりたいなーとか
    本好きにとっては妄想が広がるステキなお話。

  • 本好きにはたまらない、というより、Sci-Fiではない「Sukoshi Fushigi」が好きな人には良いんじゃないでしょうか。本好きホイホイは、冒頭だけ。中身は本好きものというより、ファンタジックな家族もの。
    かけねなしに面白いとは思えなかったけれど、なんだか良い話だったので読後感はなかなか良いです。なんだろう、登場人物の誰一人、リアル感というものがないのが却ってすがすがしい気がする。

  • 浪花版『百年の孤独』とでも名付けたい、虚構と現実日常と非日常が交錯しどちらがどちらか判らなくなり、そのうち読んでいるのか読まれているのか自分がいるのは地球の日本という国土の上なのか何処か知らぬ宇宙の彼方を漂っている最中なのかと、己が消えてゆく感覚を堪能できる。
    言葉の奔流凄まじくボルネオのジャングルで遭遇する司書の操る怪しげな大阪弁風魔導言語には関西圏以外に棲息し軽々しく関西弁もどきを発する者に対する揶揄すらも感じさせ猛省を促す力まである。
    わたくしも混書なるものを生じせしめてみたいところだが乏しい蔵書にて期待は持てぬ。かくなる上は最寄の書店図書館にて実験を試みたい衝動に駆られる。
    日本中の書店図書館資料館で蔵書がむやみに動かされる事件が頻発する懸念あり。全国の書店員ならびに司書の方々監視を怠りなく。

    案外著者も司書という職業にある身なのかも知れぬ。

  • Twitter文学賞受賞作ということなので。本と家族への愛情溢れる壮大な法螺話。とぼけた語り口や駄洒落、脱線しまくりのエピソードに終始ニヤニヤさせられどおし。ずっとこのノリが続くのかと思いきや、終盤には思いもかけぬ壮大で感動的な展開に。これぞ和製マジックリアリズム。まるで『百年の孤独』のようと言うのは褒め過ぎかな。

  • 読む前はマジックリアリズムって何だよ、それだけじゃ内容分かんないよ。と思ってましたが読んで分かりました。確かにマジックリアリズムとしか言いようがないです。他になんと言えばいいのか分からない物語でした。

    全編通して父から息子にあてた物語として書かれているのですが父、博の語り方が面白くてところどころ声をだして笑ってしまいました。
    「二反木綿!」と「ウーパールーパー界のアラン・ドロンみたいな顔」のあたりが大好きです。あと「やっぱりな!」がツボに入りすぎて出てくるたびに吹きだし笑いしながら読みました。

    タイトル通り本には雄と雌があって、相性の良い本の間には子どもが生まれる。という設定が話の根幹に関わってきますが、大きなテーマは家族愛だと思いました。祖父から孫、父から子に受け継がれる秘密。その秘密を受け継がせるための手段が口伝えじゃなくて本。というところがまたこの一族らしくて良いです。

    全体的に荒唐無稽としかいいようがない要素満載なのですが、それでもなんかありえそう。と思うのは「耳袋」のような「人から聞いた不思議な話」というリアルさがあるからだと感じました。また與次郎や釈苦利のような個性的な登場人物が言うからなんか説得力あるように聞こえるんだと思います

    ラストにはSF的な要素もあり、不思議な気分になりました。読み終わった後に中表紙を見てビックリでした。

  • 読後、ぷはーっと息を吐き満面ににっこりして「ああ面白かった!」と100%で言えた。久しぶりに。…ここがいいだあれがおもしろいだとぐだぐだ書き連ねるのもなんだかナンセンスに思える本なのだけど。
    地の語りが関西弁の口語体でそれがいちいちニヤニヤしてしまう滑稽さ。だらだらと続くその語りに散りばめられている幻書と人びとの記述が、拡がるにつれ目が回るような惑乱にぐるぐるしながら読み進めれば、最後はくるりと回って見事にきれいな二段オチ。拍手喝采!スタンディングオベーション!
    …ほらなんだか味気ない感想文…だからたぶんこの本の感想は「ああ面白かった!」だけでいいのだ。100%それだけでいい本をもっと読みたいものです。

  • 読んでいてチョト思いついたんどすけどな、このタイトル「オスとメスがあります」やのうて「オンとメンがあります」て読むんやないかいな?

    パニッツィ先生の怪しげな関西弁がウツってしもうた。

    はじめは読みにくくて難渋しましたが「九」くらいから加速度がつき読めるようになってきました。結局これは家族の話です。本の話でさえないかもしれない。深井家サーガなのです。一族のうち何代目かに一人幻想本の図書館司書に任命される性を持つ本好きの家系の物語。

    これだけの家屋敷を実際に維持するのは大変だと思うんです。御祖母さんの一人暮らしだととくにね。草取りだけでもたいそうな労働だ。相続税は…とか出てこないところがファンタジー。

    亀山金吾は結局何者なのかね。また別の系統の不老不死の家系なのか。

  • うっひゃ~。真正の本好きのための1冊に出会ってしまったと小躍りしたくなるような読後感。
    カテゴライズするのは難しいけど、やっぱファンタジーなんだろうか。それか家族ものかな・・・。うーん。
    地の文が、しょーもない冗談を交えながらあっちへふらふらこっちへふらふらしている文章で、近所のハナシ好きのおじさんにつかまった感じの本。
    「おじりさん」のくだりは、公共の場で読む場合は注意。

    最初は読みにくいなぁと思っていたけど、後半に入ると慣れも手伝ってか、いっきにぐぐっと読める。
    くだらない冗談の中にも文学的なものもあり、楽しめる。
    いいわ~。これ、誰にでも進められる本じゃないけど、本好きを自称する方にはぜひ読んでいただきたい!

    読み終わってから中表紙を眺め、「おお、そういうこと!」と。
    表紙のイラストも、中身のごちゃごちゃ感を表してて良い感じ。
    本好きさんに、オススメ。

  • 関西弁!しかも妄想!ときたらもう読むしかないでしょ!
    なんていうか、こういうか、読んだ後「あぁたまらんなぁ」と思える一冊。

    こういう本がさりげなく積まれていて、いつの間にか売れていた、って店がいいよな。

  • あまり知られていないが、書物にも雄と雌がある。相性のいい二冊の本が書架で隣り合ったとき、この世に存在するはずのない幻書が生まれる(産まれる)。らしい。本を愛しその魅力に取り憑かれた祖父・與次郎の一代記。かと思いきや、その祖先、そして曽孫までをも巻き込む愛に溢れた壮大な家族の年代記だった。序盤が読みにくくて往生したけど、戦中の話あたりからガ〜っと波が押し寄せてくる。最後の最後に、途中で感じるすべての引っ掛かりをうまくまとめてくるからすごい! 読めてよかった〜

  • 最近読んだ日本の作家の本の中で一番面白かった。これしか褒めないで今年は終わるかもしれないが、日本文学にも面白い本があった。忘れた頃に図書館から予約の通知が来て、なぜこれを予約しただっけと思い返せばTwitter文学賞1位だった。すごいな、本屋大賞よりはるかに信頼できるぞ。本屋大賞は、翻訳部門は良いが日本のほうがだめだ。
    本書はいわば日本のマジックリアリズム。スケールの大きな幻想の中に家族の歴史と戦争、飛行機墜落事故等が織り交ぜられる。つぎはぎ感はある(航空機事故はもちろんクライマーズハイ)のだが、大局的には生々しく悲惨でもあり、個々の人間たちは愚かに愛おしく日常を刻んでおり、それらをユーモラスな大阪弁と奇想天外なイマジネーションで繋いでいく。饒舌な言葉、山ほどの引用、言葉遊び、著者の博覧強記ぶりがわかる。読んでないけれどジョイスというイメージ。いや読んでないけど。ああ日本にこれだけの書き手がいたんだねと思う。
    そして本を愛する読者に送られた幻書のなまめかしさと可笑しさ、幻想図書館の鮮烈なイメージは至福だ。私が死んだら、墓も何もいらない、一冊の本になってボルネオに飛んで行きたい。

  • 博覧強記の風 やや強く 家族愛 時々 ファンタジー 所により 一時 駄洒落。
    作家さんの手によって書かれた小説なのかと思いきや、本の扉に「深井與次郎」の蔵書印があるではないですか。やっぱり、これは幻書らしい。だといいね。念の為、飛ばないように輪ゴムでくくったほうがいいのかも…。
    ラディナヘラ幻想図書館の司書になるのは無理として、一般の死者向けに閲覧・貸出はやってないのかなぁ。
    與次郎とミキみたいな老夫婦になりた~い。

  • 「あんまり知られてはおらんが、書物にも雄と雌とがある。であれば理の当然、人目を忍んで逢瀬を重ね、ときには書物の身空でページを絡めて房事にも励もうし、果ては後継ぎをもこしらえる」。
    とこんな調子で呆れるくらいに抜け抜けと繰り出される嘘八百によって、與二郎とミキ夫婦を中心とする、本にとりつかれた一族の歴史が語られる。駄法螺と与太話の羅列みたいな文章は面白すぎていつまでも読んでいたいと思うくらいだけど、戦地に送り込まれ死の淵まで行った與二郎の切実な思いは、ちっぽけな存在として殺されていった人たちに連なっている。だからこそ、「人は死んだら一冊の本になる」という駄法螺がただの駄法螺ではなく聞こえてくるのだ。

  • 面白かったし泣きまくった。雄本と雌本の間には幻書が生まれるというアイデアから、本好きの夢がしこたま詰まった神話や、語り手の祖父を中心とした一族の歴史が生まれるのが素晴らしい。とにかくファンタスティックなのにそこに生きていたのではないかというくらいリアリティが溢れてる。溢れすぎてえらく回りくどかったり笑えないダジャレ下ネタ連発したりなため、読む人を選ぶと思う。でも、説教くさくない剥き身の戦争話(水木しげるさんの戦争漫画みたいな)や家族にふりかかる災難と手を取り合って乗り越えていく様子は魅力たっぷり。ラストへ向かって収斂していく素晴らしい文章構成は本読みの方に是非一度体験してほしいです。

  • 相性の良い本の雌雄によって生まれた幻書にまつわる話が、各方面に脱線、脱線!そしてそれが、愉快、愉快!
    へんてこな話かと思えばそうではないところもあるし、脱線だらけかと思ったら実はすべてが収束されるし、これは、見事!

  •  相性の良い二つの本を本棚に隣り合わせで並べると、その間から新しい本が生まれる。そんな不可思議な秘密が、個性的な家族の人物伝とともに語られる。

     読み始めたときは冗長な表現のあまりの多さにやや戸惑ったが、読み進めるうちにその描写の回りくどさが逆に可笑しくなってくる。作品のテーマも最初はわかりにくいが、読むうちにだんだんとみえてくる。ラストにもあっと驚かされる近現代ファンタジーの良作。私も空飛ぶ幻書に遭ってみたい。

  • 文章はすっごい面白いんだけど、なんかすごい時間かかってしまったー…これはみっちりつまった内容のためだな。
    厚さはそんなにないけど、濃かった気がするのはそのせいだな。と読み終わった後でしみじみ。

    読んでいてくすりくすりと笑ってしまう内容でした。
    個人的には「けむりがぶわっと出てきよつてから おじりさんになるんでんねんやで」が最高にツボでした。
    どいつもこいつもおじりさんになってしまえ!

    そういえば、いみじくも與次郎はミキとの初対面の時、ミキは象に乗るって予言しているのですね。

    與次郎がミキと一緒にラディナヘラ幻想図書館の司書になるため、幻書にミキのハンコを押しても、ミキは字がよめんのやから、逆にそれはすごく辛いことでは?と思ったりしたけど、ものすごい量の本を読めるようになったことで、私の(?)不安も解消されました。
    今頃、與次郎と一緒に象に乗って一生懸命働いているのかな?
    それは秀典が言った地獄なのかな?
    私には、笑っている二人しかでてきません。
    なんかいろいろあったけど、私は家族の幸せについて書かれている本だと読みました。
    與次郎とミキ、博と早苗のようにぴったりで幸せな夫婦になりたいなー。

    ミキが亡くなる夜、親族の集まりについて書いたところも好き。
    「ふと、この場がはるかなる太古に張られた大きな天幕の中であるかのような感覚に囚われた。家族が身を寄せ合い、語らい、笑いあうことによって、巨大な夜の力に抗っているのだ。そしてそれは人類がこの世界に産み落とされ、火を囲んで言葉を話すようになって以来、最も古い、そしてもっとも永遠に近い楽しみであるかのようだった」
    すごく、わかる気がします。

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