本にだって雄と雌があります

著者 :
  • 新潮社
3.74
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本棚登録 : 1051
感想 : 174
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103197225

感想・レビュー・書評

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  • 本と本から生まれた空飛ぶ本「幻書」と、手記の書き手の祖父や家族を巡るファンタジー。
    本当に面白かった!!読み終わって本を閉じる瞬間、あぁよい本だったぁとため息出ちゃうくらい、とてもステキな本だった。ハードカバーで買おうと決心。

    文章をこねてこねてこねくりまわしているうちに話が逸れていって気が付いたら川向う!といった印象の文章は、語彙に富みユーモアに溢れているけども、人によって好き嫌いがあるのは確か。私はどちらかと言えばかなり好きなのに、最初はなかなか苦戦した。後半尻上がりに面白くなって、ファンタジーで、家族愛でほっこりして、冒頭で文体に苦しめられていたことをすっかり忘れてしまっていた。

    世の中には夥しい量の面白い本があって、人間の短い寿命ではそれらのごくごくごく一部しか手に取ることができないことを、日々悲しく思う私は、ラディナヘラ幻想図書館の司書に選ばれたらなんて楽しいんだろう!と素直に憧れを抱いてしまった。私もいつかラディナヘラの司書になるべく、毎日小賢しく本の並べ替えに勤しみたい。

    本をファンタジーと家族を愛する人に、ぜひおすすめしたい一冊。

    --

    旧家の書斎に響く奇妙な羽音。そこでは本たちが「結婚」していた! 深井家には禁忌(タブー)があった。本棚の本の位置を決して変えてはいけない。九歳の少年が何気なくその掟を破ったとき、書物と書物とが交わって、新しい書物が生まれてしまった──! 昭和の大阪で起こった幸福な奇跡を皮切りに、明治から現代、そして未来へ続く父子四代の悲劇&喜劇を饒舌に語りたおすマジックリアリズム長編。

  • 1ページ当たりの文字数の多さと、ホラまみれボケまみれツッコミまみれの関西感?まるだしの文章に、読み始めはかなり苦労しました。なかなかページが進まない。

    そもそも、本文始まって2ページ目の「チツテト」の意味が分かるまで、不覚にも数分を要してしまった(汗)こりゃ、進まないのも当然だね。

    小説は、「私」が、「私の息子」宛てに書いた 「私の祖父」の一代記の体裁であるが、更に数代前の世代から現在までを行きつ戻りつし、親類縁者のエピソードも詳述されるので、中盤までは 面白いんだけど とりとめなくてごちゃごちゃした印象。

    だが、祖父・深井與次郎がボルネオに出征したあたりから、今までバラバラだったそれぞれのエピソードが、パズルのようにぴたりと組み合わさって、想像もしなかった巨大な世界が眼前に現れてくる。

    「幻書」という、摩訶不思議な存在をめぐる、ありえないファンタジーであるにもかかわらず、読後妙に納得できるのは、そんな「ありえなさ」を超越した夫婦愛、家族愛が描かれているから。かな?

    命のつながり、それ以上に不思議なものはない、ということかもしれません。

    とにかく、本が好きでよかった!!

    これが一番の感想です^^




     

  • 本を題材にした森見登見彦的なファンタジーというよりも
    深井一族の話である事を理解し、
    内容のテンポのわりに回りくどい文章を乗り越えられれば
    面白くてほっこりできる本だと思う。
    仕掛けという程ではないかもしれないけど、最後まで読むとニヤリとして
    また初めのページに戻りたくなる。

    何より登場人物たちと作者の本に対する愛情を感じられるのが良い。
    自分の本棚の本を入れ替えたら「幻書」が生まれるかなー?とか
    自分もラディナヘラ幻想図書館の司書になりたいなーとか
    本好きにとっては妄想が広がるステキなお話。

  • 浪花版『百年の孤独』とでも名付けたい、虚構と現実日常と非日常が交錯しどちらがどちらか判らなくなり、そのうち読んでいるのか読まれているのか自分がいるのは地球の日本という国土の上なのか何処か知らぬ宇宙の彼方を漂っている最中なのかと、己が消えてゆく感覚を堪能できる。
    言葉の奔流凄まじくボルネオのジャングルで遭遇する司書の操る怪しげな大阪弁風魔導言語には関西圏以外に棲息し軽々しく関西弁もどきを発する者に対する揶揄すらも感じさせ猛省を促す力まである。
    わたくしも混書なるものを生じせしめてみたいところだが乏しい蔵書にて期待は持てぬ。かくなる上は最寄の書店図書館にて実験を試みたい衝動に駆られる。
    日本中の書店図書館資料館で蔵書がむやみに動かされる事件が頻発する懸念あり。全国の書店員ならびに司書の方々監視を怠りなく。

    案外著者も司書という職業にある身なのかも知れぬ。

  • 読後、ぷはーっと息を吐き満面ににっこりして「ああ面白かった!」と100%で言えた。久しぶりに。…ここがいいだあれがおもしろいだとぐだぐだ書き連ねるのもなんだかナンセンスに思える本なのだけど。
    地の語りが関西弁の口語体でそれがいちいちニヤニヤしてしまう滑稽さ。だらだらと続くその語りに散りばめられている幻書と人びとの記述が、拡がるにつれ目が回るような惑乱にぐるぐるしながら読み進めれば、最後はくるりと回って見事にきれいな二段オチ。拍手喝采!スタンディングオベーション!
    …ほらなんだか味気ない感想文…だからたぶんこの本の感想は「ああ面白かった!」だけでいいのだ。100%それだけでいい本をもっと読みたいものです。

  • 読んでいてチョト思いついたんどすけどな、このタイトル「オスとメスがあります」やのうて「オンとメンがあります」て読むんやないかいな?

    パニッツィ先生の怪しげな関西弁がウツってしもうた。

    はじめは読みにくくて難渋しましたが「九」くらいから加速度がつき読めるようになってきました。結局これは家族の話です。本の話でさえないかもしれない。深井家サーガなのです。一族のうち何代目かに一人幻想本の図書館司書に任命される性を持つ本好きの家系の物語。

    これだけの家屋敷を実際に維持するのは大変だと思うんです。御祖母さんの一人暮らしだととくにね。草取りだけでもたいそうな労働だ。相続税は…とか出てこないところがファンタジー。

    亀山金吾は結局何者なのかね。また別の系統の不老不死の家系なのか。

  • 最初から三分の一くらいまでは退屈で意味がよくわからない内容。講談師に語ってもらったら面白そうな文章でもあり、そんな様子を思い浮かべながら進んでいった。すると後半から俄然面白くなる。祖父の戦争体験が書物の中の書物として違う字体で表現されていて、そんな構成も楽しめた。部屋を飛び回る「幻書」の様子が手に取るように分かって楽しい。一言でいうなら「深井家のファミリーヒストリー」。ありえない映像なのにリアル感があった。

  • 最近読んだ日本の作家の本の中で一番面白かった。これしか褒めないで今年は終わるかもしれないが、日本文学にも面白い本があった。忘れた頃に図書館から予約の通知が来て、なぜこれを予約しただっけと思い返せばTwitter文学賞1位だった。すごいな、本屋大賞よりはるかに信頼できるぞ。本屋大賞は、翻訳部門は良いが日本のほうがだめだ。
    本書はいわば日本のマジックリアリズム。スケールの大きな幻想の中に家族の歴史と戦争、飛行機墜落事故等が織り交ぜられる。つぎはぎ感はある(航空機事故はもちろんクライマーズハイ)のだが、大局的には生々しく悲惨でもあり、個々の人間たちは愚かに愛おしく日常を刻んでおり、それらをユーモラスな大阪弁と奇想天外なイマジネーションで繋いでいく。饒舌な言葉、山ほどの引用、言葉遊び、著者の博覧強記ぶりがわかる。読んでないけれどジョイスというイメージ。いや読んでないけど。ああ日本にこれだけの書き手がいたんだねと思う。
    そして本を愛する読者に送られた幻書のなまめかしさと可笑しさ、幻想図書館の鮮烈なイメージは至福だ。私が死んだら、墓も何もいらない、一冊の本になってボルネオに飛んで行きたい。

  • 「あんまり知られてはおらんが、書物にも雄と雌とがある。であれば理の当然、人目を忍んで逢瀬を重ね、ときには書物の身空でページを絡めて房事にも励もうし、果ては後継ぎをもこしらえる」。
    とこんな調子で呆れるくらいに抜け抜けと繰り出される嘘八百によって、與二郎とミキ夫婦を中心とする、本にとりつかれた一族の歴史が語られる。駄法螺と与太話の羅列みたいな文章は面白すぎていつまでも読んでいたいと思うくらいだけど、戦地に送り込まれ死の淵まで行った與二郎の切実な思いは、ちっぽけな存在として殺されていった人たちに連なっている。だからこそ、「人は死んだら一冊の本になる」という駄法螺がただの駄法螺ではなく聞こえてくるのだ。

  • 他のレビューにも書いてあったが、とにかく最初は読みづらかった。読んでも読んでも、すすまない。その割りに途中でやめようと思わなかったのはやはり魅力のある本なんだろうなあ。登場人物が皆さん個性的で素敵。私のお気に入りはミキだ。この人の書く短編も読んでみたい。

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著者プロフィール

1974年生まれ、宮城県出身。小説家、ファンタジー作家。関西大学法学部政治学科卒業。2009年『増大派に告ぐ』で、第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家デビューした。2013年『本にだって雄と雌があります』で、第3回「Twitter文学賞国内部門」の第1位を獲得した。

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